淡島神社での一件から場所を俺の部屋に移した。
俺の部屋へ着いて早々ダイヤに正座を命じられた俺はダイヤの前で正座をしているのだった。
「さっそくですが、説明してもらえますか?」
「説明と言われましても、どこから何をどう話したらいいものやら・・・。」
「全部ですわ。」
「全部?」
「えぇ。何故悠さんはあそこに居て、千歌さん達とも親しげだったのか。それら全てを最初から話してください。」
これはもう逃げられないか・・・。仕方ない。ここまできたら腹を括るしかないか。ルビィだって逃げずに頑張ったんだ。俺がここで逃げるわけにはいかないよな!
「分かった。全部話すよ。ただ、かなり長くなると思うから今日は泊っていけ。おじさん達にも連絡して許可貰ったら話す。それでいいよな?」
「でも、明日も学校が・・・。」
「それは別に大丈夫だろ?バスだってあるし、間に合わないなら俺が送るし。」
「ですが、そんな急に言われましても・・・その、色々準備が・・・。」
「そんなの、普段から休みの日はたまに泊ってるんだし、着替えやら必要なものも置いてあるから問題ないだろ?」
「そ・それはそうなんですが・・・。」
「まだなんかあるのか?」
「・・・なんだか腑に落ちませんわっ!」
ダイヤは頬を膨らませてプイッとそっぽを向いた。うん、可愛い♪・・・ってそんなこと言ってる場合じゃない。
「なんで!?」
「・・・。」
「はぁ。仕方ねぇな・・・♪」
俺は立ちあがると、むくれてそっぽを向いて座っているダイヤの後ろに回り、抱きかかえるようにして座り、ダイヤの頭を撫でた。暫くすると観念したのかダイヤはそっと頭を俺に預けてきた。
「それで、そんなにむくれてどうしたんだ?」
「だって、さっきまで私が主導権を持っていたのに、いつも間にか悠さんに主導権が移ってるんですもの・・・。」
「えぇ~・・・そんなことで?」
「それに、悠さんが色々私に隠し事をしているから怒ってるはずなのに、強気というか少し強引な悠さんを見てその・・・」
「なんか変だったか?」
「いえ。そうでなく・・・だからその・・・。カッコイイと思ってしまったんです!!///」
「お・おう。そうか・・・。その、なんだ、ありがとう?///」
ダイヤが耳まで真っ赤になりながらそう言うもんだから俺まで照れてしまった。それにしてもそっか・・・。ダイヤは少し強引と言うか、引っ張っられるくらいがときめいてくれるのか。これは新しい発見だ♪
俺はダイヤの新しい一面が見れた事と、かっこいいと言ってくれた嬉しさから思わずダイヤの頬にキスをしていた。
「あん♪・・・ちょっと悠さん、嬉しいですけど今は辞めてください///」
ダイヤは赤い顔を更に赤くして俺の顔をグッと両手で押し戻し、俺の腕の中から逃げようとした。俺はそんな可愛い反応をするダイヤを逃がさないように腕に力を入れ逃がさなかった。とは言え本気で逃げる気のなかったダイヤはすぐに抵抗を辞め大人しく座りなおした。
「悪い悪い♪ダイヤが可愛かったから、つい・・・な♪」
「かわっ///!?・・・もう!!ふざけないでくださいっ///!」
「ふざけてはないんだけどな♪まぁ、とりあえず遅くなる前に家に連絡入れて来い。」
「はぁ・・・分かりました。そのかわり、今度こそふざけたりしないで、き・ち・ん・と・話してくださいね?」
「はいはい♪」
ダイヤは俺を見上げるように軽く睨んでから立ちあがり、家に電話をしに行った。
別にわざわざ席を外さなくてもこのまま電話すればいいのに、と思いながら手持無沙汰になった俺は、お茶や軽くつまめる食べ物などを用意してダイヤが戻ってくるのを待った。
「お待たせしました・・・。」
暫くすると何故か疲れた顔をしてダイヤが戻ってきた。
「なんかあったのか?物凄く疲れたような顔をしているけど・・・。」
「次の日に学校があるのに、悠さんの家にお泊りというのは初めてだったので、お母様はともかく、お父様が何があったんだと電話口で騒ぎ始めまして・・・。」
あぁ、そう言う事ですか・・・。そりゃ疲れた顔もするわな。俺達が付き合い始めて2年も経つし、両家の親公認(おじさんは未だ葛藤しているが・・・)だから、お泊りなんてのはそれなりにしてる。まぁ、最近はお互い忙しくてあまりしていなかったけど・・・。まぁ、おじさんは毎度かなり渋ってはおばさんとダイヤ、たまにルビィにも〆られているらしい。ただ、今までお泊りは当然ながら休みの日にしかしたことないから心配になったんだろう。とは言え、親公認でも学生、しかも高校生が平日に彼氏の家にお泊りともなれば反対される方が普通か?そう考えると、おばさんが寛容すぎるのかな?
「でもまぁ、OKは出たんだろ?」
「えぇ。」
ダイヤは短く返事をすると、俺の足の間に体を入れ先ほどの様にちょこんと座った。
「それではこれまでの事をちゃんと話していただけますか?」
「約束だからな。・・・そうだなぁ、最初からと言ったら2年前にマリーが留学する少し前くらいまで遡るなぁ。」
「え?そ・そんな前からですか!?」
スタート地点が思いのほか前だったのかダイヤは目を見開いて驚いていた。俺はそんなダイヤに苦笑しながら話を続けた。
マリーが留学する時に、ダイヤと果南を見守ってあげてと言われた事。マリーが向こうに行ってからは定期的にマリーと近況報告をしあっていた事。たまたま東京に行った時に桜内を不良から助けた事。その後、内浦で偶然に再会したり、果南の店を手伝ってる時に高海と渡辺とも知り合った事。縁あって高海達を手伝う事になったことなど、順を追って全て話した。
「で、高海達の曲の編曲を手伝ったってわけ。」
「やはりあれは悠さんが作っていたのですね。」
「あれ?気付いてたのか?」
「逆に気付かないと思っていたのですか?」
「いや、そりゃまぁ・・・。」
正直驚いた。作曲にせよ、編曲にせよ、手掛けた人の癖と言うか個性みたいなものは出るが、俺はまだまだ未熟だからその時流行りの曲などに影響されたりして、俺自身作りが安定しないなぁと思っている。だがダイヤには俺が作ったものだというのが分かると言うのだ。気付く気付かない以前に、プロの有名な人ならともかく、アマチュアの俺の作ったものが『俺のものである』と分かる人がいるなんて普通は考えもしないだろう。
「それは心外ですわね。一体私がどれだけ悠さんの作った曲を聞いてきたと思っているのですか?私は誰よりも悠さんの作った曲を聞いてきたと自負しています。そんな私に分からないわけないじゃないですか!」
またもダイヤは頬を膨らませてプイッとそっぽを向いてしまった。うん、やっぱり可愛い♪
「確かにそだな♪」
言われれば確かにその通りかもしれない。ダイヤはおそらく俺の作った曲を誰よりも聞いている。それは俺の師匠である勇さんよりも多いだろう。
なぜなら、一年ほど前に俺がスランプに陥ったとき、ずっと傍で俺を支えてくれたのがダイヤだからだ。
桜内と初めて出会ったあの日、桜内と別れた後、プロの実力と言う物を目の当たりにした俺は自分が作る物がいかに幼稚なものかを思い知ってしまった。それからというもの、俺は自分の作る曲全てが気に入らなくなり、自信が持てなくなっていた。いわゆるスランプと言うやつだ。
とは言え、俺がスランプになっていようがそんなのは関係なく、勇さんから与えられる課題は当然ながら日に日に高い物を要求され、そのくせ正解と言う物がない。好みだったり流行りだったりという物の中に、どれだけ俺という個性を入れられるか、それがどれだけの聞き手の心に刺さるか・・・。あえて言うならばその多さが多ければ正解。そんな漠然とした答えしかない問いに、俺は自分の才能のなさや限界みたいなものを感じて一時期はこの夢を諦めようとさえした。それくらい俺は追いつめられ泥沼にはまっていた。
それでも今日まで夢をあきらめずに来れたのはダイヤのおかげだ。内助の功、とでも言えばいいのだろうか?ずっと俺が作った曲を聞いてくれては、細かな技術なんかは分からないながら、ダイヤが感じた事を意見として言ってくれたり、褒めてくれたり、時に愚痴を聞いてくれたりしながらずっと俺を支えてくれた。おかげで俺はスランプを何とか抜け出し、今に至るというわけだ。
「しかし、私の知らないところでそんな事になっていたんですね。」
「いろいろ隠していてすまなかったな。」
「まったくです。・・・とは言え、全部が全部ではないにせよ、私達の為だったわけでもあるわけですし、怒るに怒れないじゃないですか・・・。」
「ありがとう♪」
「それにしても、ルビィがスクールアイドルを始めるとは思いもしませんでした・・・。」
ダイヤは少し複雑といった表情をしてた。いつだったか『姉妹で同じステージに立ってみたい』と言っていたような気もするが、やはりせっかくルビィがスクールアイドルを始めたのに、ダイヤは辞めてしまったからかな?
「ルビィと一緒にスクールアイドルやりたかったんじゃないのか?ならここは喜ぶとこだろ?」
「それはそうなんですが・・・」
「あれか?今ダイヤがスクールアイドルをやってないからか?なら、ルビィもスクールアイドルを始めたんだし、ダイヤももう一度スクールアイドルを始めたらいいじゃないか♪」
「いえ、そうではなく・・・。あの子、人前にでるとその・・・。」
あぁ、そう言う事か。確かにかなりの人見知りであがり症だからなぁ・・・。心配になる気持ちもわかる。
「でも、大丈夫だろ?自分で選んだ道なんだし。なによりルビィはダイヤが思っている以上に強い子だよ。」
普段はまさに小動物という言葉がぴったりな感じなのに、そこはやはりダイヤの妹。実は凄く芯のしっかりしている子だ。俺自身その強さに何度も助けられてるし、その心配は必要ないだろう。
「それは分かっているのですが、やはり心配になると言うか・・・。」
「ルビィなら大丈夫だよ。それよりもダイヤだ。」
「・・・」
「どうだ?もう一度スクールアイドルをやってみないか?」
「・・・正直やりたい気持ちはあります。」
「なら・・・。」
「ですが・・・。いえ、以前も言いましたが果南さんと鞠莉さんが戻らないのであれば、やはり戻れません・・・。」
少し迷いを見せたダイヤだが、やはり親友と一緒に見た夢・・・。そう簡単に割り切れるものでもないのだろう。
「そうか。まぁ無理強いすることじゃないし、これ以上は言わないよ。」
「すみません・・・。」
「それよりも大分いい時間になっちゃったなぁ。」
俺は部屋の壁に掛けてある時計を見ると、時刻は21時を回ろうとしていた。18時ごろから話していたから、なんだかんだで3時間近く話していたことになる。
「さてと。腹も減ったし、どこかに食べにでも行くか?」
「それもいいですけど、今から食べに行っては遅くなってしまいますし・・・簡単なものでよければ何か作りますわ。」
「それは嬉しいけど、別に遅くなっても大丈夫だろ?久し振りに外でのんびり食おうぜ♪」
「その提案は魅力的ですが・・・その・・・」
普段は外に食べに行く事にここまで渋る事はないのに、今日はどうしたんだろ?それに心なしが顔が赤いような・・・。
「どうした?調子でも悪いのか?」
「い・いえ別にそんな事は///」
「ならどうしたんだ?」
「ですから、その・・・久し振りのお泊りなわけですし・・・その・・・///」
おぉ、そういう事か!!
「つまり、俺とイチャイチャする時間が無くなると。そういう事か♪」
「なぁっ!?そ・そんなはっきりと言わなくても///」
「でもそういこことだろ?」
ダイヤは顔を真っ赤にして俯きながら、コクンッと頷いた。
付き合って2年も経ち、年頃の恋人なら当然する事だってしていると言うのにこの初々しさ・・・。
まったく、なんなんだこの可愛い生き物はっ!!飯を食うまでは我慢しようと思っていたのに、あっさりと俺の理性を奪いやがって!これじゃ我慢なんて出来る訳ながないじゃないか!
「え?!ゆ・悠さん!?」
気付けば俺はダイヤをベッドに押し倒していた。
「悠さん、ご飯がまだですし、その・・・シャワーだってまだ///」
「ダイヤが可愛いのが悪いんだから諦めろ♪」
「何ですかそれ!?ん・・・ちょ、ン・・・。」
俺はそう言うとダイヤの唇をむさぼり、服の中へ手を滑り込ませてダイヤの柔らかい体を堪能した。
結局俺達はそのまま朝を迎えてしまったのは言うまでもないだろう。
仕事が忙しすぎて投稿に滅茶苦茶時間がかかってしまい申し訳ありません。
一応生きてはいます。
不定期ですが時間があるときにちまちま書いていますので、次回も宜しければ読んでいただけたら嬉しいです。