「織斑、櫻井、デュノアの面倒を見てやれ。同じ男だろ?」
千冬の言葉を聞いた一樹は信じられなかった。
「(コイツ…どう見ても女だろ)」
そもそも一夏がISを操縦出来ると分かった時点で、世界中で他に男性操縦者がいないか調べられているのだ。それなのに1ヶ月近く隠せれる訳が無い。
「君達が織斑君に櫻井君だね。よろしく。僕は…」
「あー、自己紹介は後で、ここは女子が着替えるから移動しないと」
一夏はデュノアの手を取って走り出す。仕方なく、一樹も走り出すが…
「いた!あの子が噂の転校生よ‼︎」
「者ども出会え出会え‼︎」
…いつからこの学園は武家屋敷になったのだろうか?
一夏とデュノアに女子生徒が群がる中、一樹はすんなり人混みを避けれた。
「…
演習ではセシリア、鈴が2人がかりなのに麻耶に滅多打ちにされた。
「やっぱりなんでオルコットが入試で勝てたのか分からん」
「ねえ櫻井君、僕と模擬戦してくれないかな?」
授業が終わり放課後、シャルルが一樹に話しかけて来た。
「悪いな。俺の機体、今壊れてっから下手に動かせれないんだ」
適当にでっち上げ、さっさとトンズラしようとする一樹。そこに一樹の携帯が鳴る。
「おっと、すまねえ」
「うん、出て良いよ」
教室から出るつもりだったが、仕方なく電話に出る一樹。相手は宗介だ。
「おう、久しぶりだな。そっちはどうだ?こっちは2人目の男性操縦者が来てホッとしてるところ」
『(近くに本人いるのか?なら一樹の言葉は気にせず報告だけするか)ビンゴだったぜ』
「え?あの店がセール実施中⁉︎それはマジか⁉︎」
『
「よっしゃ、なら今まで中々手が出せなかったアレが買えるな」
『命令したのは社長夫人、バリバリの女尊男卑思考の人だ』
「いやー長かったなぁ」
『社長は今回の件は嫌々だったんだが、押し通されたそうだ。しかも社長が本当に結婚したかったのは今一樹の目の前にいる奴の母…フランソワーズさんだったんだ。会社のために止むを得ずの結婚、所謂政略結婚だな』
「え?流れてる人数多い?なら人海戦術で解決しよう!そっちも呼びかけてくれ!」
『人海戦術?ってことはデュノア社買収して黒幕潰すか?』
「そ!」
『分かった!じゃあそう手配しておくぜ』
一樹の電話が終わるのを律儀に待っていたシャルル。
「悪い!俺ちょっとこれから色んな人に電話かけなきゃいけねえからまたな!」
「あ、うん…またね」
その週の土曜日、一夏と一樹は土日分の外泊届けを出し、久しぶりにIS学園の外に出ていた。一夏の家の掃除をしたあと、合流したのは…
「で、ハーレム満喫してますか?お二方さん」
2人の中学の同級生、
「弾、久しぶりに会って早々天に昇りたい様だな…」
いい笑顔(しかし目が笑ってない)の一樹がオーラを纏いながら弾に近づく。
「すいませんすいませんすいません許してくださいこのとおり!!!!」
すぐさま土下座する弾。ここは道路だとかそんな事気にしてる余裕は無さそうだ。
「一夏ならともかく、俺がIS学園生活を満喫出来ると思ってんのか?」
「…誠に申し訳ありませんでした」
中学時代の一樹の苦労を思い出し、再度頭を下げる弾。
「ったく、早く行こうぜ」
3人が向かったのはゲーセンだ。アーケードコーナーに真っ先に向かい…
「今日こそお前を倒すぞ一樹!そのためにコンボも練習したしな!」
「…マジ?俺コンボとか考えずがむしゃら押しなんだけど…」
「腹立つ腹立つ!なのに勝率8割とか腹立つ!」
「あのね?周りの方見てみ?俺以上の動きしてるからね?」
マ○ON機の周りで騒ぐ弾(二等兵)とそれを宥める一樹(上等兵)。分かる人は分かるが、本当にドングリの背比べ状態だ。一樹も身内にだけは強いが、こういうゲームはあくまでエンジョイ勢なので基本は『CPU優先』で遊んでいる。
「(マジ勢の足引っ張るのは嫌だからな…)」
そして迷惑とか考えず対人をやってボコられるのが弾だ。
「早く一樹!やるぞ」
「…お前、一夏(一等兵)にも聞けよ」
「一夏とは後でやる‼︎」
ため息をつくと、機械にカードを読ませてから100円を投入する一樹。店内対戦を選んで機体を選ぶ。
「(じゃ、いつも通りで)」
お気に入り機体に登録してあるおかげで第一に出てくる機体を選び、覚醒はE覚をチョイス。ステージ選択はランダムにしておく。
「よし!コレで行くぜ!」
弾も機体を選んだ。ステージと各々の機体が発表される…
一樹→ダブルオークアンタフルセイバー(E覚醒)
弾→ガンダムエピオン(F覚醒)
「ってまたお前はフルセイバーかよ!!!!」
「気に入ってるんだよ!!文句あっか!?」
まあ、多分に機体愛が入っている。ちなみに使いこなしきれていない。
「あの、お二方さん。騒ぎすぎてギャラリー集まってますよ?」
「「すいません初心者なのでそれは勘弁して下さい」」
対戦、スタート。礼儀として僚機には『回避』の指令を出すのを忘れない。
「まずは特射して追いかける!」
「エピオンに捕まるの怖いから逃げる!」
「あ、テメ逃げるな!それでも漢か⁉︎」
「金かけてるから簡単には負けたくねえんだよ!」
「ふざけんな!ってちょおま、ライフル連発ってああオバヒだ⁉︎」
「よっしゃサブからのBD格、下格!」
「ああああきりもみかよ!すぐ起き上がってコンボってゲロビ⁉︎」
「あ、避けるなこら!!!!」
「避けるわボケ!とにかくもうオバヒだろ!やっとコンボをって量子化⁉︎」
「氏ねやごらぁぁぁ!!!!」
「抜け覚!」
素人丸出しの図が完成、結果…
「勝ったぁぁぁ!!!!」
「負けたぁぁぁ!!!!」
一樹の勝利となった。その後、五反田食堂に移動。
「うみゃい!うみゃいよぉぉぉぉ…」
一樹が昼食として出されたカボチャ煮定食を涙を流しながら食べていた。
「…あの、一樹さんや、IS学園の飯はそんなにマズイのか?」
いつも以上に一樹のリアクションが大きいので、弾が恐る恐る聞いてくる。
「んにゃ。そもそも飯出されてないぞ」
ご飯をかっこみながら答える一樹。その言葉に呆然となる店内。
「…先ほどは重ね重ねすみませんでした」
一夏と一樹の待遇の差に、もう2度とハーレム学園と(一樹には)言わないと決めた弾だった。
「おじちゃん!ご飯と定食おかわり!」
「おう!たんと食え‼︎」
久しぶりのまともな食事に一樹は箸が止まらない。そんな所に…
ガラガラ
「ただいまー。もう部活とかめんどくさ…って一夏さん⁉︎」
弾の妹、蘭が帰ってきた。
「あ、久しぶり。邪魔してる」
「お、お久しぶりです…あの、全寮制の学校に通ってるのでは?」
「いやあ、久々にシャバの空気吸いたくてさ。家の片付けした後遊びに来たんだ」
「そ、そうですか…」
ちなみに蘭は中学時代から一樹の事は目に入った事は少ない。一夏との待遇の差に、流石の弾も注意する。
「おい蘭、今客は一夏だけじゃねえんだぞ。ちゃんと挨拶しないと品のない…」
言葉の途中で黙る弾。蘭の睨みはそれだけ凄みがあった。
「…何で言ってくれなかった」
「あ、言ってなかったか?す、すまんかった。あはは…」
「ふぅ…ご馳走様でした」
無視されるのは慣れているため、一樹は黙々と昼食を食べていた。食べ終わりの挨拶をして、漸く蘭は一樹に気づいた。
「あ、櫻井さん…お久しぶりです」
「お、久しぶり」
それだけ言うと、蘭は急いで自室へと向かった。
「…明日からまたろくに食えないって思うと泣けてくる」
「俺、行かなくて良かったな。うん」
「だろ?女子校に男子2人だけって結構しんどいぞ?力仕事は押し付けられるしトイレは少ないし、何より話す相手が少なすぎて辛い」
「まあそうだよな。一樹もずっと近くにいれる訳じゃないし」
「最近じゃ弁当が食べきれないって言う女子も増えてきたから本当たいへ「少しでも心配した俺が馬鹿だったよ‼︎」何でだよ!食べ物残すのは勿体無いって食堂の息子なのに教わってないのか⁉︎」
「オメエのはそういう次元の話じゃねえんだよ!自慢か?自慢なのか⁉︎」
「うだうだうるせえ馬鹿2人」
ゴンゴンッ!!!!
「「いってえぇぇぇ⁉︎」」
騒ぐ一夏の弾に一樹の拳骨が落ちる。漸く静かになり、食後のお茶が飲めるようになった。
「す、すみません。ここ、座っても良いですか?」
一夏の隣の椅子を指す蘭。その姿は先ほどの制服ではなく、白いワンピースとオシャレだった。
「おう、大丈夫だ。それよりその服、これから出かけるのか?」
「いえ、そういう訳では…」
その時、一樹には一夏の頭上に豆電球が見えた。
「分かった!デートだろ?」
「違います!!!!」
一夏の発言に、一樹と弾はため息をついたのだった。
月曜日の朝。教室に入る一夏は奇妙な視線を感じた。
「(何だろう?)」
一樹も教室の雰囲気が変なのを感じると、一夏から離れ、そこそこ話しやすいのほほんさんへと話しかけた。
「…なあ、この空気何?」
「えっとね〜学年別トーナメントで優勝すればおりむーと付き合えるって噂が流れてるんだ〜」
「…おっけー、大体把握した」
放課後、一夏に呼ばれた一樹は一夏の部屋にいた。理由は…
「…やっぱり、お前はスパイだったか…」
シャルル・デュノアが女だったと言うことだ。
「やっぱりって、気付いてたのかよ⁉︎」
「むしろ今まで気づかなかったことに俺は驚いてるよ‼︎なんだよこの学園‼︎」
一夏と一樹の漫才?を見て苦笑いするシャルル。
「大方予想はついてる。一夏からは世界初の男性操縦者としてのデータを盗みに、俺からはEX-アーマーのデータを盗みに、ってとこか?」
「うん。大体当たりだよ」
「俺はともかく、一樹の方のデータは何でだ?扱う人を選ぶんだぜ?」
「あのね一夏。櫻井君がいるとこは世界中のISが束になっても、多分勝てないよ」
「なんやて⁉︎」
「シールドエネルギーを一撃で消滅させ、コアごと破壊する…今、全世界で1番喧嘩売っちゃいけないとこ。って言われてるんだ…」
「お前、何者?」
「さあな」
とりあえず、データは盗まないが、とりあえず男装のままで過ごすことが決定した。その後シャルルは一樹の就寝部屋を見て、深々と土下座をしたのは別の話。
「ねえねえ!代表候補生同士で、模擬戦してるんだって‼︎」
「見に行こ見に行こ!」
「「ッ⁉︎」」
ある日の放課後、一夏とシャルルが校内を歩いていると、代表候補生同士が模擬戦をしているというのが聞こえ、嫌な予感がした為、見にいくことにした一夏。念のために一樹にメールを送っておいて。
「あ、あれは⁉︎」
一夏の目には、ISが解除されてもなお、セシリアと鈴を攻撃し続けているラウラがいた。
「止めろ!それ以上やったら…」
「ったく、なんでこの学園はこうも頭に血が上りやすい奴ばっかなんだ?」
一夏からのメールを見て、アリーナへ行こうとする一樹。しかし…
ドックン
「ッ⁉︎」
エボルトラスターの鼓動を感じると、すぐさま学園の外へ向かった。
「止めろォォォォ‼︎」
このままではセシリアと鈴が死んでしまう!近くにいた箒に千冬を呼ぶのを頼み、シャルルにはここにいてもらう様頼む。その後、白式を展開、ラウラの元へ全力で飛ぶ。
「フンッ!やはり素人だな。何も考えずに突っ込んで来るとは‼︎」
ラウラはそのまま、シュヴァルツェア・レーゲンに搭載されているAICを発動する。
「そんなもんに‼︎」
しかし一夏はとてもISを稼働させて1ヶ月とは思えないバレルロールで、AICの効果範囲から逃げていた。
「んなッ⁉︎」
「どけぇ‼︎」
その勢いのまま、ラウラを蹴飛ばし、セシリアと鈴から離す。2人を抱え、一夏はその場を離脱。シャルルに2人を預け、本格的にラウラと戦闘に入ろうとする…が、
『緊急事態発生、生徒は至急シェルターへ避難せよ』
またもや怪獣が現れた。
次は戦闘描写が入るので遅くなると思います。