【本編完結】影とうたわれるもの~二人の白皇再構成~   作:しとしと

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短め。下ネタ多め。


第二十一話 嘯くもの

 目が覚めると、そこはナコク宮廷内の一室だった。

 眠りに落ちる前はあれほどの激痛だったのが、今は鳴りを潜めている。

 その時、傍らで控える双子に気付いた。

 

「……お前達、ずっとここにいたのか?」

「「はい」」

「話がある、とか言っていたな」

「主様の用いた力について」

 

 発狂寸前まで行ったが、あの力のおかげでミカヅチと互角以上に渡り合うことができた。しかし、聞かなくともわかる。あの力の代償。覚悟が必要かもしれない。

 

「で、どういうことなんだ? 仮面の力の暴走か?」

「確定できない」

「恐らく、違うと思われます」

 

 自分で仮面が扱いきれずに、ああして扱いきれない力が漏れだしたのかと思ったが、双子はそれを否定した。

 ならば何だと聞くと、そこには驚きの答えがあった。

 

「……魂の色に、暗い朱色が混ざっている」

 

 ――魂の色、だと?

 ああ、そういえば、オシュトルの振りをしていた時、双子には魂の色で人を弁別しているからバレたことがあったな。

 確か、オシュトルは青で、自分は茶色だったな。

 

「捕らわれていた際に埋められたものである可能性が高いです」

「……そうか、最初に自分を見たときは気づかなかったのか? お前達ならそういう違和感に気付くもんだが」

「「……この咎、謹んで――」」

「あーあー! 悪かった、別に責めているわけじゃない! お前達でも見抜けないものを埋め込めるなんざ、どんな奴かと思ってな」

 

 特に、見慣れている自分の魂の色の変色なんて、すぐに気づきそうなもんだが。

 

「……心当たりはある」

「私達の存在をよく知る者……警戒していましたが、主様でなく、仮面に細工するとは思いませんでした」

「仮面に?」

 

 ふと、仮面に手を当てる。すると、掌に熱を感じた。いつもひんやりと己でないような冷たさがあったが、このような熱は今までなかったことだ。

 

「主様が、仮面の力を用いるのを発動機会とした」

「仮面に宿った魂が、主様の魂に流れ込んだと思われます」

「仮面に……宿った魂?」

「方法はわかりませんが、八柱将ヴライの片鱗を感じます」

「つまり、自分はヴライに成りかけているってことか?」

「……違う、あくまで片鱗」

「ヴライの欠片の中でも粗悪なもの……ただただ闘争への狂気が潜んでいると思われます。つまり――」

「行きつく先は……ヴライでもなく、自分自身でもない存在、か」

 

 なるほど。

 そりゃ、覚悟が必要だ。だが、事は前向きに考えよう。

 

「……とにかく、それが原因で自分の魂は変色し始めている」

「「はい」」

「変色させている原因を取り除くことは?」

「……取り除けない」

「既に主様の魂の色に深く同化してしまっています。これを無理に取り除けば、主様の魂が歪みます」

「具体的には……どうなる?」

 

 廃人となった自分の姿を思い浮かべながら、二人に問う。

 

「何がどう影響するかはわからない」

「一番影響しやすいのは、三大欲求です」

 

 なるほど、食欲と睡眠欲、そして――

 

「――性欲が歪めば、主様は常に腰を振ることになります」

「それなら無問題」

「問題大ありだろうが」

 

 一番問題あるわ。

 とにかく、かなりの影響があるということだ。

 

「しかし、お前達でも何とかできないとは……」

「……弱めることは可能」

「しかし、主様が強く心を保たなければ、すぐに朱色の魂が広がってしまいます」

「……強く心を保つ――ってのは具体的にどういうことをすればいいんだ?」

 

 双子は暫く考えていたが、お互いに目を合わした後にぼそりと呟く。

 

「他のことで発散」

「他のこと?」

「はい――戦いたいというムラムラを私達にぶつけてください」

「……ん? よくわからんが、つまり……お前達と闘えってことか?」

「そう」

「私達ならば、いくらでも突きあえます」

「しかし、怪我でもされたら困るし……流石に心が痛むんだが」

「大丈夫」

「痛いのは最初だけです」

「布団の上で戦う」

「恐らく一週間ほど続ければ主様の心を取り戻せる筈です」

「却下」

 

 ようやく真意が掴めたわ。

 というか、それなら魂を抜いても抜かなくても常に腰振っていることになるじゃないか。自分を性欲猿か何かだと思っているのか。

 

 真剣な話をしている時に何をふざけたことを――と考えたが、双子は常日頃からこれを真剣に言っていることを思い出す。

 しかし、認めるわけにはいかないので――諸々の女性たちが怖い――何か別の案を聞いてみた。

 

「他のやり方はないのか?」

「……主様らしいことをする」

「そうですね。特に、闘争は控えるべきかと」

「なるほど……それならできるか」

 

 シュボッと指先から炎を出す。

 出そうと思ったら、出てしまった。やはり、影響があるのだろう。

 

「その程度の炎であれば元々の仮面の能力でもあるため構いませんが、あまり強い力を使えば、再び魂が浸食されるでしょう」

「そうか……なら火は菓子作りにでも利用するか」

「その調子」

「流石主様です」

 

 火神持ちのヒトがいない時は、火打石でいちいち火を起こすの面倒くさかったんだよな。火加減は調節できるし、これで菓子作りも捗ると思って提案したんだが、中々いい判断だったみたいだ。

 

「できるだけ自分は前線に出ないことを進言するか……だが、オシュトルが納得するかな」

 

 どうしても戦わないといけない時が来る。それはわかる。

 

「戦わなければならない時以外は、しっぽりねっとりしてください」

「前者案推奨」

「だから却下だって」

「どうしても高ぶった時は言ってください」

「いつでもばっちこい」

 

 薄く笑みを浮かべる二人はどこまで本気かなんだかわからないが、双子の通常運転のおかげで少し心を取り戻せた気がする。

 早鐘のようになり響いていた心臓の音も、今では鳴りを潜めている。

 

 双子に感謝しないとな。

 

「「……それはそれとして」」

「ん?」

 

 二人は手慣れた動作でしゅるりと着物を脱ぐと、裸体のまま近づいてくる。

 余りの手際に唖然と眺めていたが、二人がやろうとしていることに気付く。否定が足りなかったかと慌てた。

 

「おい、ちょ、ちょっと待て! 却下だと言っただろ!」

「……約束」

「……何でも――と言われました」

 

 ――あ。

 

「……まさか……ルモイの関でのこと……だったり……するのか?」

「「そうです」」

 

 確かに、認めはした。

 あの時は一刻も早く二人を逃がさなければと思ったし、口から自然と出てしまっていた。

 だが――

 

「いや、しかしだな……」

「大丈夫」

「一週間とは言いません。出立の朝までで結構です」

「私達にお任せ」

「主様は天井の染みでも数えていれば終わります」

「ナコク賓客用の部屋だぞ、染みなんかあるわけないだろ!」

 

 いやいや、突っ込みどころはそこじゃない。

 こちらの胸に手を当てて迫るウルゥルとサラァナ。

 寝る前よりも確かに楽にはなったが、未だ体が重く動きに違和感のある今では、とてもじゃないが二人に抵抗できない。双子の連携技により、上半身と下半身の服をいともたやすく奪われる。

 

「ちょ、ちょっと待て……」

「お情けを……」

「私達にお願いします、主様……」

 

 耳元でそう艶っぽく呟かれ、ぞわぞわとしたものがはしり体が震えた。近づいてきた二つの唇に理性の箍が外れかけるが――

 

「ダメかな――ッ!!」

 

 クオンによる渾身の蹴りが炸裂した戸は、向かいの壁にぶち当たり吹っ飛びながら転がる。

 

「はあ、はあ、扉に封印術まで仕込むとは思わなかったかな!?」

「クーちゃん? 戸は蹴るものではありま――あらあら? 皆さんどうして裸で……あ、皆さんでお風呂ですか!? 私も入ります~!」

 

 これまたどういう構造なのか、片手の一動作でしゅるりと服を肌蹴るフミルィル。

 

「あわわわ! ちょ、フミルィル!? お風呂なんてここには――っていうか前を隠して!」

「クーちゃんも入らないんですか?」

「あっ、フミルィル、や、やめてーッ! み、見ちゃダメだから!」

 

 クオンの衣服が素っ裸のフミルィルによって脱がされる寸前、目の前を覆い隠される。ふわふわで少し堅い。

 

 これはまさか――尻尾か。

 

 それならばと、やがて来るであろう激痛に備えて、力を極限まで抜いた。

 案の情の浮遊感に、己の睡眠時間が長くなることを予知させた。

 

「――ッ!? お、おおきく、はっ!? き、きゃああッ!!?」

 

 そりゃそうだ。宙ぶらりんになれば、自然自分のが見えちまう。

 頭と股間に強烈な衝撃を加えられる。クオンのおかげで暫くは腰は使い物にならないだろう。そんな馬鹿なことを考えながら意識が落ちていくのだった。

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 橋を雷が走るかのような速度で駆けてきたミカヅチが、己の元まで辿り着くや否や、胸倉を掴みあげてくる。

 

「ウォシス――貴様、奴に何をした!?」

「何を――というのは? 問われている意味がわかりません」

「嘯くな!」

 

 どんと突き飛ばされ、服が乱れる。

 それを丁寧に整えながら、己に薄い笑みを貼りつける。

 

「どうやら、ハク殿の力が予想以上だった様子。己の力不足を私の咎にされては困りますね」

「何だと――?」

「元々彼の力だったのでは? 仮面の者としての力を開花させているということでしょう。ミカヅチ様以上に」

「貴様……ッ!」

「ミ、ミカヅチ様! 抑えてください!」

「! ミルージュか」

「ミカヅチ様、満身創痍ではないですか! 追求よりも先に手当を!」

「む……」

 

 己の矢傷や火傷等に気付いたのか、己の信頼する部下の言葉に自らを抑えたのかはわからないが、私への追求の視線は外れた。

 

「兎も角、ミカヅチ様が失敗したとなれば、私に咎はありませんね……電撃作戦によるナコク攻略を諦め、退却を命じたのは正解でした」

「ふざけるな、兄者がそう命じたのか!?」

「いいえ。しかし朝廷に向けてエンナカムイが進軍を開始したそうです。イズルハ八柱将トキフサは正式に朝廷の味方となりましたが、未だイズルハの全部族を手中に収めたわけではありません。彼らではオシュトル率いる大軍を抑えきれないでしょう。早々に戻る必要があるかと」

「通信兵はどこだ! 兄者に問え!」

「問わずともわかります。もう撤退を命じているのです。未だここにいるのは、あなたを救出するために編成した一部隊に過ぎません」

「貴様――」

「ですからミカヅチ様、手当を!」

「ちッ……兄者は貴様を許さんだろう。覚悟しておけ、ウォシス」

「……そうですか」

 

 救護兵とミルージュに連れられ、手当を受けるミカヅチ。

 許さない? 望むところである。

 

 可笑しさから、少し声が漏れる。

 怪訝な目で見る兵士から顔を逸らしながら、撤退の準備をする。

 

 ライコウに、私が裁けるとは思えない。

 私こそが、次なる超越者。私が、この世界を管理する。

 

「ライコウ、あなたでは、私は扱いきれませんよ」

 

 自らでもわかるほどの暗い笑みを浮かべ、帝都への道を歩くのだった。

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 帝都会議室。

 目の前の巨大な地図盤に広がる情勢は、こちらの不利な部分をありありと示していた。

 

「……来たかウォシス。貴様には聞きたいことが山ほどあるが……まず一つ。なぜあのままナコクを落とさなかった?」

「帝都へ向けて、エンナカムイとクジュウリの連合軍が動き出した……との報が入ったため引き返しました」

「その判断の優良を、この俺に確認したか? ウォシス」

「……いいえ」

「何故確認しなかった?」

「……あなたが言ったのではないのですか? これからは、自らで勝ち取る目を持った人材が必要だと。私は私にしか見えぬものを掴むために、この判断をしたまでです」

 

 呆れた物言いだった。正しく傲岸不遜。薄い笑みを貼りつけたまま悪びれもせず言い放つとは。

 

「……貴様に軍を任せたことは失敗であったな。橋も壊せず、ハクも手に入れられず……俺の命令を何一つ遂行できていない。八柱将が聞いて呆れる所業だ」

「……私を左遷しますか?」

「いや、貴様を表舞台に出そうとしたことがそもそもの間違い。貴様はこれまで通り暗躍部隊を管理しておけ」

 

 残念だが、いくら大軍を率いる将として無能であっても、草を扱う面に関して、ウォシスは未だ頼れる存在。草としての仕事を抱えてきたからこそ、早々に撤退を考えたウォシスの言も一理はある。

 しかし、それでも許すことはできなかった。

 

「この代償は高くつく、覚えておくのだな……ウォシス」

「は……しかし、ライコウ様」

 

 苛立たし気に相槌を返す。

 

「何だ」

「……私の撤退は間違ってはいないのでは? なぜなら、あなたの自慢の弟君であるミカヅチ様もまた、大怪我を負っていたでしょう?」

「……」

 

 その報告は、弟自身から聞いている。

 あの非力な筈のハクが、異常な力を発揮したと。ミカヅチの右腕は、ハクに弾かれた衝撃で上腕の筋肉がところどころ千切れて内出血を起こし、今でも満足に動かせぬそうだ。そして、全身にちらほらと見得る火傷痕。

 いくら普段愚弟と罵ってはいるものの、奴の強さは誰よりも知っている。その強さを一時的ながらも上回るとは。

 

「あの様子では、もし強引に攻め寄せても甚大な被害が出ていたでしょう。そして、朝廷はオシュトル率いるエンナカムイとクジュウリの連合軍には太刀打ちできなくなっていた――違いますか?」

「……貴様のような無能な将が率いていれば、あり得た未来かもしれぬな――もういい、下がれ」

 

 反論を許さずして下がらせる。

 ただただ不愉快であった。俺の真意を尽く曲解し、想定していた筋書きを歪ませる。

 

 一見従順な態度をとっているようにも見える、が。一体、何を企んでいる、ウォシス。

 

 いつか、最後にハクより聞いた言葉が思いだされる。

 

 ――そんなんじゃ、いつか足元掬われちまうぞ。

 

 警戒、しておいたほうがよいかもしれぬ。

 

「シチーリヤを呼べ。今後の対策を行う」

 

 これで、ナコクへの電撃作戦は失敗し、エンナカムイが得た以上の汚名を朝廷も負うことになる。汚名を背負ってでも、ナコクの橋は落とさなければならなかった。

 これで、我らは二方面作戦を取らざるを得なくなる。シャッホロもこのナコク襲撃を見て、エンナカムイ側につくであろう。海を支配しているシャッホロが敵に回ったとしても、橋さえ落とせれば勝機はあった。

 

「……蛮族どもを利用するのは腹立たしいが、そうも言ってられぬか」

 

 ――ウズールッシャを、利用せねばならぬかもしれぬ。

 

 下調べは済んでいる。ウズールッシャの火種がエンナカムイにあることも。

 ウズールッシャによる邪魔が入れば、二方面作戦であっても容易くなる。

 

 我らがヤマトを切り売りすることにも成りかねぬが、それは俺の交渉次第か。

 

「やはり、将が足りぬ。橋を落とせずとも、ハクさえ手に入れることができていれば……」

 

 しかし、無いもの強請りをしても始まらない。

 失敗を見て早々に頼るのも腹立たしいが、奴に任せてしまってもいいだろう。

 

 近くの通信兵を呼び、言伝を頼む。

 

「ウォシスに名誉挽回の機会を与えると言え」

「内容はいかがなさいますか?」

「……ウズールッシャに草を送り、俺と交渉ができるだけの者を探れ」

「はっ! お伝えします!」

 

 期待はしていないが、打てる手は全て打っておくのが良いだろう。

 ハクよ、無能な敵将に救われたようだが、此度の策はどう打ち破る? 願わくば、それが仮面に頼った力技でないことを祈ろう。

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 深夜、ウォシスは自室にて静かに物書きをしていた。

 最近は余りよい題が思い浮かばず、筆が止まっては少し書いてを繰り返している。

 

 そんな折、三人組で行動させている部下の一人が、単身疑問を呈してきた。

 

「ウォシス様、なぜあのような反抗的な策を?」

「……シャスリカ。私はライコウに無能だと思われていた方が良いのです。余り表舞台に立つと、動きにくくなりますから」

「は、はあ。しかし、何時でも橋を落とせることくらいは報告しても良かったのでは?」

「それはまだ確定事項ではありません。確かに、あの奇襲は囮です。真の目的は、橋の宝玉がどこにあるかを探ること。そう考えれば、うまくいったと言えるでしょう。しかし、間者からの報告では在り処がわかったとだけしか聞いていません。確実に手に入れるには、もう一度隙が必要なようです」

「はあ……」

「そう心配いりませんよ。もし窮地に立ったとしても、私はライコウにその情報を与えればいいだけ。情報の価値とは、時によって大きく変動しうるのですよ。今与えてしまうと、功績を認められてしまいます。今はもう少し、自由に動ける時間が欲しいですからね」

「しかし、その時間をウォシス様はそんなものに……」

 

 ぴたりと筆が止まる。

 

「あなたには……きついお仕置きが必要なようですね、シャスリカ」

「あ、ああ、申し訳ありません! お許しを!」

「いいえ、許しません」

 

 震えるシャスリカを見て、ふと閃く。

 

 ――ああ、いい題が思いついた。

 次回の題は――失言による恥辱、小さな根っこを苛めてくださいご主人様――にしましょう。

 

 そう考えながらシャスリカの腰に手を伸ばしたとき、伝令が戸を叩く音。

 

「無粋ですね……何用ですか?」

「ライコウ様より伝令。ウズールッシャに直ちに草を送れとのことです! 詳細は紙面にて!」

「……了解致しました。そうお伝えください」

「はっ!」

 

 渡された紙面に目を走らせながら、感嘆する。

 

 ――なるほど、流石はライコウ。時間をかけずとも、あの手この手をよく思いつく。いや、選ばなかっただけで前もって想定していたのか。確かに、二面作戦においては効果的だ。味方を二方面に裂かなければならないなら、敵も複数に裂けばいいという考えか。

 

「そういえば、この間ウズールッシャの兵士を複数人改造しましたね、シャスリカ、彼らは生きていますか?」

「はい、5名ほど一応生きてはいますが、衰弱していると思われます」

「そうですか、食事を与え、蟲を植えこみなさい。走れるようになったら、ウズールッシャに放ちます」

「はっ!」

 

 さてさて、中々休ませてはくれないようだ。

 ウズールッシャに関してはこの程度の対応でいいだろう。

 

 それよりも、今はナコクだ。

 ナコクの橋を守ることができたと浮かれている彼らを絶望させる一手は、もうすぐ届く。彼らが喜び勇んで帝都に軍を差し向けたとき、己の誇りとする橋によって命を落とす。

 

「ふふ――その光景をこの目で見られないのは残念ですが……今はよしとしましょう」

 

 紙面を棚に仕舞い、震えるシャスリカを抱きしめ乍ら、暗い笑みを浮かべるのであった。

 

 

 




ウォシスの真意
ライコウの思惑
ミカヅチの困惑
双子のおねだり

で今回はお送りしました。

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