とうとうウルトラマン関係無いゲームから登場させてしまいました。
ちょっと色々チャレンジし過ぎたかな…
「ねえ、本当に行くの?」
「何奈緒、怖いの?」
ある休日、奈緒はクラスメイト達とある心霊スポットに来ていた。
ホラーの苦手な奈緒はもう足がすくんでいる。
「大丈夫だって。こう言うのは大体ちょっとした事件が昔あって、それが大袈裟に伝わってるだけなんだから」
ホラー映画が大好きなクラスメイトはそう言うが…
【山にピクニック行こう】と誘われて来たは良いものの、行きの電車で近くのホラースポットを調べられ、今に至る。
「で、でも…火の無い所に煙は立たないって言うじゃん?」
「その火がちっちゃければ問題無い無い。さあレッツゴー!」
「うぅぅ…(雪恵ちゃんから貰った御守り、しっかり首にかけてよ…)」
それが後に、彼女を助ける事になる。
「雪、奈緒にピクニックに誘われてたのに行かなかったのか?」
「だってかーくん仕事じゃん」
「…たまには羽伸ばしてきてええんやで?」
「何故にエセ関西弁?」
まるで秘書のように隣に立っている雪恵に呆れる一樹。
「あのな、確かに雪はS.M.S所属だけどさ…書類仕事までやらなくて良いんだぞ?」
例の如く神速のキーボード捌きで書類を片付けた一樹が椅子に寄りかかりながらそう言うと、雪恵はそんな一樹の前にコーヒーを置いた。
「んー。なんか、秘書っぽいことがやりたかったんだよね」
「言いたい事はなんとなく分かるけど、最近俺の中で秘書って余計な仕事増やす脳筋の印象が強いからやめて」
「それどこの紫鬼人?」
過保護なTOP7により、一樹の本日の業務はほぼ終わっている。久しぶりにアサガオにでも顔を出そうか悩んでいると、懐のスマホが鳴り出す。
「へ?奈緒?」
「珍しッ!」
アイコンタクトで雪恵に出る事を伝えると、タップして耳元に当てた。
「もしもし、どうした?」
『一樹君!友達を助けて!』
「…詳しく聞かせてくれ」
奈緒の話を要約すると…
・友達と山にハイキングに来てた。
・ホラー好きの友達が近くのスポットを見つけた。
・そのスポットに着き、しばらく歩いてたら変な声が聞こえ、気付いたら友達が消えていた。
「…何て山だ?」
『雲隠山!』
「…はい?」
『だから雲隠山!!』
奈緒の言う山を念のためパソコンのマップに表示させる一樹。そして…
「奈緒、ちなみに体力はまだ大丈夫か?」
『え?大丈夫だけど…』
「んじゃ、今からスマホに送る場所に行ってくれ」
『どこ?』
「隣の霧隠山にある村だ。その村で医者をしてる山野って人に櫻井一樹の紹介だって言えば通じるようにしとく。すぐ行くからそこで待っててくれ」
『わ、分かった…』
そこで通話を終わらせ、急いで山野に電話すると格納庫に向かって走り出す。
「悪い雪!ちょっと行ってくる!」
「気をつけてね!」
「やあ、君が西田さんだね。彼から話は聞いているよ。さあ入って入って」
「お邪魔します…」
「大した物は出せないけどね。冷たい麦茶はいるかい?」
「…頂きます」
一樹の指示通り、霧隠山村に来た奈緒。
村唯一の医者らしいこの老人に、奈緒は妙なものを感じていた。
「(なんだろう…上手く言えないけど、他の村の人とは何か違う気がする)」
「お待たせ。さて、彼からおおよその話は聞いてるけど、当事者である君の話も聞きたい。話してもらえないかな?」
違和感を感じるものの、害意は感じないので、一樹に話した事をそのまま話す奈緒。
話が終わる頃、外で大きな音が聞こえた。
「お、彼が来たようだね」
音に驚く事なく外に出る山野。
その後に奈緒が続くと、丁度一樹がVF-25Fから降りてくるところだった。
「お待たせしました。山野さん、どうでした?」
「君の言う通り、彼女の友人はあの山の伝説の存在に攫われてる可能性が高いね」
「伝説?」
一樹と山野の会話についていけない奈緒。
説明を求める視線に、一樹が先に気付いた。
「奈緒から連絡を貰った後、仲間に雲隠山について調べて貰ったんだ。そのホラー好きの友人も言ってたと思うけど、そういう心霊スポットってのは、墓場か過去の悲惨な事件が起こった場所だって相場は決まってる。んで、今回は後者だって訳だ」
「なるほど…それで、その伝説って?」
「ざっくり言うと、昔の哀しい恋愛話だな」
「…もうちょい詳しく」
あまりにざっくりしすぎる一樹に、奈緒は頭を抱えそうになりながら詳細を求めた。
「あいよ」
次は詳しく話してくれた。その内容は…
その昔、雲隠山にはある大名が城を構えていた。
その大名には、とても美しい1人娘がいた。
その娘…音姫は笛を愛していたそうで、その音色は城内で働く人々の癒しであったそうだ。
大名は音姫をたいそう可愛がり、その時代には珍しく、自由に生活させていたらしい。
そんな音姫が恋をした。
相手は領内の足軽。
流石の
その条件は次の戦、最前線で戦って帰ってくること。
首を取れと言わなかったのは、足軽の持つ刀では首を取れないと判断したからである。
そして、足軽であるその男は帰ってきた。
その後も大名の出す課題を次々とこなしていった男は、遂に馬大将まで登り詰めた。
次の戦の結果次第で、侍大将に任命と共に音姫との結婚を認めると大名に言われた男は、張り切って、しかし冷静に出陣した。
そして…帰ってこなかったのだ。
「…哀しいお話だけど、戦で死ぬ事は当時では珍しくなかったと思うんだけど」
「これが奈緒の言う通り、男が戦で死んだのならこんな事にはならなかったろうな」
「…まさか」
「そう、男は戦で敵に殺された訳じゃない。いつの時代にもいる、成功者を妬む奴に暗殺されたんだ」
その戦において、男は課題をこなしただけでなく、敵将を討ち取る(課題は敵軍の侍大将等格上なら1人、馬大将等同格なら2人討つ事)活躍を見せていた。
敵将を討ち、これでやっと音姫と一緒になれる…と感慨深く思っていると、同年代の戦目付が話しかけてきた。
よくやった。これで俺は侍大将になれる。
その言葉の後、戦目付は男に刀を抜く暇を与えずに首を刎ねた。
その戦目付は、男が現れるまでは出世頭であった。
そして、大名が音姫の結婚相手の候補に考えていた者でもあった。
それ相応の家に生まれていた戦目付は、このまま自分と音姫は結婚し、国が自分の者になると予想していた。だが、音姫はそこらの足軽に惹かれ、大名もその足軽を認めていく始末。
タチの悪い(戦目付にとって)ことに、その足軽はどんどん実力で出世していき、気がつけば自分と同格にまで並ばれてしまった。
当然面白くない戦目付は、足軽を始末する事にした。
しかしこの元足軽、勘やら運が良いやらで、中々始末出来ない。
苛々していた所、とうとう次の課題をこなしたら音姫と結婚を認めらるというではないか。
しかしこれはチャンスでもあるのを戦目付は知っていた。
人は悲願を達成出来ると確信した時、大きく油断する…
その結果、先に話した通り元足軽は殺されたのだった。
元足軽を斬り殺した戦目付は、苦労して取り戻したという
音姫は泣き崩れ、大名は残念がった。
戦目付は元足軽の訃報を知らせてくれたのと、
「…正確な記録に残ってるのは、ここまでだ」
「…え?」
「この目付頭になった男、いつか自伝書を残すつもりだったらしくてな。記憶に残ってる内に書くって考え方のおかげでここまで詳しく分かったんだ。しかも何年何月何日まで書かれてるし」
「…暗殺がバレるかもとは思わなかったのかな?」
「原文は相当自信に溢れてる文だったからな。頭の良いバカって奴だったんだろ。歴史家的には大助かりだけど。んでここからは諸説あるんだが、1番有力だと思われる話をするぞ」
まあ、本当は山野から聞いた話(その頃には既に霧隠山にいたとのこと)なので、事実なのであるが。
「戦目付改めて目付頭なんだが、任命されてすぐに死んでる」
「それは…暗殺?」
「それか、呪い殺されたか…って当時は推測されてる。死に顔が、恐怖に引き攣った状態だったらしい。けど、戦いの実力は元々出世頭だった事もあってかなりのレベルだったんだ。そんな人物が死ぬ程恐れる事って何だ?」
「……死者が、蘇った?」
「そんなところだろうな。そんで、目付頭が死んだ後、とある地点付近に立ち寄った人が次々行方不明になってる。しばらく経てば見つかるが、その地点ってのが…」
「元足軽が、殺された場所…?」
「正解。流石、IS学園生徒ってとこかな」
俺はそんな速くに察する事は出来ない。と苦笑する一樹だが、奈緒に言わせれば一樹の方が優れていると思うのだが、コレは世間の評価方法が一樹の能力と噛み合わないためだろう。
「長々と語ったが、雲隠山の歴史はこんな感じだ。そんで、奈緒の友人を攫った犯人が誰かは大体分かるだろ?」
「…元足軽の、怨念?残留思念?」
「そのどっちかであるのは間違い無いな。ところで、何で奈緒は助かったのか分かるか?家柄?」
「まさか。私の家は普通の一般家庭だよ。それこそ雪恵ちゃんは?私は雪恵ちゃんから貰ったお守りのお陰だと思ってるんだけど…」
そう言いながら、雪恵から貰ったお守りを一樹に見せる奈緒。その瞬間、一樹が頭を抱えて蹲っていた。
「ど、どうしたの一樹君?」
「いや…帰ったら雪に感謝すれば良いのか説教すれば良いのか悩んでるところ」
雪恵が奈緒に渡していたお守りは、一樹が【繋がり】を切っててもいざという時居場所が分かるよう光の力をそれなりに込めた物だ。
メタ・フィールドでもダーク・フィールドでもISのセンサーで感知出来るが、もしセンサーの効かない所に連れ込まれたら…と一樹が危惧して制作していたのだ。
「…うん、やっぱ帰ったらめちゃくちゃ説教しよ」
「…それ、却って雪恵ちゃんの
「そん時は放置だ」
「鬼だ…鬼がここにいる…」
「俺は清めの音は出せないぞ?」
「違うよ!?」
「なら太陽の下を歩いても全然平気だぞ?」
「だから違うって!!」
緊張感の無い一樹に、ツッコミを入れている内に、霧隠山に来てからずっと続いていた震えが収まった奈緒であった。
『ヒメサマ…ドコニオラレルノデスカ…カナラズ、カナラズミツケマスゾ…ヤクソクノタメニ』
姫との約束の為に、元足軽は死後数百年経った今も、現世を彷徨う。
最後に会った姫と同じ年代の娘を攫い続けるのは、いつか姫が見つかると信じているから。
しかし…姫は、もうこの世にはいない。
彼はそれを知った時、どうなるのだろうか。
姫と勘違いした女性達の解放は、年を重ねる毎に遅くなっている。
このままでは…彼は、彼女達は救われなくなってしまう…
「んじゃあ、俺はその地点に行ってちょいと奈緒の友達連れてくるわ」
『近所のコンビニ行ってくる』の様な気軽さで言う一樹に、奈緒は一瞬付いていけなかったが、言葉の意味を理解すると、慌てて一樹を止めようとする。
「ちょっ、ちょっと待って一樹君!」
「おろ?」
「おろ?じゃない!幾ら一樹君でもこんなオカルトみたいな現象は簡単に解決出来ないでしょう!?それに私はどうすれば良いの!?」
「(オカルトみたいな存在と一体化し、なんならもっと恐ろしいモノと戦ってますけど…)ちょっと俺の所属してる会社は色んな…そりゃもう色んな問題を解決せにゃならん場所でな。この手に関する知識も下手な自称専門家よりはあるんだわ。それと、奈緒は雲隠山で山野先生とある物を探して欲しい」
「あるモノ?」
「話に出てきた姫と、ゆかりのある物をだ。そんで、その物に込められてる姫の【想い】で、元足軽を連れて行って貰う。いるべき場所にね」
「…分かった」
奈緒と別れた後、一樹はその地点に立っていた。
まだ正午を少し回ったばかりなのだが、既にそこは薄暗い。なるほどオカルトスポットと言われる事はある。
「……」
懐からエボルトラスターを取り出すと、反応を見る。
ト…クン
微かに、本当に微かに反応を見せた。
その反応を頼りに、その周囲を散策する一樹。
そして…
「…ここか」
側から見たら、ただ太い大木があるだけだが…一樹はその大木に向けてブラストショットを撃った。
すると、時空の歪みが現れ、一樹はそこに飛び込んだ。
『ココニハイラッシャイマセンデシタカ、ヒメサマ…ヒメサマトノヤクソク、カナラズハタシマス…
ココニイナイノナラ、マタサガシニイクマデ…』
「…色んな
元足軽が作った異次元空間に入った一樹。S.M.S製の上着を着ていても感じるジメッとした空気に、ため息を吐くと、先程より強く反応する様になったエボルトラスターを服の上(下手に落とすと2度と手元に戻って来ない可能性もあるため)から触れながら、異次元空間を進む。
反応が強くなるにつれ、特性上着を着ていても寒さが抜けなくなってきた。
「…急がないとヤベェな」
特性上着を着てる一樹ですら寒く感じるのだ。
早く対応しないと、普通の人なら凍えてしまう。
冷や汗を流しながら進む一樹。
異次元空間を進めば進む程、寒気が強くなる。
それは、
「…見つけた」
捕らわれた人々を見つけた一樹。
寒さに耐える為に、全員で固まっている。何か、そういう知識を持った人物がいたのだろう。後は、皆をこの空間から逃すだけだ。
「ッ!?」
一樹が拐われた人々に近づこうとした瞬間、背筋が凍る程の殺気を感じた。
咄嗟に前に飛び込んだ一樹。間一髪、紫の波動弾を避ける事に成功した。
『ヒメサマヲサガスジャマハ、サセナイ…』
一樹を攻撃したのは、右腕に大砲を生やした、猫背の落武者。髪が長く伸び、般若の面の様な顔で一樹を睨んでいる。
ブラストショットを握りながら、切なげな表情で一樹は落武者___ヤクシャに告げる
「あなたはもう、数百年前の…歴史の人だ。姫様はもう、死んでる」
『シンデル、ダト…?バカナコトヲイウナ!キサマモ、アノヒキョウモノトオナジカ!ワレラヲヒキハナソウトスル!』
そう叫ぶと、ヤクシャは周囲の人魂を吸収し巨大化。一樹を踏み潰そうとしてくる。
「……」
切なげな表情のまま、一樹は踏み潰された…様に見えた。
《…?……!?》
「シェアッ!!」
ヤクシャの足を押し除けながら、ウルトラマンが光に包まれて現れた。
どこか薄暗いこの異次元空間で、ウルトラマンの光が、一際輝いて見えた。
《ジャマヲスルナァァァァ!!》
右腕の大砲から波動弾を撃ってくるヤクシャ。
「シュッ!ハッ!」
それをアームドネクサスで迎撃するウルトラマン。全て迎撃し終えると、マッハムーブでヤクシャに急接近。ストレートキックでヤクシャを蹴り飛ばした。
「デェアッ!」
《グッ!?》
ヤクシャを拐われた人々から離すと、ウルトラマンは左のアームドネクサスに触れ、拐われた人々の頭上に向けて青い光線を放つ。
光線は人々全体を包むドームとなり、寒さと戦闘の被害から守る。
《オノレェ!》
「フッ!?」
激昂したヤクシャがウルトラマンに右腕の大砲を薙ぐように振るう。
ウルトラマンは素早く屈んで回避し、続けて放たれた左腕の攻撃は右腕で受け止める。
《ハッ!》
「グッ!?」
ヤクシャの右回し蹴りが綺麗に決まる。
一瞬怯むウルトラマンだが、右回し蹴りのお返しを決めた。
「デュアッ!」
《ウッ!?》
反撃の思わぬ重さに、ヤクシャが蹲る。
ウルトラマンはそんなヤクシャを掴むと、ドームから引き離す為に投げ飛ばした。
「デェアァァァァッ!!」
《アァッ!?》
「あの…山野先生は、一樹君とどういうご関係なんですか?」
一樹に頼まれた、姫とゆかりのある物を探す為に、山野と雲隠山の旧城跡に来ていた奈緒。
道中また同行者が居なくなるのじゃないかという恐怖があったが、妙に自信のある一樹の説得と、落ち着いている山野を見て大丈夫だと信じる事にした。
しかしそうなると、一樹と山野の関係が気になってしまう。
言い方は悪いが、都心部の大企業で働く一樹と、こんな電車に数時間乗らなければ着かないような田舎の医者に、接点があるとは考えにくい。
「うーん…実は彼と知り合ったのはつい最近なんだよね」
「はい!?」
まさかの言葉に驚いていると、山野はクスッと笑ってから続けた。
「実はとある毒に僕は蝕まれていてね。その特効薬を彼は用意してくれたんだ」
*毒=宇宙製のえげつないモノ
*特効薬=ゴルドレイ・シュトローム
「へえ…本当に色々やってるんですね」
山野のぼかしにぼかしまくってる答えでも納得した奈緒。
ぶっちゃけ、一樹に秘密が有りすぎるので適当な説明でも納得する事にしている。
いつか、話してくれると信じて。
「さて、僕と彼の話はここまで。早くゆかりのある物を探さなきゃ」
「あ、はい」
ウルトラマンとヤクシャの戦いは、波動弾と波動弾のぶつかり合いになっていた。
《喰らえ!!》
「フッ!」
ヤクシャの波動弾を右に飛び込んで回避した後、パーティクルフェザーを放つ。
「ハッ!」
《甘い!!》
対するヤクシャは、パーティクルフェザーを少し体を横に傾けるだけで対処すると、波動弾を2連射。
《次だ!》
「シュッ!」
ウルトラマンはサークルシールドでその攻撃を受け止めるが…
《甘いと言ってるだろう!!》
「グアァァァァ!?」
続けて放たれた3連射には耐えられず、先に放たれた2連と合わせて5連射分の攻撃をまともに喰らってしまった。
「グゥッ!?」
《ハアァァァァ…》
背中を強打し、動きが止まるウルトラマン。その隙に、ヤクシャは更に人魂を吸収。
両肩甲骨辺りから、鋭い爪を持つ腕が出現。ヤクシャ・ラージャへと進化してしまった。
「フッ!シェア!!」
それに対抗する為に、起き上がりと同時にジュネッスにチェンジ。
腕が生えてから獣の様に高速で暴れるヤクシャ・ラージャの攻撃を、マッハムーブを併用したバック転で避けるウルトラマン。
距離が出来たウルトラマンに向けて、ヤクシャ・ラージャは片膝で立ち右腕の大砲にエネルギーを込めると、巨大な波動弾として撃った。
《終わりだァァァァ!!》
「フッ!?シュッ!ハアァァァ…テェアッ!!」
波動弾が迫り来るのを見たウルトラマンは、素早くエネルギーをエナジーコアに集中させると、コアインパルスを放って波動弾の迎撃を試みる。
「ハアァァァァ…ハッ!!」
《なっ!?ガァッ!!?》
数秒のせめぎ合いの後、素早く威力が上げられたコアインパルスが勝った。
コアインパルスと波動弾、両方まともに喰らったヤクシャ・ラージャが大地に倒れる。
だが、まだウルトラマンに向けて殺気を放ったままだ…
《ヒメサマヲ…ドコヘヤッタァァァァ!!》
両肩から生えた腕の、鋭い爪がウルトラマンに迫り来る。
何とか爪の攻撃をアームドネクサスで受け止めるが、続けて振るわれた右腕の大砲を腹部に喰らってしまう。
「グッ!?」
蹲るウルトラマンの後頭部に、両肩の腕が振り下ろされた。
「グゥッ!?」
大地に叩きつけられたウルトラマンに、ヤクシャ・ラージャはサッカーのシュートの如く蹴り飛ばした。
「グアァァァァ!?」
ピコン、ピコン、ピコン…
この異次元空間の寒さも相まって、いつもよりコアゲージが鳴り始めるのが早い。
コアゲージが鳴り始めた事が、ウルトラマンにとって良くない事だと気付いたヤクシャ・ラージャが怒涛の連続攻撃を仕掛けてくる。
4つある腕が同時に襲いくる。何とか2つの攻撃は捌けたが、残り2つの攻撃は喰らってしまった。
なるべく殺傷性の高い攻撃を優先的に対応しているが、相手も場慣れしてる強者。
独特のフェイントをかけてウルトラマンの防御を掻い潜ってくる。
今、ウルトラマンに出来るのはあの2人が【想い】の込められた物を見つけるまで耐える事だけだ…
「【想い】の込められた物って何なんだァァァァ!!?」
ここまで耐えてきた奈緒がとうとう爆発した。漠然とした物を探しているのだから気持ちは理解出来る。
「うーん…駄目元で姫様に語りかけてみたらどうだい?」
山野もどこか疲れた表情で言う。
むしろ、奈緒より現状をよく把握している分、余計に疲れている筈だ。
しかし、今1番危険な場所にいる一樹の為にも急いで探さなければならないのも事実。
そんな山野の、聞きようによってはヤケクソにも取れる言葉に、奈緒は…
「それだ!!」
血走った目で、本当にヤケクソで叫んだ。
「ちょっと!!アンタの婚約者のせいで私の友達が大変な目に遭ってんのよ!!責任持って連れて行きなさーい!!!!」
「いや、そんな喧嘩口調で姫様が来る訳が___」
____それは、本当ですか?
「____出てきちゃうのかぁ…」
必死探していた物…姫が愛した笛が、どこからともなく光に包まれて飛んできた。
釈然としない山野の横で、笛を掴む奈緒。
「さあ!一樹君の所へ急ぎましょう!」
《ヒメサマヲ、ヒメサマヲドコヘヤッタァァァァ!?》
「グッ!?グァッ!!?」
本格的に寒さで体が動きにくくなってるウルトラマンに、積年の怒りをぶつけるヤクシャ・ラージャ。防御するのがやっとのウルトラマンだが、そろそろその防御すら突破されそうだ。
正直、何度か倒すチャンスはあった。
しかし、この手の敵はただ倒しただけでは魂がこの世に縛られてしまい、時が経ったら再び復活してしまう。
それを理解しているため、ウルトラマンはヤクシャ・ラージャを倒せなかった。
だが、ウルトラマンの体もそろそろ限界が近い。
ヤクシャ・ラージャは、弱くはない。昔話にある通り、数々の死線を潜り抜けている猛者なのだ。多少流してるとは言え、そんな猛者の攻撃を喰らい続ければ、ウルトラマンと言えど保たない。
《ヒキョウモノメ!ブシナラバショウメンカライドンデコイ!》
「グオッ!?」
ウルトラマンと己を闇討ちした戦目付が重なって見えているのか、どんどん攻撃が重くなっていく。
何度目かの叩きつけに、流石のウルトラマンも立ち上がれない。
「グッ、グゥッ…」
こうなってしまっては、何とかして一旦ヤクシャ・ラージャを倒し、復活するまでに対策を考えるしかないかとウルトラマンが思ったその時。
♪〜♪〜♪
《ム?》
「フッ?」
どこからか、優しい笛の音が聞こえる。
現代に普及している金管楽器のフルートの小鳥がさえずるような音色でなく、どこか雅な音色だ。
《コノ、ネイロハ…》
「……」
笛の音を聞き、背中の腕が消えるヤクシャ。
ヤクシャの落ち着いた様子を見て、ウルトラマンも事の成り行きを見守る事にした。
すると、光がヤクシャの眼前に現れ、彼が数百年も探し続けた姫の姿になった。
____ようやく、ようやく見つけましたよ。私の愛しい人。
《ヒメ…サマ?》
____さあ、行きましょう…私たちはもう、この世にいてはならない存在です。
ふとウルトラマンが辺りを見回すと、山野に連れられた奈緒が木製の横笛を吹いていた。
ウルトラマンの視線に気付くと、笛を吹くのをやめてピースサインをしてみせる奈緒に対して、山野は何とも言えない表情をしている。後でそれに着いては聞くとして、今はヤクシャを見守る事にした。
《ヒメサマ…オムカエニキテクレタノデスカ…》
ヤクシャの言葉に頷くと、ウルトラマンの方を向く姫。
____感謝します。光の人…私が来るまで、この人を倒さないでくれて。
姫の言葉に頷くウルトラマン。姫はウルトラマンに深々とお辞儀をすると、再度ヤクシャの方を向く。
____さあ、貴方が連れて来た人を解放するのです。
《カシコマリマシタ》
ヤクシャが姫にお辞儀すると、途端に異空間が消えた。
雲隠山の、かつて城があった所を見つめるヤクシャ。
____行きましょう。我々の、いるべき所に。
《…ヒメサマ、ショウショウオマチクダサイ》
肩上にいる姫をそっと下ろすと、ヤクシャはウルトラマンに向き直った。
《ヒカリノヒトヨ、ヒトツタノマレテクレナイカ?》
「…」
続く言葉を待つウルトラマン。そんなウルトラマンに、ヤクシャは右腕を元に戻しながら言った。
《ワタシト、ホンキデタタカッテクレ。ワタシヲ、センシトシテオワラセテホシイ》
「……」
《ワタシノミレンハ、ヒメサマトノヤクソクヲマモレナカッタダケデハナイ。ワタシノイキタジダイハカンタンニヒトガシヌジダイ。タタカイニマケテシヌナラマダナットクデキタ。シカシ、ワタシハミカタデアルハズノヒキョウモノニコロサレタ…ソレガイチバンノミレンナノダ》
「……」
ヤクシャの言葉を聞いたウルトラマンは、そっとヤクシャを見守っている姫に視線を向ける。
____私からもお願いします、光の人。彼を、終わらせてあげてください…
「……シュッ」
ヤクシャの、そして姫の願いを聞いたウルトラマンは静かに構える。
《…カンシャ》
戻した右手に日本刀を召喚し、ウルトラマンと対峙するヤクシャ。
両者が身構えたその時、一陣の風が吹いた。
「シュッ!」
《マイル!》
同時に駆け出す両者。
ヤクシャが刀を振るってくるのを屈んで避けると、ガラ空きの胴に正拳突きを当てるウルトラマン。
「ハッ!」
《グッ!?》
鎧の隙間に決まった影響か、ヤクシャは蹲りながら後退。しかし、その隙を逃すウルトラマンではない。
「テェアッ!」
《ガッ!?》
蹲っているヤクシャの頭部に跳び回し蹴り。
更に連続で左右の回し蹴りを喰らわせ、両肩の鎧を破壊。
《ソコダ!》
ヤクシャの反撃。何とかウルトラマンの蹴りを防御すると、上段から刀を振り下ろす。
「フッ!」
しかしその斬撃は、ウルトラマンが交差した両手で刀の柄を受け止めた事で不発に終わる。
更に…
「シェアッ!」
手首を掴まれ、大地に転がされる。
刀を奪われるオマケ付きで。
《クッ…》
素早く起き上がるヤクシャだが、既にウルトラマンは次の攻撃の準備を終えていた。
刀身を金色に光らせ、マッハムーブでヤクシャに急接近。目にも止まらぬ速さで振り下ろした。
ヤクシャの中央に金色の線が出来た。ウルトラマンは刀を捨てながらヤクシャを蹴って距離を取ると、両腕にエネルギーを溜める。
「フッ!シュッ!ハァァァァァ…フンッ!デェアァァァァ!!」
オーバーレイ・シュトロームがヤクシャの中央の線に命中。魂が浄化されている証か、ヤクシャから光の粒子が溢れていく。
《カンシャスる光の人。これでようやく、この呪縛から解放される…」
一瞬、ヤクシャの身体が強く光った。
禍々しい般若の顔の鎧武者は消え、済んだ人魂となった。
人魂は戦いの行方を見守っていた姫の元へと移動していく。姫はそれを愛おしそうに抱えると、自らも人魂の姿に戻って飛び出す。
2つの人魂がウルトラマンを周囲を軽く飛んだ後、天に向かって行った。
それを見届けた後、ウルトラマンは静かに消えていった。
「…そんな事があったんですね」
「コメントに困るだろ?」
「はい…今回は協力していただいてありがとうございます。本当に助かりました」
結界を逆刃刀で斬って解除した後、山野に事の成り行きを教えて貰った一樹。
奈緒が友人達に駆け寄っているのを見ながら、山野に協力してくれたお礼を言う一樹。
「困った時はお互い様さ。またいつでも遊びに来てくれ」
「そうします。今度は、雪達も連れて来ますよ」
「一樹くーん!友達紹介したいからこっち来てー!」
「ああ!今行くよ!」
その後、無事本部に帰った一樹のした事は…
「何か申し開きはあるか?雪」
「あの、かーくん?謝るからさ?その…縛るのは、やめてほしいかなぁ…」
一樹特性のお守りを勝手に奈緒に渡していた事のSEKYOUだ。
逃げないよう縛っているだけなのだが、何か目覚めそうな雪恵を見て、一樹は一言。
「…このまま数時間放置したらどうなるかな」
「やめて!!?」
ちょっとかーくんのS発言に目覚めかけたのは絶対に秘密です…By雪恵
最後ォォォォォ!
*ヤクシャとヤクシャ・ラージャの見た目に関しては【GE2 ○○】で検索検索ゥ!
*こういうタイプの話は難しいから次やるかは分かんない…