ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
そういえばワンピースのカタクリの声、銀さんでおなじみの杉田智和さんでしたね。
実は前々から「カタクリが似合う声優さんは、杉田さんだろうな」って思っていたんですが…マジでした。びっくりです、ホント。
さて、ここはロワイヤル島。
手を組んで捜査を始めたスライスとハヤトは、裏路地にいた。
この島の裏路地は、絵に描いたような無法者の巣窟で治安も悪い。それに加えギャングやテロリスト、海賊の隠れ家も多く、抗争も時々ある。犯罪者の多い典型的な危険区域といえばいいだろう。
「……臭う」
「フッフフ……さすがにわかるか、〝海の掃除屋〟さんは」
太陽の光が一切差し込まぬこの裏路地には、悪い意味で色んな人々が目につく。
空気どころか臭いさえも危ういだろう。
「正真正銘の殺し合いをする地下闘技場……あそこには潰したい相手がいる」
「潰したい相手……?」
「名はアルベルト・フォード。色々と黒い噂が多い大物だ」
スライスがそう呟いた時、突如二人の前に屈強なスーツ姿の男達が現れた。
この島で根を張るマフィアと感じたハヤトは背中に背負った大太刀に手を伸ばし、スライスは覇気を放った。
一触即発の空気になるが……。
「やめろ。彼らは客人だ」
男性の声に、スーツ姿の男達は整列し道を開けた。
声の主は、何とスライスの標的たるアルベルト・フォード本人だった。
「こんにちは、
「……こりゃあ失礼。覇気を放ったのはマズかったか?」
「構わんさ、非があるのは我々だ。許してくれ」
自らの非を認めるフォードに、スライスは笑顔で「気にしないで」と声を掛ける。
「そちらの剣士は?」
「おれの連れだ、一緒に来ても問題ねェだろ?」
「……ハヤトです」
「御友人を連れて、か。わかった、では来るといい……私が主催する大会がちょうど行われているからな」
「「大会……?」」
フォードは首を傾げる二人を、建物の奥へと誘った。
建物の奥へ奥へと進んでいく内に、次第に賑わいが耳に届いてきた。
怒号のような歓声と、仄かに漂う血の臭い……。
目が鋭く細まり、ようやく見えてきた光の先の光景に、二人は息を呑んだ。
「ここで行われてるのは、正真正銘の殺し合いだよ……人間というモノは「娯楽」を求め続ける生き物だ。それの行き着く先が〝命を懸けた行為〟なのだよ」
「それの真髄が、この闘技場だと?」
「察しがいいですな、スタンダード家の当主は伊達ではない様子で」
「生まれはいい人間なんで」
スライスとの会話を楽しむフォード。
そんな中、ハヤトは口を開いた。
「これ……法律的に大丈夫なんですか?」
「心配するな、ハヤト君……この地下闘技場は寧ろ役人だから手が出せんのさ。見たまえ」
フォードはある方向を指差す。
その先には、礼服や民族衣装を着た人々がチケットを握って興奮していた。
「アレは……」
「各国の王侯貴族だよ……それも政府加盟国だ。いくら海軍とて、そう易々と首を突っ込めまい」
政府加盟国の要人達が楽しみに来ているからこそ、この闘技場は潰れないと豪語するフォード。
しかし、その直後に彼は一気に不機嫌そうな表情になった。
「だが……愚かにも私を潰そうとしている若造と出会ってね。全くもって気に入らん」
「若造?」
「ギルド・テゾーロ……最近勢いのある若い実業家だ。何を血迷ったのか、この私と全面衝突する気のようだ」
(何か取り返しのつかない事になってるーーっ!?)
聞き慣れた名前に、凍りつく二人。
テゾーロがフォードとの全面衝突を狙っている事を初めて知り、思わず顔を引きつらせた。
「まァ、そんな事はどうでもいい…お、そろそろだな。この大会の目玉選手だ」
すると闘技場に、仕込み杖を携えた着流し姿の男が現れる。
彼の登場と共に、観客は最高に盛り上がった。
「この地下闘技場において最強の剣士・タタラ……三つ目族の青年よ」
「アレが三つ目族……!!」
「本物は初めてだな……」
感嘆とするハヤトとスライス。
額に第三の目を持つ三つ目族は、世界でも希少な人種だ。その希少性は〝
「――ん? ……三つ目族なのに、目が見えないのか? 傷で本来の目が潰れているじゃないか」
「いや……額の目は無傷だ。まァ、ある意味で隻眼だな」
フォードがそう言うと、試合開始のゴングが鳴った。
タタラとガラの悪そうな男が、対決する。
「彼は強いぞ……あれくらい強ければ、海軍の幹部も夢ではあるまい」
「そんなに強いのか……?」
「私の知る限りではね」
ズバッ!!
「「!!」」
場内に響く、刀で肉を斬った音。
そこには、血塗れで倒れ伏す男と仕込み杖を鞘に収めるタタラの姿が。
「たった一太刀で……!!」
「あいつァ相当の手練れだな……あれ程の技量なら、新世界でも通じるんじゃないか? ウチのコルトを越えそうだ」
タタラの剣技に驚くハヤトと、その技量に感心するスライス。
地下闘技場においてとはいえ、最強とされるその実力は伊達ではないようだ。
(地下闘技場最強の剣士・タタラか……奴を探りゃあ、何か出てくるか?)
スライスは、タタラとの接触を試みることに決めたのだった。
*
一方、テゾーロは海軍の軍艦の甲板でクザンと日光浴中だった。
「クザン中将……」
「ん?」
「同僚の中で協力してくれる方、いました?」
「あ~……一人だけな」
「誰ですか?」
「ボルサリーノ」
「へ~……って、え!? あの人協力してくれるんで!?」
びっくりして飛び起きるテゾーロ。
ボルサリーノと言えば、自分の体を自在に光と化す事ができる〝ピカピカの実〟の能力者にして、後の海軍大将〝黄猿〟だ。飄々として掴み所がない性格だが軍務には忠実な実行力のある人物とはいえ、まさか手を貸してくれるとは。
あまりにも意外である。
「まさか、あの組長が……」
「おい、組長言うな。
テゾーロの呟きにツッコミを炸裂させるクザン。
「しかし……まさかのボルサリーノ組長ですか。サカズキ中将かと思いましたよ」
「だから組長じゃねェっての。……サカズキは今、新世界の巡回任務にあたってる。あいつが無理ならボルサリーノにって思ってな。まァ、話に乗ってくれたのはありがたかったがよ」
「ガープ中将は?」
「……あの人が承諾すると思うか?」
「あっ……ですよね……」
何となく察したテゾーロ。
あの自由人がこういう面倒事を引き取ろうとは思えないのだ。
「まァ、一応遅れるたァいえロワイヤル島に来るらしいからよ。合流してから本格的に動こうや……」
「……そうですね。あ、そういえばクザン中将……そんなこと言ってますけどちゃんと仕事やってます? 放任主義だからって、やるべきことやらないと嫌われますよ。海軍という一大組織の幹部なら尚更……」
「グーッ……」
「……」
――絶対サボってるな、この氷結野郎。
額に青筋を浮かべ、熟睡中のクザンをボコりたいと思ったテゾーロであった。