ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

58 / 183
ずいぶんと長く時間がかかりました。
申し訳ありません、大学の課題がかなり多かったので…。


第54話〝ショクショクの実〟

「あの小童共、そこまでの力が残ってたか……」

 腕を組み、眉間にしわを寄せるフォード。連日闘技場に参加させ、反抗できる体力を削いだつもりでいたが、まさかここへ来て大勝負を仕掛けてくるとは。

 さすがのフォードも、これは想定外だった。

(今までは見世物として助命をしてきたが……そろそろ処分の時か)

 一方のハヤトとタタラも、疲れ始めていた。

「ゼェ……ゼェ……そろそろ、頃合いだな……」

「ハァ……ハァ……ここいらで止めないと、ヤバイですし、ね……」

 息を荒くする両者。芝居を演じているとはいえ、互角の斬り合いを30分近くやっていれば少しは疲れるものだ。

「流れを変えなきゃいけませんね……」

「どう持ち込むか、だな……」

 その時だった。

 

 ズドォン!!

 

『ギャアアアアアアア!!!』

「「っ!!」」

「なっ……!?」

《こ、これは何事だァ!!? タタラ選手の入場口から屈強な男達が……!!》

 タタラの入場口から、ガタイのいい男達が吹き飛んできた。

 男達の体にはどれも刀傷が刻まれており、斬られてから吹き飛ばされたということが容易に窺えた。

「参ったな、道に迷っちまった」

 ハヤトが出てきた方の入場口から、一人の男が現れた。

 革靴を履き黒いマントを羽織った、袴姿で白い短髪が特徴の男――ジンだ。

「おいおい、まだ芝居してたのか? いい加減にするべきじゃねェか?」

 突然の乱入者に、どよめく観客達。

 すると、今度は観客席から声が聞こえてきた。

「――ったく、こっちからエンターテインメンツにキメようとしたってのによ…まァどっちでもいいか」

 青年の声が響き渡り、どこからか靴音が聞こえる。

 それは少しずつ、フォードに近づいていき、そして――

「ぬんっ!!」

 

 ドゴッ!!

 

「!?」

 〝武装色〟の覇気で黒く硬化した拳が、フォードの顔を抉った。

 彼を殴ったのは、テゾーロだった。

「ぐォっ!!」

 フォードは観客席から吹き飛ばされ、闘技場のフィールドに叩きつけられた。

 突如起きた暴力沙汰に、会場は大騒ぎになる。

「お、お前は……!」

「色々言いたいことはあるが、面倒だから割愛だ。アルベルト・フォード、年貢の納め時だ。色々やらかした事の全ての落とし前、つけさせてもらうぞ」

 フォードが立ち上がろうとした瞬間、彼の目の前に黄金の指輪がいくつか転がってきた。

 そしてあっという間に黄金に輝く触手が出現し、フォードを拘束した。

「若造……どういうつもりだ……」

「大体わかるっしょ? あんたを潰しに来たんだよ」

「バカな……この私がどういう存在か、お前は勿論、世界政府は知らぬわけでもあるまい……!!」

「あんたの野望を看破したんだよ。もっとも、おれが海軍中将を通じてチクったんだけどね」

 テゾーロの言葉を聞き、フォードは目を見開く。

「天竜人と癒着関係になって自身の財力と天竜人の権力で商売敵を潰す。そして〝死の商人〟の摘発されにくい立場を利用し様々な戦争の主導権を握り、軍事バランスを掌握して世界を支配。最終的には世界政府をしのぐ力を得て世界の実権を握る。……雑だけど、あんたの筋書きはこんなところだろ?」

「っ……恐れ入った、見事な推理力だ……」

 テゾーロの推理力に、驚愕を通り越して感心してしまうフォード。

 海軍や世界政府にすら看破されなかった己の野望を、まさか自分を嗅ぎ回ってた無謀な若者に全て見抜かれていたとは夢にも思わなかっただろう。

「世界政府は、ぶっちゃけあんたが天竜人とつながってたから迂闊に手を出せなかったんだ。だが好き勝手も度を越すと、どんな人間も腹を括って相手を潰しにかかるんだ――どんな手段を使ってでもね」

「世界政府はお前を利用して、自分達に責任転嫁されないように手を打ったのか……!!」

 フォードの脳裏に浮かび上がったのは、かつて世界政府が主導した「ワールド殲滅作戦」だった。

 かつては海賊王ロジャーや白ひげ、金獅子のシキと並んで恐れられた伝説の大海賊バーンディ・ワールド率いるワールド海賊団を潰すべく、海軍はワールドに恨みを持つ海賊達と結託し、海賊連合に加え全盛期のガープとセンゴクという掟破りの戦力で前代未聞の艦隊戦を繰り広げた。

 絶対的正義を掲げる海軍が、その信念を曲げて本来捕えるべき海賊達と徒党を組んだ苦い思い出だ。

 ――そんな見下げはてた手口を、また使ったのか。

 フォードは海軍に対し失望したと同時に怒りも露にしたが、テゾーロはそういう訳ではないと言う。

「違う違う、元はと言えばそこにいるジンがおれに頼んだことから始まったんだ……そういえばジン、お前って何の為に地下闘技場(ここ)を潰してほしかったんだっけ?」

「そういえば言ってなかったな……知り合いの弔いと、あの子達を解放するためだ」

「あ、そうなの? てっきりオルタ達だけかと」

「事は一刻を争う事態ゆえ、時間が無くて言えなかった。悪かったと思ってる」

「まァ、どうでもいいか。案外早く仕事は終わりそうだしな」

 闘技場のフィールドに、何と今度はスライスが登場。

 客人として来ていた男がテゾーロとグルである事を知り、動揺を隠せないフォード。

「スライス殿……!?」

「おれもあんた潰しに接触したんだよなァ……」

「っ……驕るなよ、若造共!」

 フォードがそう叫んだ瞬間、彼を拘束していた黄金は、ビリビリと震えた瞬間粉々に砕けた。

 鉄を遥かに上回る程の硬度を有する黄金が砕け、驚愕するテゾーロ。

「この〝ショクショクの実〟の能力(しょうげき)の前では、黄金の拘束も無意味だ」

 つまり、フォードは〝ショクショクの実〟という衝撃を操る悪魔の実の能力者であり、衝撃を伝導させて黄金を砕いたという訳である。

(マズイな……確かに黄金を操るテゾーロの能力は脅威だ。だがフォードはどんな防御も貫通させてダメージを与えられる……! 分が悪いぞ……)

 衝撃や振動は、物体相手に凄まじい影響を与える。

 両端を固定した弦や管の中の空気、つなぎ合わせた振子など、物体には全て固有の振動数がある。それに物体を揺らす「共振」を起こせば、理論上どんな物体も破壊にもっていくことが可能であるのだ。

「ここまで追い詰められた以上は止むを得ん…お前のような厄介なイレギュラーは、脅威となる前に消さねばならん。いいだろう、お前を我が人生における大きな敵として打ち砕いてくれる!!!」

 悪意に満ちた笑みを浮かべ、両手に小刻みに震える白いオーラを纏わせて拳を握り締めるフォード。

「若者一人にそんな大層な表現たァ恐れ入るけど……あんたをここで引きずり降ろすんで」

 テゾーロは指にはめていた黄金の指輪にゴルゴルの能力を宿らせた。

 その直後、フォードがショクショクの能力を用いて破壊した黄金は火花を散らして融け、テゾーロの身の丈より巨大な黄金の番傘に変化した。

 そしてテゾーロは黄金の番傘の柄の部分を握り、構えた。

「お互い海賊ではないが、この世界は常に生き残りを賭けている。卑怯なんて女々しい言葉は言わせんぞ」

「この世界では、そんなの常識でしょうに……ジン、スライス。予定変更だ、フォードとは一騎打ちで勝負する!! ゴミ掃除を頼む」

 テゾーロの言葉に、ジンとスライスは互いに顔を見合わせてから無言で頷いた。

「死んだら承知しねェからな」

「死なんさ、大切なモンがうじゃうじゃいるんでな」

「リア充め」

 そんな素っ気ない会話を終え、テゾーロは巨大な番傘を携えてフォードに飛びかかった。

 

「今までの悪事の代償、支払ってもらうぞ!! フォード!!」

 

「っ……貴様ごときに阻まれてたまるか!!!」

 

 実業家同士の戦いが、勃発した。




テゾーロが生みだした番傘は、銀魂の鳳仙の持っていたあのバカデカイ番傘の金ピカ版だとイメージしてください。

感想・評価、お願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。