ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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やっと更新です。
昨日は震災があった日…7年の短さを感じます。
ふと気づいたのですが、この小説も執筆し始めてから1年1ヶ月と3日経ってるんですね…。
これからも頑張りますので、よろしくお願いします。


第53話〝作戦第一段階〟

 作戦決行5分前。

 テゾーロ・スライス・ジンは「フォード拘束組」、サイは「赤の兄弟」と同行、ハヤトとタタラは「闘技場鎮圧組」の一員としてそれぞれ準備していた。

「皆、準備はいいか?」

 テゾーロが電伝虫を通じて告げると、ジンとスライスが持っている電伝虫が返答する。

《いつでもいいですよ》

《すでに闘技場の中だ、おれとタタラは準備万端だ》

 富と権力を利用して悪行を重ね、娯楽の為に人々を弄んだ悪漢…アルベルト・フォード。

 天竜人と癒着しているがゆえ、政府も迂闊に手を出せない強大な存在であったが、ついに年貢の納め時が来た。

「――さァ、ショータイムだ」

 地下闘技場摘発作戦が、ついに開始した。

 

 

 そして5分後、午後3時――作戦開始時刻――になる。

《お集まりの紳士淑女諸君!! 本日行われる闘技場での決闘は、まさに血湧き肉躍る凄まじい戦いになるだろう!! 地下闘技場で比類なき強さを見せつけた最強の剣客・タタラに挑むのは!! 何と海の荒くれ者達から恐れられた勇猛な賞金稼ぎ〝海の掃除屋〟である!!!》

 観客席から一気に歓声が上がる。

 それと共に、それぞれの入り口からハヤトとタタラが入場する。

《地下闘技場最強の剣士に立ちはだかる〝海の掃除屋〟!! かつてない敵が迎え撃つ!!! タタラの無敗伝説はどうなるのかにご注目!!!》

 対峙する剣客同士。

 ハヤトは背負った身の丈ほどの大太刀を抜き、タタラは仕込み杖を構えて腰を沈める。

「……何をすべきか、わかりますよね?」

「ああ…わかってる」

 タタラは額の目でハヤトの姿を見据えながら、彼と言葉を交わす。

 互いがやるべきことは、ただ一つだ。

《さァ!! 今、開始のゴングが鳴ったァァ~~!!!》

 ゴングが鳴り響き、試合が始まる。

 しかし、ハヤトもタタラもその場から一歩も動かない。

《お、おや……これはどうした!? ゴングが鳴ったのにもかかわらず、両者はピクリとも動かない!!》

 まるで微動だにしない二人に、観客はどよめく。

 だがフォードだけは、この光景の原因を瞬時に把握していた。

(すぐに動かないのは当然……互いに〝間合い〟を理解しているのだからな)

 間合いは個人の技量や得意とする武器によって異なるが、強者同士の場合だと相手の間合いを封じながら自分の間合いで戦うことができるかどうかが重要視される。迂闊に近づけば、一瞬で倒されてしまうのだ。

「……」

「……先攻はそちらでも結構ですよ」

「随分と余裕だな……じゃあお言葉に甘えて、こちらから行くぞ!」

 ハヤトはそう言い、タタラに斬りかかった。

『!?』

(速い!)

 身の丈ほどの大太刀を持っているにもかかわらず、一気に間合いを詰めるハヤト。

 その速さに観客は勿論のこと、フォードですら愕然とした。

「おおおお!!」

 

 ズドォン!!

 

 ハヤトは大太刀を振り下ろした。その威力は凄まじく、闘技場の地面を大きく抉った。

 しかしタタラはハヤトの背後に飛んで避けており、仕込み杖を逆手に構えて居合を放った。

 

 ギィン!!

 

「っ!」

 だが、その程度でやられるほど〝海の掃除屋〟は弱くない。ハヤトは咄嗟に左腕を武装硬化させ、仕込み杖の刃を受け止めた。

 今まで全ての敵を一太刀で倒してきたタタラの剣技が、得物どころか左腕で防がれた。そんな想像だにしなかった展開に、観客は一気に盛り上がった。これが全て芝居とは知らずに。

「まだまだだ!!」

 ハヤトは大太刀を横に薙ぎ払ったが、タタラの姿は消えていた。

「長大な大太刀は攻撃の型が限られる。「飛ぶ斬撃」を放つか、薙ぎ払うか、斬り下ろすかのいずれか……」

「っ!?」

 タタラは大太刀の刃に乗り、仕込み杖を構えていた。

 射程範囲や純粋な威力はハヤトの方が上だろうが、身のこなしはタタラの方が上――真剣勝負では個人の技量だけでなく「速さ」もモノを言うのだ。

「集団戦ならばハヤト…あなたの方が上でしょう。だが一対一(サシ)は別――これで終わりです!」

 タタラは刀を返し、峰打ちを狙う。

 しかしハヤトは咄嗟にコートの内ポケットから、ある物を取り出して防いだ。

「!? こ、これは……!?」

「言い忘れていたが……〝海の掃除屋〟の武器は大太刀に加え、扇子がある」

 ハヤトはそう言うと、扇子を広げて大きく振るった。

 すると突風がタタラを襲い、彼を吹き飛ばした。その風は観客席にまで届き、帽子を吹き飛ばされないよう必死に押さえている者もいる。

「大太刀と扇子……成程、遠距離攻撃はお手の物ですか」

 タタラは仕込み杖を構え、切っ先をハヤトに向ける。

 ハヤトもまた、扇子を広げ大太刀に覇気をまとわせ武装硬化させる。

「いずれにしろ、これで互いに準備万端……では改めて……いざ!」

「尋常に勝負!」

 睨み合う両者。

 地鳴りのような歓声が沸く中、二人の戦いを観客席から観ていたフォードも、満面の笑みを浮かべていた。

「フッフフ……これはいい試合だ。私が今まで見た試合では間違いなく一番だろうな」

 フォード自身、こうして何十回と試合を観戦してきたが、これほどまでに盛り上がる試合は初めてであった。観る者を興奮させ、戦いの結末を見届けられる幸運に感謝できるような〝本物の(・・・)試合〟……それが今、目の前で行われている。

 どちらが勝とうと、共倒れになろうと、この戦いは最後まで観る価値がある。今までの試合がつまらなく感じてしまうほどであった。

 その時だった。

「フォード様!!」

「どうした?」

「地下闘技場の真下――囚人部屋において、ガキ共が……!!」

「フンッ……なァに、いつもの騒ぎを起こしてるんだろう。適当に済ませろ」

「い、いえ……それが……!」

「……?」

 

 

           *

 

 

 同時刻、地下闘技場の真下では、オルタ達「赤の兄弟」が蜂起して大騒ぎになっていた。

 いつもは口論で済んでいたが、今回は武器を手にして部屋から脱走して反乱を起こしたのだ。想定外の事態に、フォードの部下達は混乱しながらも鎮圧しようと抑え込んでいる。

「畜生、どうなってんだ!?」

「何でこんなに少ねェんだよ!!」

 オルタ達に対して、フォードの部下達は圧倒的な人数で圧力をかけていた。

 しかしどういう訳か、今日に限って部下の数がいつもの半分にも満たない。何かが起きているのは明白だ。

「おい、早く仲間を呼べ!!」

「おれ達だけじゃキツイぞ!!」

「その必要はありませんよ」

 一人の男性の声が響き渡る。

 すると次の瞬間、フォードの部下達に強烈な痛みと衝撃が襲いかかった。気づけば胸から血がにじみでていた。

 フォードの部下達は声のした方向…真後ろへと振り向く。そこに立っていたのは……端正な顔立ちをした、指を血で濡らした男だった。

「〝武装色〟の覇気を纏った〝指銃(シガン)〟……永眠(ねる)にはちょうどいい睡眠薬でしょう?」

 ゆっくりとうつ伏せに倒れるフォードの部下達を見ながら、氷のように冷たい笑みを浮かべるサイ。

 サイは「六式」に加え〝武装色〟と〝見聞色〟の覇気を扱えるため、戦闘力がかなり高い。武装したフォードの部下達を全員始末することなど造作もない。

「さて……これでこちらの作業は終わりに近づきましたね。「赤の兄弟」の皆さん、早速彼らの身ぐるみを剥いで黒スーツを着てください」

「――何の為だ?」

「〝心理作戦〟の成功の為ですよ……私がよく使う手口でしてね」

 オルタの質問に答えるサイ。

 どうやら彼の言う〝心理作戦〟は、諜報員として活動する中で多用しているようだ。

(さて……こちらはもうすぐ。次はテゾーロさん達の番です……)

 サイは羽織っているコートから子電伝虫を取り出し、連絡をする。

「こちらサイ。テゾーロさん、こちらの準備は整ってます」

《OK、次はおれらが暴れる番だな? わかった。お前は手順通り、海軍に連絡をしろ》

「了解。ご武運を……」

 

 地下闘技場摘発作戦、第一段階「部下一掃及び黒スーツ奪取」達成。


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