私だけの星 ずっと輝いてるよ   作:ヴァイロンオメガファントム

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あるゲームが面白くてこっちを放棄してました(笑)

比企谷たちはなにを踊っているのか、それはご想像にお任せいたします。あと心情、情景の説明は少なくしてます。イメージを膨らませてお読みください。(願望)


雪ノ下陽乃 初めての…

時は少し戻り雪乃side

 

 

私は本番を控えてる比企谷くん達と別れ、一般会場席にいると思う由比ヶ浜さん、一色さんと合流するために歩いていた。だけど人が多すぎて少し酔ったために、近くにあったベンチに座り少し休んでいた。

 

「ふぅ…」

 

早く行かないと由比ヶ浜さん達が心配してしまう。それに比企谷くんと姉さんのダンスも始まってしまう。

でも風が気持ち良い…もう少しだけ─

 

「あっ…」

ふと空を見上げると、そこにはさっき姉さんが「私」と言っていた星があった。

 

 

─…初めてだった。姉さんの涙を見たのは…

いつも冷たい表情で私をからかう姉さんの面影などは一切なく、そこに写っていたのは、涙を流しながらずっと星を見ている弱々しい姉さんだった。

正直私は、どう振る舞えばいいのか分からなかった。あんな姉さんを見たのは初めてだったから。

比企谷くんが奉仕部を頼ってと言わなかったら─私は昔と同じ過ちを繰り返すところだったのだろう。

 

「やっぱり駄目ね…私は─」

 

昔から何も変わらない。少しは成長したと思っていたのに、本質的なところは何も変わってなどいなかった。だから…

 

 

……そろそろ行きましょう、由比ヶ浜さん達が待っているから。

私は再び、会場席へ歩きだした。

 

 

 

一般会場席にはたくさんの人が来場している。この学校の教師や生徒、卒業生。そして特別席などには、この地域の企業の社長達やその秘書などたくさんの人がいる。当然、私の母もいる。

このイベントは表は祭りみたいなものだが、裏では大人達の醜い争いみたいなものがある。

そして私たち『雪ノ下』は特別席で、私は本来なら母さんの横で見なければいけないのだけれど、我儘を言い、なんとか由比ヶ浜さん達と見ることを許された。

由比ヶ浜さん達を探していると遠くから声が聞こえてきた。

 

 

「ゆきのーん!こっちだよ〜!」

 

声の方向に顔を向けると、由比ヶ浜さんが座って手を振っていた。そのとなりには一色さんではなく小町さんがいた。

やはり一色さんは生徒会関係者なのだから別の席なのかしら?

 

「雪乃さん!こんばんわです!」

 

「えぇ、こんばんわ」

 

「いろはちゃん、生徒会関係者なので別の席から見ますって!すごい落ち込んでたけどね」

 

「そう…それは残念ね」

 

「でももうすぐだね!ヒッキーのダンス!」

 

「そうね」

 

「小町もお兄ちゃんの踊ってる姿を見るのは久しぶりなんですよ〜」

 

「そーなの??楽しみだな〜ヒッキーのダンス」

 

「あまり期待しないほうがいいと思いますよ?昔、すごかったんですから!」

 

「え!どんな風に?」

 

「ものすご〜く!気持ち悪い動きでした〜!さすがの小町も少し引いちゃいました」

 

「身内にまで引かせるなんて…さすが比企谷くん、と言うべきかしら…」

 

しかし姉さんに仕込まれてるのなら、おそらくそこそこ踊れるようになっているはず…

昔の比企谷くんの話題で盛りがっていると会場が少し暗くなり観客の拍手とともに袖から比企谷くんと姉さんが舞台に上がってきた。

 

「あ、お兄ちゃん眼鏡かけてますね〜!」

 

「あ!ほんとだ!ゆきのん見える?」

 

「えぇ、見えるわ。大丈夫よ」

 

「うわぁー!!陽乃さん、ちょー綺麗ですね!」

 

「ゆきのんもあーゆうドレス、絶対似合うよ!」

 

「そ、そうかしら?」

 

 

ステージではメガネをかけた比企谷くんと白いドレスを着た姉さんが位置の調整をしていた。

 

「ねぇねぇゆきのん、あれ何してるの?」

 

「おそらく…広さの確認だと思うわ。練習をしていたところの広さと実際のステージの広さは違うのだから最後の位置の確認ね」

 

「へぇー、雪乃さん詳しいんですね!」

 

「昔、姉さんに聞いたのよ」

 

そう、昔から…

 

「…でもやっぱりヒッキー、メガネかけると大分印象違うね」

 

「そうね、あの比企谷くんが比企谷くんじゃないみたいだわ」

 

「お兄ちゃんは昔からそうなんですよ〜眼鏡をかけると格好良くなってしまうのです〜」

 

「まぁヒッキー、『目』以外は普通にいいもんね」

 

「そうね…『目』、以外はね」

 

「ですけど!これがまた不思議で、眼鏡をかけるとその『目』がいい感じになるのです!」

 

比企谷くんずっと眼鏡かけてれば…いやなんでもないわ。

…姉さんたちが位置について動かなくなった。曲を待っているのだろう。…姉さんが曲を待つその姿勢は相変わらず美しかった。

昔から変わらないその姿に私は見惚れていた。

そして曲が流れ出した。姉さんが動きだし、比企谷くんも動き出した。

 

 

─さすが姉さんだわ、動き1つ1つに無駄がない。姉さんは自分の魅せ方を知っている。こう動けば見てる人にはこう見える、というのを誰よりも熟知している。

─私は昔から見ていた─姉さんはダンスのイベントがある1週間前から前日にかけて、誰もいないところでずっと振り付けの練習していた。それは姉さんや、体の弱かった私のためじゃない。『雪ノ下』のため。『雪ノ下』という看板に泥を塗らないために、姉さんは必死に練習していた。今は1日もあれば振り付けは簡単に覚えれるみたいだけど。

今回のダンスも、完璧な仮面で、完璧に踊りきるつもりなのだろう。『雪ノ下』のために。

 

「姉さん…」

 

私は誰にも聞こえないよう小声で呟いた。さっきのあんな姉さんを見てしまったら、やっぱり姉さんは無理をしているのではないかと、さすがに私も心配してしまう。

私が姉さんのことで心配していると、隣は

 

「うわぁーー!あれ!お兄ちゃん!?お兄ちゃんなの!?」

 

「ヒッキーが……ヒッキーが格好いいよ!!ねぇみて!ゆきのん!」

 

「え、えぇ、見ているわ」

 

比企谷くんを見て驚いていた。確かにこれには私も驚いた。

あの比企谷くんが華麗なステップでキレ良く踊っていたから。さっき、小町さんから話を聞いて勝手に比企谷くんのダンスの印象を悪い方向で捉えてしまったが、瞬く間にその印象は崩れ落ちていった。

そしてその動きは、小町さんの話で聞いた気持ち悪い動きではなく、むしろその逆でプロのダンサーみたいで別人みたいだった。

姉さんが教え込むとたった1日でここまで上達するものなのね。さすが姉さんだわ。

 

「え、え、小町〜あんな格好いいお兄ちゃん知らないよ…」

 

と顔を赤くしながら言っている小町さん。それと…

 

「ヒッキー…ヒッキー…」

 

とずっと比企谷くんを呼んでいる由比ヶ浜さん……ちょっと怖いわ、

 

まぁ比企谷くんもあそこまで踊れたら上等。周りの観客も歓声をあげている。これで母さんも満足はするはず。

 

 

 

踊りもクライマックスにきているのだろう。そして私は気づいてしまった。ある違和感に─

 

 

姉さんの表情がいつもと違うの。さっきまではいつもの仮面を被った姉さんだった…だけど突然仮面が外れたようにみえた。比企谷くんと近くなりだした辺りから──

 

 

 

 

 

 

陽乃side

 

もうすぐ曲が始まる。私は最初の姿勢で待機していた。比企谷くんを横目でみる。うん。やっぱり眼鏡似合ってるよ。格好いい。

 

…………今日はいつもと違う。隣に比企谷くんがいる。なんか凄い安心してしまう。だけど気は抜けれない。『雪ノ下』のために完璧に踊りきらないと。お母さんは当然、お偉いさんたちも沢山みてる。ここで失敗したら『雪ノ下』の恥だもんね……私はまた偽りの仮面を被る──

 

 

 

曲が流れ始めた。私から始まるこの振り、比企谷くん付いてきてね。

──向こうにとある株式会社さんのお偉いさんが見える。一度御会いたことがある。歳は50代ぐらいだろうか。あの人は私の事、凄くいやらしい目で見てたっけ。なら…こうやって魅せてあげればこっちのもの。

次はあっちの人。あっちの人にはこうかな。ふふっもう何でも分かっちゃうよ。

 

次は比企谷くんがメインの振りだっけ。比企谷くん、足とか大丈夫かな?筋肉痛になりかけてるって言ってたよね。ちょっと心配。でもさすが比企谷くん、良く踊れてるよ。この動きならお母さんも満足かな?

 

 

丁度、振り付けも半分くらい。私も比企谷くんも今のところ失敗なく踊りつづけている。

私は踊りながらこんな事を考えていた。比企谷くんのことだ。

 

比企谷くんなら雪乃ちゃんを変えてくれるかもって思っていた。雪乃ちゃんのことを理解し、彼女の元へ踏み込んでくれる人が比企谷くんだといい、私はそう思っていた。その反面私はそれが羨ましかった。

けどさっき、比企谷くんは私の依頼を引き受けてくれた。すごく嬉しかった。私を助けてくれようとする人がいる、そう思ったから。それと同時に思ったことが1つ──彼は雪乃ちゃんには勿体無いなぁと。

このことは前々から少し思っていた。だから、比企谷くんは雪乃ちゃんのもの、と思い込んで考えないようにしていた。

けどもう、それは無理かも。やっぱり雪乃ちゃんには勿体無い。雪乃ちゃんが一歩踏み出す勇気が無いのなら、彼を私のものにしちゃおうかな…なんて。

 

 

けど彼は言う。本物がほしい、と

 

 

私は本物なんてないと思っている。おそらく目にしたって信じられない。本物なんて幻想があるから今の比企谷くん達3人みたいにいつまでたっても動きだせないの。

嘘、欺瞞、上辺だけの取り繕った関係、私は今までの人生で嫌と言うほど目にしてきた。それを仮に『偽物』とするのなら、その偽物があるからいつしか私に偽りの仮面ができてしまった。

そして私は偽りの仮面の中の本当の自分を見つけてほしいと彼に頼んだ。

 

本物があるかどうかなんて分からない。彼も分からないから本物がほしいと願い続けている。

 

私は……本物があるかどうか確かめるなら………比企谷くんがいい。……ううん、彼じゃないとダメ。

 

 

 

 

─うん決めた。比企谷くんを私の物にする。そして2人で本物があるのかどうか試し続けたい。んじゃその為には私を意識させないとね。よし。丁度今から2人の距離が近くなり愛し合う表現が多くなる。これを最大限に活かそう。まずは…

 

 

「比企谷くん」

 

「なんですか」

 

「おもいっきり愛し合うよ」

 

「えぇ…頑張ります…」

 

これで良し。比企谷くんは意外に責任感強いから、こう言っとけばおもいっきりきてくれる。

 

2人の表現が交差する。そして私は驚いた。比企谷くん意外に積極的!結構がっしり私の体を触ってきてくれる。練習でもここまでがっしりじゃなく、優しい感じだったのに!そして今の比企谷くん凄く格好良いから、これは不覚にもドキッとしてしまった。

 

私も負けてられない!おもいっきりいっちゃう!こんな感じの比企谷くんとかめったに見ないし、今のうちに堪能しとこ。

…楽しい…今凄く楽しいよ!比企谷くん。

 

 

最後はステップからのキスのフリ。

あーあ…もう終わりか〜、楽しい時間ってあっという間だな〜

…もう少し比企谷くんと愛し合いたかった。例えそれが愛し合う『表現』だとしても、こんな楽しい時間をくれた彼には凄く感謝してる。

今日1日、急なお願いだったのに引き受けてくれた比企谷くん。必死に振り付けを覚えようと、慣れない動きに体がガタガタになりながらも練習をしていた。今もおそらく限界なのだろう。なんかお礼しなくちゃね。

 

 

全く……君は…… 

 

 

 

………………そして気づいたら、私の唇は比企谷くんの唇に当たっていた。

 

あれ?キスする予定までは無かったんだけど……え、嘘…え?

 

 

私、ファーストキス…あげちゃった…

 

 

そして舞台が暗くなる。暗闇の中で比企谷くんの声が聞こえた。

 

「な、何するんですか!?」

 

キスはするつもりじゃなかった。でもまぁしちゃったものはしょうがない。比企谷くんも少しは私を意識するかもしれないし。

その手始めとして、と考えれば…

 

「どう?お姉さんのお味?」

 

「どうって…」

 

 

…伝わらないかもだけど私もドキドキしてるんだよ?今比企谷くんの手を私の胸に当てて確かめさせたい。それぐらい今の私の心臓の鼓動は激しかった。

 

照明が暗転した。私達は礼をし舞台を降りた。まだ比企谷くんとのキスの感触がにわかに残っている。

 

───私の初めての…… 

 

顔が熱くなっているのを感じる。まさかキスしちゃうなんて…大胆な私。比企谷くん嫌だったかな…嫌だったらどうしよう…

 

 

もうこんな気持ちじゃ、仮面も被れないよ。私今どんな顔してるんだろう…

 

 

比企谷くんが後ろを歩いている。私は、顔が赤いのを見られないように必死に髪で顔を隠しながら歩いていた。

 

 

 

 




陽乃さんは恋はしたことあるのでしょうか…(ーー;)

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