ポケットモンスター~カラフル~   作:高宮 新太

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39話「マジで無地で火事で」

 

「えーっと・・・?ここら辺かな?エンジュシティは」

 

 アンズちゃんとのやり取りの数週間前。

 僕がジョウトにきてやっとこさ生活に慣れてきたころ。

 実を言えば一つだけ、このジョウトで有力な情報を得られるかもしれない場所があった。

 場所というよりかは、そこにいる人に用があるのだけれど。

 

「すみません。人を探しているのですが、心当たりはありませんでしょうか?」

 

「ああ?悪いが忙しいんだ!他を当たってくれ!」

 

「・・・・・むう」

 

 見ての通り、エンジュシティは騒がしく世話しない。

 元々気性の荒い町といわけでもなく、なにやら人づてに聞けば、スズの塔という有名な塔が地盤沈下で沈んでしまったらしく。

 その復興作業に街中が躍起になっているのだ。

 

「ふむ、町ゆく人に声をかけても成果はないし。これは一人で地道に探すしかないかなあ」

 

 なんて、ぶらぶら町ぶらしながら思っていると。

 

「あれぇ?カラーさん?カラーさんじゃないですかぁ?」

 

「この声は・・・」

 

 なんだか気の抜けるような間の抜けた声。

 一年前に僕をアシストしてくれたような声に、似てなくもない。

 キョロキョロとその声の出所を探っていると。

 

「おーい!こっち!上です!上!」

 

「上ぇ?」

 

 その言葉の通りに、僕は真上を見上げた。

 するとどうだろう、太陽の光を遮って一人、姿をみせる。

 バタフリーで空を気持ちよさそうに飛びながら。

 

「やあ、”イエロー”。久しぶりだね」

 

「お久しぶりです!カラーさん!」

 

 相変わらず大きな麦わら帽子がトレンドマークのイエロー。

 一人、かと思いきやよくよく見ればもう一人。同じくバタフリーで空を飛んでいたおじさんが一人。

 

「そのバタフリー、キャタピーが進化したんだ」

 

「はい、スオウ島の戦いで。他にも」

 

「おう、イエロー、どしたい?知り合いか?」

 

「あ!こちらカラーさんです!凄く頭がよくて、凄く無茶をするんですよ!」

 

「ちょいちょいちょーい、いきなり初対面の人に向かってその説明はないだろう。イエローちゃん?」

 

 前半はいいよ、前半は。後半はなんだいそれ?またどこぞの誰かに入れ知恵されたのかい?

 それとも、それがまんま君の僕への評価ってわけじゃないだろうね。

 ていうか人と話す時くらい降りてきなよ、なんか上から喋られると腹が立つ。

 

「まあいいや。で?イエロー、君なんでこんなジョウトなんかに?」

 

 まさかと思うけど、オーキド博士の差し金じゃあないだろうな。クリスの仕事ぶりが思ったより上手く行かないから、イエローに連絡した、とか?

 ・・・ないか。だとしたら人選がミスすぎる。

 

「ああ、それはあるポケモンの調査に来たんです」

 

「ポケモンの調査?」

 

 おいおい、それはとても馴染みのありそうな話だね。

 

「はい。といっても、カラーさんのソレよりは難しくないと思うんですけど」

 

 たはは、と苦笑いする様子を鑑みるにどうやら上手くいってないらしい。

 

「おいおい、君まさかそれ手伝えなんて言うんじゃないだろうな」

 

 なんか怪しくて僕は疑惑の目を向ける。エンジュシティに着いたとたんイエローに出会うなんてタイミングが良すぎる。

   

「そんなそんな!ここには調査と、復興作業の手伝いにきたんです」

 

 ひえー、復興作業の手伝い?よくもまあそんなメンドイことが出来るなあ。しかも笑顔だよこの子。

 レッドに負けず劣らずイエローもお人好しだな。

 そんなイエローに辟易しながら、僕は巻き込まれないよう後ろでに歩き出す。

 

「じゃ、僕も用事あるしこの辺で——————————」

 

「あら?あなた方は?」

 

 復興作業にいそしんでいる周りからは多少浮いていたのだろう。一人の女の子から声を掛けられる。

  

「ああ、すまない。俺たちはラジオを聞いて復興の手伝いをしに来たんだ。こっちはカラー、そしてイエロー、俺はその叔父だ」

 

 僕とイエローの会話を見守っていたおじさんが事情を説明する。

 のはいいんだけどさ、それだとあれだよね。なんだか僕まで復興の手伝いをしなくちゃならないような感じだよね。今の説明の仕方だと。

 

「ありがとう。私はアサギシティジムリーダー、ミカンです」

 

 白いワンピースとサンダルがなんとも清楚で、二つに束ねた髪の毛はさらさらと透き通るようだった。

 早い話が美少女だ。まごうことなき美少女だ。

 

「わお!アサギシティのジムリーダーさんがなぜこんなところに?」

 

「っと、おい!なんだよ?」

 

 パタパタと鬱陶しく浮いていたおじさんを押しのけて、僕は彼女の目の前を陣取る。

 第一印象は大事だからね!

 

「ふふ、なんだか楽しい人たちね」

 

 ほうれ見ろ!優しい笑顔を灯すことに成功したぜ!

 

「私、地盤沈下の事故がおきたとき正にこのスズの塔に閉じ込められていたの」

 

「この塔に!?大丈夫だったんですか?」

 

 驚いた声で尋ねるのはイエロー、だから君、いい加減降りなって。

 

「ええ、助けてくれた人がいたの。その後、怪我した人やポケモンを放っておけなくて」

 

「なるほど、そのまま復興の支援をしていると」

 

 うんうん。見た目通り真面目でいい子みたいだ。

 正直いい子過ぎて、ちょっと僕には手が出せないね!まぶしいね!

 それにジムリーダーにはいい思い出がないんだ!ここは大人しくしておこう!そう、眺めるくらいにしておこう!

 

「たいへんだー!焼けた塔からまた火事がー!」

 

「なにぃ!?イエロー!」

 

「わかってるよ!おじさん!」

 

 作業員と思しき人が慌ててこちらにやってくる。見るに、どうやらミカンちゃんが現場の指揮を執っているらしい。

 ちょっと怖いから聞かなかったけど、この町のジムリーダーはどこにいるんだろうねえ。

 臆病で人望がないからミカンちゃんが指揮取ってる、とかだったらいいんだけど。

 なにせ、僕が用事があるのはエンジュシティのジムリーダーなんだから。

 

「焼けた塔ってネーミング、変えた方がいいんじゃない?」

 

 もはやそれは塔にあらず、二階から上がごっそり抜けている。しかも今は、「焼けた塔」じゃなくて「焼けている塔」だ。

 

「大昔に二階から上が焼け落ちたから焼けた塔なの!それより消火を手伝って!!」

 

「まあまあ、落ち着いてよ」

 

 ミカンちゃんが、いや作業をしていた人たちが大慌てバケツリレーで消火活動をしている。

 が、とてもじゃないがそんなものでは間に合わない。僕やおじさんが人手に回ったとしてもね。

 

「オムすけ!”ハイドロポンプ”!!」

 

「い、イエローは何を!?」

 

「まあ、見てなよ」

 

 バタフリーで火の手が届かない上空から、まるで釣りでもするかのように釣り糸を垂らしている。

 先っちょにオムスターをくっつけて。

 

「ひ、火が消えていく・・・すごい・・・」

 

 上から”ハイドロポンプ”でくまなく消火活動をしていくイエロー。効果も効率も段違いだ。

 

「あとはイエローに任せておけば問題はないよ」

 

「カラーさぁん!一人じゃ無理ですぅ!手伝ってください!」

 

「・・・・ちぇ、水タイプのポケモンなんて持ってないっつの」

 

 泣き言言うなよ。せっかくカッコつけたのが台無しだろう。 

 

「しゃーない。クロバット行ってきてくれるかい?」

 

「キュウ!」

 

 ボールから出したクロバットは、勢いよくイエローの元へ飛んでいく。

 

「クロバットで、どうやって?」

 

 ミカンちゃんの疑問に僕は行動で示す。

 

「”たつまき”」

  

 強力な突風を生み出すこの技で、炎をかき消していく。

 威力が弱いと逆に炎を広げてしまいかねないが、まあ、今のところは大丈夫そうだ。

 ネックなのは火を消すと同時に建物も多少壊れてしまうけれど、そこはほら!もうだいぶ壊れてるしいいよね!半壊が全壊になろうが変わんないよね!

 

「・・・・・すごい」

 

 そんな僕の心境とは裏腹にミカンちゃん、感心しっぱなしである。

 

「ところでミカンちゃん、一つ聞きたいんだけど」

 

「え、ええ、なにかしら?」 

 

「この町のジムリーダー、”マツバ”に用があってきたんだけど、今彼はどこに?」

 

「ああ、それは——————————」「うわああああ!」

 

 なんだなんだ?

 僕とミカンちゃんの会話を遮った悲鳴の主、イエローの方を見やる。

 すると不思議なことに、イエローはまだ燃える塔の中へと引っ張りこまれてしまった。

 

「なにやってんだあいつ!?クロバット!消火を続けろ!」

 

  

 

 

 

 

 

 

 

「イエロー!どこだあ!?」

 

 焦った様子のおじさんの声が虚しく響く。返答は一度もない。

 イエローが引っ張りこまれていった辺り、そこにおじさんと僕、そしてミカンちゃんが捜索を続けていた。

 

「多分、この辺りだったと思うんだが」

 

「ええ、私もそう思います」

 

 消火活動はあらかた終わり、幸いにも負傷者はいなかった。

 行方不明のイエロー以外。

 厄介事に巻き込まれる才能でも持ってるのかなあ、僕。

 イエローを探しながら、そんなことを思っていると。

 

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

 

 唐突に、どこだかから三匹の生物が飛び出してくる。

 

「って、おい!イエロー!大丈夫か!」

 

 そんなポケモン?のようにも見えた生物に驚いていると、真後ろにいなくなったはずのイエローがいた。

 

「きれい・・・」

 

「は?」

 

「きれいな、ポケモンたちだったなあ・・・・」

 

 などと、意味不明なことを呟いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんてことがあってそして現在。

 

『マツバは今は仕事でこの町を離れているの、よく各地を回っているからこの町にいても会えるとは限らないわ。ごめんなさい』

 

 そう、ミカンちゃんに謝られてたのが数週間前。今、僕は一人で街の外れの図書館へと缶詰め状態になっていた。

 あの後、イエローとは岩の中に吸い込まれただなんだとわけのわからんことを言うので、話半分に聞き流しておさらばした。

 じゃあイエローはあの時どこにいたのか、その疑問はあるものの、多分僕には関係のない話だし、なにより、厄介事のにおいがしたのでね。

 

「・・・結局、マツバにも会えなかったし目ぼしい情報はないなあ」

 

 アンズちゃんが部下?仲間?になって数日、ジョウト地方をある程度探し回って、伝承に、伝説に、噂に聞きこんで。

 それでも、黒いポケモンに関する情報は得られていない。

 かすりもしない。

 

(ここじゃないのか・・・それとも探し方が悪いのか)

 

 それはずっと感じていたことだ、過去のことを振り返っても直接探そうとするといつも空振り。

 情報を得たのはいつだって、寄り道をしていた時だった。

 だからって積極的に寄り道をする気もないが、こうも進展しないとそれも視野に入ってくる。

 まるで重々しい音楽が流れているかのように、僕の表情はここの所ずっと暗い。

 

「ちょっと、空気の入れ替えどきかな」

 

 大きく一つ伸びをして、僕はポケギアのラジオをつける。

 情報収集の一環として聞き始めたラジオだが、これがなかなかどうしてはまってしまった。

 テレビっこはどうしたかって?忘れたなあそんな昔の話は。

 

「今日もクルミちゃんに癒されよーっと」

 

 クルミちゃん、とは可愛い声とその愛嬌でラジオ界を牽引しているアイドル歌手のことである。

 僕がラジオにはまった原因の一つ、さぞかし顔もかわいらしい顔をしていることだろう。まだ見たことはないけれど、きっとそうだ。そうに違いない。

 

『さて、数日前からにわかに話題のエンジュシティ、そのやけた塔から突然いずこかに飛び去ったと話題の三匹のポケモンについてですが』

 

 クルミちゃん目当てに、ラジオのチャンネルを捻っていると妙な話題を扱っている番組があった。

 編成表を見ると、どうやらこの次の番組にもクルミちゃんが出演しているらしい。

 その番組を聞いたことはないけど、ま、目当てはクルミちゃんだしどーでもいいや!

 なんて具合にただラジオを聞き流していた。

 

『ええ、どうやら学会はこの三匹のポケモンを、それぞれスイクン、エンテイ、ライコウと名付けた模様です』

 

 こーしてみると強く実感する、世の中ってのは暇なんだなあ。と。 

 こっちが躍起になっているのに、流れてくるのはこんなどうでもいい情報ばかりで、どうせなら僕に有益な情報を持ってきて欲しいもんだね。

 別に、平和なのは良いことなんだろうけどさ。

 

『それでは次の番組は、オーキド博士のポケモンアワーです』

 

 ん?

 おかしいな、今聞き覚えのあるお爺さんの名前が聞こえてきた気がするけれど。

 うん、気のせいだな。だってこれラジオだし、あの爺さんがそんなもんに出ているわけないし、クルミちゃんと二人っきりで番組なんてそんな羨ましけしからんことしてるわけがない。

 

『ポケモンアワー!今日もこのわし、オーキドがポケモンの秘密を放送するぞ!』

『アシスタントのクルミでーす。よろしくね』

 

 ま、マジだったぁ!?

 思わず椅子を転げ落ちてしまう僕にはお構いなしに、ラジオからはオーキド博士とクルミちゃんの楽しそうな声が聞こえてくる。

 

「おいおいじーさん、あんたとっくに男として引退してんだろーが、変われよそこ」

 

 帰ってくるはずもないその悪態もついてしまうというものだろう。

 まったく思いもよらないところで衝撃受けちまったぜ。息抜きしよーとしてたんだけどな僕。

 ため息がでて、だらりと全身の力が抜ける。 

 うーむ、博士に頼んでクルミちゃんを紹介してもらおうか。

 なんて打算的なことを考えていると。

 

「ん?・・・アンズちゃん?」

 

 ポケギアの電話が鳴り響く。 

 端末に出るのは番号を交換したアンズちゃん。 

 

「なに?なんかいい情報でもはいったん?」

 

「あ、主殿。今、大丈夫でござるか?」

 

「ああ、はいはい。大丈夫ですよー」

 

 このアンズちゃん、これがなかなかどうして使い勝手がいい。

 ジョウトを探すと言っても、一人じゃ流石に広すぎる。

 ある程度の土地勘があったカントーと違い、ここジョウトはジョバンニ先生の塾以外ほぼ知らないということもあって。

 大きく役割分担をすることにした。

 僕は噂や伝承、伝説などつまりは過去を遡って調べる担当。

 そしてアンズちゃんは現在、人や土地や建物や。とにかく今あるものから探っていく担当。

 

「で?なんか進展があったんだろうね?」

 

 前回、僕とアンズちゃんは主従契約するにあたって約束事をいくつか定めた。

 一つ、僕の邪魔はしないこと。

 僕の言うことは絶対で、それには歯向かわない。

 今、僕が一人で気ままに過ごせているあたりこれは守られている。

 一つ、余計なことはしないこと。

 変に首を突っ込まれても厄介だし、つまりは言われたことだけやってればいいってことだ。

 一つ、自分を優先すること。

 なんせアンズちゃんはジムリーダー、それにしたって年頃の女の子だ。色々とやることもあるだろう。それをないがしろにしてまで、僕に尽くすのはやめてほしかった。

 重いのはキライだからね。

 最後に一つ、危ないことはしないこと。

 なんせキョウ様の一人娘だ。これになにかあれば僕が殺される。

 いや、キョウ様だけじゃなくもしかしたらマチスさんやナツメちゃん、果てはサカキ様にも殺されるかもしれない。

 考えただけで身震いして上着を羽織ってしまう。小心者なんだよ?これでも。

 というような条件のもと、僕らは関係を結んだ。

 

「はい、しかし、これといって確証などは何もない。薄い情報ではありますが」

 

「いいよ、別に。これまでだって似たようなもんだ」

 

 薄めて薄めて、結局空振りなんて何度味わったか知れない。

 

「ええ、では。エンジュの焼けた塔、そこからポケモンが飛び出していったのはご存知ですか?」

 

「ああ、なんかニュースでやってんね」   

 

 おお、なんだかついさっき聞いたぞそれ。タイムリーだな。

 

「それが?どう関係があるって?」

 

「主殿、一つ確認なんですが」

 

「うん?」

 

 アンジュちゃんは神妙そうな声色で話を続ける。

 

「主殿は”ある火事”を起こした犯人であるポケモンを探している、そうですね?」

 

「ああ、まったくもってその通りさ」

 

 なんだいなんだい?もったいぶられるのは好きじゃあないんだけどな。主導権握られてる気がするから。

 

「エンジュシティ、焼けた塔。この焼けた塔というのは文字通り大昔に”大火事で焼けた”ことからその名が付けらたそうです」

 

「・・・・・」

 

 いつになく真面目なアンズちゃんの声に、すくなからず僕の中で真面目に話を聞くスイッチは入った。

 

「その時に、死んでしまったポケモンがいたそうです。三匹」

 

「それと、僕の探しているポケモンが関係しているかもしれないと?」

 

「わかりませぬ。ただ、その三匹は空から現れたポケモンに生き返してもらったようなのです」

 

 あの・・・。と、アンズちゃんはおずおずと言葉を付け足す。

 

「余計なことをしている自覚はあります。約束を早くも破ってしまっているかもしれませぬ。しかし」

 

「いいよ、続きを言って」

 

 

「・・・もしかしたら、このポケモンに頼めば。主殿が失ったものも、取り戻せるのではないでしょうか」

 

 

 なるほど、ずっと控えめだったのはこのせいか。

 出過ぎた真似をしている自覚があったから、それを決めるのは僕だとわかっているからこそ、ずっとおどおどしていたんだ。

 アンズちゃんには、詳しいことは言っていない。

 失ったものが僕の家族で、僕はそれを取り戻したいから行動しているわけじゃないと。

 そう、取り戻したいから行動しているわけじゃないんだ。

 

「アンズちゃん、ごめんな」

 

「え?へ?」

 

 突然謝られるとは思ってなかったのだろう。ボケた声が電話越しに聞こえる。

 きっと怒られると思って、身構えていたんだろうな。その姿を想像するとちょっと笑える。

 

「いや、詳しいことなんも言ってないのに。そこまで本気で情報を集めてきてくれてさ、悪いことしたよ」

 

 なんだか、謝りたかった。

 珍しいことを言っていると自分でも思う。普段、謝ることなんてないから。どう謝っていいのかなんてわからない。

 だって、普通さ。怒られると分かっていながら、それでも僕に情報を伝えてくれたんだぜ?

 これが、本気でなくて何なんだ?

 

「ぶっちゃけさ、ここまで本気で探してくれるとは思ってなかった。なんか一個でも仕事してくれればラッキーぐらいのさ。そんな感覚だったよ」

 

 僕にだってプライドはある。

 ここまで本気で仕事してる彼女に、対等な対価を渡せないんじゃあ経営者としては失格だろう。

  

「だから、僕がしたいこと。隠していたこと。話すよ、全部」

 

 なんで隠してたかって、きっと多分僕は怒られると思っていたからだ。理解してもらえないと思っていたからだ。

 別にそれでよかった、理解なんて僕だけが出来ていればいいから。

 だけど、僕と同じく。僕と同じものを探そうとしている人にはそれじゃダメなんだ。

 あーあ、博士には普通に話したのに、なんでアンズちゃんには隠したんだろう。

 わかってる、それが一種の”かっこつけ”だったことも。

 ったく、まさかこの年で黒歴史を作ることになろうとは。

 恥ずかしくって火が出るね。

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕の話はものの数分で終わった。

 火事で失くしたのは家族だったこと。 

 その復讐をやり遂げなければならないこと。

 失ったものを取り戻しても、それは本当の意味で取り戻していることにはならないと、僕は知っていること。

 

「・・・・ごめんなさい。やはり、拙者は余計なことをしました」

 

「だーかーらー、謝んないでよ。むしろありがたいまであるね。この調子でじゃんじゃん情報持ってきてよ」

 

 正直、使えるかどうかで言えば眉唾ものだが、まあ今は藁だろうがなんだろうが掴んでおきたいからね。

 

「まあ、ともかく行ってみるよ。エンジュシティ」

 

 しゅんとしてしまったアンズちゃんをどう慰めていいかもわからない。ていうか、なんでこーなった?慰め方なんて知らねえよ?僕。 

 だからまあ、アンズちゃんには時間が勝手に癒してくれることを信じて僕は向かった。

 もう一度、エンジュシティの焼けた塔に。

 

 そしてそれはまた、次のお話にて。

 

 




どうも!モンハンワールド!高宮です!
これを書いている瞬間に発売しましたモンハンワールド!
まあね!僕は受験が終わるまでできないんですけどね!でもね!絶対買うから!絶対やるから!マルチで一緒になった時はそんときは一狩り行こうぜ!
ということで次回もよろしくお願いします!!

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