ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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ん~……90話までにはフレバンス終わらせたいな。(笑)


第79話〝Dr.ベガパンク〟

 翌日、マリンフォード。

 屈強な海兵達が戦闘訓練の為に使う広場で、ジンは現役の将校達と剣を交わせていた。

 実はテゾーロは今回聖地マリージョアを訪れた際、護衛としてジンを連れていた。その時にちょうど仕事で来ていた海軍本部の現元帥・コングが声を掛け、テゾーロの実力を知りたいという訳で海兵達と戦ってほしいと頼まれたのだ。

 しかし彼が声を掛けた時はすでにテゾーロが「新世界」にあるベガパンクの研究所へ向かおうとしていたところであり、テゾーロはその頼みを蹴った。それでも食い下がるコングに、テゾーロはジンに「お前がやれ」と代行させたのだ。

 財団の中では穏健派なタタラとは正反対である武闘派のジンは「久しぶりに暴れることができる」とこれを承諾。早速マリンフォードへ向かい、大将センゴクととある一件(・・・・・)で話し合ってから将官達と試合をすることになった。

「遅いなァ! 遅い遅い! ハッハァ!」

 次々に襲いかかる(けん)(じん)を見事に躱し、宙を舞って余裕の笑みを浮かべるジン。

 彼が今回相手取るのは、海軍本部の少将へと昇格したばかりのドーベルマン・オニグモ・コーミルの三名。海軍の生きた伝説であるあの元海軍本部大将〝黒腕のゼファー〟に指導されて育った、覇気を扱う勇猛な将官だ。

(この男、かなりできる……!)

 オニグモは刃を交わせている中で、ジンが自分達以上の実力者であることに気づいた。

 自身のサーベルによる八刀流と同僚二人の一刀流を相手に、ジンは刀一本で互角に斬り結んでいる。刀だけでなく鞘でも応戦し、六式を扱えないにもかかわらず軽快な動きをしている。何よりも強力なのは〝武装色〟の覇気であり、海軍の中でもトップクラスであるガープ中将や元海軍大将である恩師・ゼファーのように黒く硬化できる。外部の人間であるが、戦闘力はかなり高い輩だろう。

「さすがは海軍の精鋭……中々腕の立つ歴戦の将と見受けられるな。なら……本気で行ってみるとすっか!!」

 ジンはそう言って跳びあがり、ニヤリと笑みを浮かべた。

「阿修羅一刀流……〝(じっ)(かい)(ごう)()(かせ)〟!!!」

「「「!?」」」

 ジンが武装硬化した愛刀を豪快に何度も振るい、斬撃を十連射した。

 大小様々な大きさの斬撃が乱れ飛び、オニグモ達に迫る。しかしオニグモ達も新兵の頃から多くの修羅場をくぐり抜けてきた実力の持ち主――刀身に覇気を纏わせ、放たれた斬撃を真っ向から受けた。

『うおおおおお!!!』

 

 ドパァン!!

 

「!」

 弾かれそうになるが、何とか堪えて受け流すことに成功する三人。

 受け流された斬撃は海や空へと飛んでいく。

「おれの斬撃をうまく受け流したか。だが覇気の強さはおれの方が上だぜ」

 そう言いながら斬りかかるジン。

 その時――

 

 ギィン!!

 

「!!」

『!?』

 ジンの刃を受け止める、一振りの刀。

 その刀を手にしていたのは、左太腿に蜘蛛の刺青を入れた女将校だった。

「随分と面白そうなことしてるじゃないかい…………はっ!!」

「っ!!」

 女将校は力強く踏み込んでジンを押し返した。

 体勢を崩したジンは、うまく受け身を取って刀を構え直す。

(できる……!!)

 女将校を前に、ジンの顔色が変わった。

 オニグモ達三人の前では余裕の笑みで飄々としていたが、彼女が出た途端目付きが鋭くなり笑みが消えたのだ。先程相手取った三人の将校達とは別格の実力者――ジンは彼女をそう判断したのだ。

「ちょいと見てたけど、中々強いじゃないかお前さん。海軍に入ったら中将は間違いないだろうねェ」

「――噂に聞いたことがある……〝桃色客あしらい〟という左太腿に蜘蛛の刺青を入れた女剣士が海賊共を誑かして捕縛していくという話を。もしかして、あんたが?」

「そうさ。あたしはギオン……〝桃色(ももいろ)(きゃく)あしらい〟以外に〝(もも)(ウサギ)〟とも呼ばれてるよ」

 女将校の正体はギオンという女性。あのガープやセンゴク、ゼファーの同期にして伝説の海兵の一人である〝大参謀〟つるの妹分なのだ。

「それと、それはあたしの台詞でもあるよ」

「?」

「数年程前に、カイドウんトコにワノ国の侍と思われる浪人が乗っているという話があってね……その浪人はかなりの腕利きで豪剣の使い手だと言われてたそうだ。だがこれといった大事件を起こしてもいない上に「海賊に頼んで次の島まで乗せて行ってもらう」って話は度々耳にするから、政府や海軍(あたしら)はノーマークだったけど……その正体がお前さんなんだろ?」

「カ、カイドウだと!?」

「あの〝百獣のカイドウ〟か!?」

 桃兎の言葉によってどよめきが広がる。

 〝百獣のカイドウ〟は白ひげ海賊団やビッグ・マム海賊団、海軍を相手に大暴れしている海賊界屈指の凶暴さで有名な大海賊だ。世間では「タイマンなら最強」だの「存在すること自体が恐ろしい」だの色々と物騒な逸話を有する危険人物として知られており、「最強の生物」と呼ばれる海賊として認識されている。目の前にいる男は、その彼の船に乗っていたというのだ。

 とはいえ、桃兎の言う通り世界政府や海軍の上層部はノーマークであったので懸賞金は懸けられなかったのも事実である。

「……それは昔の話だぜ姐さん、今のおれァれっきとした従業員だぜ」

「ウソおっしゃい! お前さんみたいな従業員がどこにいるんだい……」

「ウチには最低でも(・・・・)あと4人はいますよ」

『……』

 ジンの言葉に呆れる一同。

 確かにテゾーロ財団は腕の立つ曲者が多い。しかもその曲者は幹部格に集中しており覇気使いが多いという始末だ。

「お前さんの職場は何と言うかねェ……」

「面白い職場なのは事実だな!」

 高らかに笑うジンに、呆れた笑みの桃兎。

 すると彼女は、愛刀である名刀〝(きん)()()〟の切っ先をジンに向けた。

「ちょうど任務が終わって暇ができてね。あたしと勝負してくれないかい?」

「〝桃色客あしらい〟が相手とは、願ってもない。受けて立とう」

 ジンはそう言うと刀を鞘に納め、逆手持ちで腰を落とした。

 桃兎もそれに応じ、同じく刀を鞘に収めて抜刀術の構えを取る。

一対一(サシ)剣戟(ケンカ)は久しぶりだ……」

「あたしも侍と戦るのは久しぶりだよ」

「あんたいくつだよ」

「お前さんよりは心は若いつもりだよ」

 

 ダンッ

 

 ガギィン!!

 

 両者一斉に動き、覇気を纏わせた一太刀を浴びせた。

 互いの刀がぶつかり、衝撃が周囲に走る。

「男も女も、やっぱり真っ向からぶつかった方が清々しいな!」

「無論! お前さん、ちょいとあたしと遊んでもらうよ!」

 ジンと桃兎の真剣勝負が始まるのだった。

 

 

           *

 

 

 同時刻、テゾーロは「新世界」のある島の研究所へ立ち寄っていた。

 世界最強の海賊である〝白ひげ〟を筆頭とした怪物級の実力者や伝説的な大物が蠢くこの海では、ナワバリの奪い合いや利権争いで「海の覇権」を握ろうと絶えず競い合っている。しかしそんな大物達でも迂闊に手を出せない場所も存在する。テゾーロが訪れた島がそうである。

 この島は世界政府直轄の島であり、天才科学者のDr.ベガパンクが務める研究所と実験場がある。彼の研究は兵器開発から人間の細胞研究まで行っており、そのあまりの技術力の高さから世界の勢力図を塗り替えることも容易とされている。ゆえに外部からの侵略的行為や工作活動から「技術」を守るために、世界政府は海軍本部とサイファーポールを動員して島を守る戦力を整えている。

 ベガパンクの技術を盗むことができれば、確かに激化する海の覇権争いで一歩リードできるだろう。その為には研究所を守る政府の戦力を殲滅せねばならないというリスクを背負う。新世界の大物達はそれを見抜いた上で手を出さないようにしているのだ。

 さて、その件の島の研究所ではテゾーロがベガパンクと邂逅していた。

「こうして面と向かって会うのは初めてですね。私がギルド・テゾーロです」

「ベガパンクだ。遠路遥々ご苦労、よく来てくれた。座りたまえ」

 互いに強く握手し、イスに座る。

 こうして顔を合わせるのは初めてだが、関係自体は大分前から始まっている。というのも、テゾーロ財団が海軍に提供する軍資金の半分以上がベガパンクの研究に費やされているからだ。一応世界政府からも資金は提供されているが、単純に額だけで見るとテゾーロ財団が圧倒的に多いので、いずれにしろこの莫大な資金で彼の研究は一気に進み、従来の武器の改良だけでなく新たな兵器の開発にまで至っている。

「今回はどういう訳でここまで?」

「まずはこちらを」

「?」

 テゾーロはベガパンクにフレバンスの現状と珀鉛の中毒症状に関する資料を渡した。

 ベガパンクは渡された資料に目を通し始めると、段々顔をしかめていく。

「……つまり、珀鉛の中毒症状を治す解毒剤を作ってほしいというのだな?」

「そういう訳でここへ来たんですから」

「――わかった、最善を尽くすことを誓おう」

「ありがとうございます、Dr.ベガパンク」

 ベガパンクが快く承諾したことに、深々と頭を下げるテゾーロ。

 世界最大の頭脳の持ち主とされる彼の手であれば、珀鉛の毒を無力化・体外へ排出できる解毒剤を作れるだろう。資料には珀鉛の特徴や今まで出会った医師達の推測といった財団が必死に集めた情報を記してあるので、彼の頭脳であれば年内の解毒剤完成は十分可能であろう。

「一国の全国民の生命が懸かっています。何卒よろしくお願いいたします」

「ああ、私の科学力で一国を救えるのならば本望だ」

 テゾーロとベガパンクは、もう一度強く握手を交わしたのだった。


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