地球では、一夏達がジンの大部隊と交戦していた。一夏は
「まだまだ行くぜ!」
しかし、少女5人は先の戦闘でシールドエネルギーがほぼ無い。それでも各々の武器でなんとか持ち堪えていた。セシリアはジンのメガビームキャノン砲撃を避け、ジンの死角からビットで攻撃し、少しずつ倒していき、鈴はバズーカの砲弾を衝撃砲で迎撃してすぐに再度撃つことにより、バズーカ内部を爆発させ、動きが止まっているジンを双天牙月で両断する。シャルロットは持ち前の器用さを生かし、ビームサーベル、ビームライフルを的確に使い分け撃墜して行く。ラウラはAICで動きを止め、レールカノンで撃破とゴリ押し戦法でこつこつ撃墜する。問題は箒だ。空烈で一体を斬ったは良いものの、背後からバズーカで攻撃され、シールドエネルギーがごっそり奪われる。ここで専用機を持ってからの稼働時間の差が出て来た。
「クソ!そう簡単に‼︎」
フリーダムは地球に近づくと、シールドを体の前に出す。大気圏突入時の熱を受け流しながら、背中の青い翼を広げ、徐々に突入して行く。
「クソォォォォ!」
「このままでは…」
「やられる訳には行かないのよ!」
「みんな!頑張って!」
「気を抜くとすぐに落とされるぞ!」
5人は一つに固められ、ジンがメガビームキャノンの集中砲火を受けていた。
「くそッ!邪魔すんな‼︎」
一夏もジンに囲まれていて5人の救助に向かえない。箒の正面のジンがメガビームキャノンを構える…
ズキュウウン…ドォン‼︎
緑色の閃光がメガビームキャノンを通り過ぎるとメガビームキャノンが爆発。さらに高速で何かが降りて来てジンを両断する。
「「「「「…え?」」」」」
5人の目の前には蒼い翼を広げた、フリーダムの姿があった。
『こちら櫻井一樹。援護する。今の内に撤退を』
その場にいる全員に
一樹はフリーダムを少し上昇させ、ジンの大部隊を次々ロックオン。
「当たれぇぇぇぇ!!!!」
自らの持つ全ての射撃兵装を撃ち、次々とジンを撃墜していく。
管制室でそれを見ていた千冬と麻耶も…
「…凄い」
「これが…櫻井の新しい力、なのか」
右手で左腰のビームサーベルを抜刀。麒麟を囲んでいるジンを次々と落としていく。
「お待たせ一夏!」
「一樹、無事だったんだな!」
「何とかな!」
舞うように飛んでジンの攻撃を避ける一樹とIフィールドで受け止める一夏。高機動バックパックを搭載したジンがフリーダムを狙うが、全くついていけていない。それだけフリーダムのスピードが速すぎるのだ。フリーダムを追うジンは横から放たれた麒麟のマグナムに対応出来ず、落ちる。一樹も飛びながら一夏の後ろを狙うジンをライフルで落とす。
「一気に終わらせるぞ一夏!」
「タイミング合わせるのは任せろ‼︎」
両者、背中を合わせ、タイミングを合わせる。一樹は再び眼前のジンをマルチロックオン、一夏は麒麟のビームマグナムを構える。
「「吹き飛べぇぇぇぇ!!!!」」
2人の射撃により、ジン部隊は壊滅した…
作戦終了後、一樹はテントで夕食である魚を炭火で焼いていた。
「…久しぶりにまともなのが2日連続で食えるな」
IS学園の仕事についてからはずっとまともに食事をとっていなかった為、一樹の顔は笑顔だ。
「…どうしたんですか?束さん」
一樹の背後にいきなり現れた束。
「…少し話しても良いかな?」
「魚臭くても良ければ」
束は近くの岩に腰掛け、あの6人のIS待機アクセサリーを取り出して調整を始めた。
「…明日、IS学園に戦闘機を3機送るよ」
「へえ、何故ですか?」
「ウルトラマン…ううん、かずくんのサポートの為に、だよ」
「…知ってたんですか。流石ですよ」
「ねえ、そろそろ箒ちゃんに話しても良いんじゃないかな?」
束が言っているのは雪恵の真相のことを言っているのだろう。
「…俺からは話せませんよ。今の篠ノ之じゃあ、俺がでっち上げた話にしか聞こえないでしょうから…」
「そう…」
束が呟くと、しばらく静寂が訪れる。
「またいつでも電話して来てね。力になるから」
「…束さんらしく無いっすね」
「ああ〜酷い!束さんがせっかく協力してあげようって言ってるのに!」
一樹が茶化すと、すぐにノリ良く返してくる束。親しい人物には本当に優しい人だ。
「それじゃ、またね。あの子達にこれ、返して貰える?」
「了解しました」
その後ISを返すと、一夏の絶叫が聞こえた為、結局フリーダムのフルバーストでシールドエネルギーが再びゼロになった皆。
「さて、説教タイムだ。シャルロットよ」
S.M.S専属となったシャルロットはその後千冬を怒らせた以上の地獄を見たとか見なかったとか…
「ど、どうしたのだシャルロット?顔色が悪いぞ」
「あ、あはは…僕が今は企業代表候補生なのは知ってるよね?」
「あ、ああ…」
「実は櫻井君のいるところでさ。昨日のを『それでウチに賠償金払えって出たら払うのは誰だ?』みたいに言われて…あと少しでアストレイ取られるところだったよ…」
「うっ、耳が痛い話だな…だが、以前櫻井はそんなこと言わなかったが…」
「あの時はまだリヴァイブだったから…」
「櫻井が意外に現金なのを今知ったよ…」
「誰が現金だって?」
ビクッと2人がなり、震えながら後ろを見ると、気持ちいいくらいに笑顔な一樹がいた。
「…お前、まだ反省してないのか?ならアストレイ返せ」
「すみませんもう二度としないのでお許しをぉぉ!!!!」
しばらくシャルロットは一樹に足を向けて寝られない日々が続きそうだ。
「さて、間も無く期末テストだ。皆勉強はしてるか?」
千冬がそう言った途端、殆どの生徒が悲鳴を挙げた。その中に一夏は入っていない。セシリアとの決闘以降、物凄い集中力でISのことはもちろん、一般科目もそうとう勉強していた。一夏は元々頭が悪い方では無いから、すぐに追い付いた。テストの点数だけ言えば小学校、中学校共に一樹より成績が良かったのだ。一方、一樹はと言うと…
「王手」
「ゲッ!ここでそれは反則だろ⁉︎」
「ルール上問題ねえんだよ!ウダウダ言ってねえでさっさと次の手を指せ!」
余裕の一夏と将棋を指していた。
「う〜む〜、2人が羨ましいよ〜」
のほほんさんが恨めしそうに2人を見ると、その近くの女子生徒が皆頷いた。
「ん?そうか?でも実際こうなるとただでさえアウェー感半端ないのに、2割増しで居心地悪いぞ?」
「慌てたところであまり関係ないしな」
それでも4月当初よりは学園の生徒達は一樹を受け入れていた。理由の一つとして、生身でセシリアのISと対峙し、勝ったことが挙げられる。
「ねえねえ、櫻井君ってさ、普段何食べてるの?食堂で食べてるの見たこと無いからさ」
出席番号1番、相川清香が一樹に聞いてくる。一樹は顔を引きつらせ
「…相川さん、世の中には知らない方が幸せなこともあるんだよ?」
どこか遠い目で言う。何故か一樹に黒い縦線が見えた相川はすぐに質問を取り消す。
「ご、ごめん!なんかいけないこと聞いちゃった感が…」
そもそも臨海学校で1人モリで魚突いてた時点で気付こうぜ相川さんよ。
そして、答案返しの日。
「よっしゃぁぁぁ‼︎」
一夏が学年1位を取っていた。
「よし一夏!俺に飯奢れ。1位取ったお祝いに」
「いやおかしいだろそこは!そこは一樹が俺に…嘘ですごめんさい、お願いだからそんな空っぽの財布を俺に見せないで」
一樹の切実すぎる問題に、一夏は綺麗に土下座をしたのだった。
「さて、話は変わるが、一夏。お前の今後の予定は?」
「とりあえず家に帰るな。あとは…お見舞いかな」
お見舞いの言葉を聞き、周囲では誰が相手なのか気になるのが若干名。
「…もう嫌だ。コイツ充分強いから護衛いらないやん。マジでコイツの唐変木に付き合うの疲れた。マジ助けて」
「か、かずやんが壊れかけてるぅ!」
次からネクサス続きます。