「それにしたって、まさかあのメンバーで勝っちゃうんだもん。正直びっくりしたよ」
「あ、あの・・・・」
「いやー、最初はさなんか変な事件に巻き込まれて必死に上空に逃げたんだけど。あ、このゴルバットでね?そしたら君みたいな子供が勇敢にも悪漢たちに立ち向かっていくじゃないか。いやー、もう僕はハラハラしっぱなしで」
僕ことカラーは今現在絶賛饒舌に喋り倒し中でございます。
なにせせっかく念願叶って麦わら帽子のイエローに会えたんだもの。変な勘繰りを入れられる前にこっちから場を掌握しないとね。
クチバの港には大勢の人もいる、さっきケン、リョウ、ハリーの三バカの襲撃から救った人たちだ。
「あ、助けたかったんだよ僕だって。君の手持ちパーティ正直強そうには見えなかったし、あ、最初ね最初。でもさあ、それでも知恵とチームワークで乗り切っちゃうんだもん。僕ってば途中から見惚れちゃったよ」
「いや、そんな・・・大したものでは」
おお、好感触。照れてる照れてる。ラッタを愛でるその手がなんだか嬉しそうに動いているのを僕は見逃さないぞっ。
「おおーっ!!これは!?」
「チッ」
おっと、思わず軽く舌打ちしちゃった。見られてないよね?
まったく、いい雰囲気だったのに邪魔するなんてどこの馬の骨だい?そんなやつはすり身にして食っちゃうぞ。
「君達!!ありがとう!わしらを救ってくれたヒーローじゃ!」
人混みを搔き分けて現れた小ちゃいおじいちゃんはブンブンと大袈裟に僕の手を握って離さない。痛く感動しているらしくサングラスの奥の瞳が光っている。
ってあれ?このおじいちゃんどこかで会ったような?
「ぬおおお!この悪党どもめ!イエロー君じゃったな!わしも一撃くらわしても?」
「え?え?」
困惑するイエローをよそにおじいちゃんは一人勝手に盛り上がって。
「”ねこにこばーん!”」
を、連発して満足したのだろう。大量の小判を両手に抱えようやくこちらに向き合った。
「むむ?よくよく見たら君・・・・?」
「・・・・・」
じーっと顔を見られ、僕は取り敢えず顔をそらすけれどきっとそれも無駄だろうな。このおじいちゃんには。
うん、思い出したよ。この他人のことなどお構いなしでせわしないマイペースっぷりをね。
「アラ君!!アラ君ではないか!!」
「え?アラ・・・?」
そして同時に、気軽に偽名を使ったってことも。
うーむ、人に嘘つくときはもっと慎重に嘘をつこう。まさかここでこんなめんどくさいことになるなんて。
「・・・・・」
ほーら見ろ、イエローの目が段々と怪しいものを見るそれと変化しているじゃん。
あーあ、ここはもう開き直って重ねるしかないなあ。
「いえ、会長。それは人違いです。アラは僕の双子の弟です。僕はカラーです」
「な、なんと!しかし、顔がそっくりで・・・」
「ええ、それよく言われるんです。ですから会長が会ったのはきっと僕の弟でしょう。二年程前各地を伝説のポケモンを探して旅をしていましたから」
「おお!そうじゃそうじゃ!なるほど双子じゃったのか!しっかし似ておるのお!」
よかったー、会長がアホ。じゃなくてバカで。
無邪気にはしゃぐ会長を見ているとなんだか胸の内が痛んでは決してない僕だけれど、しかしここで真実を伝えたところでマイナスにしかならないのは明らか。
だったらほら誰も傷つかない嘘をついたほうが得じゃん?
まあそれもこれも全部僕中心の話ですけど。
「連れてるポケモンたちもそっくりじゃ!ほれ!このカラカラなんてまさにウリ二つ!」
「ははは」
ちょいとハラハラせんではない僕だけれど、しっかしばれないもんだね。あまりに馬鹿馬鹿しいからかな。
純粋な会長をよそに僕は本命に声をかける。
「・・・・アラさん、なんですか?」
ほぅら予想通り半目で僕のことをじっと睨みつけているよ。まいったなぁ。
会長ほど素直に信じちゃくれないか。
ま、そうじゃなきゃレッドを探すなんて雲をつかむような話になっちゃうから、それはそれで朗報かもしれないけれど。
「実はここだけの話、前回会長に会ったときは素性を隠す必要があるお仕事についていてね。心苦しくはあるけれどなにせ会長に危害が及ぶのは避けたかったもんだから」
僕ってばこんなにもアドリブ上手でしたっけ?口を開けばスラスラとあることないこと浮かんでくるんですけど。
これが二年の時を経た成果かしらん?
まあここは背に腹は代えられぬと言いますか、一番大事なのはイエローの信用だ。
それさえ得られれば後はどうなろうとも構わない。
「へえ。そうなんですか」
あっれー?あれあれー?
全然興味なさそう、取り敢えず怪しいけれど危害はなさそうだからいいやって感じがビシビシと伝わってきちゃうぞ?
ちくしょう、こうなったらもうなりふり構ってはいられない。この手は多少時間がかかるからあまり使いたくはなかったが。
「ところでイエロー、君レッドを————————」
「そう!それがクチバの港の伝説!!」
「で、それがレッドさんとどんな関係があるんですか?」
うわーい!全然聞いてないや!なんだこれ!なにこの塩対応!なんであの会長よりもぞんざいな扱いなんだ!
「ぐぬぬ。人は第一印象が一番大事とは言うが、それにしたってあんまりじゃねえかな」
なんて言っている今もなお、イエローは会長の言うことに耳を傾けているので僕の方なんざ見てもいない。
・・・仕方ない、今は焦りは禁物だ。特に人と人との関係はね。
こうしてイエローに出会えたんだそれだけで今は満足しておこう。
いつだって強欲になると人は失敗を繰り返してきたことは歴史から見ても明らかなのだ。
愚かな先人たちには感謝をしつつ。
「ふぅ、こらこら。僕も話に混ぜてよ」
「あ、カラーさん」
「おお!カラー君も気になるか!クチバの港の伝説」
話し込んでいる二人に割って入るように僕も口をはさむ。
今はイエローの信用が先決。そう心でつぶやきながら。
「ああ、その話ですか」
「なんと!既に知っておったのか!」
驚く会長を余所目に僕はさらさらと答える。
取り敢えず一発、イエローには僕が頼りになる男だと証明しておかなくっちゃね。
「ええ、なにせ。この僕のウィンディもそのクチバの石で進化させたもんで」
「な、ななななんですとぉ!本当に実在しておったのか!クチバの海底に眠る”使ってもなくならない進化の石!”」
腰が抜けたように驚く会長、そんな会長とは対照的にイエローはその事実を聞いてもまだ冷めたままだ。
「ですから、それがレッドさんとどういう関係があるんです?」
どうやらあくまでも、レッドが優先順位の不動の一位らしい。
なにがイエローをそこまで駆り立てるのか気にならないでもないが。
「おお!そうじゃったそうじゃった!」
ま、今の僕の優先順位の不動の一位はイエロー。君の特殊能力なんだからどうでもいいや。
「実はじゃな!かくかくしかじかで」
「————————へぇ、そんなことがあったんですね」
会長の話は長いので、カラーディレクターの大体な編集を駆使して要約すると。
「コラー!せっかくのワシのセリフを!!」
「会長、ちょっとうるさーい」
つまりはこういうことだった。
二年前、クチバのサントアンヌ号事件の折、レッドはマチスさんと戦い一度は破れ海に落とされた。
がしかし、不思議なことにニョロゾがニョロボンに進化して海から這い上がりマチスさんに勝利したのだ。
ニョロゾはみずの石でしか進化しない。それが海に落ちただけでなぜ?その事件の顛末を聞いたものは皆そう思ったそうだ。
「そこで!わしは考えた!クチバの伝説が本当なら!すべての辻褄が合うのじゃと!」
あ、最後のセリフとられた。どんだけ喋りたかったんだこの人。
「つまり、そこに行けばレッドさんに繋がるヒントがあるかもしれないと」
「そうじゃ!」
ふーん、ま傍目から聞いていても確かに行く価値はありそうだ。
「ピカ!」
「ピ!」
「よし!出発だ!」
どうやらそう思ったのは僕だけじゃないらしい。イエローもピカもまあ嬉しそうに歩き出した。
しかしそれはこちらにとっても好都合、もしかすると短期決戦が見込めるかもしれない。
僕の大好きな、ね。
しかしまあ、それはまた次のお話ということで。
どうも!お久しぶりです!高宮です!
一か月ぶりの更新誠に申し訳ございません。ドラクエしてました!ええもう!それはそれはドラクエをしておりました!
やっぱね、人は素直が一番です。素直にドラクエやってたと白状するのが一番です。
ということでこれからは通常通りに戻るのでまた次回もよろしくお願いします。
あ、これだけドラクエやってるっていっててなんですが、まだ全部はクリアしておりませんのであしからず。
じゃ!