【本編完結】影とうたわれるもの~二人の白皇再構成~   作:しとしと

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 軍議中、オシュトル(ハク)が長として立っているのと、オシュトルが長として立っているのとでは緊張感が違うと思う今日この頃。


第三十六話 任命するもの

 エンナカムイには濃い戦の匂いが漂っている。

 物量の増加による馬車の行き来、兵装の違う数多の軍兵の行進、各国よりの使者が頻繁に門を潜るなど、来る決戦が近いことを民は感じているようだった。

 

 そしてある日のことである。

 殊更に驚きをもって迎えられたのは、各国の長とそれに並ぶ人物達。

 クジュウリ皇オーゼンと並び歩くヤシュマ他数多の兄妹達、イズルハ皇ノスリに連れられるゲンホウと各氏族長、海を隔ててナコク、シャッホロよりソヤンケクルとイタクが入国する。

 

 頂に立つ者としての貫禄を抱く彼らは、次々とエンナカムイの門を潜り、エンナカムイの城への道を歩く。道中遭遇したエンナカムイの民は平伏する頭を上げる暇すらない程に、迎えられた各国の長と付従う兵は長蛇の列であったという。

 民は理解した。正しく今日、決戦が始まるのだと。

 

「聖上、只今参上つかまつりました」

 

 そして、ここ謁見の間にて真の聖上を掲げ、オシュトル陣営に与する皇とその幹部が集結することとなった。

 

「うむ、遠路遥々よくぞ来たのじゃ、皇達よ」

 

 謁見の間の奥で堂々と座る聖上、オシュトルに対し、一同並んで頭を低くしている。

 正に壮観である。ただ一つ疑問があるとすれば──

 

「……なあ、オシュトル。やっぱり自分もあっち側に行きたいんだが」

「今更何を言うのだ、ハク。其方はこちらである」

 

 小声でオシュトルに抗議するも、苦笑交じりに否定される。

 そう、自分はまさに今、平伏する彼らを見やる聖上やオシュトルと共に並んで座っているのだ。

 他の幹部や、ムネチカ、この国の皇であるイラワジや皇子キウルですら壁側に座っているというのに、こんな場所耐えられない。

 

 オシュトルが表情を改め皆に一瞥した後、本日の題を説明した。

 

「皆、聖上の信、そして某の嘆願に従いよくぞこのエンナカムイまで参った。本日より、我らは共に帝都に向けて進軍、オムチャッコ平原にて陣を構える」

 

 その言を一同は緊張した面持ちで聞いている。

 そう、ついに決戦が始まるのである。勝利し生き残った方がヤマトを継ぐ者として立つのだ。

 

「ヤマト樹立の際に幾度となく決戦の場となったオムチャッコ平原、再びヤマトを巡って決戦の地となるとは……血沸き肉躍るとはまさにこのことだね」

「だが、オシュトル殿よ、俺達をここに集めた理由は何だ?」

 

 ソヤンケクルの微笑と、ゲンホウの疑問に答えるように、オシュトルは言葉を返した。

 

「うむ、ここに集ってもらったのは他でもない──ライコウに策を知られぬため、である。故に、部隊の長として其方らのみを集めたのだ。そうだな、ハク」

「ああ、ライコウの情報網は広い。少しでも盗み聞きされる可能性の少ない、安全な場所で軍議を行いたかった」

 

 そう、オムチャッコ平原で現地集合して軍議でも良かったのだが、ライコウは一の情報で十を知る。

 ライコウにとって、事前の陣の形や物資からもその作戦を読むことは容易い。この作戦は動揺と速度が重要である。事前に読まれることだけは避けたかった。

 

「なるほどね……ライコウとはそれほどの相手だと」

「ああ。ナコクで戦ったあんたならよく知っているだろう?」

「……確かに、警戒していて損は無いだろうね」

「軍議が終われば、我々は直ちに進軍する。マロロには本日より既に先遣部隊を任せ、街道の占拠と陣の構築に取り掛かっている手筈である」

 

 オシュトルの言う通り、マロロは既にオムチャッコ平原へと足を進めている。

 決戦において、全ての献策に関わり、全ての情報を統括した采配師である。ライコウと接敵したとしても持ちこたえられるだけの戦う力もあり、動向も探れる正しく有能な将である。

 オシュトルも自分も、今日の早朝足早く出ていくマロロに全てを任せられる程に信用していた。

 

「まあ、マロロに全て任せるのも忍びない。さっさと軍議を終わらせて、自分達も後に続こうと思う」

「そうだね、我らも現地の様子はしっかりと目に収めておきたい」

「うむ。ではその軍議を兼ねて、早速各々に役職を命じたい──聖上」

「わかったのじゃ。まず──」

 

 皇女さんが、書簡を開きながら一同に決戦における役職を任命していく。

 その役職については、以下である。

 

 先手──長、ムネチカ。副長、キウル。エンナカムイ軍指揮。

 右翼──長、オーゼン。副長、ヤシュマ。クジュウリ軍指揮。

 中軍──長、ノスリ、副長、ゲンホウ。イズルハ軍指揮。

 左翼──長、ソヤンケクル、副長、イタク。シャッホロ、ナコク混成軍指揮。

 遊撃──長、シス。四国混成軍指揮。

 後詰──長、イラワジ。副長、ネコネ。エンナカムイ混成軍、補給部隊指揮。

 隠密──長、オウギ。副長、オシュトル近衛衆、隠密衆混成軍指揮。

 

 そして、本陣には──

 

「そして、軍を統括指揮する本陣。副将兼、采配師はマロロ、そして総大将は──ハク、其方じゃ」

「な……!?」

 

 一同が驚愕に包まれる。

 ああ、自分でもよくわかっているさ。荷が勝ちすぎていることなんてな。

 当然のように各皇から疑問の声が上がる。

 

「な、なぜ、オシュトル殿ではなく、ハク殿が総大将なのですか?」

「それは、某から説明しよう。某は、此度の決戦……ある者との決着をつけねばならぬ」

「ある者……まさか」

「そう、同じ仮面の者──左近衛大将ミカヅチである」

 

 オシュトルとは、以前よりこのことについて度々協議してきた。

 何とかオシュトルを総大将として置けないか、自分じゃなく別の奴にできないか、何度も何度も思案したが──ミカヅチと誰が戦うのかという問いに、結局はこの答えに落ち着いてしまった。

 

「仮面の力は……強すぎるのだ。千の軍など容易く討ち滅ぼす。余波だけで死傷する者も出るであろう。であれば、某とミカヅチだけで、決戦の場から離れたところで決着をつける他ない」

「なるほどのお……」

「おいおい、ライコウと打ち合わせたわけでもないんだろう? オシュトル殿と同じ場にミカヅチが現れるか?」

「ゲンホウ殿の言は尤もである。故に、以前より立地を調べ検討は付けてある。某がそこにいれば、確実に阻止しにくるであろう場所に」

「……もし、それがうまくいけば」

「某とミカヅチは、互いの勝利を賭け一騎打ちをすることになるであろう」

「……双璧を成す君たちの戦いを見られないことは残念だが、そうであれば決戦の指揮など出来よう筈もないね」

 

 ソヤンケクルは納得したように言う。

 しかし、総大将が自分であることに納得できぬ者は未だいた。いつもの温厚な様子は鳴りを潜め、大柄な体をもって不審な目で自分を見た。

 

「オシュトル殿」

「オーゼン殿、何か」

「儂らは勿論聖上の御旗に集っとる……しかしの、オシュトル殿に指揮されるからこそ兵も信じて命をかけるっちゅうもんじゃ」

「……」

「オシュトル殿よりも、このハク殿の方が儂らを動かせるっちゅう証左、見せられるんかいの?」

 

 難しい話である。

 イズルハ、ナコク、シャッホロは、ハクとして交渉してきたことからも幾許か信頼度はある。しかし、クジュウリ遠征の際に彼らと相対したのは、オシュトルの影武者をしていた自分である。

 オーゼンの中では、未だにオシュトル本人が彼らと交渉したことになっているのだ。

 

 さてどうするかと頭を悩ませていると、オシュトルが泰然として言葉を発する。

 

「……証左なれば勿論ありまする。これまで数多の武功を立ててきたハク殿のこと、オーゼン殿であれば適正な評価を下しているのでは?」

「それは勿論じゃが、それは他国でのことじゃろうて。クジュウリではハク殿の名声は轟いておらんのが現状じゃけえの」

「……であれば、このことをお伝え致そう。オーゼン殿、クジュウリへと赴き、其方の信を勝ち取った存在、それは某ではなく、某の影となって動いていた……ハクなのです」

「おい、オシュトル!?」

 

 それ言っちまうのか。

 オーゼンがここで離反したら勝てるもんも勝てなくなるぞ。そう危惧してオーゼンを見ると、その反応は自分の予想とは違うものであった。

 

「……そうか、ようよう、言って下さいました。オシュトル殿」

「やはり、気づいておられましたか」

「ここ最近じゃがの。ルルティエの目がの……最初は違和感も無かったが……」

「そうであったか……オーゼン殿、本来であれば同盟を揺るがしかねない事実である。そなたを裏切るような真似、謝罪しても許されぬ行為であろう」

「いいんじゃ、オシュトル殿。シスからも事前に少しは聞いとっちゃ、あの情勢じゃ仕方なかろうて」

 

 そうだったのか。

 そう思って壁側に並ぶシスを見れば、気まずそうに視線を反らされた。シスも自分の演技に気づいていながら黙っていてくれたってことか。

 であれば、今明かしたことは良かったのかもしれない。ライコウに離反策として利用されることを回避したとも言える。

 

「オーゼン殿……重ね重ね感謝致しまする。もはやこの戦でオーゼン殿無く戦うことなど考えられぬ。何卒、我らと共に、そして某の影として動いていたハクを総大将として認め戦って頂きたい」

「うむ……ルルティエとシスが信用している漢じゃ。儂も信用するけえの」

「……オーゼン、騙していて、すまなかったな」

「いや、ええんじゃき、ハク殿。ルルティエを……シスを、何卒よろしく御頼み申す」

「……ああ」

 

 オーゼンは単なる自分への不信ではなく、己の中で何らかの決着をつけておきたいことだったのかもしれない。

 こうして、自分が総大将となることはここで認められ、自分を中心として軍議が進められることとなった。

 ただ、確認はしておかなければならないだろう。

 

「さて……慣れない総大将なんて任を負っちまったが……自分に対して他に異議を唱える者はあるか? 今なら受け付けるぞ」

「では、私から」

 

 毅然と手を挙げたのはソヤンケクルだ。

 しかし、文句を言おうという雰囲気ではない。にやりと不敵な笑みを浮かべているが、何を言うつもりだろうか。

 

「ナコクで言ったことを覚えているかい?」

「……いや」

「そうか、ではもう一度言おう。もし空白の左近衛大将に任ずるのは誰かとなれば、私は君を推す。君はオシュトル殿と並ぶ──新たな双璧だと言ったね」

「……ああ」

 

 そういえば、新八柱将樹立の際にそんなことを言われた気がする。

 冗談だと流していたが、今思えばソヤンケクルはこの光景をいくらか予想していたのだろうか。

 

「私だけでなく、オシュトル殿も自分に代わることができると認める唯一の男だ。仮面に選ばれし君を総大将として担ぐことなど訳ないさ」

 

 ソヤンケクルの言葉に続いたのはゲンホウとイタクだった。

 

「そうだな、イズルハの氏族達もハク殿にゃ頭が上がんねえ。いくらでも扱き使ってくんな」

「ナコク城もハク殿がいなければ落とされていたことでしょう。その手腕、存分に発揮していただければと思う所存です!」

 

 今、道は決まった。

 反対意見が多ければ多いほど、自分が総大将として動かなくていいと思っていたんだが、四国の皆が納得してしまったなら、もはや動く他ない。

 オシュトルを見れば、その光景をどこか遠い目で見つめていた。何故そんな顔をするのかと問いたかったが、今は軍議が先である。

 

「じゃあ、この決戦に限り、自分が総大将だ。これから戦場盤を見ながら現状と策を話すからよく聞いておいてくれ」

 

 謁見の間を軍議の場とするため、オムチャッコ平原を模した戦場盤と部隊を模した駒を用意させる。

 マロロのいない今、全ての策を説明できるのは自分の他にはオシュトルしかいない。オシュトルはオシュトルで自分に任せることが最善だと、ただ微笑を浮かべているだけだ。

 

 準備が終わって皆で囲み、さあどう切りだそうかと言葉を選んでいた時だった。

 

「なあ、ソヤンケクル。さっきも思ったが、血気盛んだった昔と比べて偉く畏まった口調だなあ」

「……君、あまり昔の話はここでしないでくれないかな。時の流れが私をこのように成長させたのだよ」

「はっ、今もそうやって相も変わらず突っかかってくるのは変わらんがね」

「君が言うな!」

 

 何だ、ソヤンケクルとゲンホウが喧嘩してるぞ。

 聞けば、旧知の仲であるという。アトゥイとノスリによれば昔からの喧嘩仲間だそうだが、流石に軍議中であるからしてオーゼンが語気を荒げた。

 

「わいら、聖上とオシュトル殿の御前じゃけえの、昔馴染の乳繰り合いはそれぐらいにしときよんなら!」

「す、すまない、オーゼン殿」

「そうやって直ぐ謝るのも歳の功ってやつだな」

「全く、君はガキ大将のままだな!」

 

 イワラジも懐かしい面々の喧嘩を見て微笑んでいる。何だろう、総大将の任、自信無くなってきたなあ。元からあるわけではないが。

 

 しかし、こういった光景はいつものことなのである。自分が頭として話し始めると、途端にこうして場がわちゃわちゃとし出すんだよなあ。

 自分の前だと気が抜けるのかね。

 

「おいおい、ゲンホウさんよ。もういいか?」

「ああ、すまねえハク殿。俺と並ぶ問題児が畏まってるもんだからよお、つい」

「彼は放っておいて、ハク殿、軍議を始めようか」

 

 ようやく本題に入る。

 皆が見守る中、地図と駒を指さししながら説明を始めた。

 

「まず、事前にわかっている兵力だが……こちらが僅かに勝っている。特に騎兵部隊は多く勝っているという状況だ」

「ふむ……それはどうしてなのですか?」

「こちらに賛同する国と、相手に賛同した国の兵力を換算した結果だな。後背を突かれないため帝都に駐留させなければいけない数も考えれば、兵力は大きく勝る、もしくは僅かに勝るといったところだ」

「なるほど……」

 

 実際に平原で相手の数を見てみないことには確信は持てないが、動かせる兵を考えればこちらの方が多いと言うのは共通の見解であった。

 

「また、シャッホロ海軍による川を使った奇襲によって、相手の兵糧や補給部隊も継続的に叩ける。であれば、それに対応する兵も広く配置しないといけない」

「ああ、海軍の本領発揮だ。期待していてくれ」

 

 この計算には、海運を握っていることも大きく関わっている。

 撤退戦も考えれば、帝都から平原に続く道にも兵を配備しておかなければ、シャッホロによって後背を突かれる可能性もあるのだ。ライコウが兵を割かずにいることは考えられなかった。

 

「故に……数は勝っている。であれば、まずは負けない戦をすることが肝要だ」

「……つまり、定石通り兵の損耗を抑える戦いをするってえことか」

 

 敵の出方がわからない以上、敵の戦略、陣形、練度、その他諸々の情報を得るために、緒戦は定石通り守りを固めることが大事だろう。

 

「最初は守りの堅い鶴翼の陣形を維持しながら、相手の策を知るところから始めたい。故に先手にも戦線維持を得意とするムネチカを起用している」

「相手の策とは?」

「向こうの陣形を見ないことにはわからないが……恐らく通信兵を用いた戦略を取るだろう」

 

 それは、自分が帝都に囚われていた時に見たライコウの手腕による確信であった。

 

「ナコクを攻める際だけでなく、この広いヤマトの情報を瞬時に得るため通信兵を多く使っている。その殆どを此度の決戦に用いたとすれば……」

「……しかし、通信は基本一対一、三名以上の複数処理は難しいのでは?」

「まあ、普通ならな」

 

 しかし、相手はライコウだ。思いもよらぬ通信兵の扱い方をしてくる可能性はある。警戒はしておいたほうがいいだろう。

 

 ただ、朝廷に囚われていた自分を助けるため、鎖の巫女の姿を見せたこともある。

 こちらが鎖の巫女の能力を扱っていることも向こうは十全に理解しているため、通信兵ありきの戦略ばかりを取ることはないかもしれない。

 

「その、通信兵とやらを使った戦略ってのは具体的にはどういう戦略なんだ?」

「怖いのは……用兵だな。通信兵を各部隊に置いていれば、有能な将は必要ない。言うことさえ聞いて動いていれば、全部隊にライコウが複数いるのと同義だ」

「そいつは……確かに怖い話だ」

 

 情報戦。ライコウの真髄である。

 この時代にありて情報の真なる価値を知り、数多の通信兵を育成してきた男なのだ。わかっていても、対策しようがない鉄壁の策である。しかし故に──

 

「それでは、その通信兵を万全に用いたライコウを打ち破る策はあるのかい?」

「ああ、ライコウの弱点──それは疲労だ」

「疲労?」

「ああ、通信兵を用いて兵を動かせる。それは利点でもあるが……裏を返せばライコウには己で判断できる名だたる将が少ないということでもある」

「どういうことじゃけぇ?」

「つまり、あんたらみたいな歴戦の将は、オシュトルに言わせれば戦場の空気を知って動く……勘ってやつだな。こっちが指示しなくても、ある程度最善策を実行してくれる」

「おいおい……オシュトル殿よ、あまり買い被られても困るんだがな」

「ふ……其方らは八柱将の中でもその名を轟かせてきた名将である。某は信じるに足ると思う次第である」

 

 ヤマトの双璧オシュトルにそう評され、悪い気はしないのだろう。

 将達は否定もせず、好戦的な笑みを浮かべていた。

 

「まあ、つまりだ。相手方の兵は何をするにしてもライコウのみに頼っているから、常に指示を出し続けないといけないライコウは時が経つに連れ疲労していくってことだ」

「……まあ、理に適ってはいますね」

 

 イタクが納得するように頷いた。

 

「ライコウにとって、戦場は駒の動かし合いだ。駒が勝手に動くことだけは許さない。それが、自分たちとライコウの違う点だ。そこを攻める」

「長期戦にするんだね」

「最初はな……それを可能とする十分な数の兵糧もある。ライコウが疲労を見せた時、怒涛の奇策で以ってライコウの動揺を誘う」

 

 この日の為に、できうることは全てしてきた。

 オシュトルが頭として立っている間、自分は影としてありとあらゆる面から情報を遮断し、皆と策を用意してきた。

 必ず、実現する。そして──

 

「そして、本作戦の要となる部隊は、各国から猛者を選りすぐった本陣だ。マロロ、ムネチカ、キウルが直々に調練した混成部隊。この決戦のためだけに用意した部隊だ」

 

 皆にこの部隊の本質を語る。

 そして、策の全てを話す。一つ明かす度に、皆の表情には驚愕と不安が混じる。

 その驚愕と不安を解消し、また次の策を明かす。最後まで語った時には、皆の表情には期待と焦燥が混じっていた。

 

「このヤマトの決戦に、聞いたことも無い奇妙な策──ライコウの驚く表情が楽しみだよ」

「ああ、早く戦いたいもんだねえ。うっかり口を滑らしちまう」

「おいおい、それは勘弁してくれ」

「しかし、中々の賭けですね……策士策に溺れるともあります」

「ああ、イタクの言うことも尤もだ。この策は一つ狂えばライコウに届かない。しかし、オシュトルやマロロ、皆で相談した結果、この策が生まれた。実現できない時は負ける時だ。何としてでも実行したい」

「はい……」

「策の実行、陣形の変更は戦太鼓の合図で行う。譜面を覚えてくれよ」

「合図が無いときは?」

「あんたらに任せるさ。皇女さんの勝利を願って動く……同じ仲間なんだからな」

 

 軍議は終わった。

 ついに進軍の時である。

 

 待っていろライコウ。決戦の時は今そこまで迫っている。

 

 




ライコウとの決戦で原作と大きく違う点。
オシュトルが生きていること、マロロが味方であること、ハクがヴライの仮面を被っていること、ウズールッシャが絡むことは大きな要素ですね。

他にも……
ハク側は、囚われた際に、通信兵の存在とライコウの大義を知っていること。
ライコウ側は、ハクと鎖の巫女の存在を知っていること。

故に、この決戦の形も決着も原作通りとはいきません。
原作を超えられることなど無いため、書いては違うな、を繰り返しました。
そんな無い頭を絞って書いた決戦は、また後日添削の後投稿いたします。

うたわれ原作のBGMとか流しながら読んでいただけたら幸いです。

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