ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
という事で、新年初投稿はこんな感じです。
ウォーターセブン。
ステラと依頼主であるジンと共に情報収集にあたるテゾーロだが、有力な情報はシャボンディ諸島で出会った男性以外は無い状況である。
「いい情報が無いな」
「闇の方だからねェ……見つかるわけにはいかねェさ」
これからどう行動しようかと考えたその時だった。
「よっ、お勤めご苦労さん」
「!! これはこれは、クザン中将」
テゾーロ達の前に、クザンが現れた。
部下はいないようで、どうやら私用で会いに来たようだ。
「巡回任務ですか?」
「いや……私用だよ。お前らに用があってな」
「我々に?」
「お前ら……地下闘技場のことを調べてんだろ?」
「「「!!」」」
クザンの口から出たのは、意外な単語。
何とテゾーロ達が地下闘技場について嗅ぎ回っているのを知っていたようだ。
「スタンダード・スライス……お前の知り合いだろ? そいつが
クザンはそう言いながらテゾーロに近づき、肩を叩いた。
「いいモン見せてやるよ、おれもお前らと似た目的がある」
ここはウォーターセブンのあるレストラン。
そこでクザンは、テゾーロ達に対しある男の資料を見せていた。
その男は、全身茶色スーツで紺色のワイシャツと赤い色のネクタイを着用し、髪型は真ん中分けで顔は片目に傷がある強面だった。
葉巻を咥えており、愛煙家でもあることが窺える。
「この人物は……?」
「アルベルト・フォード……おれが親友と共に長年追っていた
アルベルト・フォード――〝造船王〟と呼ばれ、新世界に「フォード造船所」というウォーターセブンよりも遥かに大きな造船所を所有している大富豪だ。
表では海軍の軍艦の建造などを受け持って財を成しているが、その裏では造船業の一線を越えた商売を行っているという。
「フォードが地下闘技場の運営者なんだけどよ……造船業の一線を越えた商売って聞いて、何か思い浮かばねェ?」
「造船業の一線……?」
「一線を越える商売はロクじゃない……
「まァ……当たりっちゃあ当たりだ」
造船業においては、造った船を海賊に売ったとしてもそれは罪ではない。しかし何事にも越えてはいけない一線というモノが存在する。
例えば、造船業においては船自体は提供してもいいが「造船に伴う武器の提供」は禁止とされている。その理由は闇のビジネス――〝武器の密売〟と見なされるからだ。
世界の法としては、軍事バランスの均衡を保つ為にも軍需産業は政府が厳しく取り締まっている。海賊や犯罪者、反政府組織が不当な利益を得て勢力を拡大してしまっては大ごとになる。
「実を言うとフォードは武器商人でもあってな…自分達が造った武器を海賊に売り飛ばしてるらしい。その上奴は地下闘技場を利用して天竜人とパイプつないじゃってんのよ」
するとテゾーロは、ブツブツと呟き始めた。
「地下闘技場の運営、武器商人、天竜人……天竜人と癒着関係になれば、自身の財力と天竜人の権力で商売敵を潰せるな……」
その直後、テゾーロはフォードの真の目的を察し冷や汗を流した。
「まさか、フォードの目的は「軍事バランスの掌握」か……!?」
「さすがだね、実業家やってるだけあるじゃあないの」
海賊やマフィア、テロリストをはじめとした反社会的組織または反政府組織、戦争をしている国々、紛争当事国に武器を売りつけているのだ。武器の供給を絶てば、戦況を大きく動かせる。しかも船を武器ごと売ってるとなれば、その船は戦艦として使用される。
つまり、フォードの商売は戦争を助長させる〝死の商人〟なのだ。〝死の商人〟は武器・兵器を売るので色んな国と深い関係を持っているために、「〝死の商人〟の犯罪行為を暴く=自国の暗部の行為を暴く」という事になってしまうのであまり摘発されない。それをいいことに、様々な戦争の主導権を握り軍事バランスを掌握して世界を支配しようというのだ。
「そんな……明らかに違法じゃないですか……!! クザンさん、海軍は逮捕しないんですか?」
ステラの意見は、まさに正論。
海軍本部中将という重要な立場であるクザンが黙っているという時点でもおかしな話なのだ。だが事の重大さは、ステラが思っている以上に巨大であった。
「
つまり、天竜人がバックにいるせいで手出しできないという訳だ。
ただでさえ天竜人は世界政府最高権力である五老星よりも上の立場……政府中枢すら介入することすら困難なのだ。
「そんでここからが本題なんだけどよ……お前ら、どうするの?」
「どうするって……」
「フォードと天竜人は間違いなく繋がっちゃってんのよ……五老星すら迂闊に手が出せないレベルなんだわ。まァ、「CP-0」なら権限上不可能じゃねェだろうたァ思うが、天竜人の傀儡だから望みはねェ。放っとくわけにゃいかねェけど上からの許可は下りない……テゾーロ、お前はどうする気だ?」
クザンの言葉に、テゾーロは笑みを浮かべて答えた。
「潰しますよ……おれの「作戦」が上手く行けば、何事も無く終わりますから」
その時だった。
店の扉を開けて、テゾーロの側近の一人にしてサイファーポールとのパイプ役であるサイが現れた。どうやらテゾーロから命じられた任務を終えたようだ。
「テゾーロさん、全て調べ終えましたよ」
「おお……戻って来たか、サイ。結果は?」
「実は……調べている最中にあなたに協力したいという天竜人の方と出会いまして。よければ、すぐにでもマリージョアへ」
「……おれに協力したい……?」
事態は、思わぬ方向へ向かっていた。
*
太陽の光が差し込まぬ暗い裏路地。
空気だけじゃなく臭いさえも危うい道には、どう見ても堅気の人間じゃない連中が目につく。
そんな裏路地の奥にある建物の地下奥深くから、怒号のような歓声と共に血の臭いが漂っていた。
ここは地下闘技場……正真正銘の殺し合いで金を儲ける裏の社交場だ。
「てめェを倒せば、おれが最強だ!!」
そう吠える大男の先に立つのは、奇妙な出で立ちの男。
男は着流し姿で首元にマフラーを巻き、ブーツを履いている。三つ目族なのか、額にも目があるが左右の目は大きな傷によって塞がっており、開いているのは額の目のみ……ある意味で隻眼だ。朱色の杖を白杖代わりに突く彼は、一見は戦えるかどうかも怪しく感じるが放たれる気迫は歴戦の強者。
男の名はタタラ――この地下闘技場で最強の実力を誇る剣士だ。
「……最強の座など、興味無い。真の偉大さ、真の強さは経験によって身に付くもの……頂に立つ者だけを倒すのは、運が良かっただけも同然」
「っ!! ナメるなァァァァァ!!」
大男は得物である斧を振るって襲いかかるが……。
ガキィィン!!
刃と刃を叩きつける音が辺りを包み込む。
その瞬間、大男は大量の鮮血を撒き散らし、倒れた。タタラの仕込み杖による強烈かつ超高速の抜刀術に、成す術もなく斬り伏せられたのだ。
大男が地に伏せると、地鳴りのような歓声が沸く。最強の男は、伊達ではない。
(最強の座に君臨しても、日の光を拝めぬ囚人同然の立場であるのは変わらない……)
彼の額の瞳は、どこか虚ろであった。
脳裏に浮かぶは、この
(誰でもいい。海兵でも、海賊でも、民間人でもいい……あの男達を止めてくれ)
杖を突きながら、タタラは拳を血が流れる程強く握り締めたのだった。
オリキャラのタタラは、M Yさんが提供してくれたアイデアを基としてます。
M Yさん、ありがとうございました。