ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
(彼女がステラか。テゾーロ……いや、おれが想い続けた女性……)
檻の中で空を見上げるステラ。
それを遠くから見てたテゾーロは、胸が痛い思いになる。
原作のテゾーロは、ステラが好きになり、彼女を
最終的にはあと一歩のところで天竜人によって奪われるわけだが…今のテゾーロは、原作のテゾーロではない。〝
(今接触し、救わなければ……!!)
テゾーロはステラの入っている檻に近づいた。
「なァ……少し、話でもいいかな? 今、何も無くてヒマなんだ」
「? ええ………」
テゾーロはその場で胡坐を掻き、ステラを見つめる。
「……私はステラ。あなたは?」
「おれはテゾーロ……ギルド・テゾーロだ」
「……素敵な名前ね」
「いや、君の名前の方がよっぽど素敵だ。こんな檻の中に閉じ込められるなんて酷すぎる……」
「フフ……これから買われていく私を
「っ……!」
ステラの笑みに、顔が赤くなるテゾーロ。
さすが「ONE PIECE」の世界の女性である。
「ステラは確か、〝星〟の意味を持つって聞いたことがある。君のような美しい
テゾーロの言葉は嘘ではない。星は、ラテン語またはイタリア語で「ステラ」と言うからだ。
「そういうあなたこそ、テゾーロは〝宝物〟を意味するって知ってた?」
「え…あ、アハハ、そうなんだ、初めて知った……」
「フフッ……♪」
テゾーロが笑うと、ステラも笑う。
ステラは今まで話し相手がいなかったのか、とても嬉しそうだ。対するテゾーロも、原作と違う関わり方をしたので緊張してたが、うまく行ったことに内心安堵していた。
「話し相手が居なくて寂しかったから、もう少し付き合って欲しいけど…」
「構わないさ、おれも同じようなモンだったからね」
それから、テゾーロとステラは話を盛り上げた。
テゾーロはステラを楽しませる為に、自らの夢を語ったり、転生前に好きだった曲を歌ってみたりした。
転生前の自分の取り柄がここで活かされたことに、テゾーロは内心ガッツポーズを決めたと同時に〝ギルド・テゾーロ〟に転生できたことに感謝していた。
「おれはエンターテイナーになりたいだけど、同時にこの世界で革命をもたらしたいんだ。暴力や武力の時代を終えたいんだ」
「素敵な夢ね。でも、私はそれを見ることはできない……いつか私は買われちゃうけど、心までは買われはしないわ」
するとテゾーロは「そんなことはない」と言い、ステラを見つめて笑顔を見せる。
「おれは君を買って自由にしたい。 少しだけ待っててくれないかな?」
「えっ?」
テゾーロの言葉に、驚くステラ。
するとテゾーロは、檻の中に手を伸ばし、ステラの手をしっかりと握った。
「正直ここで言うのもアレだけど――君が好きだ! だから君を救いたい! 奴隷になんて絶対にさせない!! 必ず救ってやる!!」
「でも、ここは
「大丈夫だ!! おれは〝魔法の
テゾーロはあえて〝ゴルゴルの実〟の能力者であることを言わなかった。この話を店員やオーナーに聞かれてる可能性があるからだ。
この世界には、過去に実在した悪魔の実の名前や能力を記した「悪魔の実の図鑑」という書物が存在する。図説まで載っている実は少ないらしいが、万が一〝
それを未然に防ぐために、テゾーロは〝ゴルゴルの実〟の事を伏せたのだ。
「君を自由にするためには少し時間がかかる……だが、必ず解放してやるから待っててくれ!!」
「……ええ、待ってるわ。でも無理はしないで……」
「ああ、約束する!!」
ステラと解放の約束をしたテゾーロは、早速ボロ小屋で準備を始めていた。
(しかし、人が人を買うという狂った理屈が何で通るんだか…)
テゾーロが目を配ったのは、
人間は50万ベリー、小人族・ミンク族・手長族・足長族・蛇首族は70万ベリー、魚人族は100万ベリー、巨人族の男は5000万ベリーで女は1000万ベリー、人魚族の女は7000万ベリー、男は100万ベリー、女二股は1000万ベリー、能力者・その他珍種は時価……見てるだけで気持ち悪くなりそうだ。
(そして今回のリスト……ステラだけバカに高いな)
ステラは何と基本最低金額を遥かに上回る値段がつけられていた。
本来ならば年単位の重労働で稼ぐ必要がある程だ。転生前にゴルゴルの実を用意しておくように神に言ったのは正解だった。
彼女を買った忌々しき天竜人は、原作通りならば3年後に来る。今のテゾーロは16歳…十分時間はあるが油断は禁物である。彼女を買おうとするものがいつ現れるかわからない為、早急に黄金を用意する必要がある。
(そう言えば、ステラを救った後を考えなきゃあな…)
自らの野望の前に、まずステラを救って衣食住の生活基盤を整えておく必要がある。
さすがにこんなボロボロの衣装では衛生的にマズイだろう。
「いいや、そんなのは後だ!! まずはステラを救うのが最優先だ!!」
テゾーロは徹夜で金の延べ棒を生成するのだった。
*
翌日。
「あ~……眠い……」
金の延べ棒が詰まった袋を肩に担ぎ、ステラの元へ向かうテゾーロ。
徹夜をしたため、1時間程しか寝ていないせいか、目の下の隈がかなり目立ちかなり
「とりあえずステラを救わな……っ!!?」
テゾーロは眠そうな目を見開いた。
ステラの前にオーナー及び店員らしき人物がいたからだ。
テゾーロは表情を変え、急いで駆けつける。
「ステラァーーッ!!!」
「! テ、テゾーロ……!?」
「あァん? んだあのガキ?」
テゾーロが駆けつけてくるところを見たオーナーは、不機嫌そうな顔をする。
「何だ貴様、ここがどこだか知ってんのか? ここは〝
カチャリ……
オーナーは銃を取り出し、銃口をテゾーロに向けた。
「!? や、やめて!! 彼を殺さないで!!」
「黙れ!! 商品の分際で、お前もただで済むと思うな!!」
「待ってくれ、金ならある!! 好きなだけ持っていけ!!」
テゾーロはそう言い、肩に担いでいた袋をオーナーの前に投げつける。
すると袋の中から、キラリと輝く何かが見えた。不審に思ってオーナーが調べると、中身を知って放心状態になる。遠くから見てたステラも、目を丸くする。
「ウ、ウソ……!?」
「札束じゃないが、これで十分だろう……!?」
『お…黄金だ!!!』
そう、そこにはまばゆい輝きを放つ金の延べ棒が入っていた。
換金すればどれ程の額になるか想像ができない程であり、ステラや店側の者達だけでなく、周囲の人間達の目を釘付けにした。
「オ、オーナー! どうしまぶ!?」
オーナーに店員が声を掛け確認しようとした瞬間、オーナーは目にも止まらぬ早さでステラを檻から出しテゾーロにその首輪と手錠の鍵を渡した。
「いや~、この度はお買い上げ誠にありがとうございます!! それではまたのご利用お待ちしております!!」
(いやいやいや、チョロすぎるだろ……いくら何でも)
思わぬ収穫があったオーナーはさっきと打って変わりテゾーロに媚びを売る。テゾーロはそんなオーナーに目もくれず、ステラを縛り付ける首輪と手錠を外した。
「えっ、えっ?」
「ステラ、これでもう君は自由だ。あんな嫌な場所に居ないで済む」
ステラは首を何度も触ると、涙を流し始めた。
「……ううっ、ヒック!! デゾーロ……!!」
ステラはテゾーロに抱きついた。
「テゾーロ……ありがとう……! あなたっていう人に出会えて嬉しい……!!」
「ステラ……」
テゾーロに泣きつくステラ。
檻から出るどころか奴隷にならず自由の身になるのはどれ程嬉しい事だろうか。
それは身を売られた者にしかわからない苦痛であろう。
「ステラ…これからどうする? 君を縛り付ける障壁は無い」
「そうね…あなたの夢を叶えたいわ。それが今の私の夢だもの」
「フッ…ステラ…君という女性は……」
「それにしても、どこであの金を?」
「あ~……それは今は言えない。この街から出て、二人の時になったら話すよ」
テゾーロとステラの出会い。
これが、後に世界一のエンターテイナーにして〝新世界の怪物〟として恐れられるようになる〝黄金帝〟の
次回は恐らくテゾステの生活が主なネタかと。