いやー、なんか今更ながらユーチューバー?の実況プレイ動画とかに嵌まっちゃいまして。漁りまくってたらいつの間にかこんなことに。
そろそろ飽きてきたので、また書き物に戻ります。ちゃんと完結はさせるよ!
あー、先日は酷い目にあった。きーちゃんの家では碌なことが無かったぜ。きりっとした美少女という私のイメージが大暴落だよ。まあ最後の日にもこっちが自転車で行方不明になるという、わけのわからないことをしでかしてくれたので相対的に私の奇行も印象が薄れたことだろう。
さて、今日はというと街へお買い物である。なにやらコミケなるものへ出かけるということなので、新しい服でも買いにいこうというわけだ。ちょっとコスプレとかもしてみたいものだが、なんというか……ああいうのはSNSとかまとめサイトに乗せられること前提みたいなとこあるからね。私みたいな美少女がやってしまうと『【朗報】コスプレ会場に超絶美少女あらわる【超時空アイドル】』なんて感じで一気に顔が知られてしまうじゃないか。
まあ普通の服で行っても盗撮とかされそうではあるけど。偏見? いいえ、カメコの恐ろしさは想像以上のものです。肖像権なんぞガン無視ですぞ。
ま、それはどうでもいいや。とにかく薄手で通気性がいい服を買わねば。あと熱中症対策で色々と買っとかないと後悔することになるだろう。“人間とは温度の塊である”ということをあれ程感じられる場所も他にあるまい。
しかし三日目に行くとのことだが、こみーは男向けのエロ同人が目当てなのだろうか。購入目的の女の子は大体初日二日目だよね。うーん……まあせっかくだし私も色々買おうかな。東方の18禁なんかは大抵百合かフタナリだし、こっそり買ってゆうちゃんの鞄にでも忍ばせておいてやるか。
もこっち? あの子はパソコンにいっぱい入ってるから大丈夫。ちゃんとお金を出してるのはいいことだけど、電子ダウンロードってなんか味気ないと思うのは私だけかね。やっぱ紙とインクの匂いあってこそだと思うんだけどなぁ……おっと、エコ団体を敵にまわす発言は自重しよう。
しっかし暑いなー……んん。あの絵文字顔の女の子はもしや『うっちー』ではないか? きーちゃんと別れたばかりだというのに、その上位互換が来るとは。いや、下位互換? なんといっても彼女はあまりにも普通で普通な普通の少女だからな。顔も普通、性格も一般人。虐めに加担するタイプではないけれど、傍観者に徹するタイプの人間だ。つまり人間らしい人間って感じ。良い人ではあるけれど、嫌な人でもある。
惹かれる要素もなかったからそんなに読んではいないけど、その他大勢の一人ではなかろうか。まさかきーちゃんのように思考がぶっ飛んでいるということもないだろう。ないよね?
「うっちー」
「え? あ、葵」
「買い物ですか?」
「うん。茜達と待ち合わせしてるんだ」
「岡田さんと? 珍しいですね」
あれ、うっちーがつるむのは南さんグループの人が多かったような気がするけど……んまあ別にグループによって仲が悪いってわけじゃないから、遊ぶのもなくはないか。
「葵は独り?」
「ええ、服でも買おうかと思いまして」
なんか“一人”の部分に違和感を感じたんだが。いやなんか孤独的な意味が含まれていたような……ちっ、このうっちーめ。私は誰かといないと寂しさを感じるような弱い女ではないだけさ。ウサギさんとは違うのだよ、ウサギさんとは。ウサギが寂しいと死ぬという話は嘘らしいけど。
どれ、ちょっと読んでみるか。
「えーと……一緒に行く?」(この子って私のこと好きみたいだし、誘ってあげるか)
「いいですね――はぁ!?」
「え、えぇ?」(な、なに!?)
「あ、いえ……失礼しました」
なんだその勘違いは! お前のことなんかなんとも思ってねーよバーカ! …こういう言い方すると逆に好きみたいだな……いやそれはともかく、なんだそれ。うっちーとは普通の友人付き合いしかしてないのに、そんな勘違いをされる要素などあっただろうか。
恋愛的な意味ではなく『大谷葵は自分を友人として慕っている』的な方向での認識だが、それにしたって貴様が優位に立っているという誤認は耐えがたし。二月にバレンタインで友チョコをあげたからか? でもみんなに配ってたのはこの子も見てただろうし、うーん…
「うっちーは…」
「?」
…ん、この言い方だと違う意味で勘違いされるか? でも勘違いの理由が知りたい。流石に何かしらのキーワードがないと、そんなとこまで読むのは時間がかかるし……うーむ……うん、まあうっちーに勘違いされたところで問題はないか。信用と信頼と実績を積み重ねてきた大谷葵ちゃんの言葉の方が信憑性もあるってもんだ。彼女に“大谷葵は女好きだったんだよ!”とか吹聴されても、私がそれを否定すれば問題はないだろう。いや、逆にお前がレズだという噂を流してやろう。はっはっは。
「うっちーは私のことどう思ってます…?」
「…っ!?」(なっ、えっ…? もしかして友達としてじゃなくてそっち…!? どどどどうしよ…! 私にそっちの気はないし、ちょっとキモイ…! スキャンダル!? 私だけ愛称で呼んでたのはそういうこと!? いやでも誰かに言っても信じてくれ――っ! まさかそれを狙って…! 『貴女の言うことなんか誰も信じませんよ』なんて言われて怪しいところに連れていかれて無理やりナニかされて変な写真撮らくぁ♨☆!?!)
なんだこいつ。なんだこいつ。お前の頭はもこっちか? つーか速すぎて読み辛いわ。にしてもなるほど、確かに私は基本的に『苗字+さん』付けでしか他人を呼ばない。心の中ではともかくだ。例外はお前とこみーとゆうちゃんくらいだよ。後者二人は貴様と面識がないから、自分だけが親しく呼ばれていると勘違いしているんだろうさ。
しかし私がお前をうっちーと呼ぶのは、お前が所詮うっちーでしかないからだからだ。うっちーという生物であり、それ以外の名で呼ぶ意義も意味も感じないんだよ。例えば『ヨッシー』は『ヨッシー』だろう? 卵から産まれてきてマリオを助けるあのヨッシー。あれ普通に考えてステージごとにそれぞれ別人……というか別ヨッシーじゃん? でも『ヨッシー』じゃん。それと一緒で、お前は単なるうっちーなわけだ。わかったかコノヤロー。
「ど、どうって、と、友達だと思ってるけど…」(さ、刺されないよな…? 怖い怖い怖い!)
「…そうですか。ええ、私もです。あ、そういえばこの辺で包丁とか売ってるところありましたっけ」
「ひいぃっ!?」(嫌ぁぁっ!?)
おもしろいなこいつ。普通の女の子だと思っていたが、こんな勘違いガールだったとは。思い込み激しい人はあんまり好きじゃないけど、斜め方向に勘違いする人は嫌いじゃないぜ。
「なにやってんだお前ら」
「ふふふ……ん? おや吉田さん。奇遇ですね」
「ひいぃっ!」(ヤンキー!?)
いや、クラスメイトなんだからそこはびびらんでもよくないか? あ、うっちーに離れられた。まあ仕方ないか。それより今は目の前の可愛いヤンキーちゃんだ。私服姿もギャルギャルしてて中々可愛いじゃないか……私には及ばんが。にしてもこんなシャレオッティな街にヤンキーとは似合わんな。
「どうしたんですかこんなところで」
ヤンキーといえばゲーセンかファミレスかラブホじゃ――あばばばっ!?
「お前ってほんと顔に出るよな」
「痛いです痛いです! なにも言ってませんよ!?」
「表情に出てんだよ」(ゲーセンかドンキかコンビニとか思ってんだろうが)
惜しい! 35点くらいあげよう。しかし首根っこを掴むのはやめてくれまいか。猫の――あいや、嫌な思い出が蘇ってきてしまう。まあそれはともかくクラスメイトが三人、こんなところで偶々出会うってのもおかしな話だ。もしかして吉田さんも誘われてるのかな。最近岡田ちゃんと仲が良いみたいだし。
「お待たせー……あれ、葵? 誘ってたっけ」
「やっほー」
なんて思ってたら岡田ちゃんがネモ嬢と一緒にきた。にしても、誘ってたっけとはなんだ誘ってたっけとは! なんでこの面子で私を誘ってないんだよ! もしかしてもこっちに関わるあまり、いつのまにか私もぼっち属性が付加されていたとでもいうのか? 深淵を覗く時、深淵を覗いているのだ的なやつなのか……あれ、なんか違う気がする。
「な、なんて酷いことをいうんですか岡田さん。それに、みんなで遊びにいくというのに誘ってくれないなんて……よよよ。根本さん、慰めてください」
「よしよし」
うん、ネモの胸の中は中々居心地がいいじゃないか。流石ツインテ隠れオタ少女なだけはある。そしてうっちーの悔しそうな顔……いや待て待て待て。お前さっき私のこと気持ち悪がってたじゃないか。いったいどういう心の動き方をしてるんだ。
「だって葵、結構誘ってるのに断るじゃない」
「それでも誘ってほしいこの乙女心、わかっていただきたい」
「はいはい。で、このまま一緒にいくの?」
「つーか今の発言にイラっとくるのは私だけか? おい」
「ふふ、まあ葵ちゃんだし」(ちょっとウザいけど)
ネモォー! お前まで私を裏切るのか! …いやまあ微妙に腹黒い少女だということは知ってるけどさ。だけどお前、ウザいはないだろウザいは。この私にむかってだぞ? せめて可愛いをつけてウザ可愛いくらいにしてくれよ。
「これで全員ですか?」
「ううん。加藤さんが遅れてくるみたいだから、先にカラオケ屋に行こうって話になってたんだけど…」
「カラオケですか……うーん……カラオケ……おお、そういえばこの後約束が入るんでした。ではまたの機会に」
「どんな嘘だよ!」
「そんなことだろうと思ってたけどね…」
「はは、いやーほんとに名残惜しい」
「またね、葵ちゃん」
「お前らそれでいいのかよ!?」
「葵ちゃんだし」
「いつものことだし」
にゃるほど、加藤さんもいるのか。うっちーは加藤さんと仲が良いし、ネモと岡田ちゃんも同様だ。彼女達の関係を繋ぐのが加藤さんということだろう。ちなみにクラスで二番目にお洒落なのが彼女である。一番は誰かって? こらこら、そんなもの聞くまでもないでしょう。
なんにしてもカラオケは気が乗らないので辞退させていただこう。あんま声を張り上げるという行為自体が好きじゃないんだよね。勿論歌えば美声でプロ級なわけだけど。けして音痴だから行きたくないとか、そんなんじゃない。ほんとに。ほんとに。
…しかしなんていうか、こういう状況で離れると自分のことについて何か話されてるんじゃないかと心配になるよね。まあいい子達ばかりだし、陰口とかはないと思うけれど。でも心配だから後日読ませていただこう……ん? 人間関係に臆病だって? ちっちっち、これが私の人間関係なのさ。
じゃあねー。くれぐれも変な噂を流すんじゃないぞ、うっちー。
某カラオケチェーン店。女子高生の財布にも優しく、機種も最新のものが揃う学生御用達の店である。女三人寄れば姦しいというが、遅れてきた少女も加わり五人になった彼女達は話に事欠かない。この世でもっとも騒がしいのは女子高生とおばちゃんなのだ。
「それにしても相変わらずだねー、葵ちゃん」
「ほんとにね。もうちょっと付き合い良くしてくんないかしら」
「昔っからあんなんなのか?」
「んー……最初はそれなりに付き合ってくれてたけどね。ちょっとした遠出とかなら飛びついてくるんだけど、一度いったとことかだと食指が動かないというかなんというか」
「なんだそりゃ。我儘お嬢様かよ」
「けどみんなと仲いいよね。グループ関係なく話しかけられてるし」
「あー、地味系男子共も葵には普通に話しかけてるしね。なんかこう……なんていうんだろ。一歩距離置いてるくせにこっちを理解してくれてる感じがするというかなんというか」
「あー……確かに。馴れ馴れしい割に踏み込ませないよなあいつ」
「そ、そういえば私以外は全部『さん』付けだもんね! 私には愛称だけど!」
「あぁ……それさ。こっ、この前『そういえばうっちーって本名なんていうんですか?』って聞いてきたから……くくっ、た、単に知らなかっただけだと思う」
「ぶふっ!」
「あ、葵ちゃん…」
そう、葵が『うっちー』こと『内』という少女の本名を知ったのはつい最近である。基本的にうっちーとしか呼ばれない少女は、グループ以外の人間とあまり接しない故に本名を知られる機会がなかったのだ。興味を持たれなかっただけともいうが。そしてそんな事実を知らされた少女は、少々目の光が薄くなっていた。しかし絵文字のような顔なので誰にも気づかれていない。
「…」
「え、なになに? なんの話?」
「さっきここ来る前に葵に会ったんだけどさー、せっかく誘ったってのに逃げられちゃったってわけ」
「『この後約束が入るんでした』って、意味わかんねー」
「あー……なるほど。あはは、そういうとこお茶目で憎めないよね」
「あとやたらスキンシップが多い。何かにつけてさわってこねーか?」
「ねー。男子だけにするなら魔性の女って感じかもしんないけど、女子にもだもんね」
「そういう時すっごいにこにこしてるからさー、なんか拒否れない圧力があんのよ。男が勘違いするからやめなさいって言ってんのに」
「でもその割にあんまりそういう話聞かないよね。告白されたとかしたとか」
「あ、でも最近一年のサッカー部の子とよく話してるらしいよ」
「マジ!? やっば、すごい気になってきた――」
歌をそっちのけで話し込む少女達。恋バナは女子の心を満たすスイーツのようなものだ。チョコ菓子やスナックをつまみ、ドリンクバーで喉を潤す彼女達はまさに高校生活を謳歌しているといえるだろう。一頻り話し込んだ後、会話は高校二年生の一大イベント――修学旅行の話に移っていく。
「そういえば修学旅行どこになるんだろーね」
「選択だったろ? 北海道か新潟か…」
「京都と奈良、熊本長崎福岡、あと沖縄だったっけ」
「葵は『絶対京都!』って言ってたけどね。なにかあんのかしら」
「班分けって五人一組だよね……どうしよっか」
修学旅行の班分け。それは女子の友情の確認と、そして破壊を司る恐るべきイベントである。班決めの日が近付こうものなら、普段自慢や陰口に明け暮れる少女も、借りてきた猫のように大人しくなる――あるいはより苛烈になる。とにかく友情を確認しあい、私達親友だよね? というスタンスをより明確にしようとするのだ。
…というのはただの偏見だが、和気藹々とする班決めの中で少しピリピリしたものを感じるのは事実だろう。誰しも、あまり絡まないグループの中にポツンと入るような事態は避けたいものだ。
とはいえ教師陣からすればその方が好ましく、修学旅行を期に新しい友人が出来れば素晴らしいというのもまた真である。
まったく子供のことを理解していない、というのが生徒の言であろうが、しかし意外と終わってみれば仲良くなっているものだ。『同じ釜の飯を食う』というのは想像以上に親近感を伴うのである。
「葵ちゃんはどうするんだろ?」
「最近黒木さんにご執心だしねー……案外そっち行くんじゃない?」
「ああ、あの人か……なんであんなに構うんだろ? 全然タイプ違うのに」
「変人どうしで気が合うんだろ」
「変人? 大谷さんが?」
「そういえば前も言ってたわよね。天然ってのはわかるけど変人…?」
「ああ。最初に話した時も変だったし……そうだ、この前も。原チャリで走ってたらUFOみたいな建物見かけたんだよ。なんなんだろなってあいつに話したら、だ、抱き着いて頭撫でてきやがってよ! 意味わかんねー!」
「…」
「…」
「…」
「…」
「そのUFOってラブホテ――」
「うっちー!」
「あはは……まあ抱き着いてなでなでしたくなる気持ちはわかるかも…」
「ああ!?」
「それを実行に移すのは葵だけだけどね」
会話は続く。修学旅行――そしてその前の運動会。学生の間はとても長く感じる生活も卒業してみれば、振り返ってみてみれば一瞬のことなのだろう。それを理解している葵という少女は、夏の休暇を全力で楽しんでいるのだ。
そんな少女を取り巻く友人たちも、振り回されながら……あるいは振り回しながら青春を謳歌するのだろう。彼女達の夏はまだまだ始まったばかりである。