人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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Episode15 共闘-タッグバトル-

半日傷の治癒にあてた一樹。整備室に戻ると、そこには一夏、シャルルがいた。シャルルの顔が赤いのを見た一樹は

「(これは…落ちたな)」

天然フラグメイカーの一夏の毒牙?にかかったと判断した。しかもそれは正しい。シャルルは落ちました。

「…よう、ただいま」

「一樹、左脚見せろ」

一夏に言われるがまま、左脚を出す一樹。一夏が見ると、そこにはまさに爪痕が残されていた。

「…これくらい気にすんな。いつものことだ。私生活に影響は無い」

「そうか…」

その後、一夏から学年別トーナメントはタッグバトルで行うことを知らされた一樹。

「…それでお前はデュノアと組むと?」

「ああ。シャルルの秘密を知ってるのは俺とお前しかいないからな」

なんとなーく、一夏が断った場面が浮かんだ一樹。だが、それは今考える必要はないだろう。もう終わった事だ。

「そう言えば、シャルルはもうデュノア社の人間じゃ無いらしいぞ?なんかさっき山田先生が『経営者の中心人物のことごとくの不正が暴かれ、全員がフランス追放となったそうです。社長さんは白だったらしいんですが…』って言ってた」

「そうか…(宗介達、上手く行った様だな)」

一樹は自分の仲間達の動きの速さに、小さく笑みを浮かべる。

「ん?となるといまデュノアは代表候補生では無いってことか?」

「そうだね。そう言う事になっちゃうかな…」

「じゃあ…S.M.Sってとこの候補生やってみるか?」

「「え?」」

驚いてる2人をよそに、一樹は空間投影ディスプレイにデータを表示する。

「…もし、S.M.Sの候補生になった場合、渡すのはこれだ。『アストレイ』シリーズの内のひとつ、『アストレイ・ゴールドフレーム』だ」

白をベースとし、関節部には黄金が見える機体にシャルルは驚きを隠せない。

「これが…僕の機体に?」

「ただし、代表候補生として雇うのはお前が女だと公表してからだ。でないと、色々面倒なんでね…まあ少なくとも学年別トーナメントは自分の慣れた機体が良いだろ?」

「そ、それもそうだね」

とにかく、シャルルが女だと公表した後、S.M.Sの専属代表候補生になるのは決定した。シャルルの父親であるデュノア社長は、腹心の部下と共にS.M.Sで新しい生活を始める事を決心した。後にシャルルがデュノア氏から聞いた話によると、S.M.Sはかなりのホワイト待遇で『ここで働き始めてから、部下にも優しくなれた気がするよ』

と語ったとか。

 

そして、学年別トーナメント当日…

「やっとか…それまでずっと一夏の周りにちっこいひよこ(=シャルル)がいたから、なんか本格的にここが居辛いぜ…」

しかし、うんざりしながらも既にストライク(エール)を装備しており、何が起きても大丈夫な様にはしていた。

「頼むから…何も起こるなよ…」

 

「フッ、1回戦目で貴様らと当たるとはな…手間が省けた」

「言ってくれるじゃねえか…この間の件、たっぷり礼をさせて貰うぜ。アイツの分もな」

両者、睨み合いが続き…

『試合、開始』

「「叩き潰す‼︎」」

白式が雪片を構え、レーゲンに突っ込む。ラウラはそれをAICで止める。

「やはり単純だな…開始と同時に突っ込んでくるとは」

「単純?お前、兵法の基本を知らないのか?」

「何?グアッ!」

AICの展開に意識を集中していたため、シャルルの攻撃がレーゲンに直撃、ラウラは姿勢を崩される。ラウラの意識が外れたため、AICが解除される。その隙を逃さず、回し蹴りを叩き込む一夏。

「ISに関してはお前の言う通り、俺は素人だ。けどな…戦闘に関してはお前とほぼ同じだろうよ‼︎」

一夏のこのセリフは謙遜である。一夏の戦闘能力は既に千冬を超えている。ISに関してもすぐに千冬を超えるだろう。

「クソ!なめるな‼︎」

レールカノンをシャルルに向かって撃つラウラ。しかしシャルルもバレルロールを駆使してレールカノンを回避していく。

「よし、箒!悪いが速攻で終わらせて貰う‼︎」

「そう簡単にやられてたまるか‼︎」

ラウラとペアだった箒に一夏はスラスターを全開にして急接近、対する箒は一夏の動きに合わせる様に、待ち構える。

「(なるほど、いい判断だ。けどな、打鉄はその扱いじゃダメだ‼︎)」

日本の量産機である打鉄は他の国の量産機より遥かに防御力は高いが、旋回性能は若干悪い。打鉄の旋回速度では白式のスピードに対応出来なくなっていた。

「悪く思うな…」

一夏は白式の単一能力“零落白夜”を使い、打鉄のシールドエネルギーをゼロにした。

「くっ…ここまでか…」

悔しさに箒が愕然としてるが、今は構ってられない。一夏はすぐにラウラと戦ってるシャルルの元へ向かった。

「くっ…」

シャルルはリヴァイブの左腕にレーゲンのワイヤーが絡まっていて、逃げようにも逃げれない状態となっていた。

「少しはやれると思ったが、所詮は第二世代(アンティーク)か」

「…確かに僕じゃ無理かもね。でも…」

「俺ならどうかな⁉︎」

「んなっ⁉︎」

一夏が凄まじい速度でレーゲンとリヴァイブの間に入り、雪片でワイヤーを斬った。

「クソォォォォ!」

ラウラはレーゲンに搭載されている全てのワイヤーを射出し、一夏を狙う。一夏はハイパーセンサーと自分の勘を頼りにそのワイヤーを全て避ける。一夏のことを素人だと思ってるラウラは激昂する。

「貴様如きにいィィィィ‼︎」

「おっと、今お前を相手してるのは俺だけじゃないぜ?」

「何⁉︎グアッ‼︎」

一夏に集中していたラウラの背後で爆発が起こり、ラウラの姿勢を崩させた。その理由はシャルルがスナイパーライフルを使ってレーゲンを攻撃したのだ。

「貴様ァァァァ‼︎」

AICを使い、シャルルの動きを止め、レールカノンを撃とうとするラウラ。しかしシャルルは余裕の表情だ。

「ごめんね。僕達の勝ちだよ」

「何を言って…ッ⁉︎」

ラウラは気付いたが、もう遅い。シャルルにAICをかける為に集中していたラウラの背後で、一夏は雪片弐型のエネルギーチャージを済ませていた。

「これで終わりだァァァァ‼︎」

レーゲンのシールドエネルギーはゼロになり、一夏&シャルルの勝利となる…

 

クソッ!私はこんなところで負けるわけには…

『力を欲するか?』

何?貴様は何者だ⁉︎

『汝、力を欲するか?』

…そうだな。よこせ、アイツを倒せる…比類なき最強の『力』を‼︎

Damage Level_______D.

Mind Condition_______Uplift.

Certification_______Clear.

 

《Valkyrie Trace System》_______boot.

 

「う、ウアァァァァ‼︎」

「「ッ⁉︎」」

レーゲンが徐々に変形し、ラウラを包んで行っていた。

「(また厄介な事になりやがった!しかもあの形…)」

レーゲンだったものが変化したのは…現役時代の千冬を模した()だ。その手に握られている雪片が鈍く光る。

「……」ギリッ

怒りで頭に血が上りそうなのを、歯をくいしばって耐える一夏。

「そういえばお前、千冬姉に憧れてたっけなぁ…だけどな!」

箒やシャルルが止める間もなく、一夏は偽千冬に急接近。雪片弐型を振り下ろした。当然偽千冬はそれを受け止めるが、流れるように放たれた一夏の回し蹴りによってアリーナの壁に叩きつけられた。

「まんま複製(コピー)してんじゃねえよ‼︎それにそれは所詮機械だ!機転の良さなんてもんは生きてる人間しか出来ねえ!全部機械任せのくせに、千冬姉の形を使うんじゃねえ!!!!」

今の蹴りは結構本気でやったが、偽千冬は効いたそぶりを見せず、悠々と立ち上がった。ここで一夏は考えを変える。自分だけで撃破しようとしたが、それには少しシールドエネルギーが心許ない。だが、機械の複製したものとはいえ相手は世界最強の千冬。シャルルでは援護はあまり効果が見込めない。。そして後ろに箒という庇わなければいけない存在がいる中、一夏も暴れられない。となれば…

「(また時間を稼ぐしかないか…)」

 

「…レベルDの警戒体制を、全教員は生徒の避難を優先」

「了解しました」

千冬の指示を麻耶が全教員に伝え、アリーナのシールドレベルを引き上げた。

「…仕方ない。今の櫻井に負担を掛けたくなかったのだがな…」

千冬はそう言って通信回線を開く。

「櫻井、ボーデヴィッヒのISが暴走した。ボーデヴィッヒを救出してくれ」

『…了解した。あと千冬、少し頼みたいことがある』

「?なんだ」

『現在、座標MP24にいるドイツ軍に、お帰り願う様通信を送っておいてくれ』

「何⁉︎ドイツ軍がだと⁉︎」

千冬の叫びを聞くとすぐに麻耶がキーボードを打つ。

「ッ⁉︎櫻井君の言う通り、ポイントMP24にドイツ軍のISを30機以上を確認‼︎」

「…情報の抹殺と言うことか…了解した。一応やってみる」

『頼んだぜ』

 

「はぁ…やっぱり何かあったな」

エールストライクを駆り、アリーナへ向かって飛ぶ一樹。ラウラのISを見るとすぐに表情を変えた…

「おい一夏。アレって俺の記憶違いじゃなかったら…」

「ああ、あれは千冬姉の偽物だ」

冷静に返す一夏。一樹が来るのを待っているあいだ、深呼吸をして落ち着いたようだ。

「んじゃ、始めるか…とはいえ実質千冬が相手で中のボーデヴィッヒも救出しなきゃなんねえのはしんどいな…一夏、悪いが手伝ってくれるか?」

「おう、任せろ」

「僕も行くよ」

シャルルも一樹と一夏を手伝おうとするが、それを一夏が止める。

「悪いシャルル。今回は俺ら2人にやらせてくれないか?」

「え…」

「千冬姉の動きをコピーした機体なら、2対1が丁度良い人数だ。3人は多すぎる。シャルルは箒を安全な場所へ」

一夏がシャルルを説得しようとするが…

「なぜ貴様なんかを一夏が手伝わなくてはならない‼︎」

箒が、それを許さなかった。

「貴様は一夏の護衛役とやらでこの学園に来たのだろう⁉︎貴様一人でどうにかしてみろ‼︎この人殺し‼︎」

「ッ‼︎」

“人殺し”の言葉に一樹がピクッと反応するが、すぐに冷静さを取り戻した。

「…一夏、その2人を連れて逃げろ。ここは俺がどうにかするから」

「おい一樹!お前はまだこの間の怪我が「一夏‼︎‼︎」ッ⁉︎」

「大丈夫だから…連れて行ってくれ…頼むから…」

「…」

一夏が止まると、一樹はすぐに偽千冬に向かって突出する。ビームサーベルを抜刀し、雪片と鍔迫り合う。偽千冬が蹴りを放つも一樹はシールドで受け止め、逆に蹴り返す。2人の距離が離れ、再び接近してくる偽千冬に一樹はビームライフルを撃つ。もちろん、中のラウラを攻撃しない様気を付けて…しかし、後ろに未だ動かない一夏達がいるからか、下手に動けず、全力で戦えない一樹。

「クソッ!流石に動きが制限されてる状態じゃ千冬は辛いな」

ビームライフルでひたすら牽制し、なんとか偽千冬を近づけない様にするので手一杯な一樹を見て、一夏は…

「シャルル…箒を連れてってくれ」

「分かった」

「一夏!お前はどうするつもりだ⁉︎」

「決まってる…一樹の援護だ‼︎」

箒が何か言う前に一夏は飛び出す。シャルルが念のために牽制用のマシンガンを一夏に向かって投げる。一夏はそれを受け取り、瞬時加速で一樹に近付いた。

「一樹!大丈夫か⁉︎」

マシンガンで偽千冬を牽制する一夏。

「…一夏…お前…篠ノ之は?」

「アイツの言ったことは気にすんな‼︎俺が助けたいから助けるんだ!」

「…助かるよ。じゃあ、一緒にアレを倒すぞ」

「了解だ‼︎」

まずは一夏が突出。雪片同士で鍔迫り合い、偽千冬の動きを止めると、ニヤリと笑う。

「今だ!一樹‼︎」

「分かってるよ‼︎」

すぐさま一樹が偽千冬の後ろに回り込み、ビームサーベルで少し腹部を斬りつける。偽千冬は一樹に気づくと、両者をまとめて斬ろうとするが、なんと2人は背中合わせでバレルロールと言う離れ業でその攻撃を避けていく。

「一夏、シールドエネルギーはあとどれくらいだ?」

「さっきの試合で零落白夜を2回使っちまったから後…20%ってところだ」

バレルロールしながら会話と、2人のコンビネーションに管制室で見ていた千冬と麻耶は驚きを隠せなかった。

「な、なんという技術だ…」

「私達でもアレは出来るかどうか分かりません…」

しかし、驚くのはまだ早い。

「20%か…念のためエネルギーチャージするか。ほらよ一夏」

ストライクの背中のケーブルを、白式の背中のジョイントに繋げる。要するに、バレルロールしながら白式をストライクの熱核タービンエンジンで充電しようと言うことだ。

「ありがとな、一樹」

それを簡単にこなす2人に千冬達は言葉を無くしていた。

 

「ん、とりあえず約80%充電出来た。これなら安心して零落白夜が使える」

「あいよ」

白式のエネルギーが80%になったところで充電をやめ、まずは一樹が突出。右腰のアーマーに仕込んでいたコンバットナイフ“アーマーシュナイダー”で亀裂の入っていた偽千冬の腹部を更に攻撃。

「でぇぇぇりゃぁぁぁ‼︎」

怯み、後ろに下がったところを零落白夜を発動した一夏が両断した。

「うおぉぉぉぉぉ‼︎」

偽千冬の中からラウラを救出した。

 

「な、なんという技量だ…アイツはどこでアレを覚えたと言うのだ?」

一夏の技量に1番驚いているのは家族である千冬だった。そこに、麻耶の悲鳴があがる。

「大変です織斑先生!例のドイツ軍のIS部隊が武装してこちらに近付いてきます!」

「何だと⁉︎」

管制室の会話を開放回線(オープン・チャネル)で聞いていた一樹と一夏は顔を見合わせ…

「…今回は流石に下がってくれ一夏。ボーデヴィッヒの件の方を頼む。俺はあの分からず屋共を片付けてくるから」

「ああ…気をつけろよ?」

「…お互いにな。じゃあ行ってくる」

ストライクのスラスターを全開にし、ドイツ軍のIS部隊へ挑む一樹。飛びながら千冬に通信を送る。

「1人はそっちに蹴飛ばすから情報の引き出しを頼む」

『…了解した。相手は正規の軍人だ。気をつけてくれよ?』

「大丈夫だ。本当に強い軍人ならそもそもここに喧嘩を売りに来ない」

会話しながらライフルを乱射、IS部隊の射撃武装を次々破壊していく。が、流石に30機以上に挑んでいる為、少しずつ一樹が押されていく。その時、数機のISからミサイルが撃たれ、一樹の進路方向で上下から逃げ場の無い様にされた。

「その程度!」

一樹はその場で体全体を起こして急ブレーキをかける。ミサイルは一樹の眼前で爆発。一樹を落としたと思って油断しているIS数機をビームライフルを撃ち、シールドエネルギーをゼロにさせる。そして急降下し、海寸前のとこで、背後からのビーム攻撃を避けていく。正面に回り込んできたIS3機が、今度こそとミサイルを30発以上撃ってくるが、一樹は足で海を蹴り、人為的に波を起こす。ミサイルは波にぶつかり、一樹に当たること無く爆発、驚きに動きが止まっている3機を、ビームサーベルでシールドエネルギーをゼロにし、3人とも抱え、IS学園管制室前のトランポリンへ投げた。IS部隊は負けを悟ると撤退して行く。一樹もそれは追おうとしなかった。

「どうして…戦争の火種なんか作ったんだ…」

戦闘に勝利したのにも関わらず、一樹はしばらく動けなかったのであった…




戦闘描写ェ…

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