ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第47話〝モモちゃん〟

 3日後。

 ここはロワイヤル島。裏の社交場である地下闘技場がある島で、様々な人種の者達が訪れる「娯楽の島」だ。

 そんなロワイヤル島に、海軍の軍艦が停泊していた。港では、その軍艦(ふね)の持ち主が港を取り仕切る者達と話し合っていた。

「私は海軍本部准将モモンガ!! この島の警備に来た。この島の近海で海賊が横行しているため、暫くの間停泊する」

 軍艦の持ち主は、モモンガだ。

「……海兵さんよォ、確かにこの島にゃあ海賊の横行は目撃されてる。だがその多くはこの島の自警団が片ァつけてくれてるぜ。あんたらの出る幕じゃねェぞ」

「だろうな…だがこの島に出入りする人々の身の安全を踏まえれば、我々「海軍本部」の介入も必要ではないのか? この島の自警団だけで責任を取れない案件もあるはずだ」

「成程ね…まァ、正論っちゃ正論だな。野郎共、停泊許可の書類を用意しろ。上にはおれが報告する」

 港を取り仕切る者達のボスが部下に命じる。

「……実直に任務こなしてるだけあるね、こういうのもお得意さんってか?」

「海兵は強ければいいだけではない」

 軍艦から飛び降りたのは、スライスだ。

 どうやら仲良く地下闘技場に潜入しようと考えているようだ。

「〝偉大なる航路(グランドライン)〟前半の「裏の社交場」ロワイヤル島…見た感じは何の変哲も無いってとこか」

「……お前はどう動くつもりだ」

「テゾーロの奴が嗅ぎ回ってるのは、相手もわかってるだろう……だがおれがあいつと同時並行で潰しに来てるのは想定外のはずだ。それに招待状もある。客人として振る舞えば怪しまれやしねェさ」

 つまり、嗅ぎ回ってるテゾーロを囮としてスライスが陰で暗躍し〝証拠〟を得ようとしているのだ。動かぬ証拠を得られれば、法廷で「悪い方の忖度」を封じることができると考えたのだ。

「フォードを潰すために必要な証拠は写真と供述、それと筆跡か……ウチも法には詳しい立場だからな、易々と逃がしゃしねェ。これといった恨みはねェが、今後の世界の為だ」

 スライスは不敵な笑みを浮かべる。

「……貴様も存外非情な一面があるんだな、スライス。いつもは飄々とした食えん輩だろう」

「おれだって決めるときゃあ決めるよ? モモちゃん」

「誰がモモちゃんだ」

 青筋を浮かべてスライスを睨むモモンガ。

「後はおれに任せな。全て片がついたら、そっから先はお前の仕事なんだし」

「……武運を祈る」

 

 

           *

 

 

 一方、マリージョアから帰還したテゾーロは、シャボンディ諸島のとある酒場でクザンと一対一(サシ)で飲んでいた。

「飲むかい?」

「シェリー酒……ですか。そう言えばクザン中将の恩師が好んで飲んでたって話を聞いたことがあります」

「あァ……ゼファー先生がな」

 クザンの恩師である元海軍本部大将〝黒腕のゼファー〟は、シェリー酒を好んで飲んでいた。クザン自身も、ゼファーのマネをしてシェリー酒をよく飲んでいたと語る。

「……何か用ですか」

「ああ、忠告をしにな」

「忠告……?」

 クザンはいつものだらけきった様子ではなく、真剣な表情でテゾーロを見据えた。

「スライスはお前の知り合いだろ? あいつもフォードを潰しに早速動き出した」

「スライスが……!?」

 ビジネスパートナーのスライスが、テゾーロと同じようにフォードを潰そうと活動している。つまり、彼もまたテゾーロと同じように「裏の事情」を知っており、これ以上フォードに好き勝手させないように引きずり降ろそうとしているということだ。

「スライスも動いてるってこたァ……もう止まらねェぞ? ここで引いたら相手(フォード)が反撃してテゾーロ財団(おまえら)を必ず潰しにかかる……そう考えれば、思い切って突っ走った方が得策だ」

「……」

 確かに、ここまで首を突っ込んでしまった以上は躊躇うと危険だ。

 クザンの言う通り、一歩も引かずにやり遂げた方がリスクも少ないだろう。

「この件についちゃあ、海軍(ウチら)だとおれとモモンガしか知らねェ。お前としても思いの外やりやすいだろう…だがフォードは天竜人と繋がってる。当然天竜人直属の連中にもな。気をつけねェと足すくわれるぞ」

 そう言って、グラスに注いだシェリー酒を呷るクザン。

 テゾーロもまた、グラスに注いだシェリー酒を呷る。

「……海軍はフォードの件をどこまで把握しているんですか?」

「天竜人と繋がってることや地下闘技場の件まで、おおよそは知っている」

「じゃあ、世界の実権を握ろうと企んでいる可能性があることも?」

「何っ……!?」

 さすがのクザンも、これには驚く。

 世界の実権を握る……それはつまり、世界政府及び天竜人に代わって世界を支配しようということである。

「詳しいことはわかりませんが、現に今マリージョアで天竜人同士が対立する事があるそうです。それもここ最近……フォードが天竜人と繋がり始めてからとのことです」

「マジか……いよいよもってヤバイ状況になったってか……」

 頭を掻きながら、クザンは溜め息を吐く。

 テゾーロの言っていることは、本当にそうであるかもしれない。フォードの危険性は海軍上層部もある程度は把握しているつもりだったが、事態は海軍の想像よりも大きくなってしまっているようだ。

「でもセンゴク大将やコング元帥に知られてはマズイでしょう? 中間管理職は融通が利かないでしょうし」

「まァ……自由に動けるのは中将ぐらいだしな」

 海軍大将及び元帥は、海軍の指揮を執ると同時に天竜人に振り回されたり世界的事件の後始末をしたりなど、どちらかというと中間管理職と化してしまう。フォードの件を報告してしまえば、五老星を筆頭とした世界政府の中枢が圧力をかけてもみ消してしまうかもしれないのだ。

 言い換えれば、独断で自由に動ける中将の方が都合がいいのだ。

「……まァ~、そういうこった。一応おれも協力する。だが相手が相手だ、何を仕掛けてくるかわからねェから同僚にも声かけとくわ」

「! いいのですか?」

「モモンガだけじゃ手に負えねェだろ」

 クザンはそう言って立ち上がる。

「ある程度の戦闘員ぐらい用意しとけよ。地下闘技場には海千山千の強者が多いからな」

 クザンは手を振りながら酒場から出て行った。

 そしてテゾーロは、ふと気づいた。

「……アレ? おれが全部払うの?」

 テゾーロは暫く黙ってから、溜め息を吐いた。

 ――自分が飲んだ分くらい、自分で払えや。

 テゾーロはそう思いながら、シェリー酒を追加注文したのだった。


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