書いては直して、書いては直しての繰り返し。ついでに新しい二次小説にハマったりなんなり。そこから、新しい作品を執筆したいなぁと思っちゃったりと色々あったんですよ。
はい、すみません。全て言い訳ですよね。
こんな言い訳がましい私ですが、今後ともよろしくお願いします。
「あ、が……ごほっがはっ」
痛みに喘ぎ、地に伏していると、上方から声をかけられた。聞き覚えのある、力と気品に溢れた声だ。倒れたまま、顔を上げて視界に映った声の主は、影の国の女王ことスカアハだ。
その目には呆れの色が濃く映されている。やれやれ、そう言いたげに女王は口火を切った。
「あれだけの傷、そして重度の呪いに犯されながらもこうして再び目を覚ますとはな。全く、賞賛を通り越して呆れる回復力だぞ。お前は本当に悪魔なのか」
「フェニックスは不死身なんて言われてるんだぜ? このくらい驚くことでもないだろ」
精一杯の笑みを浮かべて返す。虚勢だと見抜かれている、そしてそれでもいいのだ。俺はまだ負けていないのだと、諦めていないのだという意思表明なのだから。ただの虚勢、されど虚勢だ。吠えるだけの元気と気力がまだ有り余っているのだと叫ぶ。
「ふん、戯けたことを。あれだけの傷を負い体力と魔力を消耗している状態で、あれだけの呪詛を受ければフェニックスであろうと致命的だろう。まして、不死身の特性を持たない悪魔が生きていられるはずがない」
不死身の特性を持たない悪魔ならば言わずもがな。正直、
世界最凶とは、そういう次元なのだ。
そのことに気づいていない、もしくは鎌をかけているスカアハにそのことを教えるつもりは毛頭ない。スカアハはすでにヤンデレなのだ。もしも、俺の用いた呪詛が歴史上類を見ないほどに強力なものだと知れば、最後の一線を超えてしまいかねない。それこそ名誉が傷つくことを恐れずに約束を踏み倒して、この場で試練を中止し、俺を拉致監禁するくらいのことは軽くするだろう。そして彼女から離れることができないように魂レベルでの契約を強制的に結ばされ、二度と日の目を見ることのできない人生の墓場コースへ直行である。
本気で洒落になっていない。しかも、彼女の双眸に浮かぶ狂気からはそれ以外の未来を感じ取れない。
(……呪詛のことは黙って、他の話題で気を逸らすか)
浮かんだ名案、というより唯一の選択肢に飛びついた俺は、さながら芋虫のように這いずりながら道脇の建物までたどり着き、そのまま上体を起こして背中を壁面に預ける。
「……俺は五年前にあの愛刀に覚醒した力を封じ込めた頃から、普通の悪魔じゃなくなりつつあるんだよ」
「力を封じ込めたことではなく、その力に覚醒したことが原因だな?」
「ああ。身体能力に肉体強度、回復力に至るまで軒並み上がり続けてる」
能力の上昇は、特訓の成果という側面もある。が、それだけでは説明の付かない部分も確かに存在しているのだ。
その理由こそ、肉体が『悪魔』から別のものに変質していくことになる。
「レヴィアタンは元々、陸のベヒモス、空のジズと並んで神に創造された怪物だ。そこから悪魔に堕ちたのが俺の先祖なわけだが、俺はその怪物だった頃の力を呼び覚ました」
「そして、あらゆる武器を通さない最硬の鱗が肉体の頑丈さに繋がったように、回復力や膂力にも影響を及ぼした……。ふむ、解放状態のあの姿からおおよその検討はついていたが、やはりそういうことだったか」
――だが、一つ疑問が生まれる
スカアハはそう言って続ける。
「レヴィアタンは海龍の一種。見た目こそ普通だが、その力を覚醒したとあっては、お前は『悪魔』と言えるかも怪しいだろう。一体、何をして現四大魔王を黙らせた?」
「何もしてないさ。あいつらの前では一度として刀に封じ込めた力を解放したことは無いし、俺が『悪魔』から外れたことについても話してない。まあ、
許すか、許さないか。それを決めるためには、まず対象の事案について認識する必要がある。つまり、そもそもバレなければ追及されることさえ無い。
「明かす必要のない手札を明かすなんて馬鹿げてる。俺は一度はぐれ悪魔よろしく、わざと理性を失った異形と化して力を覚醒させて、そこから
「で、あろうな。力を求め続け、理性を失った化物ゆえに、はぐれは討伐されるのだから。そう容易く元に戻れるのであれば、討伐以外の選択肢もあるというもの」
俺が取った強さを得るために取った手法はかなりリスクが高い。今の貴族主義がはびこる冥界でこの方法が広まれば、横暴な上級悪魔が多くの中・下級悪魔、それに転生悪魔にこの手法を強制しかねない。
「関係のない市民を思いやれる。お前にそんな良識があるとはな」
「俺は目的のためなら神話体系の一つや二つ滅ぼすし、嫌いな相手を甚振るくらいのことはするけどな……。無駄に被害を広げて愉しむサイコパスじゃねえんだよ」
「……そうか。私はお前のことを少しばかり勘違いしていたようだ。しかし、いくつになっても愛する男の新たな一面を知ると胸が高鳴るものだな」
(……ん?)
スカアハの冷徹な美貌が朱に染まり、吐息には心なしか色気が混じっているようだ。全身を鎧に固めた状態であっても、強烈な女の気配。世界中の男を魅了するだろう色香を振りまきながらも、その二つの瞳だけが歪な光を宿している。そのことが不気味でならない。
「お前の死にざまを見て楽しみ、その後は死体を保存して、世界が終焉を迎えるその時まで共に過ごそうかとも思っていたが――」
「おい、前半部分が滅茶苦茶不穏な内容だったんだが」
「――気が変わった」
「無視かよ」
そして、このぼやきも当然とばかりに無視される。あるいは、熱に浮かされたように話すスカアハの耳に、そもそも声が届いていないということもあり得る。
「試練をここで終え、我が伴侶となれ」
「断る」
熱が冷め、殺意さえ籠もった視線が向けられる。だが、視線を逸らすことをしない。それをしてしまえば、負けだと認めるようなものだからだ。
ここは退けないし譲れない。
実力はスカアハのほうがはるかに上で、しかも今の俺は瀕死の重傷を負っている。相対したところでまともな勝負にならないだろう。だが、だからこそ精神でまで屈するわけにはいかないのだ。
「何故だ。何故断る。業腹ではあるが、私以外の女を抱きたくなれば許すし、お前の欲するものは全て用意してやれる。それでも尚、断るのか」
「ああ。考えは変わらん」
数十人単位のハーレムを維持する中、心に闇を抱えた女を抱いたこともある。心に傷を負った女に寄り添ったことがある。その経験によって磨かれた眼力が、スカアハの精神状態が非常に危ういことを教えてくれている。ヤンデレやらメンヘラならまだ良いが、すでにそんな次元を突破してしまっている。
心身の区別なく、自身と相手を破滅させる暴走機関。それが、現在のスカアハだ。
「…………そう、か」
スカアハは長い沈黙の後にぽつりと一言だけ漏らす。俯いた彼女の顔に前髪がかかり、表情を見ることができない。何か言葉を続けることなく、立ち上がったスカアハは去っていく。
「なあ」
聞いているかどうかの確認は取らない。ただ彼女の背中に声を投げかけるだけだ。
「別に、お前のことを嫌っているわけじゃないぞ」
カツカツ、カツン、カツン
本人は意識しているのか無意識なのか。僅かに足音の間隔が伸びる。
「そもそも、嫌いな相手に
まるでガッツポーズを必死にこらえるかのように、プルプルと震えるほどに拳を握りしめるスカアハが、何とも可愛らしい。先ほどまでの狂気が嘘だったかのように思えるが、残念ながら現実だ。故にこそ、スカアハのことを受け入れられない。
「……では、何故?」
背を向けたまま放たれる問いかけに間髪入れずに答える。
「破滅するからだ。今のお前を受け入れれば、確実に俺もお前も死んだほうがマシだって結末になるだろうさ。だから、今は受け入れられない」
スカアハには何度も死ぬような思いをさせられたが、殺意や悪意を向けることはできない。彼女と出会わなければ、彼女に師事していなければ、俺は
彼女から受けた恩はあまりにも大きい。それなのにどうして恨めようか。
彼女のことが好きで、恩を感じているからこそ、今の彼女を突き放すしかない。
「けど、それは逃げるって意味じゃない。いずれ決着をつけよう。俺が死ぬか、俺がお前の物になるか、お前が俺の女の一人になるか………。結末がどうなるか知らんが、俺は逃げないよ」
スカアハのことが好きで、恩義を感じている。
なればこそ、彼女のことを救いたいと願うのは当然のことだろう。
そのための誓いを今、ここに立てる。
「一緒に
「……ふんっ」
鼻を鳴らし、どこかへと転移していくスカアハ。彼女の背に滲む喜悦が、俺の勘違いでないことを祈ろう。
新しい小説についてざっくりと紹介しますね。興味があれば、感想覧にて教えてください。
ぶっちゃけモチベーションの問題もありますが、皆さんの期待には応えたいと思ってますので、読みたいと思ったものについて教えてくださいね。
一つ目:東方project 狼さんと鬼さんと
鬼の四天王のあの方に恋した一匹の白狼天狗の物語です。ハーレム要素は皆無で、想い人のハートを射止めるために滅茶苦茶頑張る純愛ストーリって感じですかね。
二つ目:東方project 中国になりまして
世界観は、東方のパラレルワールドになります。ほとんど原作と変わりない世界ですが、ただ一点、紅の門番だけ偶然に偶然が重なったことで大きく原作と乖離しています。
性格は原作同様に朗らかで社交的。けれど、実力は風見幽香並、年齢はスキマBBAと同等、普段は昼行燈だけれど実は頭がキレるというチート中国の物語です。
タグはガールズラブや、残酷な描写が付くこととなります。
三つ目:僕のヒーローアカデミア 私のヒーローアカデミア・悪の帝王に至るまでの物語
一言で言えば、、転生物の俺TSUEEEEEですね。ただし、主人公が正義ではなく悪に憧れ、
主人公は前世で読んだ漫画の悪役に畏敬の念を持っていて、その姿を追っていきます。その悪役というのが、《人類の病》ことシックス様というわけなのですが。個性の使用方法や喋り方はシックスを参考にしていますが、シックス本人ではありません。