「よろしくお願いしま~す!ライブやりま~す!!」
ダイヤ達のグループ名が『Aqours』に決まったから数日が経ち今日はダイヤ達の初ライブの前日だ。初ライブだから当然身内以外誰もライブはおろかAqoursというグループがある事を知らない。なので今俺は沼津の駅前でAqoursの初ライブの宣伝のためビラ配りをしていた。ダイヤ達には少しでも納得のいくライブにしてほしいので、練習に集中してもらうため宣伝役を買って出たのだ。ただ、俺だけでは人手が足らないので智也を強制参加させて手伝わせている。本当はルビィを誘いたかったのだが残念なことに明日中学校の体育祭らしく今日はその練習らしい。大好きなダイヤの初ライブを見に行けないのを残念がっていたなぁ。動画でも撮って今度見せてあげよう。
「ほら、智也きりきり配れ!!」
「配ってるだろ!!」
「嘘つけ!!全然ビラが減ってないじゃないか!!」
「そんなこと言われたって誰も受け取ってくれないんだからしょうがないだろ!」
「んなわけあるかよ?俺はもうほとんど配り終えたぞ?お前どんな配り方してたんだよ?」
「普通だけど?」
「じょ、ちょっとやてみろよ。」
「おう。」
智也は返事をするとぐるっと辺りを見回すと、一組の女子高生グループに声をかけに行ったかと思うと女子高生たちは走って逃げてしまった。
「お前何で逃げられてんの?」
「俺が聞きたいよ!!普通に声かけてるだけなのにさぁ・・・」
「なんて?」
「え?君たちかわいいね、スクールアイドルとかに興味ない?よかったら「ちょい待ち!!」
「え、なに?もしかしてさっきから女の子ばっかりにそんな声のかけたしてたの!?」
「そうだけど?」
智也は、だからなに?的な顔をしている。どうやら俺は人選を間違えたらしい。あの声のかけかたじゃただのナンパだろ・・・・。最悪いかがわしいキャッチか何かと勘違いされたんだろうなぁ・・・。そりゃ、にげていくわな・・・あぁ、頭痛くなってきた。
「お前なぁ、それじゃただのナンパだ!!しかも女の子だけにしか声かけないってお前・・・分かってはいたが本当に馬鹿だろ?」
「失礼な!!ただ俺はお前と俺の利害が一致したことしかしていないぞ?」
「はぁ!?」
この馬鹿はいったいなにを言っているんだろうか?俺と智也の利害が一致しているだと?何が一致してるんだ?
「俺は可愛い女の子に声をかける口実があって嬉しい。お前は他の男どもがダイヤちゃんを奪っていく心配をしなくて済む。な?利害が一致してるだろ?」
あぁ、ちょっと前までこいつにダイヤの件で感謝していた自分を殴りたくなってきた・・・。
「なにくだらないこと言ってんだ!!俺とダイヤはおかげさまでラブラブだから大丈夫だ!!てか、くだらないことにダイヤを引き合いに出すんじゃねぇ!!とにかくお前でなく世間の普通でちゃんと宣伝をしてこい!」
それから俺達はビラを配り終えてから解散をした。ビラを配っている限りではあったが反応はまずますかな?まぁ、やはり地方と言うのもあって東京などの大都市と比べるとスクールアイドルをしている人口はそんなに多くないから珍しさもあるんだろうな。
そして夜。俺はダイヤと電話をしていた。付き合ってから俺達はダイヤがうちに来ない日の夜に電話をするのが日課になっていた。そして今俺は今日のビラ配りの報告をしていた。
「てな訳で、反応はまずますだっと思うぞ?明日は天気もいいみたいだし来てくれる人多いんじゃないかな?」
「だといいのですが・・・。」
「なんだ?不安なのか?」
ダイヤは明らかに浮かない声をしていた。まぁ、前日だし、なによりマリーの組んだスケジュールでは若干練習期間が短いから不安にもなるか。
「えぇ・・・。」
「ダイヤたちなら大丈夫さ♪確かに練習時間とか短かったかもだけど、この一週間妥協なしで頑張ってたじゃないか。絶対に大丈夫だ!!お客だって絶対に来る!!もしお客がいなかったら俺が満員の客がいるんじゃないかってくらい大声で応援してやるから安心しろ!!」
「うふふっ、それは心強いですね。・・・そうですわね、この一週間全力で頑張ってきたんですもの、大丈夫ですよね。それに私には悠さんが傍にいてくださるんですもの、なにも怖がる事なんかありませんでしたね♪」
「おう!!」
「では、明日も早いので今日はそろそろ失礼しますね?」
「あぁ。ゆっくり休んで、明日最高のパフォーマンスを見せてくれ♪」
「はい♪ではまた明日♪」
「うん、また明日な!」
いよいよ明日かぁ・・・。ダイヤにはああは言ったものの俺も不安になってきた。この数日かなりビラ配りをしたけど本当にお客は来るのだろうか?もしだれも来なかったら?ダイヤはどんな顔をするのだろうか?泣いてるダイヤは見たくないなぁ・・・。明日は満員になんて欲は言わないけど半分くらいは埋まって欲しいなぁ・・・。俺は窓から夜空を見上げながらそう願うのだった。
そして初ライブ当日。ついにこの日が来た。俺は沼津の駅前で智也と待ち合わせをしてバスで浦の星女学院へと向かった。
浦女の前には会場まではまだ少し早い時間だったがちらほら人が集まっていた。どうやらお客0ということにはならないで済みそうだ。とりあえず安心した俺はダイヤ達に逢うためにあらかじめ教わっていた控室に向かった。
コンコン
「はぁい?」
「悠だけど入っても大丈夫か?」
「あ、悠君♪どうぞ♪」
果南が控室のドアを開けて中に迎え入れてくれた。中に入るとライブの衣装に身を包んだ三人がいた。
「・・・・・・・」
「アラアラ、ユウってばダイヤに見惚れてるのかしら?」
「・・・・・」
はい、その通りです。ダイヤ達の衣装はとて可愛らしくふわっとしたデザインで、しいて言うならばμ’sのユメノトビラのようなデザインに近いような気がする。それぞれダイヤは赤、果南は緑、マリーは紫とデザインは同じでも色違いの衣装を着ている。
普段ダイヤはうっすらとしかメイクをしていないがステージに立つということもあって今はしっかりとメイクをしている。ただ、濃いというわけでなくあくまで普段よりメイクが分かる程度だったが、メイクのせいか普段のダイヤよりも大人に見えてとてもドキドキする。この場に果南達がいなかったらおそらく抱きしめていただろうなぁ。
「悠さんどうでしょうか?似合っていますか?メイクも普段ここまでしっかりとしたメイクをしたことなかったのですが、変じゃないですか?」
「・・・・・」
「悠君いつまで固まってるの?ほら、なんか言ってあげなよ!」
「あ・あぁ。その、なんていうかよく似合ってるよ。」
「ユウ、もっと気のきいたこと言えないの?何そのありきたりな感想。もっとこう、『流石俺の恋人!!ダイヤはなんでも似合って可愛いなぁ!好きだ!愛してる!!結婚してくれ!!』くらい言えないの?」
「言えるか!!てか、誰だよそれ!?もはやそれは俺じゃなく別人じゃないか!!」
「そうですわよ鞠莉さん!!悠さんはもっとかっこいいですわよ!!そんな微妙なものまねをするなんて・・・やるならもっとちゃんと似せてくださいなっ!!」
「ダイヤダイヤ、突っ込みどころそこじゃないから・・・。」
「え?」
「分かってないならいいけど・・・。でも、鞠莉の言う通りだよ悠君。」
「はぁ!?果南まで俺にあんな恥ずかしいこと言えと!?」
なんてこったまさか俺の感覚がおかしいのか?世のカップルとはこん恥ずかしいこと平気で言ってるのか!?流石にこんなことさらっと言えないぞ?
「何で悠君までダイヤみたいなポンコツかますかなぁ・・・。そうじゃなくて!鞠莉みたいなこと言えとは言わないけど、もう少しましなこと言えないかなぁってこと!!」
あ・あぁ、そう言うことね・・・。よかったぁ、どうやら俺の感覚がおかしいわけではないようだ。しかしまァ果南達の言う通りだな。見惚れていたとはいえ、間抜けな返答もいいとこだ。ちゃんとダイヤを褒めないとな♪マジで似合ってるし♪それにほら、なんかダイヤも待ってるっぽいし。
「そうだな。あんまりにもダイヤが綺麗だったから見惚れてた。凄く似合ってるぞダイヤ♪化粧もなんか大人びて見えてよく似合ってる。普段とは違うダイヤが見れて凄くドキドキしてる。」
「あ・ありがとうございます////悠さんにそう言ってもらえるととても嬉しいですわ。」
「あぁ、何だかこの部屋アツイワネ~、誰かさんが凄く恥ずかしいこと言ってるから温度が急上昇だわ~。」
「そうだね。鞠莉が言ってた事より恥ずかしいこと言ってるかも・・・」
「っるせ!!それより今日は頑張れよ。予定より早い時間だったけど外にお客さんらしい人たちがすでにちらほらいたぞ。」
「そうなんだ?とりあえずお客さんが0じゃないなら良かった。」
「当然じゃない☆この街の人たちは優しいもの。絶対に応援してくれると思っていたわ☆」
「もぅ、鞠莉さんったら調子いいんだから・・・。でも、せっかく来てくださったんですから楽しんでいってもらえるよう頑張りますね。」
「おう!!それじゃ、俺は会場に行くな。」
俺はダイヤ達の控室を後にして会場へと向かった。ダイヤ達と話していたら開場の時間が過ぎており体育館には結構な人が集まっていて大体3分2くらいは埋まっている感じだ。この学校の学生以外にもたくさんの街の人たちが集まっていてこれだけ人がいれば初ライブろしては上出来でなはいだろうか?
開演時間になった。アナウンスがあり幕が上がり会場から声援が上がった。三人は緊張しているみたいだったが曲が流れだすとさっきまでの緊張した様子はなく笑顔で思いっきり歌い踊っていた。俺はとても眩しい笑顔のダイヤから目を離す事が出来ないくらい釘づけになってしまった。
曲は1曲だけでたった5分足らずのライブではあったがパフォーマンスを終えた三人は満足のいく出来だったのかハイタッチをしてとても嬉しそうに笑っていた。お客もみんな盛り上がっていたし初ライブは大成功だろう。
しかし驚いたのは完成度の高さだ。もともといろんなポテンシャルの高い三人だとは思っていたが、たった一週間足らずで物凄い完成度だ。マリーの力強い歌声でリードし、果南のアクロバティックな踊りで見る者を楽しませ、ダイヤの透き通った声でマリーと見事にハモリながら、繊細な動きで果南と見事なコンビネーションを見せるという、見事なまでのチームワーク。幼いころからの親友と言うだけの事はある。この三人ならラブライブ優勝とまではいかないまでも、きっとかなりいいところまで行けるのではないかと思う。
そして見事初ライブを成功で終えたダイヤ達と打ち上げとして近くの松月でケーキを食べることにした。もちろん今日は俺のおごりだ。
「ん~、おいしい♪ライブも成功したし、おごりだと思うとまた格別においしいわね☆」
「本当だね♪一時はどうなるかとおもったけどうまくいってよかった~。」
「でも、ここまで余裕のない日程はこれっきりにしてくださいね?毎度こうなってしまっては流石に厳しいですわ。」
「確かになぁ。今回は上手くいったけど、これからランキング上位や、ラブライブを目指すならちゃんとした練習は必須になってくるだろうな。上位で人気のグループってのはとにかく細かなミスもしないから、反復練習は絶対になった来るからな。」
「そうだね。ところで悠君、ランキングって何?」
「え?何って言われても、ラブライブのHPでやってるランキングのことだけど?」
「そんなのがあるの?」
まさか知らないのか!?え?だってダイヤは知っていたはずだけど・・・・。俺はダイヤの方を見ると、ダイヤは慌てて目を逸らした。しかも下手な口笛までおまけで付いていた。なんてベタな・・・。てか、ダイヤのポンコツが発動してたのね・・・。まぁ、俺達の一件や急なライブ決定で抜け落ちてたんだろうけど今言われるまで完全に忘れていたな?
「ラブライブのHPで簡単に登録できるんだよ。別にスクールアイドルやってるからって絶対に登録しなきゃいけないってわけじゃないけど、知名度を上げたいならここに登録するのは必須だな。ライブのPVなんかもアップ出来るし、スクールアイドルファンならまずはここをチェックするだろうし。なんなら帰ってから俺が登録しておいてやろうか?」
「え?いいですか?」
「かまわないよ♪これくらい大した手間もかからないし。後で今日のライブ映像だけもらえたらやっておくよ♪」
「なんだか申し訳ありません。曲作りまで手伝ってもらってるのにこんなことまで・・・」
「気にすんなって♪好きでやってる事なんだからさ。」
「なら、それはユウに任せるわね☆それで・・・はい、ダイヤにはこれ☆」
マリーは何やら鞄から紙を取り出しダイヤに渡した。なんだろうと思いダイヤの肩越しに覗いてみるとそこには歌詞が書かれていた。
「これは新しい曲の歌詞ですか?」
「そうだよ。ダイヤと悠君が曲を作ってくれている間、時間があったから鞠莉と次の曲用に歌詞を書いてたんだ♪」
「というわけでさっそく次の曲作りよろしくね☆」
あれ?これってダイヤとの初デートはお預けパターン?マジですか!?まぁ、しばらくは仕方ないのかなぁ・・・トホホ。
ちなみに俺は家に帰ってからAqoursをラブライブのHPで登録しておいた。登録した時のランキング順位が3500位だった。ここからランキング上位は大変だろうけどダイヤたちなら大丈夫だろうとこの時の俺はそうおもっていた。まさか俺の知らないところでこの三人を今後を大きく変えてしまう出来事が動いているとはこの時の俺は微塵も思っていなかった・・・。
てな訳で初ライブ終了です。以前も言いましたがさらっとでしたw
次回は初デートの話にするつもりです。宜しかったら次回も見てやってください。
海未ライバー UMRさん、かねぎさん、評価ありがとうございます。お気に入りに入れてくださった方もありがとうございます。