翌日、机に一樹が突っ伏していた。昨夜は一夏が鈴との約束を違った解釈してた為に起こったことらしい…
「おはよ…ってどうした一樹?」
「この唐変木がァァァァ!お前のせいでこっちは寝てないんだゴラァ‼︎」
能天気に一樹に話しかけた一夏の胸ぐらを掴んで怒鳴る一樹。
「ちょ、どういうことだよ⁉︎」
「テメェが昨日凰と揉め事したせいでテメェの部屋の下の倉庫の荷物が崩れたんだよ‼︎それで片付けたのは用務員さんでも、教師でも無く、俺だぞ⁉︎あの馬鹿みたいな大荷物を、関係無いのに1人で片付けさせられたこっちの身にもなりやがれコンチクショウ‼︎」
あまりの早口で言っているのと、胸ぐらを掴まれたまま振り回されてるので、一夏には半分程しか理解出来なかった。
「ご、ごめん!今度何か奢るから‼︎」
「当たり前じゃボケェェェェ‼︎」
その後千冬が現れ、荷物片付けの件を聞き、教頭の嫌がらせであることが判明。一樹は「もう嫌だ!こんな仕事‼︎」と言ったのだった。ちなみに1組女子達が一樹を哀れんだのか、その後お菓子をあげていた(箒&セシリア以外)のは完全に別の話。
クラス別トーナメント当日、学園のほぼ全員がアリーナにいる中、一樹は必死でストライクの調整をしていた。
「PS装甲電圧575から378へ変更…電圧調整で得た残りの電圧を関節部の反応速度上昇へ使用。アリーナ材質を測定した結果、今の接地圧では危険と判断、万が一に備えて、接地圧合わせ…逃げる圧力を想定し、摩擦係数はアリーナの粒状性をマイナス09に設定…」
何故ここまで必死にしているかと言うと、こういう人が集まる時が1番敵に狙われやすいからだ。
「狙う可能性が1番高いのが…生徒の身内だしな…なお警戒しとかねえと」
「本当に謝る気は無いのね?」
「だからさ、理由を教えてくれなきゃ謝まろうにも謝れないって。約束ちゃんと覚えてたじゃねえか」
「だから意味が違うって言ってるでしょ‼︎」
「豚を使った沖縄料理の事か?」
「それはミミガー‼︎やっぱりアンタふざけてるでしょ‼︎」
ツッコミのキレは変わってないな鈴。
「クゥゥゥゥ!絶対許さない!」
「ま、それもこの勝負次第だ。行くぞ‼︎」
「上等よ!後で泣いて許してくださいって言っても許さないからね‼︎」
いや、まず負けたら生ゴミにされると思います。一樹に。
『試合、開始』
「これでもくらいなさい‼︎」
試合開始の合図が流れてすぐに、鈴は自らのIS、『甲龍』の主武装である『龍砲』を撃つ。最大の特徴は不可視の弾丸を撃つ事なのだが…
「おっと危ねえ!」
一夏には避けられていた。
「嘘ッ⁉︎ハイパーセンサーで認識したとしてもこの龍砲を躱すなんて⁉︎」
「今避けれたのは勘だったけど、おかげでどういう装備なのかは分かった!後はお前の視線さえ気にしとけば問題無いってね‼︎」
「クッ…でもこの龍砲を完全に把握したとは思わないことね‼︎」
対決が、始まった。
一夏、鈴の戦いを管制室で観ていたが…
「アリーナ上空に熱源多数!急降下してきます‼︎」
「何⁉︎織斑!凰!すぐにそこから離れろ‼︎」
「「え?」」
一瞬止まった2人のちょうど真ん中を一筋の極太ビームが通ったと思ったら、そこには謎のISがいた。
「な、何よアレ…」
『鈴、試合は中止だ。逃げろ』
敵に傍受されるのを恐れてか、
『何言ってんのよ一夏!アンタこそ逃げなさいよ‼︎』
『馬鹿!ここは
ドォン!
「やっぱり来た!セキリュティもロックされてやがる!このレベルのロックが出来るのは…
一樹は懐からブラストショットを取り出し、窓のシャッターを撃ち抜き、窓から飛び降りる。その勢いのままストライクを展開。装備は機動性を重視した装備、『エールストライカー』を選択する。背中に黒のベースカラーに赤いラインの入ったバックパック、左腕には『ソードストライカー』時よりひと回り大きいアンチビームコーティングシールド、右手に高出力ビームライフルを装備し、アリーナに向かって急ぐ。
『…本職に頼むのは分かったわ。だけど、生徒の避難時間を稼ぐのに私は残るわ』
「…」
一夏は小さく舌打ちする。彼にとって、正直鈴ですら足手まといになる確率が高い。専用ISを所持しているとはいえ、代表候補生はその国のアイドル的扱いをされている。そのため、基本荒事には関わらないのだ。
「(『荒事は俺たち男の仕事だ』って言っても、『何年前の話してんのよ!』って聞かねえだろうし…やべえな)」
と、一夏なりに考えた結果…
『一樹、聞こえるか?』
『聞こえてるが今そちらに急いでる。要件は手短に』
『(Ex-アーマーがISと同じ通信が出来て助かった!)了解。今、鈴に避難するよう言ったが聞き入れなかった…』
『代表候補生への責任感には敬意を表するけど…ハァ…しゃあない。一夏、お前が出来るだけ面倒見ろ。邪魔ならいっそ動けなくして管制室に投げちまえ』
『じょ、冗談ですよね?』
『面倒見ろはマジだ。龍砲を
『え?』
『こっちも相当数の敵さんの相手をしなきゃなんないんでな。通信終わり』
それを最後に一樹は通信を切った。
「(くそッ!やるしかねえ‼︎)なら鈴!俺が前衛に出るから鈴は後衛を頼む‼︎」
「やっとその気になったわね!良いわよ!やってやろうじゃない‼︎」
「織斑先生!私に出撃許可を!すぐに出られますわ‼︎」
「…この状況を見てみろ。アリーナでは3年生の精鋭たちが必死になって扉を開けようとしているのが分かるだろう?そしてこの管制室もそうだ。今現在、
「そんな!外にはまだ敵が大隊で襲ってきているのに‼︎」
「対策を取ってない訳では無い。念のため、櫻井を外側で待機させておいたからな」
「しかし!1人では!」
「うるさい奴だ。この際ハッキリ言っておこう。お前が行ったところで櫻井にとって足手まといだ」
「な⁉︎」
「ビットを使う度に動きが止まる等、戦場では格好の的だ。この間の決闘を見る限り、お前では話にならない。出せたとして織斑ぐらいだろう」
「あの方はあくまで『護衛役』なのでしょう⁉︎なのに対象である一夏さんを前線に出すなど「護衛役というのはほぼこじつけだ」…どういうことですの?」
こじつけ、という言葉にセシリアは疑問を持った。千冬は自らの冷静さを維持するためにも、セシリアに説明する。
「織斑がISを扱えると分かってすぐ、IS委員会は織斑をこの学園に入れようとした…ここまでは良いな?」
「え、ええ…」
「いくら織斑が
「……」
お偉い方の気遣い、確かに一夏にはありがたいだろうがその選ばれた友人としては迷惑に他ならない。なにせ、扱えないISの授業を受けさせられ、その後の人生は『中卒』で挑まなければならない様なものだ。セシリアがその立場だったら、入った時点で即友人関係ではいられなくなるだろう…
「…幸運にも、織斑と…いや、一夏と、私とも面識があり、高校にも進学せずに就職していた男子…それが櫻井だった。どうやら、お偉い方は櫻井とはかなり深い付き合いらしいな。入る代わりに、櫻井が動きやすいよう色々契約に入れていた…世界各国の首領の直筆サイン入りでな。結果がある程度の権限があり、織斑にとっても心強い同性の友人が『護衛』につく、となった訳だ」
一樹がISに入ってきた理由を
「あーもう邪魔だ雑魚が‼︎」
アリーナに向かおうとする一樹に、敵部隊が超高空からビームを連射する。学園に当たらないよう細心の注意を払わなければならない一樹はどうしてもシールドで受けなければならず、身動きがとれない。
「(攻撃方法は無くは無いけど、学園に若干傷があるかもしれないからな…聞いてみるしかねえな‼︎)」
すぐさま管制室に
「こちら櫻井!管制室、聞こえるか⁉︎」
『こちら管制室だ。何だ?』
「敵の半分を吹き飛ばす!その際、学園に若干傷が入るかもしんねえが構わねえか⁉︎」
『緊急事態だ。私の名で許可しよう』
「理解が早くて助かる‼︎」
許可を得た一樹は近くの体育館へと一旦着地。飛んでくるビームをものともせず、『ストライク』の3つ目の装備へと換装する。右肩に『対空バルカン砲』、『ガンランチャー』。背中から左腕にかけての大型ビーム砲『アグニ』を装備したストライクの砲撃用装備『ランチャーストライカー』。
「じゃ、圧倒するとしましょうか」
アグニを上空に向けて構える。敵部隊が一斉にビームを撃ってくるが…
「その程度の出力かぁぁぁ⁉︎」
一樹は気にせずトリガーを引いた。砲口から放たれる超極太のビームは敵のビームを飲み込み、半分どころか大部分をまとめて撃破した。
「よし、次!」
再びエールストライカーに換装し、飛び出す一樹。体育館の屋根に残るストライクの足跡は見なかった事にした。
「(アリーナに突入してきた時から思ってたけど、
人一倍、人の気配に敏感な一夏。だが、その一夏ですら、敵ISに搭乗者の気配を感じない。
「なあ鈴。あのIS、動きが機械じみてないか?」
「こんな時に何言ってんの?ISは機械よ」
「そうじゃなくて…アレ、本当に人が乗ってる様に見えるか?」
「ハァ?ISは人が乗らないと動かないのよ?そんなの教科書の序盤に書いてあるじゃな__」
そこまで言って鈴の言葉が止まる。何か考えている様だ。
「言われてみればあのIS、私達が話してる時はあまり攻撃してこないわね…私だったら『舐められてる』って思ってボコボコにするのに」
「…」
鈴の一言に一夏は思う。『本当にコイツ、代表候補生なのか?チンピラと大差無い気がしてきた…』
「最後の言葉ともかく、色々おかしいだろ?だから…無人機として相手しねえか?」
「無人だったらなんだっていうのよ」
「今まで『対人』用で相手してたけど、『機械』が相手なら容赦なくぶった斬れる。雪片の全力を使えるからな」
一夏が自信満々に言うが、鈴は呆れのため息をつく。
「全力も何も当たらないじゃない」
「心配すんな。次は当てる」
「…へえ。大した自信ね。じゃあ絶対にあり得ないけど、アレが無人機だと仮定して攻撃しましょうか。どうするの?」
「俺が合図したら最大火力で衝撃砲を撃ってくれ」
「?良いけど、当たらないわよ?」
「良いんだよ、当たらなくて」
「分かったわ」
「よし、なら「一夏ァァァァ!男なら、その程度の相手を倒せなくてどうする⁉︎」って箒⁉︎」
今の箒の大声で無人ISは箒にあの極太ビームをぶっ放す気だ!やばい‼︎
「鈴、撃て‼︎」
「了解…って、なんで前に出るのよ⁉︎」
鈴が衝撃砲を撃とうとすると、一夏が甲龍の前に移動した。
「良いから撃て!間に合わなくなるから‼︎」
「ああもう!どうなっても知らないわよ‼︎」
衝撃砲を最大出力で撃ち、白式の背中に命中。一夏は痛みに耐えながらも、衝撃砲のエネルギーを吸収…
「グゥ…行っくぜぇぇぇぇ‼︎」
ISの操縦技術の1つ、《瞬時加速》を使い、敵ISに突っ込む。箒に狙いを集中していた敵ISは猛スピードで一夏に狙いを変え、極太ビームを撃とうとするが、若干一夏の方が速かった。雪片で敵ISを一刀両断。そのまま通り過ぎ、敵ISから離れる。すると敵ISは大爆発。爆煙が登る中、一夏は箒の元へ向かう。
「この馬鹿!危うく死ぬとこだったんだぞ⁉︎」
「わ、私は…お前に喝を入れようと思って…」
「雪恵の様になりたいのか⁉︎」
「ッ⁉︎」
一夏も箒を忘れていた…敵ISは1機だけでは無かった。突如、一夏の背後に別の敵ISが現れ、フルチャージした極太ビームをぶっ放してきた。
「一夏‼︎」
「一夏さん‼︎」
「織斑君‼︎」
「一夏‼︎」
鈴、セシリア、麻耶、千冬が叫ぶ。一夏もようやく背後の敵に気づくが…
「(今のシールドエネルギーじゃビームシールドも貼れねえ!くそこのままじゃ…)」
せめて箒だけでも守ろうとする一夏、そして____
ドォォォォンッ!!!!
ビームが消えた頃には、2人の跡形も残っていなかった。
「あ、ぁぁ…」
「そ、そんな…」
見ていた生徒が絶望に染まる…
「お前、ちょっと鈍ってんじゃねえか?無人機だって気付くのも、反射神経も」
呆れた様な声が上空から聞こえた。
「「「「⁉︎」」」」
皆が一斉に上空を向く。そこにいたのは…白式を掴んだストライクだった。
「か、一樹…」
「撃破時間は上々だと思うぜ?その刀ひとつであの砲撃タイプを倒した時間としては。ただ、なんか感覚面が落ちてる気がするんだよなぁ」
「い、今、どうやって…」
「ああ、単純だよ。
・篠ノ之だけでも守ろうと抱きかかえた状態を掴む。
・スラスター全開で逃げる。
・逃げ切って話す。←今ここ」
「話言葉なのに箇条書き風に説明された…」
抱えた箒を落とさないために、さりげなくお姫様抱っこする一夏。さっきから一樹を睨んでいた箒だが、今は顔が真っ赤だ。それどころじゃ無いんですけど今…
「とりあえず、篠ノ之はお前に任せる。俺は残りを片付ける」
「残りをって、結構いるけど…」
「残り時間って概念はお前程無い。それにすぐ終わるから大丈夫だ」
一夏の方を見ながら一樹は下に向けてビームライフルを撃つ。それだけで無人機『ゴーレム』は撃墜された。
「「「「は?」」」」
それを見た者達は呆然とする。特に鈴の顔が無になっていた。無理も無い。自分達があれだけ手こずった相手がたった1発のビームで堕とされたのだから。
「じゃ、続きと行きますか‼︎」
空中にまだまだいる敵ISに向かって一樹は飛び、敵からの攻撃は可能ならバレルロールで避け、避けた場合に他の人に当たったりする可能性のある物はシールドで受け止める。そして、ビーム砲を撃ち、動きが止まっている敵ISにはビームライフルでコアの部分を撃ち抜き、破壊。この流れで5体を墜とす。
「あと何機だ⁉︎」
レーダー、及び自分の勘を頼りに攻撃を避け、的確に相手の弱点をビームライフルで撃っていく一樹。シールドエネルギーがまるで無かったかの様にどんどん撃ち抜かれていく敵IS。しかも、データを残さぬ様に素早く撃ち抜く。
「(機械に負ける様じゃ、この地獄にいらんないっての!)」
並んでいた2機を、ビームサーベルで横に斬り、背後から来たビームは空中バック転で回避。逆さまの状態でライフルを撃ち、さらに撃破。遂に残ったのは1機のみとなった。
「はい、終わり‼︎」
最後はIS学園がデータを取る用に、ビームサーベルで五体のみを斬り刻み、コア等は残しとく。
「ふぃ〜。終わった終わった」
そういえば、設定集は入れた方がいいんですかね?