人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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覚えてくれてる方はいらっしゃいますかね…?


Episode143 日常ーエブリデイ・ライフー

ー戦争?ー

 

 

「弾…お前には負けない」

「上等だ…俺も容赦しねえぞ」

 

鬼気迫る表情で睨み合う一夏と弾。

お互い1歩も下がらないという、代表候補生達すら間に入れない気迫を発して、いざ!

 

「「その肉はいただいたああああ!!!」」

 

ホットプレート上の肉目掛けて箸を動かす…

 

「同じもの取ろうとすんな行儀悪いだろうが」

 

ゴチンッ!!!!×2

 

「「イッテェェェェ!!!!」」

 

冷静に一般的な作法を指導する一樹の鉄拳に沈んだ。

痛みに悶える2人を他所に、一樹は苦笑を浮かべている雪恵とセリーに肉をよそう。

 

「馬鹿2人は気にせずに食べてくれ。正直食い切れるか微妙だからな」

「それならなんで箒ちゃん達呼ばないの?」

「飯にアイツら呼んだら、せっかく真島のおじさんがくれた肉が無駄になる」

「……否定出来ねえ」

 

痛みから復活した一夏も同意する。

なお、今でも部屋の扉をドンドン叩いてるお馬鹿がいるが、間もなく一樹がメールした千冬に連行されるだろう。なお、文面は【やっとまともに飯食べられそうな状況を邪魔するのいるんだけど、俺達が燃やしていい?】だ。

急げ千冬。IS学園に人型の炭が量産される前に!

 

「セリー、タレにニンニク初入れだけど、味はどうだ?」

「もう、最っ高!!」

「良かった。ただ、食べ終わったらいつもより念入りに歯磨きしような」

「ふふふ…私には()()という手がある!」

「ダメです。ミントにそろそろ慣れなさい」

「そんな!?」

「流石にその見た目でお子様用歯磨き粉はそろそろダメです。弱めのでいいからミント慣れなさい」

「ミントはスースーするから嫌い!別にお子様で良いもん!今までのが良い!見た目が理由ならもっと縮むもん!」

「何気に高いままなのでダメです!せめて雪と同じのにしなさい!そして縮んだらここにいれなくなりますよ!」

「うっ……それは嫌だ……ミント頑張ります……」

「よろしい」

 

これまでずっとお子様用歯磨き粉を使うか、炎で消毒というチートを使っていたセリー。

意外と値段が嵩むので、今のうちにと雪恵に相談されていた一樹。

苦手なミントを使いたくないセリーだが、2人といれなくなる事の方が問題なので、今後頑張って克服するだろう。

 

え?辛い物苦手な一樹はどうなんだって?

 

徹夜で仕事するために取りすぎて慣れてしまったそうな。

もちろんそれを知った宗介達(それどころか理香子を含む他TOP7ガールズにも)に止められ、流石に徹夜作業することは無くなったのは別の話。

 

 

ー業務ー

 

やたらと現場にいるために忘れがちだが、一樹は世界トップクラスの大企業であるS.M.Sの頂点だ。

いくら外向きでは違うと言っても、当然然るべき業務はあるはずなのだ。

と言っても、戦闘能力はずば抜けて高い一樹だが、事は経営に関してはズブの素人だったりする。

それでも頂点にいれるのは、それだけのカリスマがあるのと同時に、他の現場部隊以上に現場参加してるからだろう。

例えば……

 

「マサ兄。最近張ってた組のヤクの取引の情報が入って、今夜潰しに行くんだけど、来る?料金はいつも通りで」

『分かった。とりあえず行くのは俺と『俺も行くでぇ!久しぶりの喧嘩や!絶対行くでぇ!』……聞こえたか?』

「ああうん、正直真島のおじさんは最初から頭数に入ってる……他の人教えて?」

『おう。とりあえず俺とシュウと……ウチの新人共連れてくわ。面倒はウチが見るから気にしないでくれ』

「りょーかい。あと、例のごとく潰したあとの奴らの再教育もよろしく。何かあったらメールなりなんなりちょうだい」

『もちろんだ。再教育が本来ウチのメインの仕事だからな…任してもらおう』

 

その夜…

 

「一応聞くけど…おじさん、この間の怪我は治ったの?怪我させた俺が言うのもアレだけど」

「問題無いで!むしろリハビリに丁度ええわ!」

 

ドスを片手に、ワクワクが止まらないと動き回る真島。

そんな真島の動きを見て、問題無さそうだと判断した一樹。

このようにいわゆる裏の人間と相対するときは、基本一樹+S.M.Sの誰か+真島組で対処する事が多い。今日の一樹の補佐は一夏だ。

 

「はじめまして。S.M.S防衛課所属の織斑一夏です。真島組の皆さんの足を引っ張ることの無いよう、今日は気をつけたいと思います」

「おう、挨拶ありがとうな。俺は真島組若頭のマサってんだ。こいつは補佐のシュウ」

「シュウと申します。どうぞよろしく」

 

真島組の苦労人2人と顔合わせをすると、一樹が真島を呼ぶ。

 

「おじさん、コイツが今世界を騒がしてる奴だよ」

「おおそうか!かず坊とは結構長い付き合いの真島吾朗や。よろしくな」

「織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

深くお辞儀する一夏に、感心した笑みを見せる真島。

 

「おお、礼儀正しい子やな。ウチの人間にも見習って欲しいわ」

「……まあ、おじさんのトコのメンツが礼儀正しかったら、それはそれで怖いけどね」

「「「確かに」」」

 

自己紹介を終えると、取り引き現場とされる倉庫の見取り図を見せる一樹。

 

「まあ、念の為の打ち合わせ。おじさんとマサ兄(&その部下)は正面から殴り込んで。シュウ兄には裏口から逃げ出そうとする奴らの確保。俺と一夏は動揺してる奴らの()()()殴り込むっていういつもの流れ。OK?」

 

全員が頷くと、シュウの部下が用意した車に乗り込み、現場に向かう。

 

 

結論を言おう。

取り引きはあっさり潰されました。

真島の顔は裏世界にも広く知れ渡っており、正面から突入した真島を見た瞬間、クスリが入ってるアタッシュケースを放り投げて逃走を計る。

そんな集団に、屋根から飛び降りて来た一樹と一夏が立ち塞がる。

相手が子供だと油断した輩を、それぞれの得物で瞬殺。

追い付いた真島達も加わり、ものの5分程度で掃除は終了。

念の為裏口を張っていたシュウ達の出番も無く、予定通りクスリのルートと、関連する組の情報を得れたのだった。

 

「ああ良いリハビリだったで。かず坊、どうや?この後いつもの焼肉屋でも行かんか?勿論織斑チャンも一緒に。奢るで?」

「行く」

「行きます」

「親父……また焼肉ですか……たまには鍋もええですよ。最近寒くなってきたし」

「お、せやな……かず坊、どっちがええ?」

「う〜ん、今日はマサ兄のオススメにしようかな。美味そうだし」

「よし任せろ」

 

マサに教えてもらった鍋屋さんは、とても美味しかったそうです。

真島組の頭や幹部との付き合いが長く深い一樹はこういう【掃除】の仕事はまず確定で行く。

補佐に他の人間をつけはするものの、危険な仕事であること(一樹や真島が暴れてるとそんな気はしないが)は間違いなく、一夏がIS学園に入学するまでの一樹のメイン仕事だったりする。

 

 

ーアサガオー

 

たまの休み。一樹はなるべく育った孤児院である【アサガオ】に顔を出すことにしてる。

子供たちや、一緒に遊んでるアサガオの番犬?ゴモラの元気な姿を見に行くのと同時に、普段アサガオを支えてくれてる舞を休ませるためでもある。

だが…

 

「はい義兄さん!どんどん食べてください!」

「……はい」

 

休むどころか、嬉々として次々料理を出してくる舞。とても一樹好みの味なので、食べること自体は全く苦ではない。

しかし前述したように、一樹がアサガオに来た理由は、普段激務である舞を休ませるためである。

 

「あの〜、舞さんや。今日アサガオ関連は俺がやるから、たまにはゆっくりと休んで…」

「私は普段結構休んでるんで平気です!それより義兄さんの食事を作ってる方が楽しいので良いんです!」

「……」

 

チラッ、と一緒に食べてる子供たちを見るも、凄い早さで目を逸らされ、我関せずを貫く姿勢であることを見せられた。

実際、年長組にメールで聞いてみたところ、やれる事が増えてきたので、舞の負担も大分減っているらしい。友人達と放課後軽く遊べてるのがその証拠だ。

それよりも、一樹が来ない方がどんどん体調が悪くなるらしく、今日もアサガオの年長者の1人が、S.M.Sに依頼メールを送ることでようやく一樹が来れたのだ。

連絡を受けた一樹が料金を支払おうとすると、たまたま本部にいた一馬によって処理され、一樹の溜まりすぎてる有給の消化がてら調整されたという。

 

「(今度、一馬には礼を言っとかないとなぁ)」

 

なお、この後一樹の知らないところで、アサガオの主要人物と、宗介達TOP7はメールアドレスを交換することになるのは別の話だ。

 

「…よし。舞!ご飯おかわり!」

「はい!」

 

一樹としても、この義妹の料理はかけがえの無いご馳走なのだ。

それで義妹が喜ぶのなら、それこそ喜んで頂くとしよう。

 

 

ー訓練ー

 

S.M.Sのメイン事業は、荒事の鎮静。

そのため、特に戦闘に関する訓練は厳しく行われている。

社長室で書類の片付けを一段落させ、訓練風景を見に行った一樹の目には…

 

「おい!この程度でくたばってんじゃねえ!これが現場だったら今頃テメェらはバラバラにされてるぞ!!」

 

倒れ伏してる10人程の訓練生を、鬼の形相で扱く宗介の姿が。

 

「か、勘弁してください宗介さん…こちとら、朝の6時からずっと訓練続きなんですぜ…」

 

尚、現在時刻は14時である。

訓練生の言葉を聞いて、更に怒鳴ろうとする宗介の肩を軽く叩く一樹。

 

「熱くなってるところ悪ぃな宗介」

「一樹…」

「書類、終わったんだ。提出先に失礼無いか確認してくれないか?ここは俺がやるから」

「…………分かった。テメェら、一樹の指示をキチンと聞けよ。でないと____」

「脅すな脅すな。ことS.M.S内において、俺の言うこと聞かない人はいないんだから。そうだよなお前たち?」

 

それはもう、残像が見える程首を縦に振る訓練生を一瞥すると、深く息を吐いて一樹に向き直る宗介。

 

「…それじゃ、コイツら頼むわ」

「おうよ。あと、あんまりやりすぎんなよ」

「…お前に苦労させないためだ。いくらコイツらに恨まれようとも、やめねえよ」

 

あえて厳しくしていた表情を解きながら、書類確認に向かう宗介。

そんな背中を見送ったあと、訓練生達の前にしゃがむ一樹。

 

「……ほんと、お前らには救われるよ。宗介達を嫌わないでくれて、ありがとうな」

「いえ……宗介さん達程ではなくとも、自分達もボスの役に立ちたいので…それに、ボスの役に立つ為に鍛えてくれてるのは、分かってるんで…すいません、不甲斐ない所を見せて…」

「そんなことはねえよ。なにせ、アイツらの鍛え方はアイツらと、横並びにさせる為のだからな。入ってすぐのお前らが、やれる訳無いんだ」

「…………」

「さて、あと15分程は動けねえだろ?とりあえず水分を取って、その後軽く腹に入れろ。俺が訓練を見るのはそれからだ」

「「「「すいません…」」」」

「気にすんな。とりあえず、16時には訓練を開始する。食後30分は開けてから来るように」

「「「「はい!!」」」」

 

訓練開始の時間を告げた後、社長室に戻る一樹。

缶コーヒーを片手に戻ると、宗介が書類のチェックを済ませたところだった。

 

「お?一樹か。アイツらはどうした?」

「休憩させてる。16時からは俺が面倒見るから、お前はそれ終わったら理香子と一緒に早上がりしな」

「いや、でも「命令だ」……分かったよ」

 

普段命令をしない一樹の、強い口調の命令に、宗介は渋々従う。

一樹は持ってた缶コーヒーを投げ渡すと、訓練部屋に戻ろうとする。

 

「わざわざ、お前らが敵にならなくて良いんだからな?」

「そっくりそのまま返すぞ。一樹」

 

宗介の声を、一樹は肩を竦めて受け流すと、訓練部屋に向かったのだった。

 

 

ーデートー

 

ある週末、一樹と雪恵は2人で街中を歩いていた。

所謂、デートである。

傍から見たら、全て雪恵が奢っているように見えるデートと言うのか怪しいところだが、実際は一樹が雪恵の口座に振り込んだお金なのはここだけの話。

 

「なあ雪、ちょっと行きたいところあるんだけど、良いか?」

 

そろそろ帰ろうか悩む夕方の時間帯、珍しく一樹が行きたい場所を告げてきたので、雪恵は驚く。

驚きはするものの、断る理由も無いため笑顔で頷く。

一樹先導の元、進んでいくと、小さな個人経営の喫茶店【夕顔亭】に着いた。

扉を開けると、「いらっしゃいませ」と可愛らしい声で店員が出迎えた。

 

「よぉ夕陽(ゆうひ)。久しぶりだな」

「か、一樹君!久しぶりだね!智希経由で元気なのは聞いてたけど、全然来てくれないから…」

「んま、色々あってな。それより紹介がまだだったな。俺の幼馴染の雪だ」

「田中雪恵です!初めまして!」

「初めまして!深菜川(みながわ)夕陽です!一樹君には色々お世話になってます!」

 

流石のコミュ力であっという間に仲良くなる2人。

席に案内されてから、雪恵が聞いてきた。

 

「ねえかーくん。夕陽ちゃんを名前呼びしてるって事はS.M.S関係者だよね?」

「お、おう。そうだけど…元カノとかって発想にはならないのか?」

「伊達にかーくんと付き合ってないよ」

「……流石。夕陽はさっき話にも出てた、智希の相方さんだ。アイツらも幼馴染コンビで…くっつくまでは苦労したなぁ」

 

遠い目で外を見る一樹に、何となく苦労具合を察した雪恵。

 

「……ボロクソ言ってくれてるとこ悪いけど、注文は決まったか?」

 

ブスッとした表情で注文を取りに来たのは、件の智希。

シンプルな紺のエプロンのTHE・喫茶店の店員スタイルの智希からのクレームを軽く流して、ホットカフェオレとホットレモンティーを注文する2人。

 

「ああそうだ。智希、今日は砂糖も頼む」

「ん?珍しいな。何かあったのか?」

 

普段、一樹はコーヒー系に砂糖を入れない。

それを()()付き合いで知ってる智希は、いつも通り砂糖抜きで出そうとしていたのだが…

 

「…このあと、学園に戻るから」

「理解した」

 

もはや阿吽の呼吸レベルの会話に、雪恵と夕陽は苦笑を浮かべるしかなかった。




どんなに時間が掛かっても、決して消失はしませんので、どうか、超気長にお待ちください…

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