「全く!酷い目に合いましたわ!」
【世界】から抜け出して、すぐの言葉がコレだった。
「あはは…頭痛は収まったか?」
「え、ええ。おかげさまで…」
「良かった。それなら、
雪恵が入ったと説明を受けた扉を指しながら、一夏は苦笑する。
「…そうですわね。やはり、雪恵さんの騎士は櫻井さんでないといけませんわ」
そう言って微笑むと、セシリアは現実世界へと戻っていく。
…ダジャレのつもりは無いよな、きっと。
「…簪、次は?」
『待って…今衣装データをインストールするから』
僕の名前はシャルロット・デュノア。
IS学園に通う____
『ワールド・パージ、完了』
____豪商、織斑家に仕えるメイド。
でも、それもあと1週間で終わり。何でかと言うと…
「…シャルロット♪」
「ひにゃあ⁉︎」
耳元で囁かれて、思わず大きな声が出てしまう。
「ご、ご主人様!イタズラはやめてください!」
落としそうになった掃除用具を慌てて掴み直し、ご主人様を睨む。
「はは、良いじゃないか少しくらい。それに、ご主人様はそろそろやめてくれないか?」
「で、でも…まだメイドですし」
お母さんが死んで、孤児となった僕を雇ってくれた先代党首は昨年引退、今年はご主人様____織斑一夏が党首の座に就いている。
その一夏が党首になってすぐに宣言したのが『メイドのシャルロットを妻として迎える』だった。
幼い頃からずっと一緒にいた一夏とは本来、結ばれない立場…そんな僕を、一夏は妻にすると言ってくれたのはとても嬉しかった。
1週間後の結婚式で、僕と一夏は結ばれる。
「ふうん…なら、ご主人様の命令は絶対なんだ?」
「そ、それは…もちろん」
「なら命令だ。シャルロット、今から俺の部屋に行くぞ」
「…えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?!!?」
ただ、一夏は…スイッチが入ったら凄いです。ナニが、とは言えないけど。
「さあ行くぞ!善は急げだ!」
「それ使い所間違ってますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」
「…うん、これを私達が見てるって知った時の反応が楽しみだね」
悪い笑顔を見せる束とは反対に、セリーは退屈そうだ。
「…アホらし」
「おっとセリーちゃん。なら今度かずくんとこういうのが出来るメカ作ってあげようか?」
「何それ最高早く作れ」
「い、いっそ清々しい反応だね」
予想以上に早いセリーの反応に、流石の束もドン引きだ。
「と〜うちゃく♪」
僕を抱えたまま、一夏は嬉しそうに扉を開けた。
ああ…また明日の朝までナニするのか…
べ、別に嫌では無いけど。
「シャルロット…」
ベッドに寝かされた僕の上に乗る一夏。
その顔がだんだん近付いてくる…
「だから!お前は何やってんだよ‼︎」
ドアを蹴り飛ばして、奇妙な格好の人物が入ってきた。
入ってくるなり、見事なハイキックを一夏に決めた。
格好はというと、なんというか…変な仮面にマント、ブーツ、手袋と【怪盗】だった。
「何だお前は!?」
「お前こそ何だ!?」
「い、一夏!」
押さえ込まれてる一夏を助けようと、僕は部屋にあったサーベルを怪盗風の人物に向けて振り下ろす。
「うおっ!?危ねえ!」
紙一重でその斬撃を躱す怪盗に、僕は更に踏み込む。
「逃げるな!」
「無茶言うなよシャル!正気に戻れ!」
「気安く呼ぶなぁ!」
____あれ?
「助かったよ、シャルロット」
____あれれ?
「(僕、ぼくは…シャルロット…でも、……誰かにだけ、特別に……シャルって呼ばれて……)」
『ワールド・パージ、強制介入』
「ああっ!!?」
急激な頭痛に襲われる。
「シャル!ちょっと待ってろよ!」
怪盗は仮面を剥ぎ取って、素顔を見せる。
そうだ…僕が好きなのは…
「シャルって呼ばれる事!!」
持っていたサーベルを、ニセ一夏に向かって振り下ろそうとする。
けど、頭痛が激しくて途中で止まってしまった。
「シャル!借りるぞ!」
本物の一夏が僕からサーベルを受け取ると、見事な太刀捌きでニセ一夏を両断した。
『ワールド・パージ…強制、かいにゅ…』
そんな音声と共に、ニセ一夏は消えた。
それと同時に、【世界】が崩れ始める。
「逃げるぞシャル!」
「うん!」
手を引かれた僕は、一夏と一緒にその空間を脱出した。
「おー。ここまでは順調だね〜」
「…はい、ここまでは」
束と簪が画面に張り付いている中、セリーはとうとう面倒になったのか寝転がっていた。
「あーあ、つまんない」
ゴロゴロ転がっていたセリー。
だが、急にガバッと起き上がると扉に向かって駆け出した。
「「「?」」」
既に現実世界に戻っていた鈴とセシリア、そして楯無が不思議そうな顔をしていると、扉が開いた。
「…今、どういう状況ってうおッ!?」
「カズキ!お帰り!」
入って来たのは一樹たちだった。セリーは入ってきた一樹に飛び込む。何とかセリーを受け止めた一樹だが…
ズキッ!!!!
「ッ…」
その衝撃が左肩に走り、苦悶の表情を浮かべる。
『あの、セリーちゃん。離れてあげて?』
ミオがセリーに離れる様に促す。
「…何で?」
『…マスター、撃たれてるから』
「「「「!!?」」」」
楯無以外の顔に、驚愕が走る。
「…本当?カズキ」
「ああ…束さん、痛み止めください」
「…うん、分かった。怪我の度合いは?」
一樹はここで、フリーダムを完全に解除。
白かった制服が、もはや赤黒くなっていた…
「カズキ、また無茶を…」
「それは違うわセリーちゃん」
制服を破り、消毒をするセリーに、楯無が話しかける。
「櫻井君は、私を庇って…」
「狙われてたのは俺だ。楯無が気に病むことじゃない」
「でも!」
「はいストップ」
尚も自分が悪いと主張しようとする楯無を、セリーが止めた。
「カズキはそういう人だから、あなたはあまり気にしなくて大丈夫。ただ、その命は大切にしてね」
「…ええ、分かったわ」
セリーの言葉に、楯無は素直に頷く。それを、ホッとした様子で見る一樹。
「その、櫻井君…」
簪が遠慮気味に一樹に話しかけて来た。
「ん?どうした?」
「その…肩に怪我してるところ悪いけど、電脳世界に行ってもらえないかな?」
「…電脳世界?」
キョトンとする一樹に、束が説明する…
「…でもそれはIS操縦者、しかも専用機持ちの話でしょ?俺はそもそもISを扱えないんですよ?」
「ちょいちょいかずくん。君が今扱ってる機体は「黙れ」はいすみません」
束がツッコミを入れようとするが、一樹の殺気を受けて止まる。
「…でも、雪恵を助けに行けるのは櫻井君だけだよ?」
天災を圧倒している一樹に驚きながら、簪が告げる。
「…別に行かないとは言ってない。おい天災、デバイス作れ」
「イエッサー」
一樹の睨みにビクビクしながら、束はデバイスを作り始めた。
雪恵の話をキリ良い数字、100にしたいので、ラウラと箒はミックスさせます!