【本編完結】影とうたわれるもの~二人の白皇再構成~   作:しとしと

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第二十三話 同盟成るもの

 明朝、会議室にてイタクからの婚姻手段は無理という報告を受け、別の策を考えることとなった。

 まあ、自分は昨晩アトゥイから聞かされていたことでもあるので、前もっていくらか考えたが。皇女さん、ソヤンケクル、イタクが揃った後、自分の案を話すことにした。

 

「ハク殿、君の考えた新しい案とは?」

「皇女さんがここにいるからこそできる――新八柱将の設立だ」

「! なるほど……」

 

 ソヤンケクルが驚きとともに、納得の表情を見せたが、皇女さんとイタクはどういうことだと理解の外にある様子だった。

 

「現ヤマトは帝の決めた八柱将と近衛大将が互いの陣営に分かれて争っている。この歪な状態を解消することも含め、かの陣営の八柱将と近衛大将は裏切りの将とする――であれば、その空いた新しい枠が必要だ」

「八柱将ライコウ、ウォシス、トキフサ、デコポンポ、ヴライ、そして左近衛大将ミカヅチ……この六人の枠が空くね」

 

 改めて聞くと、八柱将ってほとんど朝廷側だよな。やはり油断ならない情勢であることを再確認する。

 

「その新八柱将の一人に、このイタクを推す」

「……なるほどなるほど、相変わらず末恐ろしいことを考える。朝廷にいる八柱将に正面から喧嘩を売る訳だね」

「ああ、そういうことだ」

「しかし、妙手だ。シャッホロ、ナコクにそれぞれ新たな八柱将がいる。それは戦乱において二つの国を聖上がお認めになったことに他ならず、併合などという手段は取り得ることはできない。忠義に篤いナコクにも納得できるものだ」

「わ、私が八柱将など……恐れ多い」

「何を言うのじゃイタク。そなたがミカヅチに勇敢に立ち向かったこと、ハクをこうして無事連れ立ってくれたこと、ハクより聞き及んでおる。その忠義に報いるのじゃから、これでは足りぬくらいなのじゃ」

「姫殿下……いえ、聖上、勿体無きお言葉であります」

「決まりだな。これで二心ありと謗られることもない。あくまで聖上に認められた対等の国としての同盟が立つ」

「私がアトゥイ殿を射止められなかったばかりに……ハク殿にはこのような献策までしていただきありがとうございます」

 

 まるで聖上に相対するかのような表情で、イタクは深々と頭を垂れる。

 そんな風に言われるとこそばゆいんだが。というか、アトゥイを射止められないのはイタクのせいではなく、アトゥイに問題があるだけだぞ。溺愛している父の前では言わんが。

 

「何を言うイタク、アトゥイはまだまだ父離れできない子どもだ。君でも落とすのは難しいさ」

 

 おいおい、おとーさんよ、嫁に行かないことあんま嬉々として言うなよ。それに一つ訂正させてもらえば、あの様子じゃ父離れしまくっているぞ。

 

 しかし一転、真面目な表情に戻ったソヤンケクルは、こちらに問い掛けてきた。

 

「しかし、他の新八柱将はどうするんだ? 特に左近衛大将は誰に任命する。新八柱将を擁立するなら、空白にしておくのはまずくないかい?」

「今はまだ空白でいい。あくまでその用意があることを示すだけだ。あんまりオシュトルに黙って勝手に決めすぎるのも良くないだろうしな」

「なるほどね……まあ、私がもしオシュトル殿なら、左近衛大将には――ハク殿、君を推すね」

「は?」

「左近衛大将に相応しき人物が他にいるとでも? あのミカヅチの侵攻を退けた仮面の者である君が。ヤマトの新たな双璧、並び立って指揮する姿が楽しみだよ」

 

 冗談じゃない、そんな肩書きを持てばどんな仕事が舞い込んでくるか。

 

「おいおいやめてくれよ。こんなぽっと出の自分より、今まで八柱将として支えてきた――」

「――私かい? 私はイタクと同列の八柱将でなければならないのでは?」

「む……確かにそうだが、まあ、その話は保留にしよう。とりあえず皇女さんの正式な布告は、ナコクへ赴き、イタクに八柱将の任を言い渡してから行うのが望ましいだろう」

「余はナコクへ赴けばよいのかの?」

「ああ、皇女さんとこの会議にいる者達、そして幾許かの兵でもって行軍する。勿論、疑われぬようナコクには予め意図を伝えておいた方がいいな」

「であれば、私から文と兵を準備しよう」

「文には聖上印も欲しいな。皇女さん頼めるか?」

「うむ、無論じゃ!」

 

 任せい、と言ったように胸を張る皇女さん。印を押すだけだが、えらく誇らしい。まあ皇女さんじゃないとできないことでもあるんだが。最初はどうかと思ったが、皇女さんがこちらに来てくれていて助かった。聖上御自らナコクへ赴くとなれば、ナコクに疑う余地はないだろう。

 

「さて、あとは――」

「同盟の証だね。それならばよいものがある。君達とは一蓮托生、運命を共にする固めの盃だ」

 

 そう言って扉の先にいたであろう部下に声をかけると、ぞろぞろと使いの者達が現れ、大きな瓶が運ばれてきた。蓋を開ければ、中から独特な甘い香りが漂い始めた。

 何でも、ハウラと呼ばれる地酒だそうだ。

 

「出来の良いのをさらに何十年も熟成させた、とっておきだよ」

「ほお、それは楽しみだ」

「さ、ハク殿、御仲間を呼んでくれ。ナコクへ文が届くには暫く時間がかかる。どう転んでも後悔の無いよう……宴を開こうじゃないか」

 

 宴か、それはあいつらも喜ぶだろう。

 一人二人呼びに行くのも束の間、案の定どこからか宴の匂いを嗅ぎつけた皆による盛大などんちゃん騒ぎが始まったのだった。

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 ネコネの姿を探していた。

 明朝、泊まっている部屋へ向かっても、どこかへ行っているようだとの言をもらい、宴の席でも結局会えなかった。クオンに話を聞いても曖昧に返され、私からは言いにくいから会いに行ってあげてとの言葉をもらった。

 なので、探しているのだが、これがまた見つからない。何人かに当てを聞いても、自分の背後を見て何かを察したのか、自分で探すべきとの言をもらってしまった。

 

「……ウルゥル、サラァナ」

「はい、何でしょうか」

「御用向き?」

「ネコネはどこにいるか、呪法で探してくれないか?」

 

 そう聞くと、双子は揃って目を閉じて拒否を示した。

 

「どうしても、と言われれば探すことは吝かではありませんが……」

「ご褒美」

「む……」

 

 最近はすぐこれだ。

 前回無理な要望を聞いたことによるご褒美がもらえてないことを、殊更に主張してくる。

 

「いや、クオンがいるし……」

「クオンさん、ですか。やはり……」

「決めねばならない」

「そのようです」

 

 双子は真剣な表情でお互いに頷き合う。

 

「何を決めるんだ?」

「主様の閨房八柱将です」

「最優先事項」

 

 同盟時に提案した新八柱将の話を聞いていたのだろうか。

 双子はふんふんと鼻息荒く――もない、あくまで当然といったかのような冷静な様子で提案してくる。その言葉の意味は、殊更に理解不能だが。

 

「……なんだそれは」

「まずは私達」

「主様の右近衛大将ウルゥルと」

「左近衛大将サラァナ」

「おいおい」

「そして各柱に、アンジュ様、クオンさん、ネコネさん、トリコリさん、ルルティエさん、シスさん、アトゥイさん、ノスリさん、マロロさん、エントゥアさん、シノノンさん、ムネチカ様、フミルィル……」

「八柱じゃ足りない」

「どうしましょう。これからのことを考え、八柱将改め、倍の十六将の方がいいかもしれません」

「名案」

「どこのどのへんが名案なんだよ!」

 

 体をまず八つに裂かれるわ。

 というか、いくつか入っちゃいけないお名前がありませんか、お二人さん。

 

「主様はこれからのことを考え、順番はしっかり決めておいたほうがよいと思われます」

「危険」

「お前達は自分の何を心配しているんだ」

「ただ、ちょっぴり私達への愛が重ければ大丈夫です」

「主様の双璧だから」

 

 だから何が大丈夫なんだよ。

 というか――

 

「そんなに女の名前が挙がるほど、たらしな事はしていないだろ」

「……」

「……」

 

 まじかよ、みたいな目で見るな。

 あくまで仲間としてだ。その気もないのに迫ったら失礼だろう。まあ、その気のある二人の誘いを袖にしまくっている自分としては何も言えないが。

 

「愛は平等に、時には重く注がなければどんなに美しい花でも枯れてしまいます。一度愛でたのであれば最後まで」

「甲斐性」

「とにかく……よくわからんが、ネコネは自分で見つけろって言うんだな」

 

 こく、とウルゥルサラァナは小さく首を動かして頷く。

 

「花に意識を向ければ、自ずとどこにあるかも、その美しさもわかるものです」

「灯台下暗し」

「ふむ」

 

 意識を向けるねえ、と思わずうなっていると、かさりと背後から物音がした。思わず振り返る。

 

「誰かいるのか?」

「っ!」

 

 しゅっ、と素早い残像を残して、柱の影に隠れた者が見えた。

 

「……誰だ?」

「ぅ……うな~っ」

「何だ動物か」

 

 そう思って双子を見ると、呆れたような視線で見られた。

 大丈夫だ、わかっているさ。神獣ヌコの鳴き真似したネコネだろ。何なら柱の影から尻尾見えているし。

 

「……」

 

 意識すれば見える、か。しかし、こう避けられていることがわかると、少し傷つくもんだな。

 

 ――いかん、ちょっとした悪戯心が芽生える。

 

「動物なら大丈夫か、二人とも行くぞ」

「はい」

 

 そう二人に声をかけながらも、自分はネコネが隠れた柱にずんずん近づいていく。

 そして、ネコネが出てくるのを待った。

 

 もう自分は行ったと思ったのだろう。恐る恐る、といったように、ネコネが柱から顔を出した瞬間、自分も柱から顔を出した。

 

「ぴッ!!?」

 

 その驚き様は大変面白いもので、全身が硬直したまま宙に飛び上がって驚いており、その尻尾もぴーんと天に向かって真っすぐ立っていた。

 あれだ、猫がいつの間にか背後に置いてあったきゅうりに驚く動画的な可愛さだ。

 

「くくっ、奇遇だな、ネコネ」

 

 余りにも驚いてくれるので、思わず笑ってしまう。その自分の様子を見て、さらに怒りが湧いたのか、目尻に涙を溜めて激怒するネコネ。

 

「お、お、お、脅かさないので欲しいのですっ!」

「すまんすまん」

「も、もう……ほんとに」

「……」

「……」

 

 あれ、終わりか? 脛は蹴らないんですか、ネコネさん。

 背後を見れば、双子は我関せずといったように距離を離している。別にこんな時に空気を読まんでも。

 

「……」

「……」

 

 わかっているさ。自分から言えばいいんだろう。

 

「……待たせたな、ネコネ」

「……え?」

「もう、無茶はしないさ。仮面の力も、自分には分不相応な力だったみたいだしな」

「……」

「暫くは、ネコネと一緒に裏方で働くさ。また、前みたいに勉強教えてくれるか?」

 

 こ、こんな感じの言葉が正解か? 確かめるように双子を見ると――おいやめろ、自分をそんなたらしみたいな目で見るな。

 

「……わ、わかったのです」

「え?」

「ハクさんは、すぐ捕まっちゃうくらいに弱くて駄目駄目ですからね、私がついてないと駄目なのです。兵法もまだまだ覚えてもらわないと兄様のお役には立てないのです」

「その通りだな」

「……神代文字だって、まだ途中なのです」

「そういやそうだな」

「だから――」

 

 ネコネの再び瞳が潤んできた。声も、少し涙声か。

 随分心配かけたようだ。ネコネには兄様のことや悪戯のことも含めて、そんなに好かれてないと思っていたんだが。ちゃんとした仲間になれていたんだな。

 

「もう、どこにもいかないさ」

「っ……わ、わかれば良いのですよ」

 

 ネコネはそう言いながらごしごしと目元を拭う。

 再び上げられた顔には、少しだがようやく元の可愛い微笑みが浮かんでいたのだった。

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 帝都会議室。

 ライコウは盤上をその手で操りながら、ウォシス、シチーリヤと共に今後の動きについて練っていた。

 

「シチーリヤ、イズルハはどうなった?」

「トキフサ様が応戦、しかし後退を迫られた模様です」

「ふむ、戦線の維持を誇るトキフサにおいても撤退を余儀なくされたか」

 

 ウォシスの撤退、ウォシスの言は、確かに間違ってはいなかったのかもしれぬ。

 しかし聞けば、エンナカムイの将にはオシュトル、ムネチカ、ヤシュマ、そしてそれらを指揮する采配師マロロがいたそうだ。オシュトルがいることによる戦意の高さと手堅い用兵術は勿論のこと、ムネチカの堅牢な前線意地戦法と、マロロの適切な戦線理解における采配が勝負を分けた。

 いくら数に勝り地の利があるとしても、凡夫であるトキフサのみでは荷が勝ちすぎた相手である。

 ナコクから急ぎ軍を引いていなければ、そのまま帝都に攻め込まれていた可能性も無くはない。帝都にて秘密裏に作らせている兵器も、未だ完成には程遠いこともある。

 はた、とウォシスを見れば、少し薄い笑みを堪えている。それが無性に気に障った。しかしとて信賞必罰、言わねばならないことはあるだろう。

 

「ウォシス、此度のナコク攻略に関する貴様の言、一理あったようだ。許せ」

「いえ、勿体無きお言葉です」

「しかし、俺に問うことを忘れてはならない。手足は、頭の指示無しに動かないものだ」

「承知いたしました」

 

 そして、かねてからの策について問う。

 

「そして……ウォシス、橋を落とせる手段が見つかったとの報告があったが、真実か」

「はい。帝都に残る資料からも、確実かと」

「実行は」

「今すぐにでも」

 

 これで懸念の一つは消え、実行の材料が増えたな。

 ウォシスの草の扱いについては、やはり一日の長がある。

 

「わかった。時機はまた追って伝える。下がるがいい」

「はい、ライコウ様」

 

 暫く盤面を眺め、やはり確認せねばなるまいと席を立つ。

 

「シチーリヤよ。我が愚弟を見舞いに行く。どこだ」

「ミカヅチ様ですか? 今は訓練場にいらっしゃる筈ですが……」

「そうか」

 

 ミカヅチは、ナコクより戻った際に深手を負ったという。しかも、ハクの手によって。

 ミカヅチから話を聞けば、仮面の力を十二分に使いこなし、その結果性格も好戦的なものへと変化したそうだ。ミカヅチより仮面の力を使う代償については聞いている。ミカヅチが今動けぬように、彼奴もまた少なくない代償を払っているはずだろう。

 

「調子はどうだ、我が弟よ」

「……兄者か」

 

 ミカヅチは訓練場で大剣を振ることもせず、ただ大振りに構えを取っていただけだった。満足に動けぬ奴なりの訓練法なのだろう。

 

「ナコクへの再びの侵略、できるか」

「……行けと言われれば、俺は行く」

「不調なのだな」

「……」

 

 一時期は剣も握れぬほどと聞いた。

 

「俺のこれは、油断の結果だ。ハクがまさか……」

「言い分は既に聞いた。次は勝てるか?」

「そう何度も使える力ではない、あれはな。であれば……俺が勝つ」

「それが再びの慢心でないことを祈ろう」

「……フン」

 

 衝撃。上段からのたった一振りで地盤が割れ、大量の砂塵が舞う。

 

「無論だ、兄者。俺はもう行ける」

「信じているぞ、我が弟よ。俺が真に信用して使える手駒は、そう多くないのだ」

「わかっている」

 

 奴等の同盟が刻一刻と迫っている。草の者からは同盟をより強固にするため、新たな柱を立てるつもりであるとか。中々に面白い手だ。かの国にいるハクの飄々とした表情が浮かび、思わず笑みが零れる。これではかねてより内乱を招くためにあった策動は効果が薄く使えまい。

 使える手とすれば、ウォシス配下の草が橋を制御する宝玉を手に入れること。そして、目の前のミカヅチによる全てを灰塵にする力のみ。

 

 開戦は近い。此度は、俺の勝ちとさせてもらおう――ハクよ。

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 自分たちは再びナコクへと戻っていた。

 此度の目的は、イタクへの八柱将任命と、シャッホロとの同盟である。

 

 ナコク首都ナァラ、ナコク皇とその重鎮達集まる場の中、皇女さんは凛とした立姿を見せていた。

 

「では、此度の朝廷軍を退けた名誉、そして余の忠臣ハクを守護した功において、ナコク皇子イタクを余の新たな八柱将に任命する」

「はっ! 聖上の拝命、しかと承知つかまつりましてございまする!」

 

 イタクは皇女さんに向かって深々と一礼し任命を受ける様を見せ、ナコク皇はその姿を誇らし気に眺めていた。

 

「次はシャッホロとナコクの同盟かの」

「ああ」

「では、双方前に出るのじゃ!」

 

 ナコク皇、そしてシャッホロ皇がそれぞれ皇女さんの前に出る。

 

「余の名の下、其方らは協力して敵軍を討ち果たすのじゃ! できるか、ナコク皇、そしてシャッホロの皇よ」

「我が命に変えましても」

「我ら聖上の名の下に」

「よき返事じゃ。では、ここに同盟は成った! 余は布告する! 聖上の名を騙る不届き者に天誅を。その力は、ナコクとシャッホロが余の名をもって示すのじゃ! 触れを出せ、余らの結束の証を!」

「はっ!!」

 

 随分、堂々とした姿が似合ってきたな。暫く前の少女らしい皇女さんとは大違いだ。

 と、思っていたのも束の間、皇女さんは式が終わった後にどたどたと勢いよくこちらに走ってくる。

 

「どうじゃったかの、ハク! 余の姿は!」

「助かったぜ。皇女さんじゃなけりゃ、できなかったことだ」

 

 そう伝えると、皇女さんはさらに喜色満面、照れたように笑う。

 

「でゅふふふふ、そうであろうそうであろう。余も其方ばかりに任せておれんからな。しかしハクよ、余への褒美は期待しておるぞ」

「ああ、わかっている。菓子でも持ってくさ」

「沢山じゃぞ? わかっておるな、沢山持ってくるのじゃぞ!」

「はいはい」

 

 威厳も何もあったものではないが、これもまた皇女さんらしい。

 さて、ライコウが手を拱いて見ているとも思わない。戦は近いだろう。さて、どうするか。

 献策の仕方について考えていると、イタクが真剣な表情で話しかけてきた。

 

「ハク殿、お話があります」

「ん? どうした」

「此度のナコク防衛における戦略、ハク殿には我が国の采配師に協力していただきたいのです」

「それは構わんが、いいのか?」

「はい、ハク殿がいれば心強い。そして願わくば――ナコク兵を主軸にして作戦を組んでいただきたいのです」

 

 なるほど、それを言いに来たのか。

 しかしとなると、同盟の意味が薄れてしまうが。

 

「……シャッホロとの同盟はどうするんだ?」

「シャッホロには船での援護や伏兵の処理をお願いします。朝廷と正面からぶつかるのは、我がナコク兵にどうか」

「……意図はわかる。皇女さんがいるからだよな」

「その通りです」

「しかし、皇女さんが八柱将にイタクを任命したんだ、それで十分じゃないか?」

「いえ、私だけではない、我が国としての強さを見せたいのです」

「……」

「我らだけで戦いたいのです。これは、聖上が御覧になる戦い、ナコクの民がいかに勇敢で、朝廷にも負けぬ強者であるかどうか御示ししたい。どうかハク殿、何卒ナコク軍を主力として扱ってください」

 

 無下にはできない願いではある。

 ナコク兵は確かに精強だが、相手はあのミカヅチ。犠牲は大きいだろう。しかし、それでも示しておきたいのだろう。

 

「わかった。献策の際に、考慮する」

「はい。そして、実際の戦となれば、ハク殿とその御仲間には、もしもの場合を考え宝玉を守っていただきたいのです」

「橋を制御するやつか」

「はい。安置所にて誰にも触れられぬ場所に隠しています。その道へと続く場所を、ハク殿の精鋭達に護っていただければ心強い」

「なるほどな。敵の狙いはこのナコクの陥落、そしてあの大橋だ。宝玉を守れば、橋は守られる」

「はい、御頼みできますか?」

「わかった、皆に伝えておく」

「ありがとうございます」

 

 では、自分にできることは後方支援だな。今回は、ナコクの力を借りて、戦働きなんてものは遠慮させてもらおう。

 ナコクの意地が通せるよう、そして自分が槍持つ必要の無いよう、せめて作戦だけでもいいものを考えないとな。

 

 しかし、作戦会議に入っても良い献策はできなかった。

 なぜならば、ナコクの参謀達の本気は半端でなく、ナコクの天然の要害を利用した籠城作戦には隙が無かったためである。

 前回は不意を打たれたものであったが、ここまで用意周到に作戦を立てていれば、たとえミカヅチであってもこの砦を落とすには容易ではない。

 自分の出番は無いようだと思っていたのだが――

 

「ハク殿からは何かありますか?」

「え? え、ええと、う~ん」

 

 突如意見を求められ、答えに窮する。

 どうしようかな。無いと言ってもいいが――そういえば、ネコネとの戦略本で見た項目があったな。

 

「話を聞いている限り、外からは容易には落とせないことがわかった。ただ、中から崩されるような場合は、あったりするのだろうか?」

「……確かに、ハク殿の言も考慮せねばなるまいな」

「そういえば、城には隠し通路があったはずだ。敵が掴んでいるやもしれぬ」

「おお、そういえばそうだ」

「では、ハク殿の御仲間や軍にそこを警護してもらえば」

「それがよい、それがよいぞ」

 

 話はまとまったようだ。自分の仕事が増えるという形で。

 

「ハク殿、申し訳ありませぬが、この城の設計図をお渡しします。この隠し通路と宝玉に至る道の調査をお願いします」

「自分たちで足りないと思えば、兵をいくらか回してもらうがいいか」

「あい分かり申した、都合をつけましょう」

 

 さて、ではあいつらを呼んで調査に入ろうかね。

 

 そして仲間を集め、設計図とにらめっこしながら地下を調査すると、ナコクの地下はまさに迷路そのものであった。

 天然の要害を利用した城というだけあり、地下にある大きな空洞を生かした排水路や自然経過でできた穴など複数個所ある。地図にも記されていない道がアトゥイやイタクからも示され、地図だけでは把握しきれていない道が多々あったのだ。これを護るとなると、戦力を分散せざるを得ない。

 

 その報告をかねて、ある人物に相談に伺った。

 

「――そして、この儂自身が宝玉を守るということですな」

「ああ、それが一番いいと思う。皇女さんの見ている前で、イタクが新八柱将としての功績を立てるためにも、皇はこっちに居た方がいいだろう」

 

 しかし、宝玉が安置してある部屋に繋がる道は一つだけ。その前には多々隠し通路があるが、そこは自分達で守ればいい。

 この国きっての武闘派である皇自身が最終防衛線として宝玉のある部屋を守り、そこに至る存在は自分たちが抑える。そういうことになった。

 

「ふむ、ハク殿がそう言われるのであれば、そうしよう」

「護衛は自分たちが務める。この部屋には決して立ち入らせはしないさ」

「分かり申した。しかし、儂だけでは荷が勝つな。信頼がおけ、武力に勝る宰相と大臣にも声をかけよう」

 

 籠城戦においては、イタク指揮のもとソヤンケクルが臨時の采配師として補助に立つ。そして現皇は、この国の最も大事な象徴を守る。それが、ナコクとの間で決めた采配であった。

 

 皇が宰相と大臣を呼んで先ほどの作戦行動について話をしている間に、自分は各伝令役に支持を飛ばす。

 

「各部隊の配置について、この通り伝達してくれ」

 

 地下地図と配置番号を振ったものを見ながら、各伝令に示していく。

 

「作戦行動は、隠し通路出口の警護だ。接敵した場合は伝令役を軸に周囲に知らせろ。応援が必要な場合に伝令役が負傷もしくは使えない場合は、残存している数字の大きい部隊が伝令役を担当し、残りは時間稼ぎだ」

「はっ」

「シャッホロ軍を隠し通路出口のある森に広く配置しておく、内部応援だけでは足りない場合は、戦太鼓を鳴らせば駆けつける手筈だ。各部隊必ず持っているようにしてくれ」

「了解しました」

「自分たちは、この地図にない場と、内部を警護する。確実にいるのはこの部屋だ。想定を大きく越えた事態があれば報告に来てくれ。以上、解散」

 

 伝令が内部残留部隊に各々伝えに行くのを見ながら、今度は自分たちの部隊へと目線を移した。

 さて、とクオン他数名の自分たちが誇る最大戦力を前に、今回の作戦行動を説明していく。所々の質問に答えを返しながら出た話の結論は、

 

「つまり、皇と宝玉がある部屋に繋がる、この場所を守るってことかな」

「そうだ」

 

 地図を指さしながら、隠し通路は無数にあるが宝玉のある部屋へ行くには、ここは必ず通らなければならない唯一の場所であることを説明する。この場所は多数の隠し通路の交差する場所でもありどこから敵が出てくるかわからないが、虱潰しに隠し通路を塞ぐよりは最大戦力でもって待ち構える方がよいだろう。

 

「場所の広さからいって、複数の敵が来たとしても接敵人数は抑えられそうですね」

「各出口や隠し通路には軍を配置しているし、そこを突破してきた猛者だけを自分たちは相手取る」

「腕がなるじゃない」

「うひひっ、おにーさんは決戦の場作りが上手やぇ」

「さ、あとは朝廷の動きだけだな」

 

 その思いを抱いたまさにその時、伝令が慌てて飛び込んできた。

 

「伝令! 朝廷軍の動きあり! イタク様より配置につけとのことであります!」

 

 来たか――ライコウ、そしてミカヅチ。

 宰相、大臣と話し込んでいた皇に駆け寄り、作戦開始の合図を求めた。

 

「ふむ、我が息子の面目躍如となることを祈るとしよう」

「大丈夫さ。ナコクがこれだけ一枚岩となっていればな」

「ありがとう、ハク殿。では儂は宝玉のある部屋で待機しておる」

「ああ、こっちも作戦行動を開始する。よし、いくぞお前ら」

 

 思い思いの返事が返ってきたあと、作戦行動を開始する。

 イタクにより城門は閉められ、徹底した籠城戦術が始まる。自分たちは心臓を喰い破られないように、中を守るだけだ。

 

 そして、宝玉へと繋がる場所に陣取った自分たちの前に現れたのは――

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 隠し通路の壁を爆音と共に消し飛ばし、濛々とした白煙の中に現れたのは、雷電を纏った一人の戦士だった。

 

「待ち伏せか。しかしここで会うとはな。やはり、俺と貴様は戦う運命にあるようだ」

「ミカヅチ……ッ!」

 

 ミカヅチについては、伝令により先駆け隊に姿を見せなかったとの報告があったが、まさかここの居ようとは。草の者に任せられぬと判断し、最大戦力を橋の破壊の為に用意したということか。それほどまでに宝玉の破壊はライコウにとって必須のことなのだ。

 

「久しいな、ハク。先日は世話になった――借りを返しに来たぞッ!」

 

 ミカヅチから閃光が迸り、目にも見えぬ速度の斬撃が振り下ろされた。皆で一斉に散るようにして避けるも、地に打ち付けられた衝撃は易々と床を破壊し、大量の砂塵が宙を舞った。

 

 ――仕方がない。

 

「皆、やるぞ!」

「応さ! 旦那を攫った借りを返すじゃない!」

「私達に任せてほしいかな!」

 

 ミカヅチを囲むようにして布陣する。

 キウルとノスリによる援護射撃に、アトゥイとヤクトワルト、そしてオウギによる前線維持、クオンやネコネによる支援が上手く嵌り、流石のミカヅチも待ち伏せによる不利を悟ったのであろう。

 しかし、それでも互角といっても遜色ない暴れ様であり、これだけのもののふを相手に継戦できるミカヅチはやはり剛の者であった。

 さらにとどめの一手をと自分が前に出ようとすると、ウルゥルサラァナに制される。ああ、わかっているさ。戦いは他の者に任せる、提案するだけだ。

 

「ミカヅチ、流石のお前でも自分達全員を相手取るのは不利だろう。引いたらどうだ」

「戯言を。しかし、やはり邪魔が入るのは興醒めよな。であればそろそろか……」

 

 再びの爆音。別の隠し通路より白煙を伴って現れたのは、異形としか表せぬ偉丈夫であった。

 

「にゃぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ」

 

 その声色に未知の恐怖と、旧知の間柄と再会したかのような、奇妙な違和感を感じ取る。

 顔は奇妙な仮面で判別不能、その体躯はヴライよりも大きく、ぎりぎり人間といってもよい形をしているが、所々の肉は裂け異常な匂いを発している。遡ってもこんな知り合いはいない。

 しかし、その声は、聞き覚えがあった。

 

「にゃぶ、ハク、にゃぶ、そちだ、にゃぶ、け逃げ果せるとは、にゃぶ、いかない、にゃぶ、よ」

「まさか――デコポンポ、なのか?」

 

 その疑問に答えたのは、奇妙な笑い声を上げ続ける異形ではなく、唾棄すべき物を見るかのようにしていたミカヅチであった。

 

「そうだ。貴様らに悟られぬよう、橋を渡らず共に長い時間をかけ大回りして来た。俺の経験する戦の中でも最も不快な進軍であったが、そのツケは貴様らに払ってもらうとするか」

「なぜだ……いくらデコポンポとはいえ、こんなことを」

「ハク、貴様が兄者を焚き付けたのだ。使えぬ手駒を使えるようにした……それだけだ。兄者も俺も、形振り構ってはいられぬ」

 

 デコポンポと命名されたそれは、ミカヅチと対していたオウギやヤクトワルトに突っ込みその巨躯から繰り出される重い殴打を浴びせている。

 

「ハクさん! こちらはお任せを!」

 

 オウギとヤクトワルトがデコポンポに瞬足の斬撃を振るうも、歪な金属音を響かせ弾かれた。

 

「おいおい、堅ェじゃない!」

「ふむ、肉に金属のようなものが混じっていますね。断つのは不可能でしょう。削ぎ落としていきましょう」

「応さ!」

 

 あの様子では二人に任せるのが得策か。そして、物理面で耐久性があるなら、呪法ならばどうだろうか。

 

「ウルゥル、サラァナ、そしてネコネ! ヤクトワルトとオウギの援護に回れ! クオンは支援役だ!」

「わかったのです!」

「わかったかな!」

「主様……」

 

 ウルゥルとサラァナだけが、自分の指令に対して不安げな顔をする。わかっている、無茶はしないさ。

 

「二人がさっさとあいつを倒してくれ。そしたらこっちに合流してくれ」

「御心のままに」

 

 ノスリとキウルの援護射撃を背に、未だミカヅチと打ちあうアトゥイに向かって走る。

 

「待たせたな、アトゥイ! 一緒にやるぞ!」

「ええんよ、おにーさんが来なくても。ウチ一人でも十分楽しんでるぇ! ええなぁ、ええなあミカヅチはん。ほんまええ漢やぇ!」

「ふん、シャッホロの姫か。なるほど死線は潜ってきたと見える――が」

「ッきゃん!」

 

 ミカヅチによる大振りの剣戟を受け止め切れず、アトゥイが吹っ飛ばされる。寸でのところでアトゥイの体を受け止めるも、あわや二人まとめて貫かれるようなミカヅチの追撃手は、ノスリによる阻止の矢がミカヅチを襲ったことで未然に終わった。

 

「アトゥイ、一人じゃ無理だ。自分と連携するぞ」

「……おにーさんが奪われてむしゃくしゃしてたのは、ウチも一緒け。ミカヅチはんに仕返しせんと気が済まないぇ! おにーさんにええとこ見せさせてーな!」

 

 普段オシュトルの強さを垣間見ているからこそのアトゥイの自信であろうが、ミカヅチの強さはオシュトルの強さとは違う。

 ミカヅチは強い。オシュトルと違い、容赦がない。普段は義と情を持ちながらも、いざ戦になれば徹底して義と情を捨てることができる。破壊的な武を示すことこそが最も犠牲の少ない道と信じて戦うミカヅチは、何より手強い。正しく奴は、オシュトルと双璧を成すものなのだ。

 

 アトゥイのぎらぎらとした殺意の目。心底この戦いに溺れた様子を見て、アトゥイの死期を感じた。何か言わねば、アトゥイの行動に紐を付けて制限することはできないだろう。仕方ない。

 

「……アトゥイの良いところはもう十分知っている。だが、そうやってヤケになって一人で突っ込むのはアトゥイの悪い癖だ」

「おにーさん……?」

 

 アトゥイにとって思わぬ言葉だったのだろう。不思議そうに振り返るアトゥイに、決意を以って伝える。

 

「お前の考えなど知るか。自分にもやらせろ、アトゥイ」

「……おにーさん、いつからそんな好戦的になったんぇ?」

「嬉しそうに言うな。酒飲み相手が減るのは、自分にとっても嫌だからな」

「うひひっ、素直じゃないぇ」

 

 大剣を肩掛けにして構えるミカヅチの眼前に向かい、鉄扇と槍を交差するように構える。

 ミカヅチは自分たちを見て、満足そうに笑った。

 

「さあ、死合え。貴様と再び会い見えるために、俺はここに来たのだ」

 

 ミカヅチの瞳が憤怒の色に染まったかのように光り、ぶれる。空間がねじ曲がったかのような速度で、自分の上半身を消し飛ばす斬撃が放たれた。

 

「くっ!」

「させないぇ!」

 

 アトゥイの突きが、ミカヅチの太刀筋にかち合い、鈍い金属音が響き渡る。危なかった、避けきれぬ速度で放たれたそれはアトゥイのおかげで寸でのところで回避できた。今度はこちらが支援する場面だ。

 

「……ほォ、やるな」

 

 アトゥイと示し合わせたわけでもなく、交互に攻撃を繰り出す。ミカヅチが剣を振るう前に懐に飛び込んで攻め続ける。そしてそこにまた絶妙の時機に矢が飛び、ミカヅチを防戦一方にさせていく。

 そして、足元に矢を受け、ミカヅチが思わずといったようによろめいた。

 

「――とったぇ!」

「ッ!」

 

 判断が早い。時間が緩やかにも感じられる速度の中、ミカヅチの口唇の端が歪む。

 やはり罠か。よろめいたフリで攻撃を誘ったのだ。悠々と構えアトゥイを迎撃せんと構えるミカヅチに、このままでは負けると直感し、思わず飛び込んだ。

 

「させるか!」

 

 ミカヅチではなく、ミカヅチの構える剣に向かって、鉄扇を叩き下ろすように振った。

 

「むッ!?」

 

 ほんの一瞬だけ、仮面の力を借りたその斬撃は、ミカヅチの罠を打ち破るに相応しいものだったのだろう。ミカヅチは構えを解き、大きく後ろに飛んでアトゥイの追撃を回避した。

 

「いいぞ、ハク。その力だ! 我ら仮面の者が死ぬるは、仮面の者がいる時だけだ。お前の限界を見せてみろッ!」

 

 ――タタカエ。

 

 ヴライの影が、頭にチラつき、酷い頭痛が襲う。

 

 ――タタカエ。ホノオヲマトエ。

 

 しかし、決めたのだ。

 

 すまんな、ミカヅチ。あまり力は使わないと約束した手前、お前の要望には応えられん。

 電撃を纏った剣戟を力任せに受け止めるのではなく、あくまで仲間たちとの連携を見越して避ける。

 きっと力任せに受け止めてしまえば、仮面の力に呑まれてしまうだろう。

 

「おにーさん! とってもいいぇ! ウチ、こんな楽しい戦い初めてやぇ!」

「ああ、そりゃよかったな!」

 

 だが、今は頼りになる仲間がいる。アトゥイがいれば、自分は支援だけでいい。こいつらは、早々やられたりはしないのだから。

 

「ハク、頭を下げろ!」

 

 ノスリとキウルの矢が迫る。ミカヅチが攻めても攻めても、ひらりひらりと避けては攻撃に転ずる自分を見て、ミカヅチの瞳にはやがて失望の色が浮き出ていた。

 

「フン、随分冷静に戦うのだな、ハクよ。あの時の覇気はどうした?」

「生憎、仲間がいる間は無理に使う必要もないんでね」

「そうか……」

 

 ちらり、とデコポンポを見やるミカヅチ。

 デコポンポは、耐久性と破壊力には自信があるものの、動きは緩慢であったようだ。既に再生能力も打ち止めのようで、防御行動すら少なくなっていっている。

 

「敗色濃厚か。まあいい、貴様が誘いにすら乗って来んのであれば、俺の役目はここまでだ。欲を言えば、あの時の貴様ともう少し剣を交えてみたかったがな」

「ミカヅチ? 何を――」

 

 一瞬のことであった。ミカヅチは背を向け、元の隠し通路へ駆けていった。

 

「逃げ……た?」

「どういうことだ、あの剛の者が……」

 

 キウルとノスリが唖然と呟く。

 

「追うけ?」

「いや、追撃よりも、今はとにかく状況確認が先だ」

 

 珍しく突出することもなくまずは意見を聞こうとしたアトゥイに驚きつつ、デコポンポに振り返る。するとどうだ、もはや動くこともなくただ奇妙な笑い声を上げ続ける肉塊がそこにはあった。

 

「ハクさん、いかがされますか?」

「助かるかどうかわからんが、一応拘束しよう。ウルゥルサラァナ、拘束呪法を頼む」

「わかった」

「御心のままに」

 

 文様が浮かんだ陣の中心で、未だ声を上げ続けているデコポンポも、やがて拘束呪法により徐々に見覚えのあるデコポンポの体へと収縮していった。とりあえず、一段落か。

 ミカヅチへの追撃命令を下すか判断に迷っている間に、宝玉のある部屋より、叫び声と物音が響いた。

 

「……嫌な予感がするじゃない」

「皇のいる部屋を確認したほうがいいかな」

 

 クオンの提案に皆が頷き、宝玉のある部屋へと急いだ。

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 部屋を勢いよく開け放つと、宝玉が安置されていた場所に宝玉は無かった。あったのは、血を流している皇と宰相。そして、宝玉と剣を手にし双眸より涙を流す大臣の姿だった。

 

「……ハク殿か」

「お前、内通者だったのか?」

 

 彼は献策時の頃より参加していた大臣だ。ナコクへの功績厚く、次期宰相とまで言われていた人物だったはずだ。

 しかし、現にこうして裏切りの現行犯を見てしまったからには、自分たちも武器を構えざるを得ない。宝玉を取り返す機会を窺いながらヤクトワルトやアトゥイに目配せし、じりじりと間合いを詰める。

 

「……許してください、ナコク皇。そしてナコクの無辜なる民よ。帝都に息子がいる私には逆らえぬのだ。ナコクの国も、橋も、皇も私の息子には代えがたいのだ」

「貴様……ナコクの誉れを、聖上のお心を裏切るかッ!」

 

 宰相は額から血を流しながらも、激昂した。

 皇は大臣の姿を見て二の句が継げない様子だ。

 

「……私は死ぬ、数多の業を抱えて……しかし、息子さえ、息子さえ無事であれば、私は……」

「止せ!」

 

 制止も空しく、大臣は宝玉を握りしめ天高く振り上げた。

 

「させねぇ!!」

 

 抜刀。

 大臣が今まさに宝玉を壊さんと腕を振り下ろした瞬間、ヤクトワルトが大股三歩はあるかという距離を一瞬で詰め、瞬速の居合でもって大臣の腕を跳ね飛ばした。

 高く跳ね上がる血飛沫と煌く宝玉が宙に舞い、あわや地面に激突という寸でのところで、アトゥイが滑り込んで宝玉を掴みとる。

 

「はぇ~、危なかったぇ……」

「助かった、ヤクトワルト、アトゥイ」

「ぐぅっ……!!」

 

 もぎ取られた腕からあふれ出る鮮血をもう一方の手で抑える大臣を、ヤクトワルトは拘束する。

 

「何か言うことはあるか」

「……私はただの時間稼ぎ。本当の恐ろしさはこれからです。貴公達は敵に回してはいけないものを相手取っている。あれほど残虐なことができる者など――」

 

 そう言って、事切れた。

 血を流しすぎたか。だが、治療すればまだ情報を引き出せる筈だ。

 

「クオン、皇達と大臣を治療してやってくれ」

「わかったかな」

「宝玉を守ったこと、そしてミカヅチの撤退をイタクに報告してくる。クオンとルルティエ、ネコネの治療班はここに残れ、護衛にヤクトワルトとオウギ、ノスリだ。それ以外はついてきてくれ!」

「わかったぇ!」

 

 そして、その命を下した後に響くはナコク兵の歓喜の声。どうやら、上の戦場も一区切りついたようだ。

 物見から立ちあがって見物する皇女さんと護衛のエントゥアを横目に、イタクのもとまで駆ける。

 

「イタク、宝玉は無事に守り通した! 戦況は!」

「おおハク殿、見てください! 我らの勝利です!! 第二派の追撃隊の準備ができ次第、さらなる追討を命じるつもりです。このまま帝都まで追撃できるほどの戦果ですよ!」

 

 イタクとソヤンケクルの話を聞けば、急に現れたミカヅチが撤退を叫びながら帝都に向けて駆けていったという。

 

 ――帝都まで撤退せよ! 武器は全て捨て置け! 脇目もふらず駆けよ!

 

 そう叫びながら、ミカヅチは撤退したそうだ。

 その言葉を聞いた朝廷軍とナコク軍の状況は、それはもう一方的なものとなった。

 籠城を止め、数多の騎馬兵を出撃させたナコクの兵により、橋半ばで武器も持たぬ朝廷軍は前回の仕返しを受けるかの如く討たれていったそうだ。

 

「あのミカヅチが、とは思ったけれどね……確かに籠城戦はこちらに分があったとは言え、早すぎる決断にも思う、罠の可能性も捨てきれない」

「しかしソヤンケクル殿、朝廷軍の動揺からしても演技ではありません。正しく敗走といえるものではないかと」

「ふむ……確かにね」

 

 ソヤンケクルは自分と同じように少し違和感を持っているようではあるが、それを言語化できない様子だった。

 

 背を向け我先に敗走している朝廷軍。その姿に――悪寒が止まらない。

 

 何かがおかしい、ソヤンケクルの言う通りだ。

 簡単に撤退し過ぎている。相手はあのミカヅチ、ライコウだぞ。

 

 何かを感じ、イタクの追撃命令を寸で抑えた。しかし、指令が無くとも兵たちの勢いは止まらない。撤退する軍に引き攣られるようにして我先に飛び出していく。

 そうだ、この千載一遇の好機を逃すはずはない。特に、忠義に篤く聖上御自ら戦を御覧になっていると思えば――命を捨て名誉を得る選択をしてしまうことは容易にあり得る。

 

「……イタク、橋の宝玉は確かにこれなんだな」

「はい。我らは幼き頃より拝謁している宝、間違えようもありません」

 

 それでも悪寒は消えず、こう問いかけた。

 

「イタク、お前が宝玉を手に取ったのは……いつだ?」

「? それは、ハク殿にこれを託そうとした時です。簡単に出し入れできる場所には安置できませんから……」

「じゃあ具体的に聞く――宝玉が本物かどうか確かめたのは、いつのことだ?」

 

 そう言いながら、イタクに宝玉を渡す。

 すると、イタクの表情がさっと青褪めた。

 

「――ッか」

「か?」

「軽い、のです。ハク殿に渡そうとした時、掴んだものよりも……」

 

 しまった――やられた。

 

 大臣の裏切りを防いだことで、もう策はないと油断した。違う、もっと前から策は巡らされていたのだ。自分たちが掴まされたのは、結果だけだ。

 

 そうだ、何を考えていたのだ、自分は。ライコウが真に欲しいのはナコクに勝利することでも、ナコクを手に入れることでも自分の存在でもない。ナコクの象徴を落としたという証だ。ただそれだけで良かったのだ。

 つまりライコウの軍が動くということこそ自体が、橋の宝玉を手に入れた、もしくは手に入れる目途が立ったからに他ならない。

 朝廷軍によるナコクへの侵入をさせず、宝玉さえ守ればよいと思っていた。違う、護るべき前より既に手に入れていたのだ。後は橋を効果的に落とす時機だけを定めれば良いと。

 

 もっとよく考えるべきだったのだ。あのライコウが落とすことができると断言した。つまり帝都には、橋に関する情報が多々あったのだろう。宝玉によって管理されていること、そしてその姿形も、破壊すれば良いことも知っていた。

 

 偽物を作りすり替えておく手段も、使えた訳だ。

 

「ッ撤退だ! 朝廷軍への追撃を止め、撤退させろ!」

 

 しかし、もう止まらない。

 

 ――衝撃。

 地が割れるかの如く視界が揺れる現象に、誰も彼もが大地に伏せた。

 

 敵は騎馬兵ばかり、駆ければ間に合うかもしれぬ。しかし、こちらは歩兵も混じっている。あの様子では、間に合わない。犠牲は避けられない。

 

「あ、ああ橋が……ッ民が……我らの兵達が、象徴が……なんと、惨いことを……ッ!!」

 

 イタクはただ呆然とその光景を眺めていた。自分も、崩れゆく橋をただただ見つめるしかない。

 今自分にできたことは、橋から落ちた者を船で救出することをソヤンケクルに要請しただけ。しかし、それもどこまで効力があるか。

 

 敗北したのだ。正しく、ナコクの象徴である兵と大橋の崩落をもって。

 

「……酷いものだ。敵味方関係なく橋を落としたようだね」

「ライコウも、形振り構ってはいられなくなったってことか」

 

 橋より命からがら逃げだした存在の中に、朝廷軍の者もあった。末端の隅々まで作戦を知らされていれば、このようなことにはならないだろう。

 

 誰も彼もが朝廷を退けたという勝利の凱旋もなく、ただ打ち拉がれている。この空気を払拭したいが、果たして自分が出たところで何か変わるわけでもない。

 ここはイタクから皆に話をしてもらおうと振り向くと、皇女さんがいつの間にか物見から離れ、イタクに話しかけていた。

 

「イタクよ、少しよいかの」

「せ、聖上!」

「少し皆に話がしたいのじゃ、皆の注目を集めてくれぬか」

「は、はっ! ただいま!」

 

 イタクは、悲痛な表情を浮かべるナコクの戦士達に激励を飛ばし注目を集めた後、皇女さんに出番を譲った。

 おいおい、何を言うつもりだ?

 

「皆の者、よくぞ戦ったのじゃ」

 

 静かではあるが凛と通る声が、兵たちの間を駆ける。

 その表情は誰も彼もが暗い色を宿していた。

 

「確かに、敵の卑怯な策謀により橋は落ち、多くの犠牲を払ったかもしれん。しかし、余らは勝ったのじゃ!」

 

 決意を持った表情で拳を握り、そして叫ぶ。

 

「憎き朝廷の逆賊にこの地を踏ませることもなく、果敢に追い払った。無辜の民を――余を守りきったのじゃ、間違うことなき勝利じゃ!」

 

 声が一つ一つ染み込んでいくかのように、あれだけ沈んでいた兵士達の目に光が宿っていく。

 

「此度の戦を見て、余の忠臣であることは明白! 白磁の大橋も、亡き父上に築かれたものであれば、天子である余にもきっと作ることができるのじゃ! いつかは判らぬ……しかし、其方らナコクと永遠の同盟を成した今こそ約束するのじゃ! 偉大なる父上に代わる者として、其方ら忠臣に報いる日が来ると!」

 

 そして、高く高く、まるで太陽に手を伸ばすかの如く、拳を振り上げた。

 

「顔を上げよ! 勝者の凱旋を見せよ! 余の愛しき戦士達よ!!」

「「「「おおおおおおおおおッ!!!!」」」」

 

 割れんばかりの咆哮。

 凄い、な。あれだけ敗戦濃厚の空気を、一瞬にして払ってしまった。

 

 兄貴の後継者――皇たるべき存在、か。

 

「聖上……!」

 

 イタクなどは、感動に打ち震え涙まで流している。

 傍に控えていたソヤンケクルは、皇女さんの姿を見て驚愕していた。

 

「あの幼き姫殿下が成長したとは思っていたが……我が聖上は、前帝に足る相応しい存在じゃないか。なあ、ハク殿」

「……そうだな」

 

 自分では、この場の空気は払拭できなかっただろう。本当に、頼りになるところを見せてくれた。

 

「ありがとうございます、聖上!」

「よい、イタク。それよりも余の采配で貴重な兵を多く失ったこと、真に憂いておる。戦後の処理は難しいであろうが、任せたのじゃ」

「はっ! 我が身命をもって行わせていただきます!」

 

 ぴょんぴょんと軽やかに高台から降り立った皇女さんは、満面の笑みでこちらに近づいてくる。とても先ほどまで壇上で話していた者と同一人物とは思えないな。

 

「どうじゃったかの、ハク。余の姿は!」

「助かったぜ。皇女さんじゃなけりゃ、できなかったことだ」

 

 そう伝えると、皇女さんはさらに喜色満面、照れたように笑う。

 

「……余も其方ばかりに任せておれんからな。しかしハクよ、今後の処理に関しては、其方も手伝うのじゃ」

「ああ、わかっているさ」

 

 とりあえず、戦後処理から今後の対策まで、ナコクでやることは多い。

 ライコウはある程度、帝時代の技術について理解し使い得る存在であることを知った。色々と対策を講じなければならないだろう。厄介な話である。

 

 しかし今は、この皇女さんが齎した勝利の凱旋に酔っているとしよう。

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 帝都執務室。

 ライコウはシチーリヤと共に、ミカヅチからの報告を受けていた。

 

「予定通り橋を落としたこと以上に、俺に報告したいこととは何だ、我が弟よ」

「……ハクを逃したのは、厄介だぞ。兄者」

「また強くなっていたか? お前でも手に負えぬ程に」

「いや、そうではない。だが、あのまま闘えば、より仮面の扱いを学んだだろう。兄者にとって俺が勝たなくとも時間さえ稼げれば良いとのことだった。であれば、勝ちに拘るより撤退を判断せざるを得まい」

「それが、戦果無しの理由か」

「獣の心に落ちれば、対処は容易い。しかし、あれは力を御そうとしている。実戦を重ねれば……ハクのことだ、己に負担をかけない形で、力の引き出し方を学ぶだろう。そうなれば、オシュトルに並ぶ仮面の者となる」

 

 ミカヅチは、過剰に見ることはない。

 つまり、ハクがオシュトルに並ぶ、それは事実なのであろう。武力において、ミカヅチ以上の判断力を持ったものはいないからだ。

 

「……」

「流石の俺でも、オシュトルとハク……二人同時は分が悪い」

「……お前は忘れているようだ」

「何をだ、兄者」

「この俺の知を」

 

 ミカヅチに振り返り、正面からミカヅチの目を見据える。

 

「大橋が落ちた今、来るべき決戦の地、そこでお前が二人を相手取ることはあり得ぬ。俺には見えている……宿敵オシュトルがお前と一騎打ちで戦う様を」

「……」

「そして、戦場を左右するは、俺とハクの指揮。戦場でも、一騎打ちでも、我らが勝つ。そして、その勝利をもってヒトの世は大きく転換する。武と数が物を言う時代は終わり、知と技が世の戦場を支配する時代が始まるのだ」

「……武が、終わる?」

「そうだ。未来の歴史学者は口を揃えてこう言うだろう――ヤマトで最もその武ありと……双璧とうたわれた二人の英雄が激突したこの一騎打ちこそが、武が本懐であった時代最後の決戦だと」

 

 ミカヅチは俺の言葉に感じ入るように目を瞑って聞いていた。

 その手が、震えている。恐怖で、否――最上級の歓喜で。

 

「ここまで言えば、我が愚弟も滾ってきたか?」

「……ああ」

「俺の知を信用しろ。お前はただ剣を振るえば良い。最後にはオシュトルとの決戦が待っている」

 

 未来の戦場に想いを馳せているかのように、黙って頷いた。

 嘘はない。俺には見えている。来るべき決戦の地、そして、ハクとオシュトルを打ち取る未来も。

 

「ハクよ。今度は圧勝などさせてくれるなよ。我らヒトの未来のため、永遠にうたわれる戦にしなければならないのだから」

 

 シチーリヤは、俺とミカヅチの言を黙って聞いていた。

 疑うことを知らぬ、ただただ、透き通るような純粋な目で。

 

 確かに俺は、未来が見えている。だが、細かい部分が時折曇ったように見えぬこともある。しかし、考えを巡らせれば、その曇りは晴れていく。

 しかし何故だろうか、シチーリヤの目を見ていると、何かが曇る。そのことが妙に気にかかった。

 

 深く考えに至る前に、草の者が闇夜より姿を現した。

 

「ライコウ様、ご報告があります」

「何だ」

「ナコクにて、偽の聖上がシャッホロとナコクの同盟を表明。その際に、新たな八柱将を擁立することも布告しています。そしてその新たな柱には、ナコク皇子イタクが任命されるとのことです」

「ふむ」

 

 考えなかった手ではない。

 こちらには任命できるだけの名のある将が少ない。故にしないだけだ。名のある将を抱えるオシュトル陣営にとって有効だろう。だが、現状いくら名ばかりの役職を作ったとて焼け石に水だな。その程度の挑発では、我が陣営は揺らがぬ。

 

「残存する八柱将に伝えよ。逆上する必要は無いとな。敵の戯言だ」

「はっ」

「……まだ何かあるのか」

「……ハクという者についても逐一報告せよとのことでしたので、不確定ながらも御耳にと」

「何だ」

「彼の仮面の者に新たな八柱将を擁立する動きがあります」

「? どういうことだ」

「女に節操がないと噂されるほど美女を連れていることが多いため、閨房八柱将なるものを作るそうです。将としてこれ以上女にだらしないという噂が増えると、求心力が低下することを懸念した政策であるとのことで」

「……」

 

 頭痛がする話だ。

 八柱将の名称など、旧時代の遺物でしかないが、流石にそれは冒涜が勝る。

 

 最大限の苛立ちを含め、情報の精選の必要性を滾々と説いたあと、草の者に下がらせた。

 傍に控えていたミカヅチに、呆れたように言う。

 

「お前が警戒するほどの漢、唯一の情報がこれとはな」

「……言うな、兄者」

 

 蟀谷を抑えて言うミカヅチは、毒気を抜かれたのだろう。先ほどの覇気も消え失せていたようだった。

 




 あれも書きたいこれも書きたい病が出ると、結局筆が進まず更新が途絶えてしまうことがわかりました。
 なので、これからもできるだけ丁寧な描写は少なく駆け足気味に要点まとめて進行しようかと思っています。
 (アトゥイは、本篇が可愛すぎる、完成度高過ぎストーリーのため、こっちのナコク編では魅力出しきれてないのが心残りではありますが。ハクが死んだことになってないから、ヒロイン度が上がらぬ……)
 そのことによって、描写不足や違和感等が出るかもしれません。読者が置いてけぼりになっていないか不安なので、またぜひ感想ください。

 年末年始は復帰したロストフラグのガチャ回すのとそのためのブラック労働に忙しいので、小説なんて書いてらんねえ! ヒャッハー! ガチャ最高(脳死)
 更新は三月までにできたらいいですね。ナコク編は一区切り、次回からはいよいよオシュトル達エンナカムイ残留組との合流と、イズルハ編です。気長にお待ちください。

 それでは、よいお年を。

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