ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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最近のワンピ、ヤバイですね。
五老星の上の存在…イムって何者なんだろう。

どうやらワンピースはまだまだ伏線多いですね…っていうか、余計に増えてない?(笑)


第64話〝対峙〟

「今日は君一人だけか?」

「ウチは今、色んな事業に手ェつけてるんで。まァ私がいなくともどうにかなります」

 五老星との面談を終えたテゾーロは、クリューソス聖と面談をしていた。

 テゾーロはフォードの一件でクリューソス聖から全幅の信頼を寄せることに成功し、王侯貴族でないにもかかわらず世界貴族(てんりゅうびと)と信頼関係を形成するという離れ業を成し遂げた。元々クリューソス聖自身も天竜人でありながら一般人と同じ価値観を持つ異端児であり、身分を問わず手を差し伸べる良心の持ち主であるからこそテゾーロと良好な関係を持ってるのだが。

「――っていうか、やっぱりマリージョアじゃあマスクしないんですね」

「天上界という感じのようでな。君の住んでるところは下界扱いしている。下界ではマスクをするが天上界(マリージョア)では全ての天竜人はマスクをしない」

 今のクリューソス聖の格好は、黒い着流し姿である。

 天竜人の界隈においても自分達の家の中では私服の者もいるらしい。

「あと、奴隷とかを持たないのは、まァ天竜人の中では珍しいでしょう?」

「――厳密に言えば、元奴隷は(・・・・)居る」

「!」

 クリューソス聖曰く、奴隷の使い回しというものが天竜人の間であるらしく、度々自分の所にも来るという。その時には奴隷達はいつ死んでもおかしくない状況で、さすがに哀れに思ったので奴隷ではなく召使いや近衛兵として彼らを引き取っているという。

「そこに控えている槍を持った二人……彼らもまた元奴隷だ」

「……くじのアタリを引けたようで」

「君も労働力に困ってたら、私に言うといい。いつでも提供しよう」

「それは助かりますが…今は結構です。足りなくなったときにいいでしょうか?」

「構わんよ」

 笑顔を浮かべながら語り合う二人。そこには、世界の頂点に君臨する血族と成り上がりの民間団体の長という圧倒的な立場の差を超えた信頼関係が垣間見えた。

「今度は君の家内さんも連れてくるといい、歓迎しよう」

「それは彼女次第ですけど……よからぬこと考えてるならあなたでも容赦しませんよ」

 一瞬でテゾーロの周りの空気が変わり、窓ガラスがガタガタと揺れ始める。

 それは、彼から放たれる覇気。家内(ステラ)に手を出そうものなら、例え世界貴族が相手だろうと情けは無用――大切な存在を背負った男の意志に、さすがのクリューソス聖もお手上げか「私は腐ってない」と釈明する。

「疑り深いな……そこまであくどい輩には成り下がっておらんよ」

「念の為です」

「ハハハ! 大胆に動く男と聞いていたが、意外と慎重なのだな」

「メリハリは必要ですから……」

 テゾーロはそう言うと立ち上がり、玄関へ向かう。

「何かご相談がありましたら、私にご連絡を。できる範囲のことは尽くしますので」

「うむ。ではこれからも頼むぞ」

 

 

           *

 

 

 一方、ここは新世界「ホールケーキアイランド」。

 二角帽を被り口紅を塗ったパーマの髑髏が刻まれた扉が目立つ城――ホールケーキ(シャトー)の屋上では、ホールケーキアイランド含む「万国(トットランド)」の女王にしてビッグ・マム海賊団船長である〝ビッグ・マム〟シャーロット・リンリンが「お茶会」を開いていた。

 ビッグ・マムのお茶会は、闇の世界の帝王達をはじめとした大物がゲストとしてくる。そしてその中には、テゾーロがよく知る人物もいた。

「――つーことでさ、面白い奴だから絡んでみたらどうだリンリン」

「ハ~ハハママママ……お前が気に入る程の男かい」

 お茶会の会場では、何とスライスがビッグ・マムと話し合っていた。それもテゾーロのネタだ。

「おれァ商売柄、色んな奴とビジネスをしたが……こいつは格や質が違う。きっと気に入るぜ」

「ママママ……随分と推してるじゃねェか、スライス。そんなにおれと馬が合うのかい?」

「会えばわかるさ、こいつは中々口じゃ表せねェ男だ」

「ギルド・テゾーロ……あァ、憶えたよ」

 ビッグ・マムは獰猛な笑みを浮かべる。

 スライスから聞いた話から、その強大な能力と人を惹きつける魅力、〝海の掃除屋〟などの曲者達をまとめあげる堅苦しさの無い人柄などがわかった。現に息子のペロスペローやカタクリも目をつけており、フォードを討伐した張本人でもあるため彼女自身も興味は抱いていた。

 今回のスライスとの会話は、今後のビジネスにも役に立つだろう。元々ビッグ・マム海賊団は、海の頂点に立つ白ひげ海賊団やかつてのロジャー海賊団のような王道の海賊というよりもマフィアの側面が強い。世界政府と密接な関係だが、彼女としては是が非でも手中に収めたいものだ。

「もし奴と会ったらこう言いな、スライス」

「?」

「その面をおれの前に見せやがれってなァ……! ママママママ……!!」

 上機嫌なビッグ・マムに、スライスは顔を引きつらせた。

(言わなきゃよかったか、これ……?)

 しかし期限については言及しなかったので、これ以上は言わないようにしようと誓うスライスだった。

 

 

 同時刻、〝偉大なる航路(グランドライン)〟ジャヤ。

「お前が〝赤髪のシャンクス〟か?」

「……あァ、そうだ」

 モックタウンの大通りで、メロヌスは愛用のスナイパーライフルを背負って赤髪海賊団と対峙していた。

 実を言うとメロヌスはテゾーロに代わってジャヤの発展事業を進めるよう命ぜられており、つい先程まで道や港の整備を部下達と共にしていた。その最中に海賊達が騒動を起こしたので現場へ駆けつけたというわけで、その騒動の当事者が最近名を轟かし始めた赤髪海賊団だったのだ。

「噂は聞いてる……確か海賊王ロジャーの船に乗ってた見習い海賊だろう?」

『!?』

 誰もが信じられないような目でシャンクスを見ている。

 たとえ見習いとて、「〝偉大なる航路(グランドライン)〟制覇」という歴史的偉業を成し遂げた海賊王ロジャーの船員(クルー)は全員が伝説的扱い。そのときに懸賞金が懸かってようがいまいが、人々に畏怖されるのは変わりない。

「よく知ってるな……どこでその情報を?」

 目を細めて腰に差した剣に手を伸ばすシャンクス。

 彼の問いに、メロヌスは答える。

テゾーロ財団(ウチら)の幹部は賞金稼ぎだった奴も何人かいるし、サイファーポールの人間もいる……情報収集力は甘く見ない方がいい。それにテゾーロさんの覇気の師匠があんたの知り合いだしな」

 メロヌスは淡々と言葉を紡ぐ。

 テゾーロは伝説の海賊であるレイリーとギャバンに覇気を学んだ身――それなりの信頼関係を築き、ロジャー海賊団の事情もある程度知ってはいる。当然、メロヌスのような彼の部下も。

「それで……おれ達とやり合う気か?」

「――おれは任務外の行動はしない。たとえ相手が海賊だろうとな。それにこの状況だとどちらに非があるかは一目瞭然……不問に伏すさ。ただしテゾーロさんには報告するが」

 メロヌスはシャンクス達の前に転がる海賊達を一瞥する。

 シャンクスは暴れさせたら手に負えないが、酒に酔っても自分から喧嘩を売ることは考えられない――いや、そもそもシャンクス率いる赤髪海賊団の悪い話が無い。大方、酒に酔って喧嘩を吹っ掛けてきた海賊達がシャンクスの仲間に手を出したのだろう。その証拠に、シャンクスの背後にいる彼の一味の数人かがケガをしている。

「海軍と繋がっているから少しは面倒事になると思っていたんだが……いいのか?」

 副船長のベン・ベックマンがメロヌスに問うと、彼は微笑んだ。

「この島自体、ウチの権力が働くシステムになってる。最悪の場合は近くの海軍支部に応援を頼もうとは思ってたが、あんたらのことだ。別にその必要は無い」

 ――実際は、あんたらを暴れさせたくないだけだが。

 心の中では赤髪海賊団を暴れさせたくないだけだが、互いに無益な戦いは好まない。ゆえに話し合いで済んだのは幸いだろう。

「――騒がせて悪かったな、仕事の邪魔もしたか?」

「別にいいさ、この時代海賊の往来も激しいからな……こういう騒動はたまにある。ただ……ウチのハヤト――〝海の掃除屋〟には目を付けられないように気をつけることだな」

 メロヌスは鋭い眼差しで忠告し、赤髪海賊団とすれ違う形で去っていった。

「お頭……あいつは賞金稼ぎのメロヌスだ」

「あァ、わかってる……どうやらテゾーロという男は中々の器らしい。殺気も中々のモンだった」

 シャンクスとベンは去っていくメロヌスの背中を見て笑顔を浮かべ、仲間を率いて酒場へと向かうのだった。


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