ハイスクールD×D 嫉妬の蛇   作:雑魚王

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 レポート……。課題のレポートさえなければもっと早く更新できたんだぁああああ!
 我が怨敵(レポート)の火葬は苛烈なるべし!!


 ……レポート焼いちゃったらやり直さないといけないじゃん


2話 シトリー眷属とグレモリー眷属と

「―――と、いうわけで現在この町には聖剣を奪った堕天使幹部と聖剣を奪い返そうとする教会のエージェントがいます。エクソシストのほうはともかく、コカビエル側の目的は未だわかっていません。私が現レヴィアタン様の妹ということから、シトリー眷属を狙う可能性もあります。そのため、事件が収束するまでは一人での外出はできる限り慎んでください。登下校の際は、二人組以上で行動すること。いいですね?」

 

『はい!』

 

 教会から派遣された、エクソシストの二人組との邂逅を迎えたその翌々日。ソーナは二日かけて考え出した方針を伝えるために、生徒会室に自身の眷属を集めていた。

 

「それと、守りに入っているばかりに行くつもりはありません。危険が迫っていることに気付いた時には、すでに手遅れだったなんてことにならないためにも情報の収集を行っていこうと思います。ただし、これは危険を伴うので、行う際には慎重を期して一回ごと私が実行役の子に口頭で伝えることとします」

 

 その方針とは、端的に言ってしまえば『安全第一』である。今では下僕としてソーナに忠誠を誓ってくれている眷属悪魔の面々ではあるが、元を正せば学生だ。それも、保護者からその身を預かっているに等しいので、おいそれと危地に追いやるわけにはいかない。また、眷属の主としてではなく、『ソーナ・シトリー』個人として眷属の面々には傷ついてほしくないということもある。

 

「不安を感じるのも、恐怖を覚えるのも無理はありません。しかし、それで足を止めては悪い方へと転がっていくだけです。自分と信頼する仲間を信じて、この状況を乗り切りましょう!」

 

『はい!』

 

 眷属たちの息の揃った返事には元気づけられる。彼女らは頼もしく、そして今回の件にはグラナという切り札(ジョーカー)も控えているのだ。

 

 ―――誰一人として欠けさせない。

 

 王として未熟な身だということはソーナ自身が最も理解できている。だが、だからこそ、自分に仕えてくれる者たちを守りたいのだ。 

 その決意だけは、誰にも否定させはしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カチャリ、と鳴った小さな音は、ソーナがカップをソーに戻した際に発生したものだ。

 場所は旧校舎のオカルト研究部の部室。時刻は放課後。

 昼休みに、自身の眷属へと方針を伝えたソーナは、グレモリー眷属の方針を聞くためにこの場所を訪れていた。

 

「リアス、あなたはどう動くつもりなのですか?」

 

「そうね……。教会のエクソシストには釘を刺されたことだし、積極的に関わるつもりはないわ。事態の収拾に動くのは、あのエクソシストたちが敗北した後になるでしょうね」

 

 下手に動き教会側に妙な誤解をさせることを避けるための判断だろう。

 リアスの感情的な部分を知るソーナとしては、あの挑発的な物言いをするエクソシストたちと喧嘩でもして、競争を始める可能性さえあると考えていた。しかし、提示された判断は現実的かつ無難なもので安堵する。

 

(教育と政治システムを学ぶために日本の学び舎に通っている私と違って、リアスは領地経営を学ぶために駒王町を治めているんですものね。流石に杞憂でしたか)

 

 しかし、とソーナはオカルト研究部の部室を見て、心中で首を捻った。

 部員が少ないのだ。現在、部室内にいるのはソーナの対面に座るリアスと、紅茶を淹れてくれた朱乃とアーシアの三人のみ。封印指定中の『僧侶(ビショップ)』はともかくとしても、『戦車(ルーク)』の小猫と『兵士(ポーン)』と『騎士(ナイト)』の佑斗の姿が見えない。

 日が沈むよりも早いこの時間帯に、同眷属内の悪魔が三人も悪魔召喚の仕事に出向いているとは思えない。また、件の三人は委員会に所属しているわけでもないので、学校行事に関する準備と言う可能性も低い。そもそも、直近の学校行事である球技大会の準備は生徒会が行うこととなっているので、グレモリー眷属の悪魔には関係のない話だ。

 

「……リアス、木場くんたちはどうしたのですか?」

 

 そう問いかけた瞬間、リアスの顔が曇るのを見て、ソーナは天井を仰ぎたくなった。ただでさえ、堕天使幹部コカビエルという曲だの問題が差し迫っている状況下で、更なる問題など厄介極まりないからだ。

 

「佑斗はこの間から調子がおかしかったの。あの子の過去のこともあるのだろうけれど、昨日、教会のエクソシストたちが持つ聖剣を目にしてからはより顕著になってしまって……。小猫とイッセーは佑斗の精神的なケアに回っているのだと思うわ」

 

 ――あの子たちは優しいから

 

 そう締め括るリアス。その顔は、佑斗のことを憂いながらも、小猫と一誠の優しさを認め称賛していた。

 その一方で、焦りからソーナは冷や汗を流す。

 

(この状況で眷属たちが主の目の外に行く? それはどう考えてもまずい。コカビエルが私たちを狙っているかどうかはわからないけど、視界に入れば見逃してくれるとは思えない。偶然でも出会ってしまえば、戦闘は避けられないでしょう。実力差を考えれば、死亡は確実……!)

 

「リアス、それはかなりまずいです! すぐにでも木場くんたちを探しに行きましょう!」

 

「え? ソーナ、それってどういうこと?」

 

 リアスは生粋の自信家だ。そこには、公爵家次期当主としての恵まれた環境で育った影響も少なからず存在する。

 この町の支配の地位についてからは、その自信家としての面が増長したようにソーナは思っていた。堕天使やはぐれ悪魔などの討伐をこなし成果をみるみる積み上げれば、自信が増していくのは当然のことだ。

 だから、ソーナは「自信を持ち過ぎてはいけない」とリアスに言わなかった。着々と成果を上げる彼女に忠告をしたところで聞き入れてもらえるとは到底思えなかったし、下手をすればリアスに取り入ろうと考えた上級悪魔があることないこと吹聴し、シトリー家とグレモリー家の仲が悪化することもあり得たためだ。

 

 それが仇となった。

 

 リアスはこれまで、駒王町に侵入してくる堕天使やはぐれ悪魔たちに勝利を積み重ね続けた。その経験があるせいで、心のどこかで「今回の件もなんとかなる」と楽観視してしまっているのだろう。

 本人は気づいていないことだろうが、堕天使幹部の実力を過小評価してしまっているように、ソーナには感じられた。

そして、『もしも』や『最悪の場合』といった可能性も無意識のうちに切り捨ててしまうほどに警戒心が薄いのである。

 

「今は時間が惜しいです! 説明は移動しながらします!!」

 

 どうか間に合ってくれ。その一念を胸に宿したソーナは、事態を呑み込めないリアスの手を掴み、部室から飛び出していった。

 




 はい、今回は短めでしたね。原作では描写されることのなかった裏側を想像して書いてみました。


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