東方転生伝 ~もう1人のスキマ妖怪~   作:玄武の使者

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第20話 「呪いの禍太刀」

第20話 「呪いの禍太刀」

 

 

 

 

 

 

 

 

~夢幻郷 南の森~

 

八雲ゆかりSIDE

 

 

平穏が続いていた夢幻郷。

そんな夢幻郷で妖精が人里の人間を襲うという騒動が起こった。

その騒動の解決するために管理者であるゆかりと巫女のしいなが立ち上がった。

そして、妖怪が出没する南の森。

そこでゆかりとしいなはこの騒動の原因に遭遇したのだった。

 

 

「あれが今回の騒動の原因みたいだね。」

 

 

「はい。でも、あの妖精・・・・・傷だらけですね。」

 

 

しいなの言うとおり、目の前に立ちはだかる妖精は傷だらけだった。

まるで鋭利な刃物で傷つけられたような深い傷があちこちにある。

傷口からは真っ赤な血液が流れて落ちている。

 

 

「あの様子だと、里長の言うとおり誰かに操られてるみたいだね。

 しいな、あの妖精を操ってる黒幕が不意打ちを仕掛けてくるかもしれない。

 後ろは任せたよ?」

 

 

「分かりました。」

 

 

しいなも御幣を抜いて、付け焼刃だが、お札も構える。

いざとなれば、能力で変身して戦うこともできる。

 

 

「来るよ!!」

 

 

妖精は地面を蹴り、禍々しい剣を真っ直ぐ振り下ろした。

ゆかりはそれを焔月で受け止める。しかし・・・・ピシっ!!という音が焔月の刀身から響いた・。

 

 

「っ!! はぁ!!」

 

 

がら空きになった胴体を狙わずに蒼月を妖精の剣に叩きつける。

妖精の身体はゆかりの怪力によって真横に吹き飛ばされた。

 

 

「大丈夫? 焔月。」

 

 

《これくらいなら大丈夫です。》

 

 

まさかヒヒイロカネで作られた焔月に皹が入るなんて・・・。

これは迂闊に打ち合うのは危険ね。

 

 

「ゆかり様!!」

 

 

横に飛ばされた妖精は体勢を立て直して再び襲い掛かってきた。

ゆかりは横に避けて、妖精の胴体に蹴りを叩き込む。

その間にゆかりは焔月と蒼月を鞘に戻した。

 

 

「徒手空拳はあんまり得意じゃないけど、仕方ないわね。」

 

 

そう呟きながら軽いステップで妖精に肉薄する。

 

 

「シッ!!」

 

 

妖精の意識を刈り取るために水月に拳を叩き込む。

一瞬、妖精の身体から力が抜けたが、再び剣を振るってきた。

ゆかりは慌てて攻撃を回避する。

 

 

「意識は刈り取ったはずなのに!!」

 

 

「いえ、確かに意識はないようです。」

 

 

妖精は全身から力が抜けて両手は垂れ下がっているだけだ。

 

 

「精神を操ってるんじゃなくて、身体そのものを操ってるの!?」

 

 

妖精は傷ついた身体を無理矢理動かされ、剣を振り上げる。

一挙一動の度に深い傷口からは真っ赤な血が地面に滴り落ちる。

 

 

「くっ!!」

 

 

攻撃は大振りで掠るようなことはない。

しかし、ゆかりにはこの状況を打開するような術はない。

妖精も夢幻郷の住人。ゆえに、ゆかりは何とかして妖精を無効化する方法を考える。

 

 

《主、このままではあの妖精が死んでしまいます!!》

 

 

「分かってる!!」

 

 

妖精は自然の具現だがら、自然の加護がある限り負った怪我もすぐに治る。

だけど、あの妖精はまったく傷口が塞がっていない。

十中八九、妖精という枠組みがあぶれたんだろうね。

妖精という枠組みから外れた妖精は強い力と同時に自然の加護を失ってしまう。

多分、目の前の妖精も同じような状態なんだろうね。

 

 

「でも、ゆかり様。一体どうするんですか?」

 

 

「あの剣を破壊する。これ以上傷を負わせたら間違いなく危ないからね!!」

 

 

ゆかりは妖精に向かって再び肉薄。

しかし、身体を狙わずに手に握られている剣を狙う。

神力を拳に纏わせて禍々しい刀身を殴りつける。

 

 

「てりゃっ!!」

 

 

さらに、妖精に足払いを放ち、体勢を無理矢理崩す。

体勢が崩れたのを狙って妖精の右手――剣を持っている手を地面に押さえつける。

そして、強引に剣を引き離そうとする。

 

 

「このっ!!」

 

 

しかし、意識は失っている筈なのに剣を離そうとしない。

すると、妖精がゆかりの手首に噛み付いた。

 

 

「くっ!!」

 

 

それでもゆかりは必死に剣を奪い取ろうとする。

 

 

「ご主人!! そのまま抑えててください!!」

 

 

「蒼月!?」

 

 

いつの間にか蒼月が擬人化しており、その手に刀剣形態の焔月を握っていた。

 

 

「はあぁぁぁぁっ!!!」

 

 

蒼月は焔月を禍々しい剣に突き立てた。

その時の衝撃で焔月の刀身に入った皹はより一層酷くなる。

しかし、まるで剣と妖精の痛覚が繋がっているかのように妖精の身体がビクッ!!と震えた。

その隙を狙ってゆかりは渾身の力を振り絞り、妖精から剣を引き剥がすことに成功した。

同時に妖精の身体に浮かび上がっていた禍々しい文様は跡形もなく消滅する。

 

 

「何とか・・・・・・なったわね。」

 

 

「そうですね。」

 

 

ゆかりも蒼月も、後ろで見守っていたしいなも肩の力を抜いた。

 

 

「蒼月。どうして勝手なことをしたの?

 下手をすれば、焔月は死んでいたのかもしれないんだよ?」

 

 

怒りを孕ませた口調で蒼月に尋ねる。

九十九神(付喪神)は本体が破壊される――焔月の場合は剣――と死に至る。

焔月と蒼月の刀身はヒヒイロカネで作られているので滅多に壊れることはない。

 

 

「すいません。ですが、焔月が・・・・・・」

 

 

《すいません、ご主人。しかし、このままでは妖精が死んでしまうと思いましたので。》

 

 

「まったく・・・こっちは寿命が縮みそうだったよ。」

 

 

「「すいません」」

 

 

人間形態に戻った焔月と蒼月は声を揃えて謝った。

 

 

「それはそうと、ゆかり様。この妖精と剣はどうしますか?」

 

 

「そうだね。妖精も何か変なモノが纏わりついてるし。」

 

 

それにしても、本当に何だろう?

妖精からもあの剣からも変なオーラが纏わり付いてる。

これ、除去した方がいいよね?でも、やり方なんてわからないし・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

――厄いわ~。――

 

 

 

 

 

ゆかりがどうしようかと迷っている時、森の奥からそんな声が聞こえてきた。

拳に神力を纏わせて、森の奥から近づいてくる人物を警戒する。

無造作に生い茂った雑草を踏みしめながら足音がゆっくりと近づいてくる。

 

 

「大きな厄を感じたから来て見たら、とんでもないことになってるみたいね。」

 

 

森の奥から現れたのは優しそうな笑みを浮かべた女性だった。

身長はゆかりよりも僅かに低く、髪は緑に近い色。

そして、ゆかりはその人物を知っていた。

 

 

「初めまして。わたくしは鍵山 雛と申します。」

 

 

“厄”という文字が刺繍された赤いスカートの裾を軽くたくし上げて、その女性は頭を下げた。




戦闘シーンが薄っぺらいなぁ。今度からもう少し濃くしようか。

最近、拠点をハーメルンに一本化しました。
このハーメルンが出来上がる前はアットノベルスというサイトにお世話になっていました。掛け持ちしようかな?と思っていましたが、止めました。
あちらに投稿していた作品もいずれは移転します。

そういえば、聖人録も残ってるな~。
あっちは大して修正作業が必要ないけど、どうしよう?

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