ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第3話〝これからの生活について〟

 ステラを見事救出したテゾーロは今、彼女と共に隣町へ移動した。

 (この)町はステラのいた人間屋(ヒューマンショップ)があった町程は発展してないが、賑やかであり交通の便も悪くない。それなりに店もある上治安も良好なので、暮らすには悪くないだろう。ちなみに今は食事中である。

「ねェ、あの黄金はどうやって手に入れたの?」

「ああ……それかい?」

 やはり聞いてくるよな、とテゾーロは呟く。

 出会って翌日であれ程の大金をなぜ用意できたのが不思議に感じて当然と言えば当然だ。だからと言って、ここで黄金の製品を生み出すわけにもいかない……海賊達や金を欲しがるうるさい連中が寄ってくるからだ。

 金粉なら問題無い。

「ステラ、おれの手をよく見てて」

「?」

 そう言って、指をパチンッと鳴らす。

 するとキラキラと指先から少量の金粉が散り、テーブルに落ちる。

 それを見たステラは、驚いて言葉も出ない。

「おれは〝ゴルゴルの実〟の能力者…黄金を生み出して自在に操る事ができるんだ。まだ未熟だが…将来は様々な面で活用する気だ」

「じゃあ、さっきの黄金は、あなたの……!?」

「本来なら働いて稼ぐ方が君としても嬉しいだろうが、いつ買い取られるかわからない以上、この手段を使ったんだ」

「悪魔の実……初めて見たわ……!!」

 ステラは微笑みながらそう言う。

「ねェ、テゾーロ……これからの生活はどうする?」

「そうだなァ……ゴルゴルの実の能力を活かせる働きがいいな」

 テゾーロとしては、とりあえずは賞金稼ぎとなるのがいいと考えている。

 賞金稼ぎは海賊になるよりメリットがいい。海に慣れる上、賞金首にもよるがかなりの額の金も稼げる。個人的には海軍か政府を相手に交渉をしてビジネス関係を築くのが理想だ。

 賞金首を狩ったら、本部へ赴いた方が効率的だろう。最寄りの支部へ行けばいいだろうが、首が大きいと支部によって手続きが面倒だ。だが本部に来れば面倒な確認事項も直通だし、そのままエニエス・ロビーに送られる。首が大きいほど本部に来た方がメリットが多いのだ。

 いきなり本部へ近づくのは困難であるので、やるとすれば最初の内はシャボンディ諸島をはじめとしたマリンフォードに近い支部に行った方が賢明だろう。

「ところでステラ……船での生活と陸の生活、どっちがいいかな?」

「そうね……迷っちゃうわ」

 さて……テゾーロとステラが今対峙している障壁は、海上生活か陸上生活だ。

 海上では、海賊に会う確率が格段と高くなり強烈な自然現象といつ遭遇してもおかしくはない。海軍とも会うだろうが……その辺は話し合いで何とかなるだろう。

 陸上は海軍が駐屯してたり大物海賊のナワバリだったりするので治安的にはそこまで危険ではない。だがそれは上陸する島次第……100%安全とは言えない。

 それに天竜人との遭遇率は海上よりも遥かに高い。同情の余地も無いクズ集団にステラと共に土下座するのは死んでも御免である。

「テゾーロはどっちがいいの?」

「おれは……海がいいかな。自分の船でどこへでも行ける」

「私も海がいいわ……今まで檻の中だったから、世界を見てみたいの」

「じゃあ――これからは海上生活でいいかな」

「ええ♪」

(今の笑顔は反則だろ……!)

 ――この世界の女性は卑怯な気がする。

 テゾーロは内心そう思ったが、口にしないようにしようと誓った。

(そうなると…船が必要だな。できる限り小回りが利く船が理想だな)

 そう思うと、真っ先に頭に浮かぶのはゴーイングメリー号のような〝キャラベル船〟だ。

 13世紀にイスラム教国アンダルシアが開発したエジプトのナイル川で使われていた帆船を原型としたカリブ船をポルトガル人達が更に改造したキャラベル船は、小型で操船性能が優れている。浅海域も素早く操船でき、強風下でも航行可能……その経済性・速度・機敏さ及び能力でキャラベル船は最も航行性能の優れた船としての評判を得た。

 早期のキャラベル船は通常は小型で収容能力は少なかった一方、非常に速度が早く、操船性能が良かった。小型で操船性能が優れたキャラベル船は浅い沿岸海域から河川の上流までの調査航行が可能であったので、15世紀での長期に渡る探検航海では盛んに使われたという。

(とりあえずはキャラベルだな……いきなりガレオンは無茶すぎる)

 ガレオン船のような大型船を一人で操作できっこない。キャラベル船が限界だろう。

(まァ、コスト削減を考えると海賊からキャラベル船をパクるのが妥当だけど……そんなご都合主義的展開なんかねェだろうから一から黄金生成して換金しまくるしかないか……)

「テゾーロ、考え事なの?」

「うェ!? あ、ああ……まァね……」

 突然話しかけられ、ビクッとしてしまう。

(ステラ、不意打ちやめて!!)

 正直な話、テゾーロは女性に慣れていない。10代後半で転生したのだから、恋愛とか慣れてないに決まっている。

(いかん、いかん……こういうのには常に冷静でなくては……!)

 すると、どこかで見覚えのあるカモメがやってきた。ニュース・クーだ。

「お釣りはいらないから、これでよろしくな」

 金を払って新聞を手にする。

(今更だが……この新聞、日本語じゃないか。ああ、日本人の漫画家だからか?)

「テゾーロって新聞が趣味なの?」

「いや……でも世情くらいは把握しないとね」

 テゾーロは新聞を広げる。見出しは「Dr.(ドクター)ベガパンク、逮捕」と書かれている。

 ベガパンクは世界政府に属する以前、無法な研究チームに所属し兵器の研究をしていた際に生命の設計図といえる「血統因子」を発見した。その驚異の頭脳と研究内容を危険視した世界政府に彼は逮捕されて研究チームは買収されたのが、ちょうどこの時であるのをテゾーロは思い出す。

「ベガパンクか……接触の価値はあるな」

「? どうしたの?」

「ああ、いや……独り言だ――さてとステラ、そろそろ行こうか?」

「ええ」

 その時――

 

「海賊だーーーっ!!」

 

「「!」」

 悲鳴と共に逃げ惑う人々。

 どうやら海賊の襲撃に遭ったようだ。

「ステラ、君は離れてろ!! 必ず戻る!!」

「テゾーロ!? 何をする気!?」

「狩りに行く!!」

「え!?」

「大丈夫、すぐ片を付ける!!」

 テゾーロはステラを置いて、まだ悲鳴がする方向へ向かう。

 

 ――さァ、ショウタイムと行こうか。


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