人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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今回は短めです。そしてまさかの主人公が名前しか出ないというね…その分、次は長くなると思います。


Episode19 責任-レスポンシビリティ-

「…総員、作戦は中止!各々の部屋に戻れ」

シャルロットが傷ついた一夏を抱えながら戻って来たのを見て、一瞬辛そうな顔をした千冬。だが、すぐに表情を引き締め、周りに指示を出した。

「…デュノア、すまんが織斑を医務室に連れて行ってくれないか?」

「は、はい…」

シャルロットが一夏を医務室へ運ぶと、すぐに担当の教師が治療を施す。

「何これ…今回受けた傷だけじゃなく、筋肉全体に損傷があるじゃない!どうやったらこうなるのよ⁉︎」

話しながらも素早く措置を施すあたり流石IS学園の教師だ。人工呼吸器が付けられた一夏の姿は、とても痛々しい…

「…そう言えば、白式の反応が鈍いって櫻井君と言ってました。OSの書き換えをしても、白式自体のスペックが一夏の反応速度に対応出来てなかったみたいで…」

「OS調整してもって、櫻井君のOS設定技術は私達IS学園の教師でも勝てないのよ⁉︎それで鈍い…ってことは!」

先生は何かを思いついたのか、白式のデータを見始めた。

「何よこれ…関節のパワーアシストの速度が織斑君の反応速度について来れてないですって⁉︎まさか…動きが遅い関節を腕力で強引に動かしてたとでも言うの⁉︎」

シャルロットは愕然とした。パワーアシストが無いとISの重量は片腕だけで30kgは越える。そんなものを腕力だけであれだけ速く動かせば筋肉が悲鳴を挙げるに決まっている…

「そうまでして…僕達を守ってくれてたの?一夏…」

 

箒は海岸線で膝を抱え込んでいた。その頬は赤く腫れていた。理由は戻って来て早々に言った言葉が原因だった。

 

「そ、そうだ…なんでアイツは来なかったんだ!アイツは一夏の護衛役なのだろ⁉︎なのになぜ来なかったんだ⁉︎」

自分の非を認めたく無いがために、一樹を責めようとする箒。そこに千冬の平手が飛ぶ。

バチンッ!

「ッ⁉︎」

「来なかった…だと?櫻井は行ったさ!貴様が頭を抱えてる時にな!お前が呆然としてる中、お前と一夏を助ける為に敵機のビームの嵐に1人残ってな!一夏も貴様を守る為にお前を敵機に囲まれた状況から自分が囮になったんだ‼︎そもそも貴様が命令無視をしたからこんな事になってるんだろうが‼︎それでいて櫻井に責任を負わせるつもりか⁉︎ふざけるな!雪恵の真相も知らずに櫻井を“人殺し”にした挙句、恩を仇で返すなど貴様はそれでも人間か⁉︎」

悔しそうに泣きながら言い放つ千冬。あの時に雪恵の真相を話していれば、こんな事にはならなかったかもしれない。遊ぶことの楽しさを知るべき年に、孤独に生き続けた一樹を、一夏はクラスで、千冬も出来る限り支えようとしたが、クラスメイト、生徒全員、果ては学校の教師までもが一樹を否定し、“楽しい”という感情が一樹から消えてしまった…

「貴様の為を思って櫻井が自分を犠牲にしたのに!お前は!櫻井の心を潰したんだ!お前に分かるか⁉︎家族に甘えたくとも、その家族がいない、兄弟もいない!親がいない私と一夏よりも櫻井は辛い状況にいたんだ!それを離れ離れなだけで、親と再会する可能性のあるお前が!櫻井を“人殺し”呼ばわりしたから!櫻井はいつも自分を犠牲にする!お前が櫻井を傷つけたんだぞ!そして今回は一夏だ!ふざけるなァァ‼︎」

「お、織斑先生落ち着いて‼︎」

暴走しかかった千冬を山田先生を始めとした教師陣で抑える。普段抑えていた千冬の激情に、箒はただただ、聞くことしか出来なかった…

 

「……こんなもの、もういらん‼︎」

紅椿の待機状態である腕の赤い紐を海に放り投げようとする箒。だが、鈴がそれを止めた。

「ったく、何なのアンタ?わざわざ姉に専用機作ってもらって浮かれたあげく、一夏をあんなにして自分は塞ぎ込むですって?ふざけんじゃないわよ!専用機を持つってことはね!責任がそれだけ出来んのよ!今のアンタみたいに『失敗した、だからもうISは使わない』なんて言ってらんないのよ‼︎」

「…だったらどうしたらいい⁉︎敵の位置も分からないのに何と戦えと!私だって戦えるなら戦いたいさ‼︎」

「…やっとその気になったようね。なら着いて来なさい」

鈴の後ろを着いていく箒。そこでは、既にセシリア、シャルロット、ラウラが出撃準備を整えていた。

「連れて来たわよ。で、福音の場所は?」

「ここから30キロ離れた沖合上空に目標を確認した。ステルスモードを使っていたが、光学迷彩を持ってないらしくてな。衛星による目視で見つけられた」

「さすがはドイツ軍特殊部隊。やるじゃない」

「世辞はいい。お前たちの方はどうなんだ?」

甲龍(シェンロン)の攻撃特化パッケージはインストール済み。いつでも行けるわよ。で、アンタは?」

「私は…」

拳を握りしめる箒。その目に映るは、強い決意…

「行くさ…勝ってみせる。今度こそ、負けはしない!」

「…決まりね。じゃあ、行きましょうか‼︎」

 

ざぁ…ざざぁ…

「ここは…どこだ?」

目が覚めた一夏が見たのは、とても綺麗な海だった。

「綺麗な海だ…色も、音も」

そして、状況を把握するために歩いている一夏の脳裏に、声が響く。

『力を、欲しますか?』

 

「そこ!箒行って!」

「ウォォォ‼︎」

紅椿の2本の刀を構え、福音に接近する箒。福音は空中バク転で回避。そのままビーム砲を撃とうとする。

「させないよ!」

シャルロットが攻撃体制に入った福音に、マシンガンモードに切り替えたビームライフルで福音を牽制、箒を攻撃しようとしたのを防ぐ。防御姿勢になった福音に隙ができ、箒はその一瞬の隙を利用した!

「そこだァァ‼︎」

再び2本の刀で斬りかかる箒。福音はギリギリ両手でその刀を受け止めるが、それこそが箒の狙いだった。

「やれ!セシリア!ラウラ!」

「お任せを‼︎」

「言われなくても‼︎」

セシリアのビットが福音のスラスターを破壊、ラウラのレールカノンでさらにダメージを与える。福音は海に落ちた。

「やったか⁉︎」

「分からない!」

その途端、海から光の翼を広げて、福音が急浮上して来た。

「まさか…第二次移行(セカンド・シフト)⁉︎」

シャルロットの驚愕の言葉の返事とばかりに、翼からエネルギー光弾をばらまく福音。箒達はそれを避けるのに精一杯となり、またもや防戦一方となってしまった。

 




ではまた次回、お会いしましょう。

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