彼女がモテないのは性格がダメダメだからでしょう   作:ラゼ

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スロットの用語とかは気にせず流してください。吉田さん、ゲーセンでパチンコ打ってたしスロットもやることでしょう。


汚染拡大

 

 高校二年生の生活にも慣れてきた今日この頃。本日は日曜日であり、リア充である私としては友人たちと都会に繰り出してキャッキャウフフと楽しむのも日常のことだ。まあ嘘だけど。基本的に休みの日は色んなところをフラフラしている。誘われれば一緒に遊ぶこともあるけれど、やはり学生の遊びなんてものは似たようなものになりがちなのだ。常に新しい何かを求めている私には少し物足りない。

 

 家はお金持ちという程ではないけど、それなりに裕福だ。お小遣いも結構くれるし、長女故に色々と得をしていると思う。お洒落して街を散策するのはとても好きだ。女である自分をいまだに客観視している部分もあり、美少女が着飾る事を眼福だと感じるのだ。

 

 いやまあ、ナルシストといってしまえばそれまでなんだが。

 

 でも偶に振り向かれるのは気分が良いし、優越感を感じもする。つくづく美少女に産んでくれた両親に感謝だ。できれば美少年の方がよかったけどね。そんなこんなで私は今散策中である。そこそこの人通りの道を練り歩きながら、何か楽しいことでもないかと胸を躍らせているのだ。そういえばそろそろ暑くなってきたし、女性の薄着が増えているようだ。大変喜ばしいことである。

 

 …おや? あのカフェにいる二人はもしかして。ああ、やっぱりそうだ。もこっちとその唯一の友達ゆうちゃんだ。あ、唯一じゃないや私がいたな。なにやら楽しそうに談笑している。うーん、生で見ると記憶よりも数段可愛く感じるなゆうちゃん。もこっちと一緒にいると確かに浮いている。ごめん間違えた、もこっちが浮いている。

 

 彼女だってもう少しお洒落に気を遣えば可愛くなると思うんだけどな。女の可愛さなんてものはマックスを100とすれば、50くらいは金と時間をかければどうにかなるものだ。勿論整形とかそういうのじゃなくて、服と化粧と身だしなみだけどね。清潔感があればそれだけで10は上がる。

 

 まあ素が95の私が言うのもなんだけど。なんだけど。ゆで理論を使えば恐らく1200まんパワーくらいまで上がるんじゃないかと妄想している。さて、こんなところで会ったのも何かの縁だ。ちょっと話しかけてみよう。後ろから近付いてっと…

 

「だーれだ!」

「ひゃっ!? え、え?」

「あ、葵ちゃん…?」

 

 良い匂いするなー、ゆうちゃん。私香水はあんまり付けない派なんだよね。それにしても……ぐうぅぅっ!? この純粋な波動は…! あれだ、極稀にいる天然かつ良い人の典型だ。筋斗雲に乗れる系の人だ。こ、こういう人に長く触ると苦しくなるんだよね。なんでかはまったくわからないけど。

 

「あはは、すいません」

「えーっと……え?」

 

 親し気に手を肩に置いてみた。誰だっけこの人、って感じで凄い焦ってる。まあいきなり『だーれだ』とかしてくるほど親しい人間を忘れてるとか気まずいよね。初対面なわけだけど。

 

 もこっちが知ってる風だから、きっと中学生の誰かだと当たりをつけて必死に思い出そうとしてるみたい。自分自身もイメチェンして結構変わったから、もしかして予想外の人なのかと特徴的な部分を探しているようだ。

 

「あ…! か、川本さん?」

「ぶふっ…!」

 

 おい。そんなデブ眼鏡……あ、いやいやぽっちゃり眼鏡ちゃんと私がどう繋がるんだ。共通点ある? それとなに笑ってんだくろすけ。まったくこれだから天然というやつは…! そっちがそのつもりなら戦争じゃい。

 

「もしかして、私のこと忘れちゃったんですか…? ゆうちゃん」

「え、え…! あ、違うの、その…」

 

 凄く悲しそうに俯いてみた。もこっちの方はというと『え!? 知り合い!?』という目で私達を見ている。そんなわけあるまいて。いやでもリア充度でいえば知り合いでもおかしくはないか。彼女の認識ではリア充というと全員何かしらで繋がっているみたいだし。SNSとか。どーせ下の方でも繋がってるんだろうが糞ビッチ共、という所までがいつもの彼女の心模様である。

 

「ごめんね、ごめんね…! なんでだろ、こんなに可愛い人忘れるわけないのに…」

「ですよね。初めまして、大谷葵と申します」

「えええっ!?」

「えぇー…」

 

 お前の全てを赦そう成瀬優。あ、間違えた。可愛いって言ってくれてありがとうねゆうちゃん。君とは良い友達になれそうだ。貴女の驚く顔も可愛いですよ。もこっちの呆れたような顔も可愛……うーん……えっと、面白いです。

 

「黒木さんのクラスメイトで友達なんですよ。お話はよく聞いてます。仲良くしてくださいね」

「え? う、うん…! よろしく、えっと……大谷さん」

「葵で結構ですよ」

「うん、葵ちゃん」

 

 ぶはっ。もこっちの顔が…! 『葵ちゃん』というハードルの高さを易々と越えたゆうちゃんに慄いている。いや、割と普通だと思うぞ。なんか顔がベルサイユの薔薇みたいになってるし、ほんと面白いなあの子は。ちなみにゆうちゃんの事などまったく聞いたこともないが、彼女はその事実に気付いていないようだ。しかし突っ立ったままなのもあれだし、私もなんか注文して座らせてもらおう。

 

「お二人は買い物ですか?」

「うん。適当にぶらついてるだけだけど」

「よかったら私もついていっていいですか? ちょうど暇していたので」

「私はいいけど…」

「わ、私も大丈夫だよ。もこっちの学校での話とか聞きたいな」

「ぃぃっ!?」

 

 そうかそうか、存分に話してやろう。まだ二年生になって幾何も経っていないけれど、彼女の変人っぷりはよく理解しているよ私は。えーとねー…

 

 …ん? なんかこっち見てる人がいる。なんか見た事あるような…? 眼鏡と、あと眼鏡と……ああ! こみーじゃないか。私服だから全然わからなかったよ。なんか寂しげにこっちを見ている。おいやめろ、何も悪い事してないのに変な気持ちになるだろうが。

 

 仕方ない。気は進まないけど誰もが幸せになる私の満面の笑みで呼び寄せてやろう。効かないのはもこっちの弟くらいだぜ。おーい……おお、嬉しそうに寄ってきた。よーしよし、偉いぞー。ほれ、もう一回取ってこい!

 

「こんにちは、こみちゃん。買い物ですか?」

「う、うん! 葵ちゃんは――」

「こみちゃん? わあ、やっぱりこみちゃんだ!」

「っ!? え……成瀬さん…?」

 

 ああ、そういえばこの三人は中学で友達だったな。ゆうちゃん一人だけ垢ぬけちゃって……ぷぷ、こみーも驚いてるじゃまいか。もこっちの方は非常に鬱陶しそうな顔をしている。どんだけ嫌いなんだよ。まあ弟のチ〇コ見たいなんて言われたら誰でもキモいと感じるだろうけど。私も記憶見た時ドン引きしたよ。

 

 恥ずかしそうな顔で『チ…コ…』とか言ってんだもんな。こういう変態の思考はあんまり読まないようにしているんだ。なんか汚染されそうだし。

 

 それはそうと、結局四人で遊ぶことになった。ゲーセンとか買い物とか回って楽しい――けど、もこっちとこみーのいがみ合いはどんどん苛烈になっていく。いいぞ、もっとやれ。私はゆうちゃんとイチャイチャしておくから。

 

「…葵ちゃん」

「なんですか?」

「もこっちとこみちゃん、もしかして仲悪いのかなぁ…」

「はは、喧嘩するほど仲が良いというやつでしょう。学校でもよくいがみあっていますよ」

「それずっと喧嘩してるってことだよ!?」

「おお、言われてみれば確かに。まあなるようになりますよ。人の関係なんてそういうものです」

「でも、私…」

 

 二人に仲良くしてほしい――ですか。ぐうぅ! 眩しい! 何故かはわからんが溶けてしまいそうだ。ええい、これじゃあまるで私が性格悪い人みたいじゃないか。そんな悲しい目をしないでくれ、わかったから!

 

「黒木さん。こみちゃん」

 

 なんか言い合いをしていた二人に声をかけて手を繋ぐ。ああ、さっきも言ったように人の関係なんて口を挟むようなものじゃないと思うんだけどなあ。友達ができるまで協力するってのは有りだけど、そっから先は手助けしてもしょうがないでしょうに。どうにも合わない人間てのは往々にして存在するものだ。ま、仲が悪いより良い方が楽しいのは確かだけどさ。

 

 ――とはいえ。とはいえ、彼女達のような水と油であっても私の能力と人間的魅力には平伏さざるを得ないんですけどね! ほれ、全てを曝け出すのだ! 心を読めば共通項からの仲良くなる道筋など簡単に見えてくるのさ。私はそうやって誰とでも仲良くなってきた。この能力があれば気難し屋の上司だってチョロソリティーになること間違いなし! ああ、前世で欲しかったなあ、この能力。

 

「え、えと…」

「葵ちゃん?」

「ふむふむ…」

 

 変態性、同レベル。コミュ障性、ややもこっちが上。成績、ほぼ同レベル。趣味、どっちも理解し難い。キモい。いやラノベとかは解るが、腐っていらっしゃるのと野球キチっぷりは理解の範疇に収まらない。

 

 百合成分――もこっちは意外とそっちの気あり。こみーは……うわっ、性欲=弟君になってる。つーかチ〇コじゃなくてチョコ渡したかっただけだったのか。ああ、そこから勘違いが続きつつもこっちを嫌いになったのね。笑うわそんなん。

 

 結論、処置無し。同族嫌悪に近いねこれは。チョコは、いやチ〇コは所詮きっかけだ。まあ処置無しというか、もこっちから歩み寄れば割といけそうなのは確かなんだけど……無理だろうなあ。でもそういうとこが好きなだけになにも言えん。

 

「…?」(手え柔らけえな)

「…?」(手、柔らかいな)

 

 知ってるわい。それよりどうしたもんか……うーん。四人の手の甲にスマイルマークでも書いてみるか? いや、それだとこみーの眼鏡がブロックに引っかかって圧死しちゃうな。いくらもこっちに闇の人格(妄想)があるとはいえエジプーシャの謎パワーはないんだ。 

 だいたいもこっちは小学生相手にバンデッド・キースしちゃうようなやつだからな。闇のゲームを始めたら間違いなく墓穴を掘って廃人になるタイプだ。

 

 まあ仕方ないか。自然に仲良くさせるのが無理と解っただけでも、能力は役立ったといえよう。後は――

 

「え、えー…」(いつまで手え繋ぐんだろ。はっ、もしかして誘われてる? いや待てこれは罠だ。美人局の可能性がある。私の筒を持った後に莫大な金を請求されるんだ…!)

 

 いやお前に筒ないだろうが。何考えてんだ。よしんば筒があったとしても攻めるのは私だからな。

 

「あ、と…」(葵ちゃんと繋がってるって事はアイツと繋がってるってことで、ということは智貴君とも間接的に繋がってる…?)

 

 頭大丈夫? いや……頭大丈夫!? お前はビスケット・オリバか! そのうち同じ空気を吸ってるってだけでオカズにしそうな勢いだな。

 

 いやまあここは我慢我慢。にっこにこしながら手を繋ぎ続けるのだ。するとどうでしょう、ささくれだった彼女達の心に一滴の癒しが…! というのは冗談だけど、これはこれで効果あるんだよ。笑顔ってのは本来攻撃的なものだ――なんてよくいわれてるけど、まったく理解し難いね。笑顔は人を心地よくさせるんだ。騙そうとする胡散臭い笑顔ならいざ知らず、仲良くしてほしいと念じる私の表情は容姿と相まってもはや暴力的だ。ん? 攻撃的より激しくなってるな。じゃあさっきの撤回。微笑みパーンチ。

 

「う、え…」(な、仲良くしろってことなのか…? このメガネと?)

「んんっ…」(ちょ、ちょっと言い過ぎてたのかな。でも謝るのは癪だし…)

 

 んー、もうちょい。あと少し……うん、いい感じ。相手に申し訳なさを感じにくいなら、私とゆうちゃんに迷惑かけたかなと思わせるくらいがベストだね。重要なのは罪悪感だ。そして“振り”でも仲良くし始めるなら、実際にそうなることは意外と難しくない。

 

 自分が実際におこした行動、そして言動は、心からの言葉ならずとも自分自身に必ず影響を与える。スタンフォード監獄実験と同じだ。体の所作は心の所作。個人差はあるが必ず引っ張られるさ。

 

 わかりにくい? じゃあ簡潔にいうと、まずは『口では嫌がってても体は正直だなぁ……へへへ』状態にするんだ。そのうち『〇〇〇には勝てなかったよ…』とか言い出すから。間違いない。

 

「ふふ、ちょっと恥ずかしかったですね。次はどこに行きましょうか」

 

 両者の気持ちが良い塩梅になったところで手を放した。あと十秒早ければしこりが残ったし、あと十秒遅ければ気持ちがぶれていた。別に心理学者を気取るつもりはないけど、そのくらいの見極めは今世で培ってきたからね。

 

 ゆうちゃんも笑顔になったことだし、ひとまずこのくらいでいいでしょう。ちらちらと視線を交わし合っているこみーともこっち。うん、良きかな良きかなっと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地元から離れたとあるゲーセン。最新のゲーム機器はあんまり揃ってないけど、たまにここへきてしまう。タバコ臭いし、客層もお世辞にはいいと言えない。けれど私にとってとても大事な、そして郷愁ともいえるものを感じさせてくれるのだ。

 

「おっ、新しいの増えてる」

 

 わーい。名機『ひぐらし祭』ではないか。この台で馬鹿みたいに負けてVIVAドンで取り返すのがお約束だったなあ。ビタ押し完璧じゃないから割下がるけど、まあオタクを殺す台だから仕方ないね。どれどれ少し触りましょうか。

 

 …スイカ零した。まあ久しぶりだから……あ、ちがうや単独白七だ。右リール上段白七、BIG一確目が美しい。RTが結構な勢いで増えていくのが楽しいよね。お、強ひざレナか貰ったな。はいはいバケバケ。えーいベルこいベルこい。あ、くそ落ちた…

 

 でもいきなり単独は6じゃない? こぜ6こぜ6。そして爆死するパティーン。お約束ですね。でもゲーセンだし1ってことはいくらなんでも……いや、だけど景品がちょっと豪華なぬいぐるみもあるし……でも1だってクレジット千くらいなら溜まらんことないだろ。いらないけど。

 

 続行!

 

 BB2 RB11

 

 は? 殺すぞ富竹。ニブイチもスカりまくってるし……悲しい。祭具殿からのあうあう~はダメージがでかいからやめてくれ。願いが足りてないだと? こんなに愛しているのに、こやつめ。

 

 …はっ! いかんつい熱くなってしまった。所詮はお遊び、むきになってどうするよ。もうやめよ。でも周期CZまであと100だし……いや、今日の引きじゃリプ引いて終わりだ終わり。やめやめ。横のココ壱でカレーでも食べて帰ろう。店員さーん、チーズカレー300の3辛で。

 

 ふう。かっら! 店員絶対粉の量入れ間違えただろ! もうこねーよちくしょう。今日は踏んだり蹴ったりだな……さっきの台、少しだけ見ていこう。いや別にたいして気にしてないけどね。

 

 ああぁぁぁ! なにエナってんだヤンキー! CZ成功からのBIG引いてる! 悔しくなんてないんだからねちくしょう!

 

 …ん? あ、よく見れば吉田さんだ。ぷふー、スロット打ってんの似合いすぎだろ。私なら掃き溜めに鶴に見えるんだろうけどね。

 

「こんにちは、吉田さん」

「ああ?」

 

 柄悪いなおい。私が話しかけてんだからもっと嬉しがれよ。それがハイエナをしたお前のすべきたった一つの行動だ。いや気にしてないけどね。全然気にしてないけどね。

 

「…大谷、だっけ?」

「はい。そういうあなたは吉田さんですよね」

「さっき呼んでただろうが」

「いえ、返事をするまではあなたが吉田さんの姿をしたナニモノかの可能性もあったわけですから」

 

 泥棒猫とかな! 

 

「…あんたそんな変なやつだったっけ?」

「なっ…!?」

 

 に、言ってんだこのやろう……はっ、もしかしてもこっちとかこみーとかに影響受けてるのか? なるべく気を付けてたのに。あんまり能力使い過ぎると人との境界線が曖昧になってくるんだよな…

 

「ま、まあなにをもって変とするかは人それぞれですから。今日はお一人ですか?」

「まあね。あんたこそなにしてんだ? こんなとこ来るようなやつじゃないだろ」

「それは偏見というものです。むしろ貴女にその台を打つ資格などないっ!」

「へっ……え、は?」

「最大枚数取れてないじゃないですか! ビタできないのになんで高難易度選択するの! ほら、白一枚取りこぼしてますよ! DDTせずしてなにがスロットか!」

「落ち着け」

 

 ぐふぅっ! 腹パンされた…

 

「あんた優等生じゃなかったっけ?」

「なにを言ってるんですか。学校一の優等生で美少女ですよ」

「…」

「…」

 

 あれ? やばいやばい! ほんとにちょっとおかしくなってる。くそ、こみーのせいでキャパオーバーしたか。二人同時に読むと後に残るんだよなあ。内心はともかく表にこういうのを出すことはないのに。どうにかリカバリーしなければ。

 

「なんて、冗談です。吉田さんなら少しくらいいいかなって、えへへ」

「はあ? あんま舐めてると――」

「すごく優しそうですから。私そういうのわかるんですよ」

「なっ、はあ!?」

 

 うわっ、顔真っ赤。ついでに私の顔も赤い。素面でこんなセリフ言えるかバカヤロー。えへへってなんだ。だがヤンキーが天然娘に弱いのは世界の真理。真面目な優等生が実は天然アホの子だったというギャップに苦しむがよい。間違えた、悶えるがよい!

 

「…これビタ押ししてくんない?」

「はい。いいですよ」

 

 はっはっは、ちょろいぜ。バチコーン!

 

「やっぱ冗談じゃないだろ、おい」

「はっ…!」

 

 ヤンキーの癖に誘導尋問だと!? なんて性格の悪いやつなんだ。くそ……どうすれば。このままでは私の学校での立場が……立場が……別にどうでもいいな。吉田さんがなにか言ったところで誰も気にしまい。信じたところで、別にゲーセンのスロットに詳しいくらいで引かれない、引かれない。

 

「まあどっちでもいいじゃないですか。それよりタイミング教えてあげますから、ほら」

「ちょっ…」

 

 そうそう、とりあえず今重要なことは目の前のボタンさ。横にぴったりくっついて彼女の手をとった。ヤンキーだけど彼女は美人だ。それにしても吉田さん、心の中は結構可愛いなおい。このスロット打ってるのも景品のぬいぐるみ目当てかー。混乱二割、驚き二割、私と仲良くなれた嬉しさ一割、ぬいぐるみが五割。

 

 まま、こんなもんでしょう。

 

「あ、取れましたね」

「おう」

 

 素っ気ない風にしてもその嬉しさは丸わかりだよ吉田さん。ほう、名前をどうするか悩んでらっしゃる。ぬいぐるみに名前…! 可愛いな。そうだ『にこちゃん』なんてどうかな。吉田さんニコチン好きそうだし。

 

 …ということをいつのまにか口に出していたようだ。この私の美しい顔をアイアンクロウされてしまった。

 

 

 

 新しい友人ができた一幕であった。ちゃんちゃん。

 





なんかえらい伸びてて驚きです。でもありがとうございます。

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