もしも友沢が投手を諦めるほどの天才の親友がいたら・・・   作:八百屋財団

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初投稿です。どうぞお手柔らかにお願いします。


出会いと始まり

20YY年

 

 

 

春、それは出会いと始まりの季節。

 

リトルリーグチーム「アクアホエールズ」が使用しているグラウンドでも、新たな出会いと始まりがあった。

 

現在ホエールズはそれぞれに合わせた練習中である。

 

「ねえねえ」

 

「ん?なに?」

 

「さっき何か変化球投げてたけど、あれな~に~?」

 

そう質問するのは茶髪でタレ目な少年。グローブからしてピッチャーのようだ。

 

「スライダーだよ」

 

「すらいだ~?」

 

「そ、見てて」

 

そう言って構える金髪の少年。小学生とは思えないほどきれいなフォームである。

 

彼が放った白球は途中で滑るように曲がり、見事投球用ネットに食い込んだ。

 

「す、すごーい!」

 

「へへ、まあね♪」

 

おそらく初めてスライダーを見たのであろう。

直球が滑るように曲った事を茶髪の少年は驚きを隠せなかった。

そしてその驚き様を見て、金髪の少年は得意そうに笑った。

 

「今の変化球教えてよ!」

 

「いいけど難しいよ?」

 

「大丈夫!頑張れば出来る気がする!」

 

最初の緩やかな話し方はどこに行ったやら。

興奮した茶髪の少年はハキハキと話して、金髪の少年に教えを乞うた。

 

「じゃあ教えてあげるよ。え~と・・・」

 

「あ、もしかして名前覚えてないの~?」

 

「ごめんごめん、チームメイト多すぎて覚えてないんだ」

 

変化球を教えてもらう事になり、落ち着きを取り戻した少年たちは改めて自己紹介を始めた。

 

「僕の名前は雛壇祭(ひなだんまつり)。ポジションはピッチャーだよ」

 

「僕は友沢亮。同じくピッチャーだよ」

 

少年二人は互いの自己紹介の後に固い握手を交わした。

 

「「これからよろしくね!」」

 

 

 

後にこの出会いは「伝説の始まり」として多くの人に語られる・・・

 

 

 

数年後の現在。20XX年

 

 

 

春、それは出会いと始まりの季節。

 

帝王実業高校の校門前で並ぶ三人の少年も、新たな出会いと始まりを求めてここ来た。

 

「ここが名門・帝王実業か・・・」

 

三人の中で最初に口を開いたのは金髪の少年。

某芸能事務所に所属してても可笑しくないほど美少年で、纏う雰囲気からクールな印象を与える。

 

「な~んかワクワクするよね~、ここ来るの二回目だけど~」

 

次に口を開いたのは三人の中で一番背の低い茶髪の少年。

ふわりとした茶髪とタレ目。穏やかな雰囲気を持つ優しそうな少年だ。

 

「下見時にも思ったけどさ、やっぱ校訓とか校風とか厳しそうだよな。女子生徒とデートとかしたら怒られるかな~」

 

最後に口を開いたのは三人の中で一番背の高い黒髪の少年。

 

如何にも高校球児だと言わんばかりの黒髪の丸坊主。

小さい目に三枚目の雰囲気や発言からお調子者のように感じる。

自身の「明るい高校生活計画」に一抹の不安を感じている。

 

「はぁ・・・まったくお前は。学校についてまず心配するのが女子と仲良くなれるかとは・・・」

 

「まあまあリョウくん、ノリくんが女の子好きなのはいつもの事だし」

 

リョウくんと呼ばれた金髪の少年———友沢亮は親友の平常運手に呆れる。

 

「いやいや人生には潤いが必要だって!お前もそう思うだろ、マツリ」

 

ノリくんと呼ばれた黒髪の少年———奥居紀明は呆れ顔の親友に持論を主張しつつ、もう一人の親友に同意を求める。

 

「ん~?僕は今は野球だけでいいかな~?そう焦る必要もないし~」

 

マツリと呼ばれた茶髪の少年———雛壇祭は至ってマイペースで答えた。

 

「俺も今はそんな余裕も無いし、特に必要としてないな」

 

「か~!これだからイケメンは許せねえ!中身は天然とアイドルオタクのくせに、なぜオイラがモテないだ!?」

 

「そ~やって大声で妬むからじゃないの~?」

 

友沢の答えに奥居が嫉妬し、雛壇は正論を述べた。

クールな友沢、お調子者の奥居、穏やかな雛壇。

これまでのやり取りから三人は昔からの友なのが見てわかる。

 

「さていつまでも雑談をしてるわけにはいけないな。クラス分け見に行くぞ」

 

「また三人一緒のクラスだといいんだけどねえ~」

 

「オイラは別クラスがいいな、クラスの女子の人気が取られちまうぜ~」

 

奥居の「明るい高校生活計画」は、前提としてクラスに自分以上のイケメンが居ない事としている。

だが奥居自体が別にイケメンではない、良くも悪くも中の中といったところ。

本人は成功する事を一切の疑ってないが、この計画は最初から頓挫している事になる。

なので友沢は辛辣な言葉で友に無駄な努力と希望を抱かないようにした。

 

「安心しろ、俺たちが居なくてもお前の扱いは大して変わらない」

 

「ヒデェなおい!」

 

「ノリくんにはノリくんの魅力があるってことだよ~」

 

言い方は悪いがこれは友沢なりの思いやりである。

実際どんなクラスであろと、奥居のクラスでの扱いは「明るくて面白い人気者」に固定される。

過去9年間全てに置いてそのポジションを維持してきたベテランだ。

見方を変えればクラスの殆どから一定の評価を貰える魅力の持ち主とも言える。

その魅力を正しく理解している雛壇は、友沢の分も含めてフォローを入れた。

 

「なんだよ~オイラの魅力に嫉妬か?クラスの人気者に嫉妬か亮?ん?」

 

何を勘違いしたかここぞとばかりにどや顔する奥居。

 

「馬鹿の事言ってないで、いい加減クラス分け見に行くぞ」

 

スタッスタッスタッ・・・

 

「置いてくよ~?ノリく~ん」

 

スタッスタッスタッ・・・

 

奥居のどや顔を無視して先に進む友沢、どや顔してる奥居を不思議そうに見ながら後をついていく雛壇。

 

「っておい!っちょ置いてくなって!」

 

スタッスタッスタッ・・・

 

その二人を急いで追いかけていく奥居。

 

 

 

後に「伝説の黄金三世代」と呼ばれる世代の真ん中。

「友沢世代」を代表する天才達の伝説はこの日から始まった。

 

 




オリジナル設定① 天才オリ主 雛壇祭 モデル選手が三人いるオリ主。名前の元ネタは漫画キャラ。
オリジナル設定② 友沢のリトルリーグ時代という過去の捏造。これから先も独自設定の過去が出てきます。
オリジナル設定③ 何故か仲間入りしてる奥居。天才設定。コメディー担当。
オリジナル設定④ 帝王実業高校共学化。

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