欠陥勇者(タイトル未定)   作:高橋くるる

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いやぁ。
描写という部分でもシナリオという部分でも難しいですね~。
色々考えていると、一日がすぐに終わってしまいます。
伏線を入れる人は本当にすごいと思います。


7

村へと戻った後は獲物をみんなに渡してからアトラへと実を届けた。

そのまますぐに着替え村を発った。

その甲斐あってか、あくまで体感でしかないが王都には日が沈んでから割と早く到着できたと思う。

 

道中なんだかんだとモンスターにも出くわしたが、王都に近付くにつれてモンスターの動きも鈍くなったように感じた。

いうなれば、弱くなっていったという具合だ。

見たことがないモンスターばかりで最初は警戒していたが、リーシャだけじゃなくリリアンでも簡単に倒していた。

それを見て考え付いた先は王都近辺のモンスターは弱いという事だ。

ならば一々馬から降りて戦ってもらうのが面倒くさくなった。

彼女達は不明だが、こちらとしては時間が押しているのだ。

できれば早めにカタを付けて帰りたいという気持ちを優先させる。

その為、見つけたら走りながら殴る蹴ると行い、ほぼ一発で仕留めながら猪のように突き進んできたのだ。

おかげで無駄な時間が減り、こうして早目に到着ができたのは幸いだろう。

 

ちなみに王都はというと、夜なだけあってどういう景色なのかはあまり視認できない。

 

まぁ、観光に来たわけではないしな。

特に気にする必要性も今は無いだろう。

 

そんな現状はというと、今は街で買った水を飲みながら広場にあった噴水の縁石に腰をおろしている。

さすが街というだけあって、景色は見えなくとも村とは違いそこかしこに街灯のような何かしらを利用した灯りが灯されていた。

 

「しかし、隼人は疲れていないのか?」

「リーシャ様。そんな体力バカの化け物なんて放っておけばいいのです。

むしろバカと化け物を足してバカ者ですよ。

本当、魔法も使えないのに人間辞めましたっていうような人を初めて私は見ました。」

「いや、しかし……」

 

リーシャが気を使って声をかけてくれた。

多少眠気こそあるが、特に疲れたような感覚はない。

それにしても呆れているのか相変わらずリリアンは口調こそ丁寧なのに中身が酷い。

もう少しリーシャみたいに心配する素振りでも見せてくれてもいいのではないかと考えてしまう。

逆に言えばこれがリリアンの素に近いものなんだろう。

 

「よし!リリアン。そこに君は一度座ろうか。これからの付き合いについてよ~く話し合っておかなきゃいけない事があるようだ。」

「いや!何で私があんたと話し合わないといけないのよ!」

「まぁまぁ……」

「ああ。リーシャは気にするな。体調については問題ない。」

「確かに想定以上に早く帰還できた事は嬉しいが、無理はするなよ?」

 

 

リリアンに軽口を叩いて冗談を言ったが、間髪いれずに即答で拒否されてしまった。

なんという自己が強い女の子なのだろうか。

言葉がきつい分、少し凹みそうになる。

それとは対照的にリーシャはというと、腰を曲げながら人の顔色を覗き込むように伺ってくる姿に多少どきどきする。

例え鎧を着ていようとも言って美人なのだ。

故意的な部分が無い分、そりゃ男なら誰でもドキッとするだろう。

ただし、若干無防備すぎる節がある。

これだと悪い男に引っ掛かるかもしれない。

そう思ったところですぐにその考えを否定する。

 

あ、そういやリーシャはレベル43だっけか。

並の男共なら強引にいったとしても物理的に強引に組み伏せられるという事だな。

 

そう考えると余計な心配だろう。

 

「リーシャ様!それでは私は馬を厩舎へと連れて行きますので、リーシャ様はお、は、や、め、にご報告をお願いいたします。」

「あ、ああ。何を怒っているのかわからないが、そうする事にする。」

 

リリアンが額に青筋を立てながら力強く催促するのが見てとれた。

一体何がそこまで不機嫌なのだろう。

 

要するにリリアンはあれだな。リーシャと百合か。

好きな人を取られて拗ねている。つまりそういうことなのだろう。

 

傍から見てホモは受け付けないが、百合はバッチコイというようなレベルだ。

それならば伝えておこう。

 

「フッ。リリアン。恋は茨の道というががんばれよ。

俺は影から応援しているぞ。主にビデオカメラを手に持って。」

「お、お前!何を笑っている!というより何かを誤解しているな!

違うぞ!断じて私は違う!」

「そうか。違うのか。うん。違う違う。そういう事にしておこう。」

「リーシャ様。やはりこの体力バカは連行ではなく今ここで殺してしまいましょう!

むしろ私に今すぐ殺らせてください!生きているだけで人に迷惑をかけます!」

 

言葉を知らない事を良い事に、リリアンの肩に手をかけながらここぞとばかりにセクハラ的な事を遠まわしに言ってやる。

するとリリアンが肩を震わせ物騒な言葉を口にしたが、それは気持ちを隠しているのだろう。

 

というより、やっぱりからかうのが面白いなコイツは。

 

「と、とりあえず落ち着け。リリアンも疲れただろうから馬を休ませたらお前も休め。

私もすぐに戻るから。」

「あははは。悪いなリリアン。お前が可愛いから、ついからかいたくなるんだ。

安心しろ。リーシャを取って食うつもりはない。

俺も用事を済ませたらすぐに村に帰るつもりだ。」

「――っ!?ばかにするな!」

 

顔を赤くしながら文句を言ってきたリリアンだったが、リーシャに促されるようにして馬を休ませに戻っていった。

リリアンが去った事で後に残った空気はとても静かなものだった。

それはリーシャが落ち着いているのもあるからだろう。

 

「はぁ……隼人にも程々にしてほしいものだ。

あそこまでリリアンの感情を揺さぶるのはお前が初めてだ……」

 

心底呆れたという感じでリーシャは額に手をあてている。

あの手の女の子はこのようなやり取りで進める方がいつの間にか仲良くなっているのだ。

一応それなりに言葉や空気は読んでいるつもりだ。

気にするような事では特にないだろう。

 

「そうか?まぁ可愛いもんじゃないか。」

「隼人はリリアンみたいな女がタイプなのか?」

 

リーシャの予想外な言葉に、口に含んでいた水が器官へと入って噴き出してしまった。

何故そうなるのだ?

 

「あっはっはっは。リリアンがタイプ?

あれは完全にまだ子供だ。それも相当なじゃじゃ馬な子供だ。

ムードに流れてってのがあったとしても、常時あの状態だと後輩の面倒を見るのと何ら変わらない。

タイプになるとしても、もう少し落ち着いて大人になってからだな。」

「そうなのか?ならどんな女性がタイプなんだ?」

 

ん~特に真面目に考えた事がない。

好きになった子がタイプになる人間だがら、毎回付き合う女の子はタイプが違う。

ただ、性格がキツ目の方が長続きするのは確かにあったな。

 

「あまり考えたことが無いが、リリアンとリーシャを比べるならばリーシャだな。

どうやら性格がキツイ女の子との方が、今までを振り返って相性が良いみたいだ。」

 

予想外の返答にリーシャは固まっているように見えた。

まさか自分と比較されるとは思ってなかったのだろう。

こういうのはその場にいない女の子を例えにするよりも、今目の前に居る女の子を比較対象にする方が良いと経験上思っている。

例えそれが悪い部分であっても、それを長所として捉えるように言葉を並べ替えればそんなに悪い気はしないだろう。

 

「それにな。初めて助けてくれた時を覚えているか?

あの時の姿も凛としていてかっこよかった。正直ドキッとしたのは確かだ。

あとは俺がデートかと、からかった時に切り返しに一瞬驚いて戸惑っていただろ?

そういうきちんと女の子らしい一面も持っている。

十分魅力的でタイプと言えばタイプに入るな。」

「そ、そうか。ある意味隼人は女の敵だな。」

「なんでだ?良いところは良いと素直に言葉にする事が大切だと思うぞ?」

「それに気付いていないのが、尚の事たちが悪い。」

「あっはっはっは。よく言われる。」

 

リーシャの指摘通り、元居た世界ではこんな調子で良く女の子達に女の敵と言われたのを思い出した。

特に中の良かった女の子には「あんたの死因は女に背中から刺されて死ぬんだろうね。」と真顔で言われた事もあった。

 

まぁ、嫌がる女の子には無理に話しかけないし、普段から無理に口説こうという事もしていない。

あくまで平常運転の自然体で接しているだけにしか過ぎない。

時に修羅場なども何回か経験はしていたのも確かではあったが、きちんと都度ケジメはつけてきたと思っている。

 

というよりこちらばかり質問されていているような気がする。

これではつまらない男になってもおかしくない事から適当に返す事を決める。

特に意味は無い只のコミュニケーションという奴だ。

 

「逆にリーシャのタイプはどんな男なんだ?

立候補したい一人としてはきちんと聞いておかないといけないような気がするんだ。」

「全く馬鹿馬鹿しい。私のタイプは父のような立派な人物だ。

というより本当に身体は大丈夫なんだな?」

「あははは。流したな。まぁそういう事にしといてやる。

ちなみに、さっきも言ったが体調は問題ない。」

 

杞憂だったのか軽い掛け合いの後、普通に質問された。

コミュニケーションを取ろうとしていた自分としては些か肩透かしを食らったが、堅苦しそうリーシャの事だ。大方仕事を優先しているのだろう。

その為にきちんと答えた。嘘ではない。

 

確かにリーシャのしつこいくらいの心配もわかる。

この街に来るまで馬でリーシャ達は帰ってきたが、自身はと言われれば走って来た。

馬など村には無かったからだ。

 

それを気遣ってリーシャが自分の馬の後ろに乗るように言ってきたが、なんというか若い女の子の腰に手を回すのに若干の抵抗感があり走る事を選んだ。

言葉では軽く言えても若くない今の自分としては、一応常識はあるのだ。

それにその時アトラが地味にやきもちのような表情を見せていたのもある。

アトラとは上手くやれていたし、面倒を見てくれた恩人だ。

それならばあまり心配させたくはなかった。

しかし、リーシャは到着が遅くなると言って強引に乗せようとした。

ベリーウッドの森まではこちらのペースで走っていたので、遅いと思われていたのもあるだろう。

その為、とりあえず普通の人間よりは早く走れるのを説明してから、嘘かどうかを確認するために軽く馬に並走してみた。

その時のリーシャとリリアンの驚いた顔には満足したものだ。

それに対して道中リリアンがムキになって馬の速度を上昇させ、ドヤ顔で先行するような場面もあったが、リーシャにとりあえず付いていくからと速度を上げるように促して確認を取った後、リリアンに負けじと神脚速移を発動した。

ハッキリいってスキルの発動中はぶっちぎりで引き離した。

その時のリリアンの悔しそうな顔はしばらく忘れないだろう。

また、発動中はEPの効果もあってか、殆どスタミナも減らなかった。

走る→スキル→走る→スキルを繰り返した事で、普通よりも疲れる事がなかった。

むしろこれだけ長距離を走って疲れる事が無いというのがわかっただけ大きな収穫だ。

流石にEPが回復してもすぐにスキルを発動させたので、途中からはほぼEPは枯渇していたのは間違いないが。

 

「そうか。それなら私は報告に行くが、付いてきてくれるか?」

「ああ。わかった。」

 

初心なのはやっぱり可愛いもんだな。

俺も純粋な頃に戻れるなら戻りたいぜ。

 

振り返り歩き始めたリーシャを追うように付いていく。

ふわりと風に揺れ一瞬だけ髪から覗いた耳は、街灯に照らされ多少赤くなっていたのが見えた。

それを後ろから眺め、案内される場所は一体どんな場所なのだろうかとまだ見ぬ出来事に考えを巡らせた。

 

 

★★

 

案内された場所。

それは学生時代の頃、学校に存在していた体育館くらいの広さのある広間だ。

恐らくお偉いさんが使うような場所なのか、入り口を入ると奥には階段が3段程あり、更にその奥に立派な椅子が二つ視界に入る。

遠目から見ても椅子の縁には金持ちが好みそうな金色の装飾が施されているような物だった。

その片方、こちらから見て左側へ一人の男が座っている。

いい歳した初老の男だ。

その周りには数人の兵士のような人間達が立って居た。

多分この初老がこの国のお偉いさん。いわゆるトップの王という人間なのだろう。

周りにいるのは護衛兵だろうか。

向こうで言うところのSPみたいなものだと予想できる。

 

初老の人物はまるで絵にかいたような王とでも言うように、頭に王冠を乗せ肩に乗るような白髪交じりのウェーブがかかった髪に髭を蓄えていた。

しかしながら、その顔付きは精悍で身体つきからしてまだまだ現役だと言う雰囲気を持っている。

両手には宝石が埋め込まれた指輪をして、身に付けている物は赤い絹で出来ているのか、ローブのような物が部屋に灯された灯りによって美しい光を反射していた。

 

歩いてきた道は幅相当広い幅だ。

どれくらいなのか畳を一列に並べた事などないことから、予測ができない。

そんな広さの幅の真ん中を中心にして2/3程を赤いカーペットみたいなものが敷かれている。

 

男の前でリーシャが膝を折り、片足を地面に付くようにして頭を垂れた。

その姿は傅くという言葉が適切だろう。

しかし自分はというと、頭を下げるつもりは毛頭ない。

いくらこの国のトップだとしても、自身にとっては何をしてくれたわけでもないのだ。

むしろ迷惑を吹っかけて来た奴のトップかもしれない。

それに玉座であろうイスにふんぞり返るお偉いさんに媚び諂いなどストレスで頭がハゲてしまう。

 

「リーシャ・レオリウス。只今を持って帰還いたしました。」

 

リーシャが目の前の初老に対して報告をする。

言わなくても見てわかるだろうと内心思うが、それは必要な作法なのだと会社の報連相を思い出していた。

 

初老はゆっくりをリーシャへと目を向ける。

 

「そうか。ご苦労であった。そちらの男が言っていた人物か?」

「はい。レイス様へとご報告いたしました人物でございます。」

「うむ。」

 

なぜこうも絶対的な上役位置に居る人間は堅苦しいのか。

もっとこう息を抜いてもらいたい。

それにリーシャがこうした言葉使いと態度を鑑みると、実際に偉いのだろう。

部外者である自身が口を挟むような事は特にするつもりはない。

 

初老がリーシャから視線を外すようにして続けてこちらへと目を向ける。

まるで値踏みされているような視線にイライラが募る。

 

「おい。おっさん。お前が偉いのは見てわかる。リーシャが頭を下げているからな。

ただ、俺からすると関係ない。

人を呼んでおいて値踏みするような見方をするな。気分が悪い。」

「貴様っ!国王様に向かって何という口の利き方をする!」

 

周囲に立っていた兵士達がざわめき立ち、敵意を持った声を上げながら武器を構えた。

 

「なぁ。いい加減にしてくれねぇかな。人は合わせ鏡と言わねぇか?

これがそこに座ってるテメェの答えなら意地でもコイツらブチのめして家に帰るが?」

「隼人!落ち着け!」

 

リーシャが宥めてくるが無視だ。

別に無理して敵対したいわけでもないが、初対面でこの応対なら普通の日本人だと誰でもキレるだろう。

自分としてはこちらの常識や縦割り社会に興味が無いし、知るつもりもないのだ。

 

「悪いなリーシャ。お前の気持ちも汲んでやりたいが、こいつらが敵対するなら全員に後悔させるだけだ。お前に言ったろ?

人と比較するぐらいならモンスターと比較した方が俺の強さはわかりやすいって。

それを見せてやるだけだ。」

「隼人!――」

「はっはっは。お前ら武器を収めよ!」

 

初老の中年は手を薙ぐようにして兵士達を静止させる。

その声に対して不満がある兵士達の顔だが、やはりトップなのだろう。

何も言わずに渋々ながらも武器を収める。

 

「いや、すまん。敵対するつもりは無い。言葉を理解できぬと聞いていたものでな。

それでどのような者かと少し見ていた。実際は話せるのだな?」

 

初老の言葉は流石というかなんというか。、貫禄というものだろう。

流石はこの国の王というだけの事はある。

 

「ああ。村のみんなのおかげで、文字の読み書きこそ無理だが、会話なら殆ど問題ない。」

「そうか。では改めて自己紹介をしよう。

私はこの国、フォルゲンの王。ギリアム・マトリカだ。」

「俺の名前は如月隼人だ。」

 

向こうが謝罪して自己紹介をしたならば、こちらもそれ相応には応対する。

不満はあるが、相手が悪いからと言って相手よりつまらない人間にはなるつもりは無い。

互いに短い自己紹介を終え、少しの沈黙が流れる。

隣ではリーシャがホッとしているのか、目の前の王には聞こえない程度の安堵の溜め息を吐いているのが聞こえた。

 

「それにしてもこのような少年がスカイタイガーの攻撃を凌いでいたというのはな。」

「陛下。失礼ながら発言の許可を頂きたく思います。」

「なんだ?」

「過去にスカイタイガーの攻撃を退けたのは事実ですが、今では適正なレベルこそ足りていませんが、予想だと一人で討伐が可能だと思われます。」

「ほう?それは何故だ?」

 

面白いものを聞いたという感じでギリアムがリーシャへと言葉を促した。

しかしスカイタイガーと言っていたが何だ?

一応タイガーと言うからには虎と思うが、あの虎を指しているのか?

頭の中でこちらの言葉を向こうの言葉に変換して理解しているから虎をイメージしたが、

タイガーと言っても別のものを指すものかもしれない。

もしかして俺に何かを討伐させるつもりなのだろうか。

勇者の冊子では勇者とは実の所、実入りのいいハンターだと書かれていた。

 

「本日、彼の仕事であるモンスターの討伐に同行したのですが、

その際フォレストウルフの群れへと遭遇しました。

その数、9匹。当初の実力を想定していた自分としましては、とても勝てるような状況でないと判断して撤退を進言したのですが、彼は予想を裏切り素手によってほぼ無傷で8体を仕留めております。」

「ふむ。お主が言うなら間違いないのだろう。

しかし、ほぼ無傷。という事は何かしらのトラブルで9体居たフォレストウルフを8体しか仕留めきれず、残りの1体をお前が片付けたのだな?」

「いえ、それは、同行していたリリアン・ホリアムが、何といいますか――」

 

なぜそこで言い淀む。

ズバっと言ってしまえばいいのだ。

下手に言い淀むとやましい事があるのかと思われてしまう。

 

そう考えここに来て言いにくそうなリーシャに対して割って入ることにした。

 

「簡単だ。リリアン達を守る為に俺がフォレストウルフに足を噛まれただけだ。

別にそれだけなら追いかけて簡単に仕留めれたんだが、リリアンが腰を抜かして服を掴んでいたから動けなかったというのが答えだ。」

「にわかに信じがたい話だがリーシャの手前、疑うのは無粋というものだな。

フォレストウルフは1匹討伐するにしても並の兵士なら数人は必要だ。

しかし、リリアンと言ったか、もう少し鍛えるべきだな。」

 

あの狼が並の兵士なら数人?

冗談も休み休み言え。

確かに地の利や工夫、そして数人は必要かもしれないが、親父が指示すれば兵士よりもレベルが低い村人数人でさえ倒せる。

どれだけここの指揮官は兵士を使うのが下手くそなんだ。

逆に言えばそれだけ親父が優秀だと言う証明でもあるのだが。

 

しかし――

 

「おい、おっさん。リリアンを悪く言うのはやめろ。

人は失敗して成長するんだ。そんな事もわかんねぇのか?

それにあいつは女の子だろ。更に言えば聞いた所によるとあいつは初めての任務だったそうじゃないか。

そんな人間が、しかもお前らの話だと1匹に対して数人必要なモンスター、その2匹に同時に襲われたんだ。逆の立場になって考えてみろ。

死にかけたと言っても間違いない。普通なら男でもビビるだろうが。

それにな、周りからあーだこーだ言うのは簡単だ。現場で同じ体験をしてから物を言え。」

「ふははは。青二才の子供の癖に、このワシに対してそのズバズバした物言い。逆に気持ちが良いな。」

 

言いたい事を伝えた上で豪快に笑うギリアム。

その姿は外見こそどこぞのテンプレ王だが、話してみると中身はまるで土方の親方のような感じがする。

ただ、そうは言っても一つ訂正しておくことがあった。

誤解は招きたくない。

 

「おい、おっさん。確かに俺はおっさんからすると青二才だ。

ただ、一つ訂正してもらおう。俺は子供じゃない。アラサー男子だ。」

「アラサー男子?それは特殊な称号か何かか?」

 

笑っていた顔から急に真面目な顔になってギリアムは聞いて来た。

リーシャも同じように相変わらず頭にクエスチョンマークを浮かべたような表情で膝を付きながらこちらを見上げている。

 

「確かにアラサー男子は称号って言えば一時の称号だろうな。

ただ、厳密に言えば称号じゃない。年齢だ。」

「ふむ。それで?アラサー男子とは何歳を示すのだ?」

「アラサー男子はだいたいの年齢を示すだけだ。俺の年齢は30歳だ。」

 

しばしの沈黙が続いたあと、リーシャが城に響き渡るような大声で叫んだのは割愛しておこう。

 

「そうかそうか。お主、いや、隼人は30歳か。

しかし誰がどう見てもリーシャ、むしろ娘のレイスと同じくらいの年齢にしか見えんぞ?」

 

リーシャやギリアムの周りの兵士はそうだそうだと言わんばかりに頷いている。

 

いや、お前らもっとビシっとしろよ。

確かアニメや漫画だと王の周りの兵士達ってもっとこうピリっとした空気を持っていただろ。

 

そんなツッコミを内心入れながらも冷静になって考える。

そういえば今までこっちの世界に来て鏡のような物を見たことがない。

自分の顔を詳しく見る機会が無かったのは確かだ。

流れる水で確認を行おうにも、水面が揺れており確認ができるはずがない。

 

「なぁおっさん。」

「隼人殿、さすがに王に対してその口の利き方はなんとかできないか?」

「リーシャ。よい。隼人とはこの方が何というかワシも新鮮で話しやすいのだ。」

「だそうだ。リーシャ。諦めてくれ。俺も今更ギリアム王って舌を噛んでしまいそうだ。

まぁ流石にリーシャの言うようにおっさんだと混同しそうだから、親しみを込めてギっさんと妥協しよう。」

「ふははは。面白いではないか。」

「あと、年齢を聞いたからだろうが、殿はやめろ。殿は。隼人でいい。

距離感があって寂しいだろうが。」

 

流石に王に対して言葉使いが不味いと思ったのだろうか、言い改めるようにリーシャは促すが、そんな事は知ったこっちゃない。

それにギっさんも悪いようには捉えていないのだ。

その態度を見て諦めたように膝を付いたままリーシャは肩を落とした。

 

「でだ、ギっさん。こっちに鏡みたいな物はあるか?

自身の姿を確認できるような物と言えばわかりやすいか?

俺はこっちに来てから自身の姿を碌に確認した事がないんだ。

いい機会だから確認してみたい。」

「ああ。あるぞ。おい。そこの奴。ワシの部屋から取ってこい。」

 

完全にこのおっさんもリリアン同様さっきまでとキャラが違うよな。

あっちは演技だったのか?

まぁ自分としてもこっちの方がやりやすいが。

 

指示された兵士は敬礼をした後、踵を返して広間から消えていった。

 

「して、隼人。」

 

ギっさんが手を組んで眼光鋭く話しかけてきた。

先程までの笑っていた表情とはまた真逆の真剣な表情だ。

こうも切り替えが早いと、流石にどちらが本当の人間なのかと疑いたくなってくる。

 

「なんだ?」

「隼人は自分が召喚されたと認識しているようだが、間違いないか?」

「ああ。それであってる。過去の勇者の書いた冊子を読んで理解している。」

「そうか。その冊子というのがわからないが、理解しているのか。

ならば話は早い。すまないな。」

「なんで謝る?ギっさん達が召喚したんだろ?」

 

てっきり予想ではギっさん達が召喚した物だと思い、我らに従えや、冊子に書いていたようにモンスターを倒せと命令するものだと思っていた。

その矢先、謝罪の言葉が出てきた為に多少想定外だったことで困惑する。

 

「いや、ワシらは本来召喚する気が無かった。」

「ワシらは?どういう事だ?」

 

ギっさんが言うには、文献には残っているがどうやら次元の狭間とやらはここ500年程存在を確認していないらしい。

しかし、最近モンスターの異常行動による被害の発生が世界的に多発している事によって、それが文献に残された次元の狭間に関係あるんじゃないかと危惧する者がいた。

それが臣下の中の一人である大臣だ。

大臣の言い分的にはこのままではフォルゲンはモンスターによって滅ぶと考え、

それならば遅くなって取り返しがつかない状態になる前に、文献にある勇者を召喚してモンスターからも守ってもらおうと画策したそうだ。

そして独断専行で勇者の遺物を使って儀式を行ったというのが流れのようである。

完全にギっさん達にとっても予想外の出来事だったらしい。

 

途中、勇者の遺物というのが理解できずに質問したが、いわゆる装備や所持品だそうだ。

そして儀式の結果、儀式場に勇者は現れなかった。

しかし儀式場では何か不安定な力が働いているという。

解決の為に原因調査隊が組まれたが勇者の遺物は喪失してしまい、その力が何なのか不明な為に念のため監視を付け立ち入りができないようにしているらしい。

過去の文献からしてすぐに召喚が成功するとは書いていなかったためだ。

もし儀式を行ってしばらく経過してから召喚されるならば、余計な手を加えない方がいいだろうという判断だったみたいだ。

そして勇者召喚の儀式は成功したのか、それとも失敗したのかも不明なまま時間だけが過ぎた。

 

しかし、儀式からしばらくして王国領内でスカイタイガー。

つまりあの白い虎で間違いないようで、それを討伐していた際に言葉が通じない人物と遭遇した部下が居ると娘であるレイス王女から報告が入ったらしい。

調査隊からの報告によれば、文献の中で言葉が通じない者もいると記録されている事から、もしやと思い、言葉が通じない者と接触したリーシャが矢面に立たされてリットン村へ派兵されたのだ。

それが俺だったという流れである。

そして、もし勇者であるならば会って謝罪したいということがギっさんの話した大まかな内容だ。

 

「なるほど。ギっさんらの話は理解した。で、一ついいか?」

「なんだ?」

「その大臣はどこにいる?」

「今は勇者儀式を勝手に行ったとして投獄してあるが何か問題でも?」

 

説明を終えたギっさんに対して大臣の居場所を聞く。

すると更に眼光鋭く疑問を投げかけて来た。

こちらとしても理由は簡単だ。

俺の事情も考えずに強制的にこちらに呼ばれた怒りを向けるだけだ。

一言で言うなら自分の都合でこちらの許可無く強制的に連れて来られたのだ。

ならこの手でぶちのめす!これだ。

 

「ギっさんには悪いが、大臣をここに今すぐ連れてきてくれ。

ギっさんらには関係ない。俺と大臣の問題だ。」

「それは、今の隼人に合わせるには断らざるを得ないな。」

 

こっちの世界の事情なんてどうでもいい。

難しい話など鼻から頭にはない。

しかし、ギっさんはこちらの気持ちを見抜いたのか、拒否の言葉を並べる。

下の者を守る。上に立つ者としては当たり前の行動だろう。

予想はしていたがこうなると厳しい。

 

「はぁ……ギっさん、悪いが、こっちの事情は俺にとっては正直どうでもいい。

この国が滅ぶなら勝手に滅びろとさえ思う。」

「…………」

「そいつの都合で俺の人生は大幅に狂わされたんだ。

一度だけじゃなく既にこの世界で二度死にかけた。いや、フォレストウルフを含めると三度か。

まぁ、どっちでもいい。

ただな、元の世界ならまだやり直しがきくだろう。

先に聞く。俺は元の世界に帰れるのか?」

「…………」

「無言と言う事はできない。又は不明ってことだろうな。

で、補足しておくと今では別にこの世界の事は嫌いじゃねぇ。

ただ、ケジメはつけるべきじゃねぇのか?」

「すまない……隼人の怒りももっともだ。」

 

ギっさんが目を閉じて、短いながらも重く深く謝罪の言葉を述べた。

しかし、投獄したからと言って済むような問題ではないのだ。

勇者の冊子には帰ったとは明記されていなかったし、帰る日程なども記述されていなかった。

それに最後は嫁とあったのだ。なら帰れていない可能性の方が高いのだろう。

 

それに、投獄したからといってそれは都合が良すぎる。

元居た世界の日本でもそうだ。

法があって裁判所で裁かれる。それは頭では理解できる。

しかし被害者側はどうだ?

当事者同士で合意の上でなら納得が行く。

それが自分の関係ない所で話が勝手に進み、勝手に処分が決まる。

被害者の気持ちなんて全く考えられていない。

なら被害者側の気持ちはどうなるというのだ。

 

「むしろ、聞きたい。

テメェら謝って済む問題だと思ってんのか?

殺すぞボケが!」

「貴様っ!」

 

ギっさんの周囲に立っていた若い兵士の一人がこちらの言葉に対して我慢の限界に達したのか、手に持った槍を構えて向かってくる。

直進的に槍を構えて向かってくる姿はビークと被るが、ビークよりも動きは早い。

恐らくレベルの差という奴だろう。

しかし、ただそれだけであって相手にもならない。

腹を狙って突き出してきた刃先を左足を引いて軸をズレして避け、そのまま柄部分を左手で掴んで動きを止める。

 

「くっ!放せ!」

「何でテメェがキレてんだ?ああっ!?

今は俺とコイツが喋ってんだろうが!!

それにな、キレていいのはテメェらじゃねぇ!俺だけだ!」

 

必死に振りほどこうと踏ん張って槍を掴んでいた兵士。

握っていた柄を難なく引き寄せ、相手の体がバランスを崩して寄ったところで、その腹部へと加減した右拳を打ち放つ。

スキルを使用してぶっ飛ばすなど、フォレストウルフを数人で相手をするような奴らだ。

死んでしまう可能性がある。

それでなくとも全力で顔を握ればフォレストウルフのように脳漿をぶちまけさせる事も可能だろう。

言葉は荒くケンカこそすれ、実際の所人殺しにはなりたくはない。

 

一方殴られた兵士は金属で出来上がっていた腹部は凹み、苦しそうに悶絶して地面を転がる。

その腹を上から全力で踏みつけるようにして、地面へと打ち付ける。

兵士は苦しそうに悶えて最後は口から血を吐き、意識を失ったのかすぐに動かなくなった。

 

「スキルも何も使ってねぇから死んでないはずだ。

ただ、邪魔するなら次からは加減はしねぇ。

死にたいなら前に出ろ。殺してやる。」

 

怒っているのは事実だが実際には殺さない。

意識を失った兵士を踏みつけながら脅すだけだ。

脅しというのは時と場所によって適切に使い分ける必要がある。

それに実際のところ、加減はしているしこれくらいの相手なら簡単に殺そうと思えば殺せそうだ。

 

そしてこちらの怒りに火をつけたと理解したのか、それともギっさんの指示がないからかは不明だが、他の兵士達は武器を構えるだけで近寄っては来ない。

それだけでも話がしやすい。

 

「ギっさん。この説明を受け、俺がどう出るかも考えなかったのか?

お前らは暗に俺に対してこの世界で死ねと突き付けたようなもんだぞ。

その上で謝りたいから連れてこい?

図々しいにも程があんだろ。

普通なら下がミスしたら上であるテメェが脚を運んで謝りにくるべきだろうが!」

「もっともだ……」

 

責められる事を覚悟していたかのように、ギっさんは言い訳もせず再度頭を下げる。

 

「それにな、文献ってのが残っていて勇者の力を理解しているなら、勇者が敵に回る可能性すら考慮してなかったのか?

それを大臣一人で許してやるんだ。妥協しろ。」

「無理だ。いくら罪人だと言っても、これから行おうとしている隼人の行動の為に差し出す事はできない。」

 

毅然とした言葉で拒否を示すギっさんに対して、やはりかと思う。

ただ、これは元の世界では下を庇うという事は上がケジメを取るという事だ。

そこに理由があるのは、下の面倒は上が見るのが当たり前だからというぐらいだろう。

大臣の責任を自分が取るという意味をこちらの世界のギっさんが理解しているのかは不明だが、軽くボコボコにぶっ飛ばしてやろうと歩き出した所で右肩を掴まれた。

 

「隼人!大臣がした事に対してお前が怒っているのはわかる。非礼は詫びる。」

 

どうやらリーシャが立ち上がり肩に手をかけて静止をかけてきたようだが、既にこちらは頭に血が上っている。

それにリーシャがいくら詫びた所で、リーシャは関係ない。

関係があるのは大臣と、その親である王だ。

 

「リーシャ、非礼は詫びるっつったな。

お前は知らないどこかの誰かによって、俺達が生きる為に牢獄の中で寿命が尽きて死ねと宣告され、それから逃れられない立場になったらどう思う?許せるか?」

「それは……」

「お前らは俺にそれを無理やり押し付けたんだと理解しろ。」

「――っ!」

 

一瞬手から伝わる硬直。

多分リーシャはどう言葉を投げかけていいのかすぐに思い浮かばなかったのだろう。

別に問い詰めようという気持ちで言ったわけじゃない。

ただ、事実を述べただけだ。

 

「わかったら放せ。お前は関係ない。ギっさんをぶっ飛ばす。」

「無理だ……」

「なんだって?」

 

小さな声で拒否の言葉を示したリーシャ。

ギリギリと強まる手の力に彼女なりの葛藤があるのかもしれない。

 

「隼人がいくら大臣の犠牲になって召喚されたと言っても、陛下の危機を黙って見ているような立場でもないんだ。わかってくれ。」

「ギっさんの横にいるボンクラ共と違って、覚悟は大したものだ。

ただな、勝てると思ってるのか?」

「どうやら加減できる相手でもなさそうだ。

それでもやるというのならば全力でやらせてもらう。」

 

リーシャは村に来た時同様、吹っ切れたように退く気はないと力強い言葉でハッキリ意志表示を示した。

それは俺からすると関係無い立場であっても、リーシャからすると王に仕える騎士だ。

彼女には理由がある。

一体どれだけ忠誠心が高いのだろうかこの女は。

 

「リーシャ。森での出来事や、ここまでの道中を見て勘違いしているようだから言わせてもらう。あれは加減しての実地訓練だ。

俺が全力でやればお前を瞬殺するのは多分簡単だと思うが、それでも放さないつもりか?」

「…………」

 

使わないと決めている鬼神進軍だが、EPが切れていない状態で言葉通りを行えば確かに瞬殺は可能だろう。

それに超感覚もある。気配から察してどう動くかも気合いを入れればわかるだろう。

しかしEPは切れている事から、ぶっちゃけ脅しているだけに過ぎない。

それでも、無言で返す彼女の肩にかかる手からは力は失われず、退く意思を感じられなかった。

 

「はぁ~……まったく……クソ真面目というか何というか。お前は頑固だよ。」

「隼人……」

 

リーシャの揺るがない決意によって毒気を抜かれ、やる気が削がれてしまった。

その為、彼女の肩にかける手から多少力が抜けたようにも思える。

それにリーシャには関係ない上に、女に手を上げるのは男として見れたものじゃない。

そんな第三者が殴られるのを覚悟で止めに入るのだ。仕方ないだろう。

 

「ま、仕方ない。これは貸しな。この貸しは今度俺とデートしろ。それでチャラだ。」

「なっ!?お前はこんな所で何を言っているんだ!?」

「それで許してやるって言ってんだ。

こっちは家族にも会えず、友人にも会えず、この世界で死ぬのが確定している人間なんだ。

それをデート一つで済むなら安いもんだろ?納得しろ。」

「むぅ~……しかし……そう言われてしまえば何か卑怯な気もするが……これは仕方ない、のか?」

「そうだ、俺が召喚されたのも仕方ない。

お前が俺を止めないといけないのも仕事柄仕方ない。

なら、俺はお前みないな美人と出会えた事をプラスに捉えようと思う。

そう考えたほうが腐ってるよりマシってもんだろ?」

「そうか。そういうものか。しかし、フフッ。隼人も物好きなものだな。」

「ははは。初めて笑ったな。」

 

緊張した空気をぶち壊すために言った言葉。

背後から驚きの声をあげたリーシャだったが、わざとらしく濁した言葉に対し最後は察した様子で肩から手を放した。

 

まぁ、この場を紛らわせる為の言葉のあやなだけであって、別に本当にデートをしたいわけじゃないんだけどな。

 

「というわけだ。ギっさん。

この件はあんたの顔じゃない。ここまでしたリーシャの顔に免じて許してやる。

ただ、次にギっさん達が問題を持って来たら俺は許さない。

次は確実に敵に回る。それとこれとは別だって事を覚えておけよ。」

「ああ。わかった。本当にすまない。」

 

ギっさんは重く受け止めたようにして謝罪の言葉を述べた。

 

なんかギっさん謝ってばかりだな。

あ!――

 

「そうそう、この勇気ある向かってきたバカの手当てをついでによろしく。

このまま死んだんじゃリーシャが危険を顧みずに止めた意味がなくなる。」

「感謝する。」

 

ギっさんは短い感謝の言葉を発して近くの兵士達へと倒れている兵士の治療を指示した。

 

まぁ、ギっさんも巻き込まれたようなもので、根はいい奴なんだろうしな。

 

「隼人。今日はゆっくり休むといい。

明日にでもシャールと一緒にお前の今後について話し合いたい。」

「ありがたい申し出なんだが、それは断らせてもらう。

俺は明日も仕事なんだ。だから今からでも帰るつもりだ。」

 

ギっさんが何かをしてくれようとしているのは理解できるが、ハッキリとした言葉で辞退させてもらった。

それにもう終わった問題だ。早く帰って村の奴らを安心させたい。

 

「そうか……もし何かあればまた来てくれたらいい。その時はできるだけの事はしよう。」

「ああ。覚えておく。んじゃな。」

 


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