東方転生伝 ~もう1人のスキマ妖怪~   作:玄武の使者

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第35話 「懐かしの再会」

 

 

 

 

夢幻郷の人里からちょうど東側に位置する謎の竹林。

依頼により、その竹林の調査に乗り出したゆかりと葵。

竹林に住む兎の妖怪を虐めていると、ゆかりはかつての友人――藤原妹紅と再会した。

 

 

「まさかこんな所で会うなんてね。」

 

 

「本当ね。ずっと月の使者の追っ手から逃げてると思ってたよ。」

 

 

ゆかりと葵は妹紅の案内で竹林の奥にある永遠亭という場所に向かっていた。

かつては打ち捨てられていた日本屋敷であり、それを見つけた妹紅たちが改築したらしい。

月からの追っ手から逃げて各地を転々としている間にこの竹林にたどり着いたそうだ。

ちなみに、この竹林は「迷いの竹林」と呼ばれているらしい。

 

 

「あれからどうだったのそっちは?」

 

 

「別に何もなかったよ。永遠亭を見つける以外は。」

 

 

「永遠亭?」

 

 

「そ。今、私たちの住居になってる屋敷の名前。

 元々打ち捨てられてた屋敷だったけど、私たちで改築したのよ。

 材料の調達とかがかなり面倒だったけど。」

 

 

そんな会話を交わしながら妹紅に先導され、ゆかりと葵は竹林の奥へ奥へと入っていく。

周りを見渡しても同じような光景が広がっているだけ。しかも、目印になりそうな物もない。

何の力も持たない一般人が迷い込めば、絶対に道に迷ってしまうだろう。

 

 

「そういえば、ゆかりは何処に住んでるんの?」

 

 

「私は竹林を抜けた先にある夢幻郷っていう場所に住んでるよ。」

 

 

「へぇ。あんまり竹林から出たことがなかったから、気づかなかった。」

 

 

「まあ、下手に竹林を出ると月の使者に見つかるからね。」

 

 

楽しそうに妹紅とゆかりが話していると葵がクイクイと彼女の服の裾を引っ張った。

 

 

「ゆかり様、あの人とは知り合いなんですか?」

 

 

「うん。ちょっと400年近く前に。

 その頃の私は大和の都で店を営んでたから、その時にね。」

 

 

「初耳ですね。ゆかり様が大和の都に居たなんて。」

 

 

「言ってないからね。」

 

 

ゆかりと葵が少し小声で話している間も妹紅は迷うことなく竹林を進んでいる。

妹紅の話では、この竹林を案内できるのは妹紅と先ほどの兎の妖怪だけらしい。

ちなみに、兎の妖怪は一足先に永遠亭に戻っている。

 

 

「妹紅、永遠亭まではどれくらいで着くの?」

 

 

「もうそろそろ・・・・・・って、見えたよ。」

 

 

妹紅は立ち止まって竹と竹の隙間から顔を覗かせる日本屋敷を指差した。

まるで竹林の中にぽっかり空いた穴のような場所に聳え立つ妹紅たちの住居――永遠亭。

打ち捨てられた居た物を再利用したとは思えないくらいに新しい。

 

 

「あれが私たちの住居、永遠亭。」

 

 

「でも、結界の類とかは張られてないみたいだね。大丈夫なの?」

 

 

「そこは私も詳しく知らない。輝夜が“永遠と須臾を操る程度の能力”で永遠亭の時間を止めてるらしいけど。

 私には何のことを言ってるのかさっぱり分からないよ。」

 

 

「永遠って言うのは、簡単に言えば時間の停止。

 永遠を操るということは自分の寿命も無視することができる。

 だって、変化に必要不可欠な時間が停止してるんだもの。」

 

 

妹紅とゆかりの会話に葵が割り込んできた。

見た目は非常に幼い少女だが、葵の頭脳はとても明晰だ。

 

 

「そういえば、ゆかり。ずっと気になってたんだが、そのちっこいのは誰?」

 

 

「ゆかり様の従者、天狐の八雲 葵。昔は玉藻前とか白面金毛九尾の狐とか呼ばれてたけど。」

 

 

「天狐?ってことはかなりの年数を生きてるんじゃないのか?」

 

 

妹紅の言うとおり妖狐が天狐に至るまでは非常に長い年月が掛かる。

妖狐は尾が一本の状態からスタートし、約1000年の月日を掛けて九尾の狐に成長する。

しかし、妖狐の一種である善狐は更に1000年経つと尾が4本に減り、天狐となる。

つまり、葵は最低でも2000年の月日を生きていることになる。

なお、葵は霊力と妖力の両方を扱うことができる。

 

 

「少なくとも貴女よりは年上だと思う。」

 

 

「まあ、そうだろうね。私は400年と少ししか生きてないし。」

 

 

「というか、何時まで玄関の前で話しるのよ。」

 

 

いつの間にか永遠亭の玄関には一人の女性が立っていた。

おしとやかな感じの着物に身を包み、髪は艶やかな黒。

400年前、ゆかりが一時期護衛を受け持っていた女性――蓬莱山 輝夜がそこに居た。

 

 

「久しぶりね、輝夜。」

 

 

「久しぶり、ゆかり。誰が来てるかと思ったら貴女だったのね。」

 

 

「まあ、此処に来れたのは偶々だけど。」

 

 

「そう。とりあえずあがりなさいよ。何時までも立ち話してるのも変だし。」

 

 

「そうね。」

 

 

四人は揃って永遠亭の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~永遠亭 大広間~

 

 

輝夜と妹紅に連れられてやって来たのは、永遠亭の大広間。

長方形のテーブルにゆかりの馴染みのある人物が座っていた。

 

 

「久しぶり、永琳。」

 

 

「ええ。平城京の近く月の使者で返り討ちにした時以来ね。」

 

 

赤と青の衣服を着た女性――八意 永琳は彼女に笑みを向けた。

その隣には竹林の至るところに罠を設置した張本人である兎の妖怪が居た。

その兎の妖怪は葵の姿を見るなり永琳の背中に隠れてしまった。

 

 

「どうしたのよ、てゐ。」

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

永琳が不思議がって声を掛けるが、てゐと呼ばれた兎の妖怪は葵をジーッと見つめたまま動かない。

どう見ても天狐の葵を怖がっている。

それを察した葵はサドスティックな笑みをてゐに向けた。

 

 

「あらあら、今度は痛覚を支配して虐めてあげようか?」

 

 

「ひっ!!」

 

 

てゐはさらに隠れてしまった。

 

 

「葵、あんまり小さい子を虐めたら駄目だよ?」

 

 

「は~い。」

 

 

葵はクスクスと笑って、引き下がる。

実際、葵の能力を使えば、相手に延々と激痛だけを与えることができる。

もっともそんな鬼畜なことをするのは、葵が激怒した時だけだが。

 

 

「天狐・・・・・・。この目で見るのは初めてね。」

 

 

「そういえば、永琳や輝夜には紹介してなかったね。

 この子は私の従者、八雲 葵。永琳の言ったとおり天狐だよ。」

 

 

ゆかりは葵の頭を撫でながら二人に紹介する。

 

 

「蓬莱山 輝夜よ。」

 

 

「八意 永琳。呼ぶ時は永琳で構わないわ。」

 

 

「分かった。」

 

 

「ねぇ、何でてゐはあそこまで葵を怖がってるの?」

 

 

「さあ? とりあえず、そこまで酷いことはしてない。」

 

 

「それは置いておいて、一先ず座りなさい。いろいろ話したいこともあったし。」

 

 

この後、ゆかりたちはしばらくの間談笑した。

 




最近更新スペースが以上に落ちてるような気がする。
まあ、何作品も同時に執筆してたら当然ですが。

永遠亭組と夢幻郷組の関係は前作と同じになります。
ちょっと再会する時期を早めましたが。

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