~ロンドン:喫茶店~
戸惑った様子のルフェイがアラタに尋ねる。
「えーと、私の弟子になりたいという話でしたが?」
「うむ」
「理由をお聞きしてもいいですか?」
アラタはルフェイにこれまでの事を話した。異世界に来てしまった事やこの世界の魔術を学ぶためにルフェイに会いに来たこと。今までの経緯を話し終えた後ルフェイは少し考え、答えを出す。
「わかりました。どこまでやれるかわかりませんが教えさせてもらいます」
「本当か!助かる」
「ただし私にも貴方の世界の魔術を教えてください。一人の魔術士として興味がわきました!」
「俺が教えられる範囲でいいか?俺も魔道については勉強中だからな」
「それで構いません。ありがとうございます!」
『話はまとまったかマスター?』
『断られなくてよかったです』
「へ?誰の声ですか」
「そういえば話して無かったな」
ルフェイの前に右手に持った二つの魔道書を差し出す。
「俺の魔道書のソラとイリアだ」
『よろしく頼むぜルフェイの嬢ちゃん』
『よろしくお願いしますルフェイさん』
魔道書状態のソラとイリアがルフェイに挨拶をすると、ルフェイは目を輝かせて魔道書をみた。
「す、すごいです!魔道書が意思を持つなんて。これはどんな魔道書なんですか?」
「簡単にいうと伝説の魔道書だな。ソラって呼んでいる方は本当の名前はアスティルの写本って言って俺が魔術を使うために必要になる。イリアの方はイーリアス断章っていう名前で俺の魔力を安定させてくれたり回復魔法を使えたりとサポート系の魔術が得意だ。ソラもイリアも俺には欠かせない大事な魔道書だ」
『アラタさん///』
『はっはっは!相変わらず無自覚なマスターだぜ!』
「とても大切なんですね」
しばらくルフェイとの談笑は続き、1時間程の時がたった時にルフェイがこれからの話を始める。
「では、アラタさんこれからの予定を話しておきましょう」
「わかった。でもその前に一ついいか?」
「はい」
「俺でもこの世界の魔術を使う事は出来るのか?」
「大丈夫だと思います。この世界の魔術は魔力を持ち、魔術の工程を理解すれば使えます。アラタさんの魔力量は正直言ってすごいので平気だとおもいます」
「そうか。よかった」
「ですが私が教えられるのもある一定の所までです。それ以降は自分の力で学んでいかなければなりません」
「それでも十分助かる、ありがとな!」
「い、いいえ///」
『アラタさんはそろそろ自覚を持った方がいいと思います・・・』
「何か言ったかイリア?」
『いいえ、何も!』
2人の会話が終わったところでルフェイが話を戻す。
「で、では今から私の家に来てもらいます」
「ルフェイの家っていうと黄金の夜明け団の・・・」
「あっ。いいえ違います、今の私は黄金の夜明け団には籍を置いているだけの形になっています」
「そうなのか?」
「はい、今の私は禍の団という組織に兄と一緒にいるんです」
「じゃぁ今から禍の団っていう組織のところに行くのか?」
「そうなんですが、その前にアラタさんに頼みというか、お願いがあるんです」
「いいぞ。俺にできる事なら何でも言ってくれ!」
「では、私と魔術の勝負をしてもらえますか!」
「えーと。なんでだ?」
「一番の理由はアラタさんの世界の魔術を見てみたいと思ったからです」
「それなら戦わなくてもいいんじゃないか?」
「自分の身で体験してみたいもので」
「しかしなー」
『いいじゃないかマスター』
「ソラか」
『ルフェイに魔術を教える教師として生徒の期待に応えてやれよ』
「よろしくお願いします」
「わかった。でもどこで勝負するんだ?」
「ここから少し離れた森の中に空き地があるので周辺に人払いの結界を張ります」
「じゃぁ移動するか」
「はい!」
~森:空き地~
アラタの目の前には杖を構えるルフェイがいる。
「それじゃぁ行くぞ、ルフェイ」
「お願いします!」
「
次の瞬間アラタの服装は黒を基準とした魔道士の戦闘服ともいえるメイガスモードに変わる。
「こっちは準備完了だぜ」
「は、はい。行きます」
ルフェイは正直恐怖を感じていた。アラタが何かの呪文を唱え、服装が変わった瞬間に先程とは比べものにならない魔力が発生したからだ。だが、ルフェイは引かない、今のルフェイの心は”怖い”という恐怖心よりも”もっと知りたい”という知識欲が大きく上回っていた。
「行きますよアラタさん」
「いつでも来い」
「ファイアーボール!」
まず最初にルフェイがアラタに向けて放ったのは単純な炎の弾だ。
「よっと」
アラタはその火の弾を難なくかわす。炎の玉は地面に着弾し砂埃を上げて消えた。
「ファイアーボール!」
今度はルフェイの周りに5つの弾が出現し、アラタに向かってくる。
「よっ、よっ」
この5つの炎の弾もかわす。この5つの弾も先程と同じように地面に着弾し砂埃を上げて消える。
「そろそろこっちからも行くぜ!ソラ頼む」
「おうよ」
アラタは右手に錬金術で作った銃を展開し、ルフェイに元へ駆け出す。
「させません!プラント・バインド!」
ルフェイはアラタを接近を防ぐためにアラタを地面から出た太い木の根で高速しようとする。
「甘いぜ」
パァン!
バキバキッ
高速しようとき木の根に向かい銃の引き金を引く、すると木の根は砕け散る。
「やはり無理ですか。だったら、ウォール・オブ・ソイル!」
今度はルフェイの目の前まで近寄ってきたアラタの前に土の壁を出しアラタの進路を塞ぐ。
「うおっと。はあぁぁぁ!」
ドゴンッ
ドカーーーン!
目の前に土の壁ができ、一瞬驚くがアラタはすぐに土を砕くための攻撃に移る。銃を持った手と反対の手である左手の甲に光る文字が浮かび上がる。アラタは
「ん?いない・・・」
土の壁を砕いたが目の前にはルフェイがいない。
「後ろか!」
「正解です」
ルフェイはアラタの進路を塞ぐと同時に視界も妨げ、その隙にアラタの遥か後方へ飛行の魔法で移動していた。
「それにしても、移動する姿は見えなかったな」
「ふふ。種明かしは試合が終わった後です」
「なら早く試合を終わらせて答えを聞かなくちゃな」
アラタは言い出すと同時にルフェイの元まで全力で駆ける。
「ロック・ニードル!」
ルフェイが呪文を唱えるとアラタに向かい地面から岩の棘がはえて行く。
「うおぉぉぉぉ!」
アラタは真言術で地面を殴りつける。殴ったところを中心に大きな範囲にクレーターができ、岩も砕けてしまう。
「嘘!?」
ルフェイがその拳の威力に驚きの声を上げる。
「このままいっきにつめさせてもらうぜ」
さらにスピードを上げてルフェイに近づき、ルフェイの4mほど手前まで到達する。
「かかりました!ガード・リフレクション!」
ルフェイの体を緑の幕で包まれる。次の瞬間にアラタとルフェイの周りに炎の弾が出現する。
「呪文を唱えた様子はなかったけどな?」
アラタがルフェイに問う。
「それでは少しだけ種明かしをしましょう。私が最初に放った炎の弾には炎系統の魔法以外に光系統の迷彩魔法も重ね掛けしてありました。弾が地面に着弾すると同時に炎の弾を光の屈折で見えなくなるようにしました。」
「なるほどさっきの移動の瞬間が見えなかったのも迷彩魔法か」
「正解です。そして!フリージング・ウォーター!」
呪文を唱えると炎の弾の周りに水が発生した。
「光の屈折は炎に集まるようにしていました。今の炎の温度はとても高くなっています。」
ルフェイが起こそうとしているのは高温の物質と水とで発生する水蒸気爆発だ。この距離ではルフェイも巻き込まれるが、先程の防御魔術でガードされているのでダメージをおう心配はない。
「アラタさん降参するなら今のうちですよ?」
「まだだ!」
「!?」
ルフェイはアラタが降参すると思っていた、だが帰ってきた答えは予想とは違うものだった。アラタは腕を上げる。
「何かされる前に!」
ルフェイの判断は正しいが遅すぎた。ルフェイの魔術の完成より早くアラタの手が振り下ろされる。
「
パアァン
「ふえ?」
ルフェイの魔術は周りにある魔力ごと消え去ってしまった・・・服も一緒に。
「キャアアアアァァァァァァァ!!」
現状を理解したルフェイから悲鳴が上がる
「Oh・・・・」
「見ないで下さあぁぁぁい!」
ゴスッ
アラタはルフェイが持っていた杖の先端で思いっきり頭を殴られた。
‐数分後‐
ルフェイはアラタが錬金術によって生み出した服を着ている。幸いソラが形状を覚えていたので元の服と同じものが出来た。
「うぅぅ。もうお嫁に行けません・・・」
「ルフェイ」
「なんですか?」
「自分でやっといてなんだが・・・ごちそうさまでした。」
「いわないでください。こうなったら・・・」
ルフェイは立ち上がりアラタの元まで行き少しもじもじする。
「なんだルフェイ。おしょんか?」
「違います!えーとですね」
「おう」
上目使いでアラタをみながら
「もう、アラタさんに責任をとってもらうしかありません・・・」
「へ?」
「アラタさんに責任をとってもらいます!」
「それは大歓迎だ!」
「本当ですか?」
「おう」
「言質とりましたからね」
「じゃんじゃんとってくれ!」
「取り合えず私の家に行きましょう・・・」
トリニティセブンを読み返しているのですがやっぱり私はリリス先生が一番好きですね!
小説の感想もできれば欲しいので送ってくださいよろしくお願いします。