東方転生伝 ~もう1人のスキマ妖怪~   作:玄武の使者

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第22話 「洞窟の奥に眠りし物」

第22話 「洞窟の奥に眠りし物」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~夢幻郷 南の森~

 

八雲ゆかりSIDE

 

 

多くの妖怪が生息するいつも薄暗いことが特徴の南の森。

普通なら人里の人間は立ち入ることのないその森に入り込んだゆかり。

彼女は現在、妖怪たちに取り囲まれていた。

 

 

「まったく・・・真昼間から死にたいのか? お前たちは。」

 

 

「ぐへへへ。聞いたぜ? お前は刀を一本失ったそうじゃねえか。」

 

 

「それがどうしたの。まさか刀が一本なら私に勝てると思ったのか?」

 

 

ゆかりを取り囲む妖怪の数はざっと見て10体。

鳥型の妖怪から狼型の妖怪まで様々。全員、長寿の果てに妖怪した者ばかりだ。

おそらくゆかりを倒して夢幻郷を征服しようと考えているのだろう。

 

 

「その強がりがいつまで続くかな!!」

 

 

リーダー格の妖怪が合図を出し、集まった妖怪が一斉に襲い掛かってくる。

ゆかりは「やれやれ」と肩を竦めながら蒼月を抜き放った。

 

 

「蒼雷斬・黄昏。」

 

 

破竹の勢いで襲い掛かってくる妖怪たちに対して、静かに蒼月を振るう。

妖怪たちの爪や牙がゆかりに届きそうになった時、蒼い雷が周囲に降り注いだ。

それは妖怪たちの身体を感電させ、内部から焼き殺した。

 

 

「まったく。どうして焔月が使えないぐらいで私が弱くなるのかしら?」

 

 

《日の浅い妖怪は思考も短絡的ですね。》

 

 

辛辣な言葉を妖怪たちに向ける。

尤も、その言葉は焼死体になった妖怪たちには聞こえないだろう。

 

 

「それにしても、最近私に突っかかってくる妖怪が多いね。

 返り討ちに遭うのが分かってないのかな?」

 

 

「焔月が早く治ってくれれば良いのですが・・・・・・」

 

 

人化した蒼月が呟く。

 

 

「そうだね。夢幻郷を守り続けるためにも、焔月に早く復帰してもらいたいね。」

 

 

そう言いながらゆかりは蒼月の頭を撫でる。

その時、2人の背後から生い茂る雑草を踏みしめる音が聞こえてきた。

しかし、2人は警戒することなく背後を振り向いた。

 

 

「どうしたの? 簪。」

 

 

2人の背後に居たのは、相変わらず黒い外套に身を包んだ少女。

人里の守りの要である妖猫憑きの少女――簪(かんざし)だ。

 

 

「妖怪の気配、たくさん、感じた。」

 

 

簪は眠たそうに目を擦りながらゆかりの質問に答える。

彼女は本来夜型。普段なら今の時間帯はぐっすりと眠っている。

だが、ゆかりを亡き者にしようとした妖怪たちの気配を感じて起きて来たのだろう。

 

 

「ああ、ごめん。その妖怪たちなら私がもう倒しちゃった。」

 

 

「なら、良い。」

 

 

そう言って簪は目深く被ったフードの下で大きな欠伸をした。

そして、踵を返して人里のほうに引き返していった。

 

 

「さて、私たちも帰ろうか?」

 

 

「はい。」

 

 

ゆかりはスキマを潜って八雲神社に帰還した。

 

 

◆    ◆    ◆    ◆    ◆

 

 

 

~八雲神社 居間~

 

 

八雲神社の居間では、帰ってきたゆかりを含めて昼餉をとっていた。

その食事中にシアンディームがあることを思い出したのが始まりだった。

 

 

「そういえば、洞窟の奥で変な物を見つけたんです。」

 

 

「変な物?」

 

 

「はい。上手く言葉で説明できないんですが、兎に角変な物です。」

 

 

シアンディームが言うには、鉄を探して洞窟を探検していた時に見つけたらしい。

それがあるのは洞窟の最深部であり、それほど広くない通路を抜けた先にあるそうだ。

そして、不思議なことに洞窟の中なのにそこだけは光に照らされている。

そこにシアンディームの言う変な物があるそうだ。

 

 

「それって妖刀の類?」

 

 

「いえ、違うと思います。そのような力は感じませんでした。」

 

 

ふむ。洞窟の奥にある変な物か・・・・・。

危険な物かもしれないし、一応見てきたほうが良さそうだね。

 

 

「シアン。昼餉の後、それを確認しに行くから案内してね?」

 

 

「わかりました。」

 

 

「そういえば、シアンは何で洞窟に潜ってたの?」

 

 

そんな質問をシアンディームに投げかけるルーミア。

 

 

「人里から依頼があったのよ。鉄器を調達して欲しいっていう。

 だから、洞窟に潜って鉄を探してたの。

 まあ、結局見つからなかったけど。」

 

 

「そーなのかー」

 

 

・・・

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

昼餉を終えた後、ゆかりとシアンディームは予定通り洞窟に潜っていた。

湖の畔――八雲神社の対岸にある洞窟は日の光が差し込んでこないので薄暗い。

持ち込んだ提灯が無いと先に進むのも非常に困難だ。

 

 

「この洞窟って、昔は住居代わりにしてたけど最深部まで言ったことはなかったね。」

 

 

「そうですね。あの頃はあんまり気にしていませんでしたから。」

 

 

シアンディームが提灯を持ち、その光を頼りに奥へ奥へ進んでいく。

入り口は広かったが、洞窟の奥に進むに連れて狭くなっている。

所々、岩肌が氷柱のように突き出して非常に危険だ。

 

 

「本当に深いね。まさか此処まで深いとは思わなかったよ。」

 

 

「私も最初は驚きました。」

 

 

そんな会話を交わしながら2人は洞窟の最深部を目指す。

数分ぐらい歩くと、洞窟の奥から光から漏れ出ていた。

 

 

「見えました。」

 

 

「本当に洞窟の中なのに光が出てるんだね。」

 

 

「はい。」

 

 

ゆかりとシアンディームがたどり着いたのは洞窟の最深部。

そこは円柱状の少し大きな小部屋があり、宝石のような結晶が天井から降り注ぐ太陽光を反射して部屋全体を照らし出している。

そして、その部屋の真ん中にあるのがシアンディームの言う「変な物」だろう。

 

 

「これがシアンの言ってた“変な物”?」

 

 

「はい。」

 

 

シアンが「変な物」っていうから、何かと思ったけど・・・これは剣だね。

でも、剣にしては大き過ぎる。まるで巨人が振るうために作られた剣みたいね。

長さはざっと見ただけで5mはあるわね。

 

 

「シアン、これは剣よ。」

 

 

「剣? それにしては随分と大きすぎませんか?」

 

 

「そうだね。こんなに大きいと普通の人間には扱えない。

 一体誰が何の目的でこんな剣を作り上げたのか・・・・・・」

 

 

そう言いながらゆかりは硬い地面に突き立てられた剣に触れる。

まるで龍の鱗から作られたような剣は黒金色に輝いている。

錆びている様子はなく、やはり用途は分からない。

 

 

「でも、これは使えそうね。」

 

 

「?」

 

 

ゆかりはスキマ空間からある道具を取り出した。

大きな鎌のような形をしたピッケルと呼ばれる採掘に欠かせない道具だ。

 

 

「せぇの!!」

 

 

ゆかりは力いっぱいピッケルを黒金色の刀身に向かって振り下ろす。

すると、刀身の一部が欠けて、その欠片がボロボロと地面に落ちる。

 

 

「これを使えば、農具にも使えるでしょ。

 剣に使われるような金属だし、頑丈さは折り紙付きよ。」

 

 

「なるほど!!」

 

 

ゆかりの意図を理解したシアンディームは手を傷つけないように欠片を回収する。

そして、ある程度集まった後、ゆかりとシアンディームは天井に空いた穴から八雲神社に戻った。

後日。その欠片を加工した農具は人里に配られたのは言うまでもない。




モンハンが大好きな人なら、今回のネタはすぐに分かるでしょう。
この話を書いてたのがニコニコ動画のとあるプレイ動画が影響でまたMH2Gとやってた時だったので、思い切って導入。
最初はいろんな鉱石が手に入る洞窟にしようと思っていました。


そろそろ第3章も終わりに近づいてきました。
なお、焔月はしばらくお休みです。

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