ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
島に上陸したテゾーロ達は、早速路地裏へと入った。
これからテゾーロはハヤトに連絡をするのだが、表では怪しまれる上に見つかると面倒なため、路地裏で連絡を取ることにしたのだ。
「……おれの読みが当たってれば、この島にいると思うが…」
「出れる状況であればいいですね」
プルプルプル……プルプルプル……ガチャッ
「「「!!」」」
《はい?》
「おーい、何やってんだー」
《っ!? テゾ――》
「いや、慌てすぎだろ……」
電話に出たハヤトが、電話越しに絶句。
別に責め立てるつもりじゃないのだが、悪事を働いたのがバレたような反応に三人揃って呆れた表情を浮かべる。
「お前さ……おれが言うとブーメランだけどよ、あんまりヤンチャすんなよ? 今回ばかしはかなりの厄介事なんだからよ」
《す、すまない……》
「いや、別に責めてる訳じゃねェからさ。いじけるなよ」
すると、電話越しに「電話代われ、あいつと話したい」という声が聞こえた。
その声は、テゾーロがよく知っている声だった。
「まさか……」
《よう、テゾーロ。ずいぶんととんでもねェことを企んでたようだな》
「スライス!」
ハヤトに代わって、スライスがテゾーロに話しかける。どうやらハヤトと共に行動していたようだ。
「ハヤトと共にいたとはな……お前こそ何しに来た」
《いんや、野暮用でね》
「ウソつけ、どうせおれと同じ目的だろ」
《あ、バレた?》
相変わらずの会話のやり取りを展開するテゾーロとスライス。この二人、どこか似ているのかもしれない。
《まァそれはともかく……お前、作戦考えてきた?》
「! 今ここで語ろうと思っていたんだが…」
《実はおれとハヤトは、お前が来る前に
スライスは、テゾーロが来る前に何があったのか――その全てを語り始めた。
*
一方のスライス側。
「テゾーロ、まずは地下闘技場最強の剣士であるタタラから語ろう」
《タタラ?》
スライスはタタラについて語り始める。
この地下闘技場において唯一最強の名を有している剣客が、タタラという三つ目族の青年である。その技量は一太刀で相手を武器ごと斬り伏せる程で、地下闘技場においてほぼ無敵の強さなのだという。
《成程、地下闘技場の中で最強と謳われる男が手を貸すと?》
「そうだ。そしてもう一つ……「赤の兄弟」について話したい」
《あ、それ知ってるわ》
「な……知っているのか!?」
《ぶっちゃけ名前だけ。シャボンディの賭場で聞いただけだ》
テゾーロ自身、情弱ではない。それなりに下調べをしてから行動する。とは言っても、「赤の兄弟」に関する情報は詳しく得ていないため、スライスに詳細な情報を求めた。
《ぶっちゃけ、どうなんだ?》
「ああ……総勢100名、リーダーがいる。全員が闘技場出場の経験があるようだ、それなりの力はあるはずだ」
《……戦力的にはこれといった問題は無いようだな》
「まァな。だがあくまでも
《だな…別動隊として動いてくれた方が動きやすいかもしれねェ》
同意する両者。
そしてスライスは、ついに本題を切り出した。
「さてと……テゾーロ、こっからが作戦内容だ」
《!》
「今からちょうど5時間後……午後3時に、地下闘技場で行われる大会にハヤトが出場する。そこでタタラとハヤトには「時間稼ぎ」をしてもらう。地下闘技場最強の剣士と〝海の掃除屋〟の戦いは見物だしな、そう易々とバレやしないだろう。その隙に海軍が島を包囲し、ネズミ一匹逃さない状況にする」
《……それがいいな。クザン中将が同行してくれたし、あとでボルサリーノ中将も合流する予定だからな》
「マジでか……!? 余計すげェ事になるな……モモンガに加え、クザンやボルサリーノまで来るのなら、こっちには怖いもの無しだな。ましてやここは〝
テゾーロ&スライス組の戦力は、相当なものである。
テゾーロとスライスは〝覇王色〟の覚醒者。タタラは「地下闘技場最強の剣士」、ハヤトは〝海の掃除屋〟と呼ばれ恐れられた程の技量の持ち主。スライス達は知らないが、ジンとサイもその実力は折り紙つきだ。
それに加え、海軍の中将2名に准将1名。さらに「赤の兄弟」も含めれば地下闘技場の鎮圧及び摘発は十分に可能だ。
《ちなみに「赤の兄弟」はどう動くつもりだ?》
「…こいつはおれに連絡したコルトの案だが、騒ぎを起こしてもらう。コルトが寄越した情報によると、ここの警備兵は皆フォードの部下らしい。そこで作戦中にフォードの野郎がこの島で有している
《囮ってわけか……中々の大役だな》
しかし問題はフォードだけじゃない。この島にたむろっている無法者連中が、皆フォードの味方についたら作戦に支障が生じる。
ゆえに、スライスは「赤の兄弟」に加えて「フォード拘束組」と「闘技場鎮圧組」に分けて作戦を決行するという。
《成程…やるべき
《あ、すいません。代わってくれませんか?》
《? 別にいいが……》
「……?」
電話越しから聞こえる男の声。
テゾーロの部下であろうが、正体不明の人物だ。もっとも、彼の部下なのでそれなりの信頼はあるだろうが。
「誰だ?」
《サイファーポールの諜報員のサイと申します。今はテゾーロ財団とのパイプ役も兼ねてます》
「!? サイファーポール、だと……!?」
まさかの人物に、目を見開き驚きを隠せないスライス。さすがの彼も、テゾーロがサイファーポールとつながっていた事は想定の範囲外だったようだ。
(何つー奴だ、テゾーロめ……サイファーポールにまで手が回ってたか……!!)
《スライスさん、私に一つ考えがあります》
「?」
《恐らく、地下闘技場で苦しんでる者達は「赤の兄弟」だけではないはず。できる限り協力者を集めてほしいのです……その上で、集まった協力者全員に黒いスーツを着せてほしいのです》
サイの提案に、思わず首を傾げるスライス。
提案の内容自体は別に難しいモノではない。ただ、それをする意味がわからないのだ。
「スライス、別にそこまで拘る必要は無いだろう」
ハヤトはそう告げるが、スライスは首を横に振る。
「念には念を」…何事も用心に越したことはない。実業家であるスライスはそれをよく理解している。
「わかった、力は尽くそう」
《ありがとうございます、では代わりますね》
サイがそう言うと、再びテゾーロが声をかける。
《っつーことだが、これでいい感じだな》
「ああ……後はそれぞれ分担して配置、準備を整えて決行するのみだ」
《じゃあ……今からそっちにサイを向かわせる。「赤の兄弟」の方と合流させたい……別にフォードはおれ達とてめェでどうにかなるし、闘技場鎮圧組は海軍に任せりゃいいだろう》
「そうだな……よし、これで大体の作戦は伝えた。それぞれ臨機応変に対応し、作戦の成功に尽力しよう。武運を祈る!!」
今ここに、「テゾーロ財団」「スタンダード・スライス」「海軍」「赤の兄弟」の四勢力による〝地下闘技場摘発作戦〟が始まろうとしていた。
ちなみにサイの提案、作戦において意外な効果を発揮するのでお楽しみに。