ハイスクールD×D 嫉妬の蛇   作:雑魚王

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 前回の石頭発言………あれ、ジャンプ漫画のサイレンのセリフなんですけど、誰も気付いてくれなかった。影虎さん、好きなんだけどなぁ


11話 すべては仕組まれていたことでした

 バリィィイイイイイン!!

 

 コカビエルとの決着がついた戦場に、まるでガラスが割れるような音が響き渡る。音源は上空、結界を突き破った侵入者は白い龍の鎧に身を包んでいた。

 

「久方ぶりだな、グラナ。どれだけお前が強くなっているのかと観戦していたが……思ったより長引いたな。いや、あれだけ加減していれば妥当というべきかな?」

 

 話を聞かない系戦闘狂たるこの男。今も己に警戒と猜疑の目を向けるグレモリー眷属+αの視線を見事に無視している。きっとその心臓には毛が生えているのだろうが、親し気に語り掛けられる俺のほうにまで警戒の目が向けられることに気付いてほしい。グレモリー眷属の戦闘力などチワワ程度の認識ではあるが、だからといってわざわざ吠え立てられたい趣味があるわけではないのだ。

 

「まあな、ヴァーリ。全力を出せば秒殺もできたが……堕天使側(お前ら)との協定上殺すわけにもいかねえし、かといって加減して楽に勝てるほど弱い男でもなかったよコカビエルは」

 

 堕天使側の使者に、コカビエルの身柄を引き渡す。その代価として、悪魔側は事態の収拾を図ることとする。厄介事を押し付けられたようにしか思えないが、どうやら上層部はそうも考えないらしく、若手の貴重な成長の機会と捉えたからこそこの代価となったのだろう。それは翻って、あるいは穿った見方をすれば、人間界への被害ないしは人間という種族そのものへの侮りとも取れるのだが、今に始まった話ではない。

 

「……コカビエルを連れて帰る前に一つ聞かせてもらっても構わないか? 最後の攻防、あれはお前が誘導したものなのか?」

 

 戦闘狂らしく、楽し気さえ滲ませて問いかける白龍皇。任務の最中、悪魔の領地内でさえ己のスタンスを崩さない一貫性は、ある意味流石と言って良いだろう。どこまでも己の気持ちには正直に、己の意思を貫徹する姿勢こそがこの男の強さの根源なのだ。

 切り札の情報は決して漏らさない主義の俺だが、今回の策は正直、漏れたところでどうということはないレベルのことなので首肯を返してやる。

 

「ああ、そうだよ」

 

 全力を出せば殺してしまいかねないので、コカビエルを生きて捕らえるためには加減する必要があった。しかし、加減した状態では中々勝つことも難しいだけの技術と経験をコカビエルが有していたことも事実。

 そこで、何度かの攻防を経て、このままではじり貧であると判断し俺はとある罠を仕掛けた。それが、ごく僅かに、かつ自然な形で態勢を崩すというものだ。極小の隙であろうとも、それをコカビエルは見逃す戦士ではない。

 予想の通りにコカビエルは、隙を突き、拡大させ、そして必殺を確信して渾身の一撃を見舞った。

 無防備に額で槍を受けることができたのは、槍を何度も殴る中で素の防御力でも傷がつかないと確信していたためだ。

 

「……陳腐な言い方になるが、コカビエルはずっと俺の掌の上で踊っていたってことだ」

 

「ふっ、ははははは! 堕天使の幹部をこうも容易く手玉に取るとはな! またいずれ、全力で死合(しあい)たいものだよ」

 

「そりゃタイマンの誘いか? 生憎と自分と互角の野郎と真っ向から戦いたくはねえな。お前が挑んでくるのなら、俺は配下と共に袋叩きにしてやるぜ」

 

 囲んで殴る。古来より伝わる、もっとも単純であり最も確実な戦い方だ。相手が雌雄を決することを望んでいるとしても、どうして俺がそこに付き合う必要があるのか。ましてや、当の相手が自身と同等の力量を持つ男ならば猶更だ。罠を張り、策を練り、そして叩いて潰す。戦いですらない処刑をくれてやる。

 

「――さて、と。あちらが俺の宿敵クンか」

 

 校庭へと降り立ち、気絶するコカビエルを肩に担いだ、ヴァーリの視線の向く先はグレモリー眷属――正確にはその『兵士』たる兵藤一誠だ。唐突に視線を向けられ動揺する赤龍帝を品定めする気配が兜の奥から伝わってくる。しかし、それも数秒程度のこと。すぐにヴァーリは視線を打ち切り、どこか失望と納得を一人で勝手にしていた。

 

「……彼では俺の好敵手(ライバル)にはなれないだろうな」

 

「そりゃそうだろ。お前とアレじゃあ格が違う」

 

 神をも滅ぼす『神滅具』の一つ、『白龍皇の光翼』とそれを十全に扱う才能を持って生まれたヴァーリは紛れもなく戦闘において天賦の才を有している。おまけに、本人の気性が、戦いを好むものであり、厳しい鍛錬をものともしないストイックさまである。

 対する赤龍帝こと兵藤一誠が持つものは神滅具のみ。平和な日本の一般家庭という、おおよそ幸福な環境で育ったために悪魔に転生するまで戦闘系の鍛錬を一切積んでこなかった。戦闘以外の分野でも、取り立てて目立った成績を残したことは無く、そのことから何かに本気で取り組み努力したことがないのは既に判明している。取り柄と言えば性欲のみ。それすらも性犯罪に手を染めている時点で汚点というべきなのだが。

 両者の差は歴然だ。生まれ持ったもの、そしてこれまでの生涯の中で磨き上げたもの、精神性、ありとあらゆる面でヴァーリが勝っている。ただの変態風情が、ストイックな天才に勝てるはずがない。と言うか、自分と同格のヴァーリが変態に負けたりしたらかなりショックを受ける自信がある。

 

 少しばかり赤白勝負に関して思いを巡らせているうちに当の二天龍同士で話し始めていた。ヴァーリの光翼と変態の籠手から、強烈な存在感を伴った声が発される。

 

『だんまりか、白いの』

 

『久しいな、赤いの。どうやら出番はまるで無かったらしいな』

 

『宿主が弱いからな。これからだよ、アルビオン』

 

 どうやら赤龍帝とまで謳われたドライグ・ア・ゴッホは長年の神器生活により日和(ひよ)ったらしい。彼の言う通り、弱者にはそれだけ伸びしろがあることは事実だが、天龍ほどの大物が成長するまでの時間、敵対者が悠長に傍観していると考えている。愚かな考えだ。

例えば、俺が何か心変わりして今すぐに兵藤一誠を殺そうと襲い掛かれば、普通に殺せてしまうだろう。戦いを引き寄せる性質を持つドラゴンでありながら、成長するための時間が豊富に存在すると前提に置いているのだから、お笑い草である。

 

『いや、今回はこちらの勝ちだ。正直、負ける気がしない。こうして対面して理解したよ、私も宿主もな』

 

『ほう、言うじゃないか』

 

 肉体があれば好戦的に口角を吊り上げていることを容易く想像できるドライグ。対する白龍皇ことアルビオンは自信のままに笑いを返している。

 

「……なんだ、二天龍って意外と仲がいいのか?」

 

 その問いに答えたのは当人ならぬ当龍たちではなく、その片割れを宿すヴァーリだった。

 

「ある意味ではそうだろうな。なにせ封印される前も、された後もひたすら戦い続け共に高め合ってきた間柄だ。そこには敵意以外の感情もなければやっていられないだろう」

 

「あ~、何となくわかるかも。俺もムカつく野郎は基本、一回の勝負で決めるからな。拷問も最初のうちは愉しいんだが、やってるうちに萎えてくるし」

 

 戦いにせよ、拷問にせよ、それは相手と対面して行うものだ。それを繰り返すということは、必然、何度も顔を合わせることになる。しかし嫌いな相手の顔なんぞ、そう何度も見たいものではない。二天龍が、封印されるまで世界各地でドンパチと元気よく、傍迷惑に戦い続けることができたのは互いに認める部分があったからなのかもしれない。

 

「とはいえ、封印されてからも戦いを続けるのはどうなんだよ……馬鹿は死んでも直らねえな」

 

『何だと、二天龍と呼ばれた我らを愚弄するか小僧?』

 

 旧知の相手と再会したことによる穏やかさから一転。ドライグが殺気を露に憤怒している。俺はその殺気を柳に風とばかりに受け流し、調子に乗った赤龍帝を黙らせる魔法の言葉を口にする。

 

「黙れ。女から宝を借りパクした挙句逃げ続けてるヒモドラゴンの分際で調子に乗るなよ」

 

 俺が魔法を唱えてから数秒。言葉の意味を理解するに十分な時間が流れると、ドライグの怒りは驚愕へと塗りつぶされた。

 

『何故知っている!?』

 

「は? いやいやそんなことどうでもいいだろ。いいか、今回は初犯だから仏心を見せて許してやるがな……次に調子に乗りやがったらお前がヒモドラゴンだってことを全世界にビラにしてばら撒くぞ」

 

 二天龍から二天龍(笑)への即時ジョブチェンジである。尚、アルビオンが完全に巻き添え食らっていることに関しては気にしてはいけない。

 

「二度と表道を歩けなくなり、すれ違った相手には毎度毎度後ろ指をさされる精神的地獄に叩き落してほしいのか?」

 

『や、やめろぉぉおおおおお!! というかアルビオン! 何なのだ、この外道は!?』

 

『遺憾ながら、本ッッッッ当に遺憾ではあるが、我が宿主が生涯のライバルだと見定めた男だよ。………気を付けろ、ドライグ。この男、普通に戦っても相当に強いくせに手段を選ばんからな。宿主(ヴァーリ)も以前、四肢を砕かれた上に気絶した状態で丸太に括りつけられて川流しに遭ったほどだ』

 

 ヴァーリの方から戦闘を仕掛けてきた際に返り討ちにしただけだというのに、さながら俺を悪党のように言うアルビオン。あの場で殺すこともできたのに、わざわざ無力化程度で許した俺の気遣いを理解するだけの脳がないらしい。

 これでは、二天龍と呼ばれながらも、貧相な知性しか持ち合わせないドラゴンにため息を吐くしかないではないか。

 

「なあ、ヴァーリ。アルビオンの言い分、言い訳をどう思うよ? 誇り高いドラゴンであるはずなのに、吠えることしかできてねえ」

 

「アルビオンとて敗北は理解しているはずだ。ただ、力の権化たる彼にとって初めて味わう類のものだったのだろう。単に咀嚼に手間取っているだけさ」

 

『ヴァーリぃいいいいい!? しっかりしろ! そいつの張った、底意地のひん曲がった罠の数々を忘れたのか!? 抵抗できないお前を、喜々として甚振ったそいつになぜ高い評価を出せるんだ!? というか、あれを敗北と呼んで良いのか!? 私には戦いだったようにすら思えんのだが!?』

 

「ふっ、アルビオン。自分の常識だけで物事を測るようになっては成長できないぞ。あの巧妙な罠の数々、配下と協力しての全方位からの不意打ち。あれは、俺たちにはない強さの形だった。如何に悔しくとも、それを真摯に受け止めねば前には進めまい」

 

 話はこれで終わり、とばかりに背を向けて飛び立ってからも、肩に担いだコカビエルの存在を忘れたように相棒とあれやこれやと議論するヴァーリの姿はとても戦闘狂とは思えない。常時、あのテンションでいてもらいたいと切実に願う。

 

(ヴァーリがコカビエルを連れてったし、俺も町の修繕に戻るか)

 

 これから行う、時間のかかる面倒な作業に辟易しながら踵を返すも、強い語気で呼び止められる。無視してもいいのだが、それはそれであとで難癖を付けられそうなので、仕方なく振り返る。名を呼ばれずとも俺の隣に侍っていたレイラが、形の整った眉を顰めたのを視界の端で捉えながら、声の主に問いかける。

 

「……何だ」

 

「何だじゃねえよ!! どうしてコカビエルを渡してんだ!? それに協定って、裏切ってたのか!?」

 

 何もできなかったくせに――否、暴走した挙句間抜けを晒してばかりだった勢筆頭の兵藤一誠が怒鳴ってくる。睨みを利かせているのはこの変態だけではなく、茶髪ツインテールのエクソシストも同様だ。回復役のアーシア・アルジェントは負傷者の治療に専念し、塔上小猫は様子見を決め込んでいた。

 

「私は彼が裏切っていたとは思えませんが……。詳しい話を聞かせてほしいですね」

 

 涼やかな声が、グレモリー眷属+αと俺の間に割って入る。声の主は兵藤一誠にとって知己であり、悪魔としての立場が上だ。見てわかるほどに、彼の激情は内面へと押し戻される。無論、納得はしておらず、感情が燻ぶっているのは丸わかりなのだが。

 

「おぉ、ソーナか。お前には事件が収束した後に話そうと思ってたんだぜ、一応な」

 

「それはどうでしょうか。グラナは少々、物臭なきらいがありますからね。誰かに説明を丸投げして、その口から語らない……私にはその可能性がかなり高いように思えますよ」

 

 と、駒王学園の生徒会長は眼鏡の位置を調整しながら評する。その動作といい、まごつかない口調といい、一般的な男子ならば見惚れるようなものなのだが、会話の内容は俺の信用度が皆無と非難しているだけなので、まるでときめく要素がない。

 まあ、友人からの信用が半端であることにショックは受けない。町の修繕だの報告書の作成だのを考えただけで憂鬱となりそうな現状である。ソーナへの説明は姉の魔王少女に丸投げしようか、と半ば本気で考えていたのも事実なので否定することもできない。

 

「じゃあ、そうだな……初めから話すか。ソーナには、俺がコカビエルを斃せる根拠を二つ示したよな? 実はあれ嘘なんだわ」

 

「はい、そうですか……って、え? どういうことです? 初っ端から特大の爆弾なのですが」

 

 驚愕し目を大きく見開いた容貌は、普段の物静かな姿とはまた違った魅力がある。この姿を撮った写真を、彼女の姉に渡せばかなり高額で引き取ってもらえるであろうことは請け合いだ。それをやってしまうと、本気でソーナが凹むのでやるつもりはないが。

 

「あのとき挙げたのは『十年前の経験』と『堕天使側の友人からの情報提供』だったよな?」

 

「ええ」

 

「ソーナが俺のことを信用していたのか知らんが、よくよく考えるとこの二つって根拠とするには弱いんだよ。特に命を懸けた実戦っつう状況を想定するならな。

 『十年前の経験』っつったって、そんなクソガキだった頃の観察眼なんて当てにできるわけねえし、コカビエルがガキ相手に本気を出していたとも考えづらい。十年の歳月の中で、記憶が錆びついているってこともありえるし、コカビエルが現在までに実力を高めている可能性だってある」

 

 不安要素は考え出せばキリがなく、しかし確証はまるでない。これでは『十年前の経験』なぞ参考にはできないだろう。

 

「で、次の『堕天使側の友人からの情報提供』ってのは、まあ、この友人ってのがさっきまでこの場にいたヴァーリなわけで、俺はある意味あいつのことを信用しているんだが……、『十年前の経験』が根拠にならないとすると、残るのは『堕天使側の友人からの情報提供』だけだろう? こんな曖昧な根拠だけじゃ命は賭けられんわな」

 

 例えばヴァーリがコカビエルと碌に交流が無かったら。例えばコカビエルは常に力を抑えているようだったら。

 そうしたifはいくらでも考えることができてしまう。そのうちの一つでも真であるのなら、ヴァーリの証言の価値は途端に落ちる。

 

「成程、確かに納得させられます。しかし、あなたはこうして戦場に現れた。それはつまり先に挙げた根拠とは別の、勝利への確信があったから来たのですよね?」

 

「ああ、まあ単純な話、見定め終わってたんだよ。ソーナがポンコツ二人組と遭遇してコカビエルの一派がこの町に侵入していると聞いた時には、コカビエルの実力を測り終えていた。それだけのことだ」

 

「それは……どうやって、と訊いても構いませんか?」

 

 手の内を明かさせること躊躇いを覚えているようだが、俺が使った手段は珍しいものでもないので隠す必要もない。手をひらひらと振り、気にするなと言外に伝える。

 

「俺の従える使い魔に管狐っつう妖怪がいる。こいつらは体小さい上に妖力も少ねえから滅茶苦茶弱いんだが、数百匹の群れを形成する点と連携能力が高い点が特徴の種族だ。

俺は魔王サマの依頼を受けてから、こいつらを三匹ずつグレモリー眷属とシトリー眷属の面々に張り付け警備していた。で、だ。両眷属を合わせて二十名にも届かないんだから、そこに動員される管狐の数は六十に届かないってのもわかるよな。じゃあ、残りは?」

 

 ソーナは暫し顎に手を当てて考え込む。その時間は短く、才媛と呼ばれるだけあり僅か数秒の内に正答を口にする。

 

「……まさか町の全域に放って警戒網を作っていた?」

 

「その通り。だから、コカビエルがこの町に入ってきた瞬間から騒動には気づいていた。で、当然、監視も付けるわな。飯食ってる時も、クソしてる時も、寝てる時もひたすら観察を続けりゃ、そりゃあ実力くらい見抜ける。ってか、それだけやって見抜けなかったら他人の上に立つ『(キング)』の資格がねえ」

 

 監視網を築いても尚、生まれた待機組。ファミレスでグレモリー眷属の一部が暴走を始めていることに築いた際の増員はこの待機組から出ているというのは余談である。

 

「じゃ、じゃああなたは教会の関係者がフリードに殺されてることも知っていて放置していたの!?」

 

 と、さながら正義の味方のような顔をして非難する茶髪のエクソシスト。己が数日前に放った言葉を見事に忘れ去る、その頭の悪さに辟易とさせられる。

 

「悪魔の手は借りない、とか言ってたのはどこの雑魚二人組だったか……。そっちの要望に叶う動きをしてやったのにどうして文句を言ってる?」

 

 仮に俺がエクソシストを助けたとしよう。彼らは『主に仕える自分』を素晴らしいと考えている節があり、無駄にプライドが高い傾向にある。であれば、神敵たる悪魔に感謝する可能性はかなり低く、悪魔に助けられたことを恥に思うだろう。それだけで済めばまだ良いほうだ。最悪、自尊心を守るためだけに「悪魔の手を借りずとも己の力で打倒できていた」などと言って、刃を向けてくることさえあるのだ。そんな連中をどうして、理由もなく助けられるだろうか。

 

「口に出したことを実現させるだけの力を持たねえくせに、非難だけは一丁前か? 自分の失敗から目を逸らすために、他人の粗を探そうとするなよ」

 

 脳足りんの馬鹿女のせいで脱線してしまった話を元の路線へと戻す。

 

「俺がコカビエルの一派の目的や人員、戦闘力を知ってからも行動を起こさなかったのは、魔王サマ方かたの妹眷属のサポートって依頼と上層部の指示があったからだ」

 

「前者に関しては理解できます。私たちの能力を測る、あるいは伸ばすために事件の解決は極力私たちの手で行わせるということですよね? しかし……上層部の指示とは?」

 

「堕天使幹部が悪魔の領地で行動を起こす。これって事件の規模が大きすぎるんだよ、それこそ上級悪魔の一人や二人が抱え込んでいい案件じゃねえ

 例えばの話だが……他勢力の有力者が悪魔の領地に入り込んで怪しい動きを見せている。じゃあ、ぶっ殺して事態を収拾しようとはならんだろ。いくら小競り合いをしているからっつっても普通に外交問題になるわ」

 

「まあ、それはそうですね。当然のことです」

 

 今回の事件の主犯のコカビエルは、堕天使の中でもかなり地位が高い。悪魔の世界で言えば、悪魔領に数える程度しかいない最上級悪魔のようなものだ。それほどの地位、名声、力を持つ者をおいそれと害するわけにいかないのは当然のことである。もし、そんあことをやってしまえば戦争まで秒読み段階だ。しかも、この土地に住まうリアス・グレモリーとソーナ・シトリーは魔王の妹であり上級悪魔家次期当主なので言い訳もできない。

 

「まあ、俺もそういったごたごたに巻き込まれるのは御免でね。コカビエルたちの情報をそれなりに集めた段階で、一度上のほうに報告したわけだ。で、上層部の決定が堕天使側との協定だよ。

 悪魔側は『若手の成長の機会』を得て、堕天使側は『裏切り者を楽に捕まえる』ことができる。もちろん、シトリー眷属とグレモリー眷属の安全の確保は優先されている。成長させようと思って苦難を与えたら死んじまった、なんてのは冗談にもならんからな」

 

 例えば、戦闘が始まる前にグレモリー眷属は魔王サマに連絡を入れて援軍の要請をした。援軍が到着するのは一時間後とされ、それまでの時間稼ぎがグレモリー眷属の目標となったわけだが、魔王サマの言葉はまるっきりの嘘である。

 不治の病(シスコン)を患う魔王サマはとっくに、俺たち旧レヴィアタン眷属以外の援軍を学園周辺に配備しているのだ。

 またヴァーリが来たのも同じ理由である。悪魔側がコカビエルを叩きのめすだけなら、堕天使側の人員はただの回収係となり、戦闘力は皆無でも構わない。だのに、『最強の白龍皇』とアザゼルに称されるヴァーリが寄越されたのは、グレモリー眷属とシトリー眷属を死なせないためにコカビエルと交戦する可能性も視野に入れてのことだ。

 

「事件の裏事情は、大体そんなとこだ。グレモリーにはソーナの方から伝えてくれ。正直、同じ説明を何度もするのは面倒臭え

 校庭だの校舎だのの修復は……近くに潜んでるはずの魔王サマが寄越した援軍にでも手伝わせりゃそう時間はかからんはずだ。町の修復は俺のほうでやるから、もう行かせてもらうぜ」

 

 

 




 あ~、これからの展開を考えると心がピョンピョンするんじゃ~。グラナさんと配下の無双を夢想するのが楽しい。

 しかし……しかし、それを文章に起こすのが滅茶苦茶大変というジレンマ。

 これからも頑張りたいぜ

 次話から「第三章聖書和平会談~新旧レヴィアタン~」が始まります。楽しみに!

「恋人よ、枯れ落ちろ」

 さあ。誰のセリフか!? ヴァーリさんの相手はこのセリフを吐く者だ!!

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