人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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たまには、こんな話も良いのかな?

中々スポットライトの当たらない彼に、ライトを当ててあげましょう…


Episode101 花-キュリア-

ワールド・パージ事件の影響により、IS学園の集中メンテナンスが行われる事になった。

日本人で、実家が近い生徒は家に帰り、その他の生徒は海外の生徒と共に、学園が用意したホテルで生活をしていた。

そして一樹はと言うと…雪恵、セリー、一夏と共にS.M.S内で生活していた。

これは、そんなS.M.S内で生活してた頃の出来事。

 

 

「……ふっ」

携帯のメールを眺めながらニヤける弾。

「おい弾、いつまでニヤけてるんだよ」

そんな弾に、呆れながら話しかける一夏。

「べ、べべべ別にニヤけてなんかねえよ!」

「顔真っ赤にしてたら説得力ねえぞ…どうせ布仏姉とのメールを眺めてたんだろうけど」

一樹もまた、苦笑しながら予想する。

それにすごく分かりやすく反応する弾。

「な、なななな何で分かったし!?」

「カマかけただけなんだが…当たりみたいだな」

「ハッ!?しまった!!」

そんな弾の姿を見て、悪い笑顔を浮かべるのが若干名。

「「きい〜ちゃった♪」」

「ハッ!この寒気は…」

逃げようとした弾だが、それよりも早く左右を2人の上司…一馬と祐人に抑えられる。

「あの【良い人】止まりの弾君が…」

「とうとう春を迎えるなんてね〜」

弾は冷や汗が止まらない。止まらなすぎて、顔が青くなる程だ。

「さあ…お相手は誰なのかな〜?」

「じっくりと聞きたいね〜?」

逃げれない、と弾は理屈でなく、本能で理解した。何せ、両肩を自分より強い2人に抑えられているのだから。

弾が喋らない限り、決してそれは解かれない…

「た、助けて一樹…」

自分ではどうしようも出来ないのなら、この2人をどうにか出来る一樹に頼るしかない…のだが。

「…ほどほどにな、お前ら」

「「イエッサーボス!」」

「この世に神はいないのか!?」

数分後…

「ほーん、布仏虚さんねえ」

「あの布仏さんが、コイツをね…」

結局、全てを吐かされた弾。

「あれ?2人は布仏先輩を知ってるのか?」

学園に入ったことのない一馬と祐人が、虚の事を知っていた事に驚く一夏。

「まあ…」

「色々と…」

どう説明すれば良いのか分からなそうな2人に、一夏は首を傾げてた。

 

 

ここは、霧隠山。

霧隠山に咲いている花から放たれる花粉…その花粉は、異常な程ピンク色に光っていた。

「ッ…」

そんな中に駆け込む、1人の老人。

「うっ、くぅ…」

老人の体が光ると、花粉を吸収し始める。その顔は、とても苦しそうだ…

「うっ、ぐぅっ…ああぁぁぁぁぁ!!」

老人は、宇宙人…キュリア星人の姿になると巨大化し、暴れ始める。

 

 

布仏虚は、楯無の命で、霧隠山を調査していた。

「確か…この辺よね」

楯無の話によると、この付近で、特殊なエネルギーを感知したらしい。

それで虚が派遣されたのだ。

…最初は本音に任せようと思ったのだが、相変わらずだらけているのを見て、絶対迷子になると楯無が思ったのは別の話。

「うーん…お嬢様のISレーダーならともかく、私の手持ちレーダーでは反応が無いわね…」

無駄足だったかしら

そう虚が言った瞬間だった。

《ウ、ウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!》

キュリア星人が、巨大化したのは。

 

 

PiPiPiPi!!

「あん…?」

一夏や雪恵、それにやたらげっそりした弾と昼食を取っていた一樹の腕時計が鳴り響いた。

「かーくん、何それ?」

「うん?S.M.Sメンバーだけが使える通信機みたいなもんだ」

「「俺、持ってないんだけど?」」

一夏と弾の言葉をスルーして、一樹はスイッチを入れる。

「どうした?」

『一樹君!霧隠山に、地球外生命体が現れたの!!』

通信機越しに、理香子の慌てた声が響く。

「分かった。すぐに…弾、どうした?」

「霧隠山…虚さん!!!!」

いつになく険しい顔で、弾が駆け出した。

「ッ!まさか布仏姉も…」

「霧隠山にいるのか!」

そう判断した一樹達の動きは速かった。

宗介達に留守を頼み、一樹はVF-25F、一夏と雪恵がVF-25Aと、それぞれトルネード装備で出撃した。

 

 

「虚さーん!!!!」

VF-0Dで飛び出した弾は、一足先に霧隠山に到着。

必死の形相で虚を探す。

山を登っていくと、見たことも無い花が辺りに咲いていた。

「…何だコレ?こんな花、見たことねえぞ…っと!虚さーん!!!!」

花への疑問はすぐに消え、弾は虚を探し始めた。

「…ッ!?これは…」

虚の携帯が落ちてるのを見つけた弾は、その携帯を握りしめながら探し続ける。

 

 

遅れて霧隠山に到着した一樹たちの目の前には、巨大化したキュリア星人がいた。

「近くには村がある。引き離してから本格的に戦闘に入るぞ」

『『了解!』』

「よし…威嚇攻撃、開始!」

2機のバルキリーは、キュリア星人の足元に向けて攻撃を開始。

《ウグアァァァァァァァァ!!?》

「…?一夏、雪。コイツ、苦しんでる様に見えないか?」

『ああ、俺にもそう見える』

『私もだよ』

「それに攻撃もしてこないし…」

そんな会話をしていたら、キュリア星人から煙が出て、消えてしまった…

『…消えた?』

「…」

すぐさま一樹はバルキリーのカメラで辺りを見回す。

「…見つけた」

バルキリーを降下させる一樹。

『お、おい一樹!』

一夏も慌ててバルキリーを降下させた。

 

 

《ウグッ、アアッ…》

フラフラながらも、一樹達から逃げようとする等身大のキュリア星人。

「待て!!!!」

そんなキュリア星人に向けて、ブラストショットで牽制する一樹。

《ウアァッ…》

なおも逃げようとするキュリア星人…

「逃すか!!!!」

横からキュリア星人に飛びかかる弾。

《ウウッ!?》

弾とキュリア星人はしばらく地面を転がるが、何とか起き上がったキュリア星人に突き飛ばされる弾。

「ガッ!?」

「弾!しっかりしろ!」

追いついた一樹達が弾を助け起こす。そんな面々の前で、キュリア星人は膝をついた。

《アアッ、はあ、はあ、はあ…」

キュリア星人の体が光り、1人の老人へと変わった。

「このやろ…虚さんをどうした!?テメエが何かしたんだろ!!」

そんな老人の胸倉を掴んで問い詰める弾。

「弾!落ち着け!」

「これが落ち着いていられるか!」

一夏の制止を振り払う弾。尚も老人に詰め寄るが…

 

「先生!」

 

霧隠村の村人たちが、老人を先生と呼び、弾の手を離させた。

「離してあげてください!」

「全部説明しますから!」

「虚さん…メガネをかけた女性は、村で保護してますから!」

老人を庇う村人たちに、首を傾げる一樹と雪恵。

「ありがとう、みんな。大丈夫だから」

老人は、そんな村人たちを宥めたのだった。

 

 

「「「この村で一緒に暮らしてるぅ!!?」」」

「ええ。もう、随分昔から」

その後、山野と名乗った老人と村人たちから話を聞いている一樹達。

弾は虚の近くで、意識が戻るのを待っている。

「もう先生は、何年も前から私達を守ってくれているのです」

()()?」

一夏が首を傾げると、すぐに説明してくれた。

「大昔に落ちた隕石と共にやってきた花があるんですけど、それがこの時期になると地球に害のある花粉を撒き散らすんです」

「それを、先生が定期的に吸収してくれてるんですよ」

村人たちの話を聞きながら、雪恵がふと思った事を口に出す。

「あの〜、そんなに危ない花なら、燃やしちゃえば良いのでは?」

「燃やすと、より強力な毒を撒き散らすらしいんですよ」

「(なるほど…一応、その話が合ってるか確かめに行くか)」

村人たちの説明を一通り聞いた一樹は、花が咲いてる辺りへと歩きだした。

 

 

「どうだ?セリー」

『ん、村人たちが言ってるのは嘘じゃない』

花の写真をS.M.Sに送り、セリーに確認してもらった一樹。

『その花は、宇宙でも名の知れたヤツだけど、コレの出す毒素への抗体を持ってるのは【キュリア星人】だけ』

「…花粉を吸って、力を蓄えてるって事は無いのか?」

『それは無い。キュリア星人はあくまで抗体を持ってるってだけで、その毒素が効かないわけじゃ無いから』

セリーの説明に淀みは無い。

これでひとつの懸念事項は解決した。

「…ありがとな、セリー」

『ん、じゃあね』

 

 

「うっ、ううん…」

「虚さん!?」

村の病院で、目を覚ます虚。弾はホッとするのだが…

()()()()()?」

虚は、弾の顔を見てキョトンとしていた。

「え?…じょ、冗談ですよね?俺ですよ?」

「おれ…?えっと」

そこで虚は、決定的と言える事を言う…

()()()()()()()()?」

 

 

病院の前をウロウロウロウロする弾。

「…落ち着けよ、弾」

「まだ記憶が無くなったって決まった訳じゃ無いだろ?」

とは言うものの、一樹も一夏も、弾の気持ちは痛い程分かるために、あまり強くは言えない。

「覚えてないって!覚えてないって‼︎」

「だから落ち着けって」

一樹達が弾を宥めていると、山野が病院から出てきた。

「せ、先生!彼女の容体は…」

山野が説明するより早く、虚が出てきた。

「あの…私、記憶喪失みたいです」

弾の絶叫が、霧隠山に響いた。

 

 

「五反田君、御飯もいらないって…」

「そんだけショックだったんだろ…無理も無いさ」

1人佇む弾を、遠くから見守る雪恵と一夏。

 

 

《ウグッ⁉︎アアッ!!?》

夜の霧隠山で、花粉を吸収するキュリア星人。

何とか吸収しきると同時に、山野の姿に戻って倒れた。

「はあ、はあ、はあ…」

そこに、山野を探しに一樹が現れた。

「ッ⁉︎山野さん!大丈夫ですか!?」

「あ、ああ。大丈夫だ」

「とてもそうは見えませんけど…」

一樹の手を借りながら起き上がる山野。

その顔は、汗だらけだ。

「ひとつ…頼んでも良いかな?」

「俺に…ですか?」

「違う、()()1()()()()()だ!」

一瞬、一樹の眉がピクッと動く。

「…分かるんですか?」

「ああ…共に地球を愛する、異星人だからね」

「あはは…みんなには、内緒にして下さい。それで…頼みって?」

「実は…あの花粉を吸収するのは、限界が近いんだ…」

数百年間、吸い続けた花粉も、とうとう限界が近付きつつあったのだ。

「この姿を維持するのも辛い…本来の姿も、安定しなくなっている」

「だから、昼間巨大化して暴れたんですか?」

山野は頷くと、自身の震える手を見ながら話す。

「僕は…村の人々を傷つけたくない。異星人である僕に、優しくしてくれたみんなに、暴れて悲しませたく無いんだ」

そして、決意を込めた目で一樹を見ながら、頼む。

「だから…次暴走したら、僕を…」

「そんな頼み聞けません!」

山野は一樹の肩を掴み、必死に頼んでくる。

「頼む!それが出来るのは、君しかいないんだよ!」

「この力は、そんな事に使う物じゃない!体に溜まった毒素を抜く方法が、きっとあるはずです!」

「……」

山野は、しばらく呆然としていたのだった。

 

 

「ううっ…ああっ!!」

翌日も、山野は花粉を吸収していた。

何とか吸収しきり、ホッとした山野だが、突如苦しみ出す。

「うぐっ、アアァァァァァァァ!!?》

キュリア星人の姿へとなり、巨大化してしまう…

《アアァァァァァァァァ!!!!》

 

 

「ああっ!!?先生が!!」

「お願いします!先生を助けて下さい!」

「分かってます!とにかく、皆さんは安全な所に逃げて下さい!」

一夏が皆を落ち着かせて、避難するよう促す。

「雪、村人たちを頼んだ」

「了解!」

「なら俺がバルキリーで山野さんを村から引き離す!一樹は地上から援護を頼む!」

いつでも一樹が変身出来るように、一夏が提案する。

「よし、それで行こう!」

それを察した一樹。一夏に頷いて、キュリア星人に向かって駆け出す。

 

 

VF-25Aを、キュリア星人の前に向かわせる一夏。

「…村から、離れてもらいます」

ガトリングガンを、キュリア星人の足元に撃つ。

《アアァァァァァァァァ!!!!》

暴走するキュリア星人は、その両手からピンク色の光弾を放ってくる。

「ッ!?」

それを、何とか避ける一夏。

 

 

「虚さん!こっちです!早く逃げましょう!」

虚の手を引いて、必死に避難する弾。

「ッ⁉︎伏せて!!」

咄嗟に虚を抱えて飛び込む弾。

次の瞬間______

 

ドォォォォォォンッ!!!!!!!!

 

______キュリア星人の光弾が、近くに着弾した。

「…よし、逃げましょう!」

起き上がった弾は、再び虚の手を引き、走る。

「どうして…?どうしてあなたは、私を守ってくれるの?」

「記憶が無いなんて関係ない!惚れた女を守れないで、何が男だ!!」

それが、弾の決意だった。

 

 

キュリア星人の光弾を、必死に避けるバルキリーを見て、一樹はエボルトラスターを取り出す。

「(セリーを助けられたアレなら、彼も助けられる筈だ!)」

そして、エボルトラスターを引き抜いた。

 

 

村人たちに迫る、1発の光弾…

「ッ!!?伏せてぇぇ!!」

雪恵の叫びに、前に飛び込む村人たち…

「シェアッ!」

そんな村人たちに向かう光弾を、ウルトラマンが振り落とす。

「かー…ウルトラマン」

思わず変身者の名を呼びかける雪恵。すぐに呼び直したのと、状況のおかげで、雪恵の言葉を聞いた者はいなかった。

 

 

「シェア!」

キュリア星人と対峙するウルトラマン。

《ウアァァァァァァァァ!!》

理性を失っているキュリア星人はウルトラマンに向かって駆け出す。

「フッ!シュウッ!」

キュリア星人の攻撃をことごとく受け流すウルトラマン。

だが、キュリア星人のがむしゃらな前蹴りを、腹部に受けてしまう。

「グッ!?」

《ウアァァァァァァァァ!!》

更にウルトラマンを投げ飛ばすと、光弾を連続で放つキュリア星人。

「グッ!?グアァァァァァァァ!!?」

 

 

「一樹!!?」

援護のために、レーザー砲を撃つ一夏。

《ウアァァァァァァァァ!!!!》

レーザー砲を物ともせず、光弾を連発するキュリア星人。

「チッ!?」

それを避ける一夏。またもや防戦一方となってしまった。

 

 

走っていた虚が、突然止まった。

「止まっちゃダメです!走らないと!」

弾がその手を引くが、虚は動かない。

「…虚さん?」

不思議に思った弾が、虚の目を覗き込む。

「私…あなたを…」

そんな2人の近くに、キュリア星人の光弾が飛んでくる。

 

ドォォォォォォンッ!!!!!!!!

 

「うわっ⁉︎」

「きゃっ⁉︎」

吹き飛ばされながらも、弾が下になったことでクッションになり、虚に怪我は無い。

 

『あの…IS学園の招待券はお持ちですか?』

『ははははははい!こ、コレです!』

『…はい、確認しました。織斑一夏君のご招待ですね。織斑君と待ち合わせですか?』

『そ、そうです。校門で待ち合わせって言われたので。そろそろ一夏か一樹が来るはずなんですけど…』

『なるほど…それは災難でしたね』

『ご迷惑をおかけします…』

『いえ…織斑君か櫻井君が来るまでの間、私とお話しませんか?』

『良いんですか!?」

『うふふ…はい、大丈夫ですよ。私は布仏虚です。お名前を教えて頂けますか?』

『お、俺の名前は______』

 

「ごたんだ…くん?」

「虚さん…記憶が戻ったんですか?」

虚は今の自分達の状況を見ると一言。

「あの…私たち、近すぎない?」

弾と虚はこの状況なのに、思わず笑ってしまった。

 

 

「フゥッ!シェアッ!!」

ウルトラマンはアンファンスからジュネッスへとチェンジ。キュリア星人に向かって構える。

「ハッ!」

《ウアァァァァァァァァ!!》

キュリア星人の連続蹴りを、連続バック転で避ける。

大きく飛び上がってキュリア星人の背後に回ると、裏拳を決めた。

「デェアッ!」

《ウゥッ!?》

数歩下がるキュリア星人に、前蹴りを放つ。

「ハッ!」

地面に転がるキュリア星人に向けて構えなおすウルトラマン。

《ウアァァァァァァァァ!!!!》

そんなウルトラマンに向かって駆け出すキュリア星人。

「シュッ!」

キュリア星人の拳を受け止めると、その腕と胴体を掴んで放り投げた。

「デェアァァッ!!」

キュリア星人との距離が出来ると、ウルトラマンは胸の前で両腕をクロス。

「シュッ!ハアァァァァァァ…」

両腕を広げる様に回し、右拳にエネルギーを溜めると、前に突き出した。

「デェアァァァァァァァァ!!!!」

ゴルドレイ・シュトロームをキュリア星人に放つ。

《ウアァァァァァァァァ!!?》

キュリア星人に見事命中。キュリア星人は数秒苦しむが…

《ウゥッ?》

体から金色の粒子が放出すると、理性を取り戻した。

ウルトラマンは頷くと、今度は霧隠山と対峙。再び両腕を胸の前でクロス。

「シュッ!ハアァァァァァ…ハアッ!」

ゴルドレイ・シュトロームの粒子を霧隠山に撒いた。

キュリア星人を苦しめていた花から、金色の粒子が放出され、宇宙へと飛んでいく…

 

 

「ウルトラマンは…地球に害のある部分だけを、消滅させたんだ!」

雪恵のはしゃぎ声は、村人たちにも広がっていく。

「ってことは…」

「もう先生が吸収する必要も無くなったんだ!」

「やったぞ!」

「ありがとう!ウルトラマン!!」

 

 

ウルトラマンは村人たちに頷くと、天空へと飛び立った。

「シェアッ!!」

 

 

「ありがとう…君のおかげで、ここは今まで以上に平和になったよ」

毒素が抜けた山野の顔は、とても明るかった。

満面の笑みで、一樹に礼を言う山野。

「…また、遊びに来ます」

一樹の返しに、山野は笑顔のまま頷いた。

「ああ!いつでも歓迎するよ!」

 

 

「ああどうしようどうしようどうしようどうしよう…」

海辺の展望台で虚と待ち合わせしている弾。先程から緊張のあまり動こうとしない。

「大丈夫だよ五反田君!君ならやれる!」

「男なら、逃げんなよ!」

そんな弾を勇気付けようとする雪恵と一夏。

「よし、行ってこい!」

そして弾の背中を押す一樹。

「よし…やっぱり無理ぃぃぃぃ!!」

「「ええ加減にせえ!!」」

すぐさま戻ってきた弾を蹴飛ばす一樹と一夏。

 

 

「う、虚さん!」

「あ、五反田君!今日は誘ってくれてありがとう!」

満面の笑みの虚に、弾は緊張のあまり固まる。

「えと、その…」

「五反田君?」

「お……と……」

「音?音がどうしたの?」

ブンブン首を振る弾。

虚は首を傾げる。

「えと、えと…こんなこと、言われても、迷惑かもしれませんが…その」

「さっきからどうしたの?五反田君。安心して、私はちゃんと聞くから」

虚に促されて、弾は深呼吸…

「お、俺と…」

「うん」

「俺と…俺と、つつつつつつつつつ付き合って下さい!!!!」

弾決死の告白を聞いた虚の目に、涙が浮かぶ…

「……はい、喜んで」

涙を拭きながら、弾の告白に答える虚。

「…ぃぃぃぃいよっしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!ありがとうございます虚さん!!!!これからよろしくお願いします!!!!!!!!」

「ええ、こちらこそ。お願いします」

 

 

弾の告白が成功したのを見て、自分のことの様に喜こぶ一樹たち。

「やった!アイツとうとうやったぞ!」

「五反田君にも、春が来たんだね!」

「良かった!本当に良かった!」

3人肩を組んで飛び回る。

しばらく回って満足したのか、一夏が提案する。

「成功の祝いに、アイツ胴上げしてやろうぜ!」

言うが早いか、隠れてるところから飛び出そうとする一夏。

それを必死で止める一樹と雪恵。

「お、まえは!空気を読むことを知らないのか!?」

「今!五反田君たちの邪魔はさせないよ!この唐変木!」

「酷い!お前らそろいもそろって酷すぎる!でも良かった!」

弾に無事春が来たことは、瞬く間にS.M.Sに広がった。後日、お祝いパーティーが行われたのは、別のお話…




こんな話も、たまには良いでしょ?

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