人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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雪恵(を助ける一樹)回!!!!


これが!
Episode100じゃあぁぁぁぁぁ!!!!


Episode100 夢幻魔獣-インキュラス-

『ゆき、おたんじょうびおめでとう』

『うわあ…ありがとうかーくん!』

扉を開けた一樹の目に映ったのは、昔自分が雪恵に髪飾りを渡している場面だった。

「…なんて顔してるんだか」

自分が渡したプレゼントに、年相応の笑みを見せる雪恵に、一樹は微笑ましく思う。

「さて、思い出に浸るのは雪を起こしてからだな…ん?」

突如【世界】が切り替わる。

「…」

気を引き締める一樹。切り替わった所は…

『ねえ』

雪恵と初めて出会った、あの時だった。

『…』

この時の一樹は、確か自分に声をかけられているとは思ってなかった筈だ。

『ねえ、きこえてる?』

『…』

「(自分で言うのも何だけど、あそこまで近付かれて気付かないって…悪意を感じなかったからか?)」

雪恵の声に気付く様子の無い過去の自分に、呆れるしか無い一樹。

『ねえってば‼︎』

『うわあびっくりした!?』

「(これが、アイツとの初会話なんだよな…)」

 

 

時は少し遡る。

電脳ダイブをした雪恵は、いつの間にか浴衣を着ていた。

「…あれ?いつの間に着替えたのかな?」

自分の体を調べてみるも、素人目には異常は見当たらない。

「とりあえず、辺りを歩いてみるかな」

雪恵が一歩踏み出そうとしたその時。

 

カランカラン

 

後ろから、妙に響く下駄の音がした。

「…?」

雪恵がゆっくり後ろに振り向くと、そこには…

「…私?」

幼き頃の自分がいた。

『かーくん、早く早く!お祭り始まってるよ!』

『誰のせいで遅くなってるか分かってんのか?』

『えー?知らなーい』

『こんにゃろ…』

更にその後ろには、やはり幼い一樹もいる。自分に手を引かれながら走る一樹の目は、機嫌が悪そうだ。

「(あはは…確か、この時は私が浴衣を着るのに時間がかかったからだっけ)」

過去の自分に苦笑する雪恵。

「(…ん?)」

そんな雪恵の視界に、ピンク色の羊がいた。

 

『ワールド・パージ、完了』

 

羊がそんなことを言った瞬間、雪恵の意識は遠くに行った…

 

 

一樹はこの【世界】に驚愕していた。

いや、一樹や一夏、雪恵に箒が同じ小学校に通っているのは全く問題無い。だが、その学年が問題だった。

 

【5年1組】

 

「(おかしい…!アイツが脳死判定されたのは、4年の夏だぞ⁉︎なんで5年生になってるんだ!?)」

目の前の光景は…一夏を箒と鈴が取り合っていて、それを自分と雪恵が苦笑しながら見ている。

これがIS学園だったら、何の問題も無かった…いや、問題はあるがこれ程では無い。

「どうなってるんだ…」

 

『これは、彼女が望んでいた日常』

 

「ッ!?」

一樹に突如向けられる殺気。

ブラストショットを構え、周囲を警戒する…

『彼女が欲しがったもの、それがこの世界だ』

「……」

ただでさえここは、自分にとってアウェー空間。ブラストショットを握る一樹に、緊張が走る…

『貴様が奪った、彼女の日々だ』

「ッ…」

『彼女からかけがえのない日々を奪った貴様が、よくもまあぬけぬけと彼女と過ごしていれるものだ』

「…それと、お前が雪を昏睡状態にするのは関係無い」

敵の言葉に、胸をナイフで刺される気持ちになりながら、一樹は告げる。

【世界】では、雪恵達は中学生になっていた。

『彼女のヒーローのつもりか?彼女から6年という長い期間を奪った貴様が…』

「…何が言いたい」

姿の見えない敵と、一樹は冷や汗を流しながら会話する…

『貴様は英雄(ヒーロー)なんかではなく、悪魔(ヒール)側だという事だ。特に彼女に対してはな…』

一樹の目の前に、ピンク色の羊が現れた。その顔はとても愛らしいが、逆にそれが一樹に危機感を募らせた。

羊に向かってブラストショットを構える一樹。

だが、また【世界】が書き換えられ、羊は消えてしまった。

『暗いよお…怖いよお…!』

「ッ!?」

声の聞こえた方へ駆け出す一樹。

暗く、何も無い空間で1人泣く幼い雪恵…

「雪!」

泣いている雪恵に駆け寄る一樹だが、一樹が近寄ると同時に雪恵の姿が消えた。

「……(このパターンは)」

一樹はこの精神攻撃に覚えがあった。

夏休み前に、溝呂木が一夏に仕掛けた精神攻撃と、酷似していた。

「…嫌な趣味してやがる」

【世界】が変わり、今度は泣き叫ぶ幼い雪恵を、今の雪恵が慰めていた。

『うええん!』

『うん…本当は、謝りたかったんだよね。かーくんの言うことを聞かずに、崖から落ちちゃった事を』

『う”ん…』

『自分のせいでかーくんが…イジメられてるのを』

『うん…』

『見せてくれないけど、体中に傷があるのを』

『うん…』

その言葉に、一樹は驚く。

雪恵が崖から落ち、脳死判定された後イジメられていたのを知っていた事に。

…体中に、見るのも悍ましい傷があるのを知っていた事に。

『かーくんは気にしてないって言うだろうけど、心の傷を掘り起こすのが怖かったんだよね』

『うん…』

一夏たちが話したとは思えない。

雪恵が起きてすぐ、一夏たちには固く口止めをした。

だから雪恵が知る筈が無いのだ。

誰も話してないと思っていたから。

なのに何故、雪恵はそれを知ったのだろうか。

いや、今はそんな事を考えてる場合ではない。

『かーくんと一緒に居て良いのか、分からなかったんだよね』

『うん…わたしのせいで、かーくんはひとりぼっちになっちゃったから。げんいんのわたしが、いっしょにいちゃ、だめだとおもったから』

『でも、どうしても一緒に居たかったから、案内人(ナビゲーター)になることを選んだんだよね』

『かーくんの、ちからになりたかったから。でもそれが、かーくんをくるしめてるなんて、しらなくて…!』

再び泣き出す幼い雪恵の頭を、優しく撫でながら抱きしめる今の雪恵。

「……ありがとう、雪」

自分の事を、ここまで想ってくれていたことに、自然と感謝の言葉が出た一樹。

また、【世界】が書き換えられる…

 

 

「……戻った、のか?」

書き変わった先は、中学の教室だった。

『どうだ?彼女の本心を見た気持ちは?さぞ貴様の事を恨んでいたことだろう』

またあの声が、脳に響く。

どうやら、雪恵の本心を見せる事で一樹の精神が崩壊するのを狙っていたらしい。

「くくく…」

それが分かった一樹は、たまらず笑い出した。

「あはははははははは!!!!」

『な、何がおかしい!!?』

「何が、だって?おかしくてたまらねえよ!お前、雪の本心を()()()()()()()()()()()()?」

本心を知っていたのなら、一樹にそれを見せる事はしなかったはずだ。

アレを見せられた一樹は、逆に闘志が湧き上がっている。

『な!?私は彼女の心を代弁して…』

「だったら、お得意の幻覚で雪のニセモノをでっちあげれば良かったじゃねえか。確かに客観的に見れば、俺はアイツの6年という時間を奪ったヤツなのかもしれない。けど!」

いつの間にか現れたピンクの羊に、一樹はブラストショットを向けながら言い放つ。

「アイツは…雪は!俺を責めなんかしなかった!こんな俺を、想ってくれた!それだけで…俺がお前と戦うには充分すぎる理由だ!!!!」

『貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

ピンクの羊の愛らしい顔が禍々しく歪み、一樹に飛びかかる。

一樹は躊躇なくブラストショットを撃つ。

その弾丸は羊に命中したかに見えた…だが、またもや【世界】が変わる。

「…ここは?」

一樹が辺りを見回すと、子供の描いた様な城があった。その頂上にいたのは…

「ッ!?雪!!!!」

檻の中で、囚われの雪恵がいた。

更に背後に気配を感じた一樹が振り返ると、先ほどまで1頭だけだったピンクの羊が、数えるのも億劫になるほどいた。

それらが集結し…

《グルルルル…!》

夢幻魔獣、インキュラスへとなった。

「ッ!!」

一樹はすぐさまエボルトラスターを引き抜き、天空へ掲げた。

眩い光が一樹を包み、ウルトラマンへと変身した。

「シェアッ!」

 

 

ウルトラマンとインキュラスは、お互い睨み合う。

《グルルルル…》

「フッ!?」

突如インキュラスの姿が消えた。

ウルトラマンは全神経を集中させ、辺りを注意深く見回す。

「……」

そんなウルトラマンを嘲笑うように、インキュラスはウルトラマンの正面に現れると強烈なアッパーをウルトラマンに決めた。

「グアッ!?」

ウルトラマンはその威力に吹き飛ばされる。

《グルルルル…》

何とか起き上がったウルトラマンの背後に現れるインキュラス。

「シュウッ!」

インキュラスの攻撃を、ウルトラマンは両手で受け流し、ガラ空きの胴にストレートキック。

インキュラスは蹴飛ばされるも、その途中で再び姿を消した。

「グオッ!?」

すぐにウルトラマンの目の前に現れ、前蹴りを放って来た。

腹部に入り、蹲るウルトラマンの首を掴みながら、2連続で蹴りつける。

「グッ!?グアッ!?」

更にインキュラスはウルトラマンを投げ飛ばした。

「グアァァァァァァァ!!?」

 

ピコン、ピコン、ピコン…

 

エナジーコアが鳴り響き、中々立ち上がれないウルトラマン。

「フゥゥ…アアッ…」

インキュラスは、そんなウルトラマンの周囲に、虹色のカーテンを作った。

「フッ⁉︎」

何とか起き上がったウルトラマンは、虹色のカーテンに突進するが…

 

バチバチバチバチバチッ!!!!

 

「グアッ!!?」

見た目の綺麗さからは考えられないほど、ウルトラマンを苦しめる…

「グアァァァァァァァァァァァ!!?」

 

 

「あれ…?私…」

私の目の前で、虹色のカーテンに閉じ込められている巨人…

私は何故か、その巨人の事をよく知っている気がした。

ううん、知ってるなんてものじゃない。ずっと、側にいたいと思う。

「……く……」

あの巨人を見て、うっすらと頭に浮かぶのは、同い年と思われる男の子の姿。いくら周りから嫌われているとしても、いくら周りから攻撃されてるとしても、側にいたいと思える人…

「か……ん」

自分が傷つくのを躊躇わずに、ただひたすら守ろうとするその男の子に名前を、私は呼ぶ。

「か……く……」

何で忘れてたのだろう、こんなにも大切で、愛しい人の名前を。その呼び方を。

「かーくん!!!!」

私はかーくんから貰ったアストレイ・ゼロを展開。ビームライフルを最大出力で虹色のカーテンに向かって撃つ。

 

 

アストレイ・ゼロから放たれたビームが、虹色のカーテンに命中。見事カーテンが砕け散った。

「フッ⁉︎」

《グルッ⁉︎》

いきなり虹色のカーテンが砕けた事に驚くウルトラマンとインキュラス。

ふとウルトラマンが城の方を向くと、アストレイ・ゼロを完全に展開した雪恵が、ウルトラマンに向かって頷いていた。

「……」

ウルトラマンも頷き返すと、インキュラスと向き直り、アンファンスからジュネッスへとチェンジした。

「フゥッ!シェアッ‼︎」

ジュネッスへのチェンジが完了すると、インキュラスに向かって構えるウルトラマン。

「シュウッ!」

《グルルルル…》

しばらく両者は睨み合う…

「シェアッ!」

先に動いたのはウルトラマンだ。数歩走った後、飛び上がるとマッハムーブで移動。怒涛の高速連続蹴りをインキュラスに決める。

「フッ!シュッ!デェアッ!!」

インキュラスが蹴りの勢いに吹き飛び、動きが鈍くなってる隙に、ウルトラマンはエネルギーを溜める。

「シュッ!ハアァァァァァァ…デェアァァァァ!!!!」

必殺のコアインパルスがインキュラスに命中。

《グルアァァァァ…》

インキュラスは断末魔の叫びを上げ、消滅した。

インキュラスが倒された事で、空間に光が待っていく。

【世界】が完全に崩壊する前に、ウルトラマンは電脳世界を脱出した。

 

 

「う、ううん…」

最後まで電脳ダイブをしていた雪恵がゆっくりと目を開けると…

「…おはよう、眠り姫」

想い人の、笑顔がそこにあった。

「…かーくん!!!!」

ガバッと起き上がった雪恵は、かつてないほどの力で一樹に抱きつく。

「…どうした?」

「怖い夢を、見た気がするの…」

今の雪恵に、他の専用機持ちや千冬、麻耶、束の視線など気にしていられない。

ただ、大人しく抱かれている一樹だけが、今の雪恵の【世界】だ。

「…大丈夫だ。お前は、ちゃんと起きれたよ…」

しばらく雪恵は、一樹の温かさを感じ続けた。帰ってきた、という実感を得るために…




遂にEpisodeも100行きました!

それでもまだ彼の戦いは終わらない!

これからもよろしくお願いします!

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