東方転生伝 ~もう1人のスキマ妖怪~   作:玄武の使者

28 / 55
今回はかなり短めです。


第26話 「閻魔王、四季 映緋」

第26話 「閻魔王、四季 映緋」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~???~

 

八雲ゆかりSIDE

 

 

夢幻郷の管理者、八雲 ゆかり。

 

 

彼女は非常に混乱していた。

 

 

彼女は鬼の王、奉鬼に招待されて鬼と天狗の宴会に参加した。

宴会は夜明け近くまで続き、参加者のほとんどが酔いつぶれて眠っていた。

ゆかりと奉鬼はウワバミだったのが幸いして、酔いつぶれることがなかった。

スキマで酔いつぶれた面々を帰した後、生き残った参加者で宴会の片づけをやったのだ。

その後、奉鬼と別れて、八雲神社に帰ってきた筈なのだが・・・・・・・

 

 

「ここ、何処?」

 

 

ゆかりは気がつくと見知らぬ場所に立っていた。

足元には真っ赤な彼岸花が一面に咲き誇っており、目と鼻の先には対岸が見えないくらいの河川。

 

 

「えっと・・・まさか三途の川?」

 

 

私、死ぬようなことしたっけ?

確かに天狗とか奉鬼の真似事で酒樽を丸々飲み干したけど・・・・・・。

私は人間じゃなくて、妖怪だから急性アルコール中毒で死ぬ訳がない。

じゃあ、何で三途の川に居るわけ?

 

 

ゆかりは眠りに入る前の記憶を思い起こして、原因を探る。

その時。ギィッ、ギィッと木製の船を漕ぐような音が三途の川の向こう側から聞こえてきた。

その音にゆかりは思わず戦闘態勢をとる。

残念なことに蒼月も焔月も手元に無いので、徒手空拳で戦うしかない。

 

 

「そう身構えないでもらいたい。」

 

 

岸に船がたどり着き、船から二人ばかり人が降りてくる。

一人は大きな鎌を担ぎ、黒い着物を羽織った男性。

もう一人は少し暗い緑色の髪を肩口ぐらいまで伸ばした身長145cmぐらいの少女。

その手には木製の悔悟棒、首からは小さな鏡が付いたペンダント。

 

 

「何の断りもなく、こんな場所に呼び出して申し訳ありません。

 わたくしの名前は四季 映緋。地獄の閻魔の一人です。」

 

 

「その部下の小野煉貴(おののれんき)と言います。」

 

 

「夢幻郷の管理者、八雲 ゆかり。地獄の閻魔様が一体何の用なんですか?」

 

 

「単に挨拶に伺っただけです。

 夢幻郷がわたくしの管轄になりましたので、その管理者である貴女に会っておこうと思っただけです。」

 

 

映緋は人懐っこい笑みを浮かべて、そう言った。

 

 

「・・・・・・それだけ?」

 

 

「はい。」

 

 

ゆかりは思わず自分の耳を疑った。

地獄にて魂の管理をする閻魔たちは基本的に多忙な身分だ。

日夜裁判が行われて、裁かれた魂は輪廻の輪を巡って転生を繰り返す。

 

 

「閻魔は多忙って風の噂で聞いたけど・・・・・・」

 

 

「はい。毎日が猫の手を借りたいぐらいに忙しいですよ」

 

 

「そんな閻魔様が油を売ってていいのかしら?」

 

 

「少しぐらいは大丈夫ですよ。今はやってくる魂魄の量も少ないですから」

 

 

「映緋さま、本来川を渡る魂魄の量は一定です。

 それが少ないということは近々縁起でもないことが起きますよ。」

 

 

「それくらいわかってますよ、煉貴。

 では、他の閻魔に仕事を任せているのでわたくしはこれで失礼します。

 煉貴、またお願いします。」

 

 

「分かりました。私の“位置を操る程度の能力”で元の場所に戻します。」

 

 

煉貴は担いだ大鎌をまっすぐ振り下ろした。

すると、彼岸花に満たされた光景が一変し、見慣れた光景が目の前に広がる。

間違いなくゆかりの自室だ。

 

 

「まったく・・・夢みたいな1コマだったわね。」

 

 

ゆかりは自室で静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~地獄 映緋の仕事場~

 

 

ゆかりとの邂逅を終えた後、映緋は再び仕事に戻っていた。

映緋の背丈に合わない大きな机には紙束がいくつもの塔を作り上げている。

仕事をサボるようなことはしない映緋がそんな状態になることはないのだが、映緋が戻った直後に別の閻魔が休暇をもらった。

結果、その閻魔の仕事を映緋が引き受けることになったのだ。

 

 

「やれやれ。そんなに休んだわけではないのに、すごい溜まりようですね。」

 

 

映緋は机に頬杖を突きながらため息を吐いた。

休暇をもらった閻魔は映緋の仕事を引き受けていたのだが、もう一人分を補うことはできなかったようだ。

そのツケが映緋に回ってきたわけである。

 

 

「愚痴を言ってても仕方ありませんね。」

 

 

「そういえば、映緋様。あのことを彼女に伝えなくて良かったのですか?」

 

 

映緋は自分の仕事に手を付けながら煉貴の話に耳を傾ける。

 

 

「あのこと、とは?」

 

 

「彼女が従えている九十九神もどきの片割れのことです。

 あの魂が現世との繋がりを失い掛けているのは、映緋様もご存知でしょ?」

 

 

「ええ。」

 

 

映緋は一度だけ、三途の川付近までやってきた焔月の魂と出会っている。

閻魔として数多の魂魄を裁いてきた彼女には、焔月の状態がすぐに分かった。

今も尚、眠り続けている焔月。

彼女の魂は本体が破損したために現世との繋がりが弱くなってしまっているのだ。

 

 

「あのままでは、あと3年ぐらいしかもたないでしょう。」

 

 

「どうして何も言わなかったのですか?」

 

 

映緋は仕事の手を休めることなく煉貴と言葉を交わす。

 

 

「3年という期間は本人が何も行動を起こさない場合の寿命です。」

 

 

「それは私も分かっていますが・・・・・・」

 

 

「誠に彼女の剣で在りたいのなら、かの魂は自分で行動を起こすでしょう。

 こちらからそれを促すのは無粋の極み。

 だからこそ、わたくしは彼女に何も伝えませんでした。」

 

 

「ですが、一度弱まった現世との繋がりを再び結びなおすなど不可能なことです」

 

 

「それは間違いですよ、煉貴。」

 

 

映緋は少しだけ手を止めて、視線を上に上げた。

 

 

「絆というモノは時に世界の理すらも飛び越えてしまうのです。」

 

 

まるで未来が確定しているかのように映緋は自信満々に言った。

 

 

「さて、煉貴。一体何時までサボっているのですか?

 さっさと自分の仕事に戻りなさい。」

 

 

「了解しました。」

 

 

そう言い残して、煉貴は映緋の執務室から出て行った。

無駄に広い部屋に取り残された映緋は静かに仕事を続けた。




映緋「私が二番手ですか。」

作者「九尾さんはまだ時代が違いますから。」

映緋「それもそうですね。まだ400年ぐらい空白がありますし。
   それにしても、最後の方に気になる会話がありましたね。」

作者「焔月のパワーアップフラグですね。
   同時に焔月の正体も明らかになります。」

映緋「あの二人は九十九神じゃないんですか?」

作者「違います。あんまりしゃべるとネタバレになるので強制終了です。」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。