真剣で私に恋しなさい・微勘違い   作:勘違い練習者

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 こ、こんな感じでいいんですかね~?(ガクブル

 お気に入りありがとうございます!(・ω・)/


春樹君の日常(?)

 ───ある所に、仲睦まじい夫婦がおりました。その二人の間には、それはそれは可愛らしい女の子が生まれました。その女の子は少々他と比べると特異な容姿をしてはおりましたが、夫婦にとってはそんな事は気にならないくらい、その子の事を愛していました。やがて2人の愛情を一杯受けてすくすくと育った女の子も5歳の誕生日を迎え、幸せいっぱいの日常を送っていた家族でした・・・・・けれど、そんな家族に突然として、悲劇の刃が襲い掛かって来たのです

 

 お父さんが事故に遭いました、ひき逃げでした。その場面を目撃していた人がいち早く救急車を呼んだお蔭で幸い一命は取り止めたものの、お父さんの意識は戻りませんでした。病院に駆け付けたお母さんと女の子は、ベットの上で死んだように眠るお父さんを見て、悲しみの涙が止まりませんでした

 轢いた犯人はすぐに捕まり、原因は飲酒運転だと判明しました。無責任な行いで、この家族の日常は奪われてしまったのです。しかし、ここからさらに運命の歯車は狂い始めます

 

 一命は取り止めたものの、未だ目を覚まさないお父さんのお見舞いをする中、お母さんの胸の中には「もしかしたら、もう目を覚まさないんじゃないか・・・?」という不安が、日に日に強くなって行きました

 そんな不安を必死に振り払う様に、働き手を失い賠償金や貯金はあるものの、それではいずれ生活が出来なるという事もあって、お母さんは働き始めるようになりました。朝早くから夜遅くまで、お母さんは家庭を支える為に慣れない仕事を懸命にこなしました

 そんな生活を送っていたある日、仕事帰りの深夜。お見舞いに病院へ訪れていたお母さんは偶然にも恐ろしい会話を聞いてしまいました

 

"例の患者の件だが・・・"

"あぁ、アレはもうダメだろう。いい加減、無駄なものでベットを占領され続けては面倒だ"

"ならいつもの様に偽装死に見せかけて、ドナーと称してさっさと臓器は売るか?金を幾ら積んでも欲しい輩は五万といる事だしな"

"ふふっ、全くだ。そうだ、この間贔屓にしている官僚のご子息が・・・"

 

 思わず自分の耳が可笑しくなったのかと思う程、信じられない悪魔の様な内容でした。いいえ、実際に見てはいませんでしたが、会話する2人の表情は欲に溺れた悍おぞましい悪魔の如きものだったのでしょう

 幸か不幸か、この街で一番大きな病院で、街の人達からの評判も非常に良い2人の裏の顔を知ってしまったお母さん。この件をきっかけに、お母さんは人を信じられなくなりつつありました

 

 

 一方、女の子の方はというと、実はその他人とは違う特異な点がきっかけで、いじめの様なものに遭っていました。暴言を吐かれたり、物が無くなったり、暴力を振るわれるといった行為はされなかったものの、仲間外れにされたり、無視されたりという事が続きました

 女の子はどうしてそんな事をされるのか分かりませんでした。一生懸命自分を見てくれる様に頑張ってみましたが、そんな彼女を面白がってなのか、ますます無視が酷くなりました

 

 そんなある日、まだ諦めていない女の子は、「お菓子を上げたら皆が自分の事を見てくれるんじゃないか」と思い付き、少ないおこずかいを手に、近所の駄菓子屋に足を運びました。そこで1人の男の子と出会いました

 

 この出会いが、孤独な女の子と、その家族を救う事になるとは、誰も思ってもいませんでした

 そして・・・

 

「うぅぅぅぅぅぅッッッ!!!!」

 

 その男の子と再会出来た女の子の溢れんばかりの感情と、自分が成した事に気づいていない男の子はというと・・・

 

「(やだ、そんなに強く抱きしめたらむにゅむにゅががががッ!!?)」

 

 1人、なけなしの理性を持って、襲い掛かる煩悩と戦っていた

 

 

 ● ○ ● ○ ●

 

 

 ───激動の転入初日から早数日、新しい学校にも少しは慣れ・・・慣れて(?)、高校生活を送っています

 そんでもって今日は全校朝会があるから、いつもより早めに登校しなきゃいけない。あっちの学校じゃ、そんなん無かったからちょっと新鮮。まぁ、眠り足りない時とかは大変そうだけど

 玄関で身だしなみと忘れ物がないか最終チェックを終え、準備完了

 

「んっと・・・じゃぁ、じいちゃん行ってくるねー」

「おー、車と人とカツアゲには気を付けるんじゃぞー?」

「あいあーい」

 

 ひらひらと手を振るじいちゃんに見送られて、玄関から出て扉を閉めた途端、体に軽い衝撃(物理)を受ける

 

「ウェーイ!おっはよー♪」

「・・・おはよう」

 

 視線をほんのちょっと下に向ければ、ニコニコと満面の笑みな美少女Bちゃんが。いや、美少女Bちゃん改め小雪さん。同学年の成績優秀者の集まりのSクラスの所属で、クラス的にはお隣さん。そして今は物理的にも超絶お隣さん。やだ、全然上手くない

 

「~~♪」

 

 あらあら、今日もとてもご機嫌ですねぇ。というかぐりぐり頭を押し付けるの止めてくれんかね?思わず抱きしめちゃいそうになるんですがそれは・・・いいの?春樹君やっちゃうよ?思いっきり優しくぎゅってしちゃうよ?そこから膝の上で撫でられる猫さん状態まで発展しちゃうよ?

 ・・・・・・ふぅ、危ない危ない。煩悩に流される所だった。一時の感情に身を任せたら、大変な事になるってどっかの偉い人が言ってたしね。あと個人的な経験則。同じ過ちを繰り返してなるものか!(必死

 

 そんでもって保健室で抱き着かれた転校初日から、この様に小雪さんに非常に懐かれている春樹君なのですが、わたくしめにはその理由がとんと検討がつきませぬ。い、一応聞こうとしたよ?でもあの無垢な笑みで「なぁに?」って聞いてくる子に「どこかで会った事あったっけ?」なんて言えようか?いや、言えまい(反語

 

 閑話休題

 

 取り敢えずいつまでもこうしてたら、春樹君は煩悩やら遅刻やらで大変なので、ぽんぽん、と頭を撫でて離れてくれる様に促す。すると素直にそれを酌みとって離れてくれた。けどその後、今度は腕を絡ませて左腕にピッタリ抱き着いて来た。うん、ソレナラ歩クノ二邪魔ニナラナイネー(棒

 

 若干考える事を放棄しつつ家の門の外に出ると、自分と同じ制服に身を包んだ男子生徒が2人。どっちも共通して優しい眼差しでニコニコと笑みを浮かべている。なんかすごく恥ずいっす

 

「おやおや、今日も朝からお熱いですねぇ」

「まぁ、毎朝それを見せつけられる身としては、逆にこっ恥ずかしくもあるんだけどな」

「えへへ~、羨ましいでしょハゲ?」

「幸せな笑顔ですごい辛辣ッ!?」 

 

 褐色肌のハーフのイケメン眼鏡の葵冬馬君と、同じくSクラスのハg・・・頭がスッキリしてるお坊さんの如きオーラを持つ井上準君の2人が。お2人は小雪さんの幼馴染兼、お兄ちゃん的ポジションらしい。最近小雪さんを通じて知り合ったけど、それなりに仲良くやれてると思う。一応名前で呼び合う仲だし?

 というかこの会話だけでも準の扱いが大体分かるんだよね。自分が言うのもあれだけど、彼には強く生きて欲しい

 

「むっ!?・・・すまん若、先に行っていてくれ。たった今、重要な用事が出来ちまった」

「おや?どうしたのですか?」

「・・・ここから300m先にピカピカの一年生が泣いている。少女の涙が、俺を呼んでいるッ!」

 

 急にキリッとした顔つきになって、準は風の如き速さで駆けて行った。しかも思いっきり高校の通学路とは真逆方向へ。うん、準は十分過ぎる程、強く生きてたよ

 

「はぁ、仕方がありませんね。では、私達は行きましょうか」

 

 そう言って冬馬は妖艶な微笑みと共に俺に流し目を送って来る。やだ、お尻がきゅっってなっちゃうぅ・・・準もだけど、何でもいける冬馬も業が深いよね、ホント(白目

 春樹君の初めてはどっちもやらせはせんからなッ!

 

「うぃ!ロリコンなハゲはほっといてもいいのだー」

 

 そして笑顔でそんな事を仰る小雪さんはぐいぐい胸を押し付けながら引っ張っていく。春樹君はもうされるがままです。でも決して嫌じゃないのは悲しい男の性なのさ・・・(遠い目

 

 

 ● ○ ● ○ ●

 

 

 自宅から川神学園までの通学路の途中に、大きな橋がある。そこは正式な名前があるんだけど、一般的には『変態の橋』の名で親しまれている(?)

 何でそんな名前で呼ばれているのか?それはね・・・

 

「あらぁん、坊や達。アタシとイ・イ・事しましょう♡」

『ぎゃぁぁぁぁぁ!?』

 

 自分達の前方を歩いてた男子2人組が、オークの餌食になった。アレは・・・なんだ。正直皆目見当がつかぬ。いや、そもそもあれは同じ人類なのかどうかすら

 

 こんな感じに、この橋では変態と高確率でエンカウントするのであの名称が付けられたそうな。初めて聞いた時は自分の頭を疑ったよ。でもパンフレットにも乗ってて春樹君呆然。この街はホントにどうなってんだろう?それとも都会って全部こんな感じなのかな?田舎もんの一般ピーポーにはわかりんせん

 

「て、テメェなんぞに俺達の初めてはくれてやれるかぁぁぁぁぁッッ!」 

「クタバレこの腐れオークがぁぁぁぁぁッッ!!」

「きゃぁぁぁぁぁッ!?」

 

 おぉっ、餌食になったと思った男子生徒2人が一矢報いた。片っぽはパンチで、もう一方は鋭い蹴りで、オークの拘束から逃れた。火事場の馬鹿力、窮鼠猫を噛む的な感じ?というか見た目だけでもやばいのに、トロールの野太い悲鳴とか僕のSAN値ががががが・・・・・・あっ、腕に感じる柔らかさで相殺だ。小雪さん真剣天使。もう貴方無しでは生きていけない(`・ω・´)キリッ

 

 それで終われば、ちゃんちゃんという感じで落ちが付いたであろう。けれど神様ってやつはどこまでも非情だった

 

 自分の数少ない自慢の一つに、偶に良くなる視力があげられる。そんな自分の視界に移るもの全てが急にゆっくりになって行き、俺はそれを見てしまった。男子生徒達の反撃でダメージを負ったのか、拘束から逃れた時の反動なのかは定かではないけど、ただでさえピチピチでもっこりだった際どい衣装(下)の結び紐が、ぷっつり切れたのを

 

 そこからの行動は殆ど反射だった。一瞬で自由にさせた左腕で小雪さんの後頭部を押えて自分の胸に正面から抱き込み、元々空いていた右手は小雪さんとは反対隣りにいた冬馬の目元を視界を遮る様に隠す

 

 そして、弾けた。それはもう勢いよく、バルンッという擬音が付きそうな程に

 

「いやん♡」

『うぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッッッ!!!???』

 

 前の男子達の絶叫が、酷く遠くに聞こえた

 

 

 

 

 

 ───気づいたら橋を渡り切り、学校まであと少しの所まで来ていた。周りは同じく登校中の川神学園の生徒達が多くいて、賑やか・・・というよりなんか周りがやけにざわついてるな。そう感じていたら何故か皆さんが距離を取りつつも、視線がこっちに集まってらっしゃるではありませんか。そして自分の右側からは戸惑った様な冬馬の呼びかけ。そこでようやく春樹君は自分の状態を認識出来たのです

 

 左手、小雪さんを胸に抱いたまま。小雪さん、沈黙

 

 右手、冬馬さんをアイアンクロー。冬馬さん、困惑

 

 なにこれ怖い。こんな登校する奴がいたら取り敢えず避けるわな、やってる本人でもそう思うわ。というか下手したら通報されても可笑しくないよ?

 気付いてすぐに手を放して冬馬と小雪さんに平謝り。何ならそのまま土下座しそうな勢いで

 

 冬馬は視界の効かない中でも事情をある程度察していた様で、気にしないで下さいと言うばかりか、お礼に加えてこっちの心配までしてくれた。心が広すぎて春樹君の心が大ダメージ必至。心までイケメンだったよ冬馬君は。ちょっと抱かれてもいいと一瞬思ってしまうくらいイケメンだった

 

 小雪さんは反応なし。というかなんだかぼぅっとしてて、若干顔が赤い。もしかして激おこぷんぷん丸?とびくびくしながら反応を待っていたらゆっくり近づいて来たので、ビンタを覚悟した春樹君の予想を裏切ってそのままぎゅっと抱き着かれて、頭を胸元でぐりぐりされた

 

「おー間に合った間に合った・・・・・え、何これどういう状況な訳?」

 

 遅れてやって来た準が心からの疑問を呟いた。安心して、自分も全然分かんないです゚ ゚ ( Д )(ウボア

 

 

 ● ○ ● ○ ●

 

 

 全校朝会。その名の通り、全校生徒を集めて行う朝会。この場において、校長の講話や生徒会役員や各委員会からの連絡などやらが行われるのが主。あとは各部活動の表彰とかだっけ?

 そう言えば自分部活とかどうしようかなぁ・・・あっちの学校じゃぁそんなん無かったし。正直ラノベの中だけの物かと思ってたくらいだからね

 

 それにしても校庭に集まった川神学園全校生徒が一同に会している様は、自分が想像していた以上に騒がしい感じだなぁ。まぁ、何名かは眠たそうに欠伸を噛みしめてる人もいるけど

 あとさっきから自分に刺さる視線が凄い。主に近くの男子からは物理的にホントに刺さりそうなくらい鋭いのが。春樹君は今朝のあれが原因だと察します。早く朝会始まってー!(心の叫び

 

 そんな針の筵状態の自分の願いが届いたのか、お立ち台に学園長の鉄心さんが現れた。それでもざわつきは収まらない。そんな生徒達を一瞥して鉄心さんが息を吸い込む様子が見られたので、何となく察した自分はすぐさま耳を塞ぐ

 

「喝ッ!!!」

 

 轟く一喝。空気がびりびりと震えて、耳をしっかり塞いでても鼓膜が痛いくらいだ。ウチのじいちゃんよりも凄いかもしれない

 けどその威力もあって、全校生徒は一斉に静かになった。コホンと1つ咳払いをして、鉄心さんは挨拶から始まり、ちょっとした連絡事項を上げていく

 大半の生徒が無難に聞き流していたけど、鉄心さんは最後にワザとらしく溜を作ってから何やら語りだした 

 

「福岡の天神館が・・・週末、修学旅行で川神に来るらしいの」

 

 ? その学校は知らないけど、修学旅行でここへ来るって事は川神って東京や京都、北海道や沖縄とかに並ぶくらい有名な観光地って事かな?すげー(小並感

 

「学校ぐるみの決闘を申し込まれたので引き受けたぞい」

 

 しれっととんでもない事を仰る学園長。ホウレンソウの最後が無かった気がするんですがそれは・・・いや、学園長権限行使されたらどうしようもないけど

 

「東西交流戦と名付ける。激しい戦となるな」

  

 戦って・・・戦国時代じゃあるまいし、とちょっと苦笑い。けれど周りの反応は自分と違い、何やら真剣な表情の人がちらほら。え、もしかして東西交流戦って火縄銃とか持ち出してくるの?なにそれ怖い。出来れば出たくないなー・・・補欠とかないかな?(真顔

 

「夜、川神の工場で学年ごとに200名ずつ出し合い、集団戦。敵大将を倒せば勝ち、ルール無用の実戦形式3本勝負。1年生、3年生、2年生の順で三日間かけて決闘を行う。何でも今年の天神館の2年は粒揃いらしいからのぅ・・・もしかするとあっさり負けてしまう様な事もあるかもしれんなぁ」

 

 うわぁ・・・なんともワザとらしい発破の掛け方。今時そんなものに引っかかる輩なんて(失笑)・・・

 

『フハハハハハッッ!!よかろう、そこまで言われてはこの九鬼英雄、奮い立たずして何が漢かぁッ!!』

『きゃるるぅん♪素敵です英雄様ぁ!!』

 

 自分から比較的近くにいた金ぴか君は高笑いを上げ、傍にいたメイドさんが黄色い声を上げる。うん、ずっと考えない様にしてたけど、あの人達何なのですかな?

 金ぴか君は別にどこぞのAUOさんみたいな鎧姿ではないものの、背中に豪華な刺繍が施された金色のスーツに身を包んでる。そんでもっておメイドさんはガチのメイド服を着てる。おい、風紀委員仕事しようよ

 あっちの列に並んでるって事は小雪さん達と同じSクラスなんだろうけど、キャラ濃過ぎんかね。もう君主人公張れるくらいのオーラ出ちゃってるじゃん(戦慄

 

 そんな金ぴか君や学園長の言葉に触発されたのか、意気込んだ様子の生徒達。そんな周りに微妙についていけてない自分でした

 

 

 そして結局、最後もちょっと騒がしいまま春樹君の初めての全校朝会は幕を閉じるのであった

 

 

 ● ○ ● ○ ●

 

 

 時間が流れるのは早いもので、本日は東西交流戦最終日。初日は一年生がまさかの速攻敗退。何でもこっちの大将さんが無謀に突っ走り過ぎたせいで囲まれて袋叩きになったらしい

 ちなみにその時春樹君はトイレに行ってたので見れませんでした

 

 二日目は天神館側が凄い奥義を出して来たけど、川神学園側のたった一人に打ち破られてそのままの勢いで決着

 ちなみにその時春樹君はまたまたトイレに行ってて見逃しました(泣

 

 なんか最近ちょくちょくトイレが近いんだよなぁ・・・やっぱりあれかな?マシュマロの食べ過ぎが原因?「マシュマロ食べる?」って上目使いされたらNOなんて言えません。一瞬違うマシュマロ思い浮かべたけど、根性で耐えた。何がとか聞いちゃぁいけない。いいね?(真顔

 

 さて、ここまでの戦績はお互い譲らす1ー1。つまりこの戦いが勝敗に直結するのだ。しかも聞いた話だとなんかテレビまで来てるらしい。まぁ、こんな事やってるのなんてここぐらいだろうからね・・・他の所はやってないよね?ね?

 

 閑話休題

 

 さて、さてさてさて、現在最終日の両2年生による"合戦"の真っ最中。春樹君は今現在進行形でひじょーに後悔しちゃってます。正直ナメてました。えぇ、舐めてましたよ。自分の考えがどれだけ甘かったのかを思い知らされました

 これを簡単に表現すると、飴ちゃんをぺろぺろするという答えが導き出されます。すいません、ちょっと何言ってんのか分かりかねました

 

「でやぁぁぁぁッ!!」

「ほうぁぁぁぁッ!!」

「キエェェェェッ!!」

『ワァァァァァァァッッ!!』

 

 まるでテレビの時代劇物の様な合戦が、そこにはあった。男女問わず、殆どの者達が何かしらの武器を持ち、勇ましい雄叫びを上げ、互いに激しくぶつかり合って火花を咲かせている

 一応武器はお互い例の特殊なレプリカなので、大きな怪我をするような事はないものの、当たったら滅茶苦茶痛いらしい(ガクブル

 

 度々襲い掛かって来る天神館の生徒達の攻撃を避ける様に戦場を駆けながら切に思う

 

 

「(どうしてこうなった・・・ッ!)」

 

 

 ● ○ ● ○ ●

 

 

 時は戻って例の全校朝会があった日の放課後、各クラスでとある投票が行われていた

 それは勿論、春樹君の所属するする2ーAクラスでも

 

「・・・はい!じゃぁ、実動メンバーと、救護班の選考は以上になります。最後にやっぱり変更したいな、という人はいますか?」

 

 黒板に書かれたクラス全員分の名前。その中には当然、春樹君の名前も入ってます。・・・実動メンバーの一番最初に

 

 うん、なんで?

 

 いや、別に男女別とか自分で立候補したとかじゃないんだよ?それにウチのクラスの女子はやる気に溢れてるのか逞しいのかは知らないけど、実動メンバーの方にも結構名前が入ってるし。というか救護班なんて男女合わせて一桁くらいしかいない。別にどっちが何人までっていう決まりも無かった

 じゃぁ何故、春樹君の名前が実動メンバーの一番最初に入っているのか?それは()()()最初に委員長の人が決を取る前に春樹君の名前を書いちゃってたからなのさ☆

 しかもご丁寧に、「えっと、実動メンバー…救護班…紗埜春樹君、っと」って具合にごく自然にね。しかも誰もその事を指摘しないの、先生ですら。寧ろ乗り気な感じだったし。てっきりまさかの同姓同名な人がクラスにいらっしゃるのかと思ったけどそんな事は無かったし!

 あれか?やっぱり初日の事が原因か?結局分からず仕舞いだけど、自己紹介でやらかしちゃった自分に対する報復かなにかなんですか!?

 

「紗埜君もこれでいいですか?」

 

 内心エラいことになってる自分に、委員長さんがニッコリと可愛らしい笑顔でそう聞いてくる。そして集まるクラスの視線。俺っちには委員長の言葉の裏に隠された意味がひしひしと伝わって来るぜ

 

「紗埜君もこれでいいですか?(まさか、変更したいなんて言う訳ないですよね?黒笑)」

 

 つまりこういう事ですね分かります。ウェーイ、逆らえる訳ないですねードンドコドーン…

 

「・・・はい」

 

 心の中の全春樹君が、盛大に泣いた

 

 

 ● ○ ● ○ ●

 

 

 いやぁ、そういう訳でこうやって戦闘員として参加する経緯になったんですねー(棒

 ふへっ、思い出したらまた泣きたくなってきたぜ(泣

 

「くっ、あやつなんという速さだっちゃ!」

「おのれッ、待たれいッ!」

 

 って、まだ振り切れてなかったんかい!いい加減しつこ過ぎぃ!!もうっ、そんなんじゃ女の子にモテないぞ☆あと待てって言って待つ奴はほぼいない!(断言

 

 縦横無尽(滅茶苦茶とも言う)に戦場である工場地帯を駆けながら、後ろから追っかけて来る天神館の生徒達を見て内心そう思う。さっきから結構な数を振り切ったのに、この2人は未だ付いてくるのだ。はっきり言って、もうやんなっちゃう

 くっ、都会っ子って運動してないイメージがあったけどやっぱり別格か…!けどこちとら田舎で山を走りまくり、畑仕事に精を出し、海で泳ぎまくって体は鍛えてるんだ!

 負けるなんて、許せない・・・ッ!

 

 そんな思いと共に、踏み込む足にグッと力を込めて、地面を蹴る

 

「な、なにぃっ!?」

「さらに加速したじゃと!?」

 

 後ろから驚愕した声音が響く。フゥーハハハッ!遅い遅い遅いッ!

 お前達に足りないもの、それは!情熱・理念・思想・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!そしてなによりもオオオォォォッ!!───

 

「──速さが足りない!」

『くそぉぉぉぉぉぉッ!!!』

 

 後方から悔しそうな絶叫が上がった。それも遥か後方に置き去りにしてさらに加速する。何とも言えない満足感と充実感に包まれた

 そしてこれは別に逃げている訳じゃない。かく乱というやつなのです。だから春樹君はじいちゃんとの誓いを破ってません(断言)

 というか自分は1人だけ部隊に配属されずに単独行動なんだよねぇ・・・「春樹君はどうぞご自由に行動して下さい。あなたの気の向くままに」って冬馬に言われたけど、彼は何を考えてらっしゃるんでしょうか?まぁ、下手に知らない人達と一緒じゃないから気が楽ではあるけどね。少人数ならまだマシだけど、下手したら俺がストレスで死ぬし。もしかしてそういうのを察してくれたのかな?準もなるたけ1人になれる様に協力してくれたし。いやー、気配り上手だなぁ

 でもご自由にって言われて迷子になる春樹君ってどうなんだろう?メッチャ情けなくない?

 

 コホンッ・・・さ、さーて、取り敢えずこのまま人がいない所にまで行って参謀本部(冬馬)に連絡を取ろっと。正直今自分がどこにいるかも分かんないし

 

 言っててちょっぴり自分が情けなくなって1人、深い溜息を吐いた

 

 

 

 

 その数分後、人気のない場所で携帯を落とした事に気づいた春樹君は酷く項垂れた

 

「連絡が出来ない・・・orz」

「むっ、何奴!」

「・・・?」

 

 

 ● ○ ● ○ ●

 

 

 春樹が項垂れている一方で、戦況は刻々と変化を続けていた。最初は西の天神館側有利で進められていたが、制限時間が半分を過ぎた頃から東の川神側の反撃が始まった

 天神館の主力である西方十勇士を怒涛の快進撃で打ち破り、残すは大将の石田三郎と彼の右腕、島右京の二名のみ。勝利は目前まで迫っていた

 

 しかし、敵の本陣目掛けて先行していた隊が到着したが、そこは誰もおらずもぬけの殻だった。すぐに参謀本部に連絡が行き、それを聞いた参謀本部の葵冬馬と同じく軍師である直江大和が1人、大将がいるであろうと前もって目星をつけていた場所の近くまでやって来ていた

 物陰に隠れながら慎重に辺りを窺う大和だったが、目指す場所の方から微かに何者かの声が聞こえた

 

「やはりここか・・・よし」

 

 大和はポケットから犬笛を取り出し、思いっきりそれを吹く。常人には聞き取る事が厳しい高周波の音だが、これを聞きつけた援軍がすぐにここへやって来る

 

「あとは俺が時間稼ぎだな」

 

 当初はただ発見するだけの予定だったが、今回の合戦において他に比べて自分があまり貢献出来ていない事に思う所があったが為にそういう考えが出て来た

 軍師の自分では西方十勇士相手に敵うとは思っていない。けれど挑発で敵の冷静を奪い、自身の姉貴分の百代で培った回避力ならば十分にいけると踏んだ大和は、物陰から躍り出て敵の大将達の所まで向かう

 

 しかし、予想に反してそこにはいつぞやの様に、またしても驚きの光景が広がっていた

 

「紗埜、春樹・・・ッ」

 

 

 


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