ハイスクールD×D 嫉妬の蛇   作:雑魚王

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 投稿遅れてマジですいません!!
 いや、マジでレポートとかいろいろパナかったんすわ~~



 ………言い訳ですね。他の二次小説読み漁ってましたし、感想とかも普通に送ってたし。
 戦犯は私でした!!!


5話 ソーナたんは苦労人

「エレイン、そっちは終わったか?」

 

 耳元に通信用の魔方陣を展開して問いかける。

 

『いや、まだだよ。なにせ、あれだけ派手に街中で暴れ回ったんだからね。破損個所の規模が馬鹿にならない。君のほうもまだ終わっていないんだろう?』

 

「ああ。俺、エレイン、それと城から呼び寄せたメイド長のアマエル。眷属・使用人を三チームに分けてそれぞれが指揮して町の修繕を行うっつってもなぁ……」

 

 ――単純に数が足りない。

 

 使用人は八十名弱。だが、偶然でもコカビエルと遭遇すれば戦闘になる可能性を考えれば、この町に呼ぶ者は戦闘のできる者に限られる。また、城の管理等の仕事を滞らせるわけにもいかないので、動かせる人員には更に制限がかかる。

 そういった背景から、現在、この町に来ている俺に仕える使用人は僅か二十名ほど。そこにエレイン、ルル、レイラの眷属三名と俺自身を含めても三十にさえ届かない。

 個々の能力が高いと言えど、町の修復と言う人海戦術が適切な事案を前にしては、そうそう事が上手く運ばないのだ。

 

「これ、コカビエルとの戦いまでには終わらんかもな」

 

 先刻、グレモリーに張り付かせていた管狐から、あの逃走劇の後、コカビエルが赤龍帝の家に赴き宣戦を布告したという情報を得た。なぜ、グレモリーが眷属の家に泊まり込んでいるのかという疑問はこの際無視する。あのじゃじゃ馬のやることなのだから、どうせ碌でもない理由があるだろう。

 そして、その少し後にはソーナからも同じ情報と共に、彼女らが取る作戦内容も伝えられた。シトリー眷属とグレモリー眷属の二チームに分かれ、前者は戦域に結界を張ることで周辺に被害を出さないようにし、後者がコカビエルの打倒を目指す。まあ、グレモリー眷属が堕天使幹部に勝てるとは到底思えないので、彼女らが窮地に陥ったところで、俺たちが助け舟を出す形となるはずだ。

 

『それならそれで、後回しにするしかないんじゃないか。コカビエル程度なら、私かルルか君一人でも打倒可能なのだし、手早く終わらせて修繕作業を再開という形になるだろう』

 

「コカビエルは駒王学園の校庭を戦場に指定したそうだが、戦闘に荒れた校庭の修繕にまで駆り出されたりしないよな……」

 

 ――町の修繕と合わせれば、普通に徹夜する羽目になりそうなのだが。

 

 言葉には出すことのなかった陰鬱な思いはエレインに伝わったようで、彼女の声も暗いものだった。

 

『あー、うん……。町の修繕があるのだと事情を話せば大丈夫、だと信じているよ』

 

「そこは断言してほしかったなぁ」

 

『あのリアス・グレモリーにまともに話が通じるとでも? ……最悪の場合は、責任感の強いソーナ・シトリーに学園のほうは丸投げすればいいさ』

 

 こうして、本人の与り知らぬところで、勝手にソーナの肩の荷が増えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は駒王学園生徒会室。会長、副会長、書記、会計、庶務など、生徒会役員はそれぞれの席に座っていた。

 生徒会唯一の男子生徒である匙は、座り心地が悪そうに何度か体を揺すっているが、そのことについて誰も言及しない。友人に頼まれたからとはいえ、『(キング)』の命令に逆らうことは言うまでもなく問題であるし、その罰として課せられた尻叩き千回を知っている面々は下手に声をかけては精神的な苦痛を与えるだけだと理解しているのだ。

 

 

 緊張に震えそうになる手を、ソーナ・シトリーは眷属たちにバレないように隠す。堕天使幹部との争いを前にして、眷属たちも、恐怖を感じているし、緊張を覚えているのだ。

 ここで、『(キング)』たるソーナまでもが、緊張していることを知れば、彼らの不安を増長させることになる。

 怖いし、不安だし、緊張している。だからこそ、平常通りの行動を取って、眷属たちを少しでも安心させる。それもまた、『(キング)』の役目だ。

 

「私たちの役割について、改めて説明します。私たちシトリー眷属は、リアス率いるグレモリー眷属がコカビエルと交戦する際、その被害が周囲に広がらないよう、周辺住民に争いのことを知らせないように戦域を結界で囲むこととなります」

 

 椿姫、と『女王(クイーン)』に声をかけ、取り出した学園の地図をホワイトボードに張らせた。

地図には、学園を取り囲む大きな円と、その外側にいくつもの小さな点が書き込まれている。

 

「この地図を見てください。円が結界、円の外側に沿うようにしていくつもある点は、結界を維持する術者――つまり私たちのそれぞれの配置です。点の下か横には名前が担当の子の名前が記されているので各々確認してください」

 

 結界の強度を均一に保つために、術者の間隔はばらつきがある。これは、個々人によって魔術を得意不得意といった違いがあることに起因している。得意な者の担当範囲を広く、反対に苦手な者の範囲は少なくといった具合にだ。また、魔術の苦手な者の隣には『僧侶(ビショップ)』を配置するなど、少しでも結界の状態を最善に保てるような工夫にも気を回した。

 

 もちろん、だからと言って安心も油断もできない。

 

 相手は歴戦の猛者なのだ。準備はいくらしても足りないほどであり、そもそも格上相手に、安心や油断など慢心を通り越して馬鹿以外の何物でもなく、そんなものをする者に『(キング)』たる資格はない。

 

「―――何か質問はありますか?」

 

 見回す中で、一人挙手する者がいた。眷属の中で唯一の男であり、一番の新人でもある。実力は低く、頭の出来も良いとは決して言えないが、欠点を補うだけの努力家な一面を持っており、眷属の女性陣からは好感的に思われている少年だ。

 彼の顔は緊張によってこわばり青白くなっている。匙、とその名を呼び、答えを促す。

 

「会長、こういうこと訊いちゃいけないんだとわかってるんですけど………勝てるんでしょうか?」

 

 勝てるかどうかわからないと言い換えることのできる質問だ。プライドの高い上級悪魔なら、叱責するところだろう。だが、ソーナにそんな気はまるでなかった。

 

ヒトは誰しも、心の中に弱さを持っている。苦境に立った時に、他者に答えを求めてしまうのは、心の拠り所を求めての行為だ。経験の浅い匙ならば、『上級悪魔』であり『魔王の妹』でもあるソーナのことを、無根拠に信じてしまってもおかしくない。

 だが、匙は問うた。コカビエル相手に勝算はあるのか、と。

 それはつまり、匙が無根拠に主を信じて答えを委ねるのではなく、自身で考えを導いた結果だ。己の中の不安や恐怖と向き合い、そこから逃げることのなかった成果だ。

 

(……責めるわけにはいきませんね)

 

 さりとて、強敵を前に気を緩ませるわけにもいかない。緩みそうになる口元をきつく結び、努めて冷静に振舞う。

 

「正直、数千年を生きる堕天使の幹部を相手に、私たちシトリー眷属とグレモリー眷属が勝てる可能性は限りなく低いと思っています」

 

 匙だけでなく、顔を更に青くする眷属一堂に向かって、ですが、と続ける。

 

「私たちが勝てなかったときのために保険を用意してあります」

 

 椿姫、と『女王《クイーン》』の名を呼び、エクソシスト二名と邂逅したときの――ひいてはグラナとの会話のことを説明させた。

 

「グラナの実力は若手悪魔最強と言われています。また、その戦略眼も確かなもの。物事の判断にシビアな彼が、勝てると言ったのですから勝てるのでしょう」

 

 実戦では判断を誤れば死ぬのだ。無数の修羅場を潜り抜けてきた実績が、グラナの判断力の高さを証明している。

 

「え、っと、ちなみにグラナさ……まの強さってどれくらいなんですか?」

 

 呼び方に戸惑いつつの遠慮がちな問いに、ソーナは自嘲気に嗤って答えた。

 

「数年前の話ですが……私と彼が模擬戦をした際に、彼は一歩も動かずに、無傷で十秒以内に勝負を決めたくらいです」

 

『………はい?』

 

 眷属たちも、グラナのことを侮っていたわけではないだろう。だが、それでも、予想の遥か上を飛んでいく答えに漏れた呟きに、ソーナは更なる追撃を加える。

 

「ちなみに当時の私は悔しさのあまり何度も再戦を申し込み……結果、五戦してすべてが同じ結果に終わりました」

 

 数年前の時点でそれ(・・)なのだ。現在ではさらに高まっているだろうグラナの実力には、全幅の信頼を置いていい。

 そう言うと、目に見えて安心した眷属たち。その光景を見て、ソーナも安堵の息を吐く。

 

 

 

 

 




 次話からはついにコカビエルとの本戦を迎えることになりますね。
 コカビーさんの死に様はすでに決まってるのですが、それだけでは味気ないので、グレモリー眷属には奮闘(笑)をしてもらおうと考えています。

 もしよかったら、コカビーさんの死に様を予想して感想に送ってくれてもよろしくてよ?

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