さんざん愚痴りまくってたレポート課題三つの内、すでに二つは終えました。まあ、写真の添付を忘れたりして焦ることもありましたが、色々達観してというか……諦観してというか、疲れちゃったのでもういいかなっていう心境です。
私の心境はさておき……今回は皆さん大好きなあの人が大活躍します。さあ、あの人が誰なのか、想像しながら読んでみてくださいな!!!
「リアス・グレモリー、フリードのやつは私と木場佑斗の二人で片付けよう。構わないな?」
と、提案するゼノヴィア。
「ちょっとちょっと、ゼノヴィア! 私も戦うわよ!」
「いや、イリナ、よく考えろ。フリードの後にはあのコカビエルが控えているんだ。消耗を抑えるためにも、私と木場佑斗の二人だけでフリードを倒すべきだ」
「それは、そうかもしれないけど……」
理解はしても納得はできない。小さな声からはそう感じ取れるが、否定されないのであれば問題ないだろう。
そう判断したゼノヴィアは、リアスへと視線を向けて返答を促した。
「あなたの判断は合理的みたいだし、構わないわ」
ゼノヴィアは教会から追放された異端者を斬ることができる。
木場佑斗は聖剣に復讐ができる。
二人の思惑を達成するための道筋が整い、剣を握る手の力が強まる。
「だ、そうだ木場佑斗。共同戦線の続きといこうか」
「僕はエクスカリバーに復讐さえできればなんでもいいんだけどね」
歩みを進めるゼノヴィアと佑斗の二人。その視線の先にいるのは、はぐれエクソシストの白髪の少年、フリード・セルゼン。
教会時代から性格に難こそあるものの、天才と称された実力は並ではなく、事実、以前の戦いではゼノヴィアとイリナと佑斗の三人がかりでも仕留めることができなかった。
三対一で仕留められなかったのだ。数的有利にあるとは言え、二対一で油断することなどあり得ない。
「へいへいへいへい、聖剣ちゃんの調整は終わってっかい、バルパーさんよぉ!?」
十メートルほどにまで距離を詰めた二人を前に、フリードが声を張り上げた。呼ばれた名を聞き、佑斗の憎しみが高まる。
「ああ、もちろんだとも。十分に、いや、十二分にできている。三本の聖剣の統合は済んでいる。その真価を発揮させるのだ、フリード」
フリードの背後から、暗闇から浮き出るようにして現れた、眼鏡を掛けた一人の男。髪は白く染まり、顔には皺も多い。彼こそが、『皆殺しの大司教』バルパー・ガリレイ。
『聖剣計画』を主導し、その最後には用済みだからと、被験者の子供たちを毒ガスで殺すように命じた男。佑斗は今は亡き同胞たちの仇を鋭く睨みつけるが、当のバルパーに聖剣に熱を浮かされたように見えるほどに夢中で、まるで気づいた様子がない。
「おぉ、おぉ。これが俺の愛剣エックスカリバーちゃんですかぁ。いいねいいねぇ、いい感じに悪魔を絶対殺すオーラ出ちゃってんじゃねえですか!!」
バルパーから聖剣を受け取ったフリードは興奮しながら、聖剣を振り回す。その度に聖剣のオーラが飛び、地面にいくつもの傷をつけていくが、フリードにはそんな周辺被害を気にする様子は微塵もない。むしろ、それだけの破壊力があることを喜んでいた。
「木場佑斗、フリードの持つエクスカリバーの能力はわかっているな」
すでに一度戦っている際に、その能力を直に見ているのだ。もちろん、と返す。
「
「ああ、その通りだ。そしてバルパーの言葉を信じるのなら、あのフリードの持つ聖剣は、
フリードが握るエクスカリバーは、成程、こうして対峙してみると、前回戦った時よりも確実に聖なるオーラがましているように感じられた。
前回の戦いでは、
「ご忠告ありがとう。お礼にあの聖剣を破壊してあげるよ」
「私もこの状況で、聖剣を無傷のまま取り戻せるとは思っていない。存分にやってくれていい」
悪魔と教会のエクソシストが手を組む。その光景が気に食わなかったのか、フリードは眉を吊り上げながら、ドスの利いた声を吐く。
「はぁ? おいおいおいおいおいおい、ちょっち前にも思ったけど、なぜに敵同士のはずのお前らが仲良く並んで立ってんの? 意味わかんねーんだけど?」
「事情が事情でね。臨機応変な対応ってことさ」
納得いかないとばかりに、フリードは問いを重ねていく。
「金髪のイケメンくんはエクスカリバーに恨みがあるんだろう? だったら、隣のやつが持ってる剣からへし折ってやりゃいいじゃねーか。俺と同じ清く正しい聖剣使いちゃんは、悪魔を俺よりも先に悪魔をぶっ殺せよ」
「答えは変わらないよ」
「私も同じだ、フリード。少しでも任務の成功率を高めるこそ、私の主への信仰だ」
更にフリードは何かを言い募ろうとしたが、バルパーが止める。彼は少しでも早く、自身の手で統合したエクスカリバーの力を見たいらしく、興奮を抑えきれないようだった。
「フリード、無駄話なんぞいらん! エクスカリバーの力を存分に発揮させるのだ!」
「あ、はいはい。わかりましたよー、バルパーのおっさんよぉ」
フリードは空いた手で片耳をほじりながら、気のない返事をする。指先に付いた耳垢を吹いて飛ばす姿は、あまりにも無防備。
――いっそのこと、この隙を突いてしまおうか。
佑斗がそう考えた瞬間だった。天閃の聖剣の力を使ったフリードがノーモーションで踏み込み、すでにその聖剣を佑斗の眼前で振り上げている。
「くぅっ、早い!!」
「当ったり前じゃないですかぁ!! こちとら三つの聖剣ちゃんを合わせてんだぜ。出力は高まるに決まってんだろ!!」
そこから始まる、フリードの止まることのない連撃を前に、佑斗は防戦一方だ。と言うのも、初めの一撃を間一髪のところで防御したは良いものの、不意を打たれていたために体勢を崩されてしまっていたのだ。
そして、フリードは連撃へと繋げて、アドバンテージを保ち続ける。流石は、元教会の天才だ。一度、ペースを奪ったら一気呵成とばかりに攻め込む技量と判断力は一朝一夕で身に付くものではない。
剣の技量はほぼ同等であっても、戦闘の技量はフリードが圧倒的に勝っている。それを理解して尚、佑斗は不敵に笑う。
(君の相手は僕だけじゃない!!)
「フリード!! 私のことを忘れてもらっては困るな!!」
佑斗が攻め立てられている間、ゼノヴィアは何もしていなかったわけではない。動きを悟らせないように、慎重にフリードの死角へと回った彼女は背後から襲い掛かる。
「はっはぁ!! 誰が忘れたなんて言ったんですかねぇ!?」
フリードは体勢を崩す佑斗の腹部に重い蹴りを叩き込む。
佑斗は何メートルも吹き飛ばされ、体内からせり上がるものを何度も嘔吐した。対するフリードは佑斗の腹部を蹴った際の反作用を利用してくるりと反転、ゼノヴィアの聖剣を軽々と受け止める。
「な!?
「おやおやぁ? ま・さ・かぁ、攻撃力に特化したそれなら同じエクスカリバー相手にパワー負けしないとでも思ってた? バァアアアカ!! さっきも言ったろうがよぉ! こちとら三本のエクスカリバーちゃんを統合してるから出力が段違いだってなぁ!!!」
その言葉の通りに、フリードは片手振りでゼノヴィアの両手振りの斬撃を次々に捌いていく。
そこからは最早一方的だ。近すぎる間合いでは存分に
後は、佑斗に対して行った際の焼き直しだ。
「そらそらそらそら! 教会のエクソシストちゃんは追放された異端くんにも勝てないんでちゅかぁ? 自信満々に出てきた癖して恰好悪ぅうううううい!!」
「グチグチとうるさい男だな、お前は!」
ゼノヴィアは、防御しながらも聖剣に蓄え続けていたオーラは解放する。盾の如く構えられた聖剣を一閃。極大の斬撃がフリードへと迫る。
「おっほぉ!? こりゃまずい!」
防御、あるいは回避と脳内に選択肢として浮かぶが、フリードはそのどちらも却下する。どちらを選んでも体勢が崩れる可能性が高く、追撃されれば後手に回ってしまうからだ。
そこで第三の選択肢として、距離を取ることとする。ゼノヴィアの放った極大の斬撃に垂直に交差するようにエクスカリバーを構えて、刃を触れさせる。剣から掌へ、掌から腕へと、伝道する衝撃に敢えて対抗することなく、身を任せる。衝撃を利用して後方に大きく跳躍するフリード。
しかし、そこにはすでに佑斗が魔剣を携えて待ち構えていた。
「これで、どうだ!」
「ぐっ、あああああああああああああああ!?」
フリードは胸元を横一文字に斬り裂かれる。傷口からは血が噴き出し、瞬く間にフリードの纏う神父服を濡らしていく。額からは脂汗を垂らし、足元が覚束なくヨタヨタと歩く様はまさに瀕死。
「フリード、お前もここまでのようだな」
前門の虎、後門の狼。前後をゼノヴィアと佑斗に挟まれたフリードに逃げ場はない。
「エクスカリバーはここで破壊させてもらうよ。友の無念を晴らすためにね」
佑斗は復讐の達成を前にして喜色を隠さない。あと少し。本当にあと少しのところで復讐を完遂させることができるのだ。何年も憎み続けた聖剣を破壊できる。そう思えばこそ、喜びだけでなく、余裕も生まれてくる。
「何か、言い残すことはあるかい、フリード・セルゼン?」
「ぐっ、……………ああ、そうだな。最期くらい本音で話すか。俺はな、いわゆる試験管ベビーってやつだったんだ―――」
そこから語られたフリードの過去は、佑斗の想像を絶するものだった。
試験管から生まれ、人体実験や拷問まがいの訓練を強制させられエクソシストとなったフリード。彼には何もなかったのだ。愛情も、友情もなかった彼にとっては『魔性を殺す』というエクソシストとしての使命だけが己を証明するものだった。
「だから俺は、ひたすらエクソシストとしての仕事に打ち込んだ。悪魔も吸血鬼も堕天使も魔物もぶっ殺しまくってやった。で、そんな俺に待っていたのは何だったと思う?」
「………教会からの追放、だろう」
事情を知るゼノヴィアが答えた。フリードは眉を顰め、吐き捨てる様にして言葉を続ける。
「ああ、そうさ。追放だよ、追放。勝手に作っておいて、勝手に生きる意味を押し付けて、今度は勝手に放り捨てる。おまけに、汚点が生きてちゃ都合が悪いってんで殺すための死角を寄越す始末だ」
「お前はやりすぎた。ただそれだけのことだ。異端と認定されたお前が間違っていたんだ」
「ああ。そうだな、聖剣使いちゃん。当時の上司や同僚からも似たようなことを言われまくったぜ。けどな、俺は間違ったことをしたつもりはねー、お前らが何と言ったところでな」
フリードは一切の反論を許さない、強い口調で言い切った。
「殴られたことのないやつには、殴られる痛みがわからねえんだよ! 天使も枢機卿も凄腕のエクソシストも本当の意味で俺の苦しみをわかっちゃいない。人伝に聞き、報告書の紙面で見て、たったそれだけでわかった気になって『大変だったね、辛かったね』とか言いやがる」
遠い目をするフリードの脳裏には、過去の出来事が映し出されているのだろう。
そして、全身からは憤怒のオーラが溢れ出す。
「―――ふざけてんのか、そう言ってやりたかったね。半端な同情は本当に腹が立つ……!!」
佑斗には、フリードの気持ちが理解できた。教会の施設で辛い実験の毎日の先に待っていたのは毒ガスによる虐殺。ただ一人生き残った佑斗が抱いた、聖剣エクスカリバーへの恨みは生半なものではない。それを上から目線で、諭すように高説を垂れられれば殺意も湧こうというものだ。
(……そうか。彼はきっと、僕のあり得たかもしれない姿なんだ)
自らの人生を理不尽に振り回される苦しみを理解できてしまう。それを行った元凶にむける憎悪には共感できてしまう。どうして自分ばかりが、と嘆く絶望は佑斗も抱いた。
―――ならばこそ
「君に引導を渡すのは僕の役目だ」
失血により顔を蒼白にしながらも聖剣を支えにして立つフリードに、佑斗は魔剣を構えながら歩み寄る。
(せめて彼が苦しむことがないように)
一太刀で即死させてやることがせめてもの慈悲だろう。剣を大きく振り上げた佑斗に、フリードは逃げる素振りを見せることなくニヒルな笑いを向けた。
「お前は自分の心の思うままに生きろよ。先輩との約束だぜ?」
「ッッ!!」
魔剣を握る剣が震えた。
逸らしてしまいそうになる視線を固定し続ける。フリードの最期を見届けることが己の役割だと定めるが故に。
そして、歯を食いしばりながら魔剣を振り下ろす。
フリードの胴体を袈裟斬りに裂き、血の華が咲いた。噴出する血は優に一メートル以上は飛び、その中には佑斗の顔を濡らすものもあった。
ヨタヨタと後退するフリードは、ついに力尽き、膝から崩れ落ちる。聖剣を最後まで手放さなかったのは剣士としての矜持か、あるいは教会に対する皮肉なのかもしれない。
「教会が汚点として君の記録を抹消しようとも、せめてボクだけは君のことを忘れないと誓おう」
魔剣の刃に付着した血を振り払い、黙祷を捧げる佑斗の目の前で、フリードの亡骸がぼやける。ゆらゆらと揺らめいたと思ったら、さながら空間に溶け込むように、霞みが晴れるかのように、血も肉も神父服も神の一本さえ残さずにフリードの亡骸は消えた。
「避けろ、木場佑斗!!」
危険信号が脳裏に響き渡るのと、ゼノヴィアの叫びが耳に届いたのは全くの同時だ。
「ッッ!?」
「なーんちゃって 幻術だよ、ブァアアアアアアアアッッッカ!!」
そして、染み出すように佑斗の真横に姿を現したフリードが、凶刃を振り下ろす。
何気にフリード君が好きな私です。唐突に過去語りが始まったかと思えば、全て不意打ちのための布石だったというフリード君。きっと彼ならこれくらいは余裕でしてくれることでしょう。