「勇者様、エクレール、エースさん、タマゾーさん!!」
「勇者殿!! エクレール!!」
「勇者様、エクレ、エースさん、タマゾーさん!!」
そこに、ミルヒオーレと、エースが聞いたことのない男性と、リコッタの声が響いた。
「姫様!!」
「それに兄上、リコ!!」
エースはシンクの手を借りて立ち上がりながら、そういえば同じ垂れ耳だな、と思いながら薄い色の茶髪の青年と、エクレールを見比べる。
「兄弟なんですか?」
シンクが自分の足でしっかり立っているエースを見てから手を離し、そう問えば。
「そうだよ。っと、そちらの子たちは、はじめましてだね。私はロラン・マルティノッジ。ビスコッティ騎士団の騎士団長で、エクレの兄だ。姫様から名前は聞いてるよ」
薄い色の茶髪の青年…ロラン・マルティノッジは、片手に抱えていた着替えをエクレールに渡した後、シンクの言葉に頷き、エースたちに穏やかに名乗る。
「はじめまして」
「どうもたま」
ロランにエースとタマゾーがそう返すと、それを待っていたかのようにミルヒオーレとリコッタがエースとタマゾーに声をかけてきた。
「大丈夫でしたか?」
「無事でありますか?」
心配そうなミルヒオーレとリコッタに、エースとタマゾーは頷く。
「大丈夫です」
「怪我してないたま」
二人が頷くと、ミルヒオーレは真剣なまなざしになる。
「それでは……、エースさん、先ほどの現象、あなたの力について、教えてもらえますか?」
「もちろんです。あの状況で何も聞かず俺の言葉を聞いてもらった以上、ちゃんとします」
ぐー。
ミルヒオーレの言葉にエースが頷いたところで、悲しいか、タマゾーのお腹が空気を読まずに鳴った。
「おなか、すいたたま……」
「わわっ、タマゾーしっかり!!」
ぐぅ。
落下しそうになった相棒を、慌てて受け止めたエースのお腹も、鳴ったため、エースは真っ赤に染まった顔を隠すように、タマゾーの背中に顔をうずめた。
「……お昼の席で、説明してもらえますか?」
「……すみません。……ところで質問なんですけど、『これ』見えてます?」
そう言ってエースは、片腕にお腹がすいてくったりした相棒を抱きかかえたまま、さきほどから周囲に漂っている、『謎のカラフルな光の球体』をちょい、と指先で突く。
すると青い球体はエースの指に弾かれて、ふよよ、と漂う方向をミルヒオーレの方へ、変える。
ミルヒオーレがエースがしたように青い球体に触れようとしたが、指先には何の感触もなく、すり抜けた。
「なるほど。見えてるけど、触れないんですね。でもなんでだろう。さっきまでぜんぜんこの場所に漂ってなかったのに……」
―――……タスケテ……。
エースが疑問のすべてを口にするより早く、『あの声』が響いた。
「え?」
ぱちくり、とエースが目を瞬かせると、声はこう続けた。
―――タスケテ……。……コノダイチノチカラ、ミダレルマエニ……。
そして、それきり声は黙ってしまって、何も聞こえなくなった。
「なん、だったんだ……?」
「エース、どうしたたま?」
タマゾー、とエースの真剣な声がタマゾーを呼ぶ。
「今の声、聞こえた?」
「なにがたま?」
やっぱり、とエースは呟く。
「ここに来る前、ついさっき、声が聞こえたんだ。でも、なんなんだ……?」
けれど答えは、出そうもなかった。