~果南Side~
わたしが鞠莉にスクールアイドルを辞めようと言ってから最初の月曜日。
休みの間は辛くて辛くて、自分が悪いのは分かってるけどいっぱい泣いた。それに、わたしの自分勝手な行動にダイヤを巻き込んでしまった。ダイヤは気にしなくていいって言ってくれたけど、ダイヤの事だ、泣いているわたしを見て、わたしがこれ以上傷つかないように自分の気持ちを隠してくれたに違いない。いつかこのお礼は精神的に返すとして、鞠莉が問題だ。あれから鞠莉は学校に来ていないし連絡すら取っていない。
「はぁ・・・。一体どんな顔をして会えばいいんだろう・・・。」
休みの間思いっきり泣いて精神的に落ち着きはしたけど、鞠莉も今週あたりから学校に来るだろうから、逢うという事は避けて通れない道なわけで・・・でも、逢うのは少しばかり勇気がいる。だからわたしは無駄と分かっていても、少しでも鞠莉と逢わないで済むよう遅刻ギリギリで登校した。
鞠莉が来ているかどうか覗くように教室の中を見渡すと、そこには当然ながらダイヤが既に自分の席に座って1時間目の準備をしていたが鞠莉の姿はなかった。そんなわたしを見つけたダイヤはどこかスッキリしたような、そして女のわたしが見てもドキッとするような素敵な笑顔で会釈をして準備に戻った。
あの時は頭の中がごちゃごちゃしていて気がつかなかったけど、先週ダイヤが学校を休んだ次の日、休んだときに何があったのかは分からないけどダイヤからは今までとは違う何かを感じた。どこが?といわれたら、これだ!とは答えられないけどあえて言うのなら『大人の女性』という感じかな?いったいダイヤに何があったんだろう?
そんなことを考えながら自分の席につくとHRの開始のチャイムが鳴った。鞠莉の席を見てもやはり鞠莉はきていない。
「今日も休みか・・・・」
鞠莉が居ない事に少しほっとしながらそんな独り言をつぶやいていると、担任の先生が教室に入ってきた。
「えっと、今日は皆さんにとても残念なお知らせがあります。・・・・入ってきて。」
「え?鞠莉!?」「鞠莉さん!?」
先生に促され入ってきたのは今日も休みだと思っていた鞠莉だった。そのことに驚いた私とダイヤは思わず立ち上がっていた。そして驚いたのはわたしとダイヤだけではなくクラス全員驚いていてザワザワとしていた。
「はいはい、皆静かに~。松浦さんも黒澤さん座ってね?・・・皆さん驚かれると思いますが、今学期を持って小原さんはこの浦の星女学院高校を離れ海外の高校へ転入されます。」
鞠莉が留学するという話に教室がさらにざわついた。そんな皆の反応を見て鞠莉は照れたような、少し困ったような笑みを浮かべ、先生に促され鞠莉は全員に向けて挨拶をしていた。
結局、鞠莉は今日一日質問攻めにあい、わたしとダイヤがゆっくり鞠莉と話せたのは放課後になってからだった。そして放課後、わたしとダイヤは鞠莉に呼び出され部室に来ていた。
「二人には話が遅くなってゴメンね?」
「いえ、それは構いませんわ。」
「そうだね。それより思ったよりも早く留学が決まったね?」
「向こうの学校は9月から新年度のスタートになるからね。元々留学の話が来ていたから留学したいって言ったらサクサク話が進んで、急だけど9月からは向こうの学校に通うわ。」
「では、これから準備とか手続きとか色々大変ですわね。」
「Yes。だから来月には向こうに行かないといけないから、果南とダイヤともこうやってゆっくり話せるのも、後少しだけになちゃうね。」
鞠莉はそういうと少しだけ寂しそうに笑った。
自分が決めたことなのに、鞠莉の為って決めてスクールアイドルを辞めることを選んだのに、鞠莉のこの顔を見て心が揺らいでしまった・・・『いかないで!!』そう口にしそうになってしまった。わたしだってダイヤと気持ちは同じ。本当はこの3人でずっとスクールアイドルをしていたかったし、これからも鞠莉とダイヤのそばに居たい。
でも、それは口にしてはいけないこと。鞠莉の将来を考えたら、わたしはここで引き留めてはいけないんだ。それに、これはわたしが望んだ事でもあるから・・・。行ってほしくない気持ちも、向こうで頑張って明るい未来をつかんでほしい気持ちも、どちらも本当だ。だから、凄く辛いけどわたしの我が儘は隠しておかないといけない。鞠莉が前に進むと決めてくれたんだから・・・。
鞠莉の話が終わると鞠莉はまだ準備があるから帰ると言うので、3人で帰ることにした。こうして3人で帰れるのも、もう数えるしかなんだと思うと涙が出そうになった。それは鞠莉もダイヤも同じなのか、淡島への船着き場に着くまで誰も言葉を発することなく歩いていた。
船が丁度着ていたので、悠君のところに行くと言うダイヤと別れ船に鞠莉と乗り、海を眺めながらこれまでの事、そしてこれからの事を考えていた。
今までも鞠莉の立場や立位置を考えたら、わたしなんかじゃ想像もできないような苦労もあったと思う。それに加えて、これから鞠莉はこれからわたし達の知らないところで生活するんだ。もしかしたら色々な事が嫌になって逃げたしたくなる事もあるかもしれない。小原家の娘ということや、才能があるからといった事で嫌われ、酷い扱いを受ける事もあるかもしれない。だからせめて、わたしが鞠莉の事を想っている事だけは伝えておこう。自己満足かもしれないし、これでいいんだって、自分に言い聞かせたいだけかもしれない・・・でも・・・。
「ねぇ、鞠莉・・・」
「ん?なぁに果南?」
「これから色々大変だろうし、嫌になる事が沢山あると思う。」
「うん・・・」
「自分から解散して、鞠莉の事突き放してくせに言えた事じゃいんだろうけどさ・・・・」
「・・・」
「離れ離れになってもさ・・・わたしは鞠莉の事、忘れないからさ。だから、向こうに行っても頑張ってね。」
「・・・うん。ありがとう。向こうに行っても頑張るわね☆」
鞠莉は少し寂しそうな顔をしたけど、すぐにニコッと笑って返事をしてくれた。その後は船が淡島に着くまで二人で夕日が反射する海を眺めながら過ごして鞠莉と別れた。
それからは特別な事があるわけでもなく、かと言って何かをする事もないまま鞠莉との別れの日が来てしまった。
~果南Side End~
いかがだったでしょうか?
今回も中途半端になってしまうので短めですが、楽しんでいただけたでしょうか?
アニメ2期は神回が多いですね♪
最新7話は泣きましたね!!あそこで「空も心も晴れるから」Aqoursバージョンが流れるとは・・・。あれは反則過ぎです!!
さてさて、次回で一応第1部 完 になる予定です。(書きたい事が多いのでもしかしたら+1・2話するかもしれませんがw)
宜しければ次回も読んでやってください。
でわノ