ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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久しぶりの更新です。
申し訳ありません、今月中はあまり更新できないと思います。

あと、セリフが変だったのでジャッジのセリフを訂正しました。


第32話〝一民間人〟

 海軍本部の港に一隻の船が着港した。

 見知らぬ船であったため一時騒然となった本部だったが、それはすぐに収まった。船から降り立ったのは、海軍では知らぬ者は少ないあの男だったからだ。

「アレ? こんなに騒いでどうしたの?」

『お前のせいだよ!!!』

 赤いパーカーを着た男…テゾーロはとぼけたように言うと、その場に居合わせた海兵達からの総ツッコミが炸裂する。

 テゾーロは海軍上層部と交渉・契約し、テゾーロの望みを叶えたことと引き換えに軍資金を提供する海軍のサポーターとなった。よって、海軍本部へ出入りできるのだ。

 勿論、来た理由は献金である。

「あららら、何事かと思えば……」

「お前か、ギルド・テゾーロ」

 そこへ現れたのは、サカズキとクザン。

 海兵達はその姿を見ると、一斉に敬礼をする。

「おや……クザン中将にマダオ中将じゃないですか。あなた方が受取人ですか?」

「誰がマダオじゃ」

「「マグマでダンディなオトコ」、略してマダオですよ。あなた以外に誰がいるんですか?」

 真顔で平然とジョークをかますテゾーロと、フードで隠れて表情はかなり見にくいが微妙に腹を立ててそうなサカズキ。

 そのやり取りを聞いたクザンは今にも吹き出しそうだ。

「マ、マダオ……ぷぷ……!!」

「おどれ、後で覚えちょれよクザン……」

「心配せずとも、クザン中将は「まるでダメなおっさん」の方のマダオですよ」

「ハァ!? 何でおれが!?」

「サボリ癖がとても酷いと聞くので……」

(ちげ)ェって、おれは放任主義なんだよ!!」

「ほう、自分の仕事も放任主義ですか?」

 サボり癖があるクザンには毒を吐くテゾーロ。

 クザンは解せぬと言わんばかりの表情を浮かべている。

「それにしても人騒がせなマネを……」

「直で金届けに来た方が人的な被害が少ないので。特に横領ネタには」

 その時だった。

 白いラインが入った黒スーツの男がテゾーロの元へ駆けつけた。どうやら財団の社員のようだ。

「テゾーロ様、至急お伝えしたいことが!!」

「ん?」

 男はテゾーロに耳打ちする。

 その内容を聞いたテゾーロは、目を見開く。

「モルガンズから?」

「何でも紹介したい方々がいらっしゃると……」

 テゾーロは顎に手を当て考える。

 モルガンズは世界経済新聞社の社長であり、同時に裏社会にも顔を出している。裏社会に顔を出している商人や業者とも繋がっているだろう。

 例えば、寄託を受けて顧客の物品を倉庫などで保管する倉庫業を営むギバーソンは〝隠匿師〟として裏の仕事をこなしているという。何か表に出たらヤバイのを隠す系の仕事だろう。

 葬祭業を営む業者の中でも大手葬儀屋として名を馳せるドラッグ・ピエクロも裏社会での深い関わりもある。亡くなった方の遺体を管理し葬式を始めから終わりまで取り仕切る葬儀屋なら、死体から臓器を抜き出し臓器売買も副業でやって財を成してそうだ。

 そういった面々と邂逅する。テゾーロにとってどういった利益があるかは不明だが、モルガンズが紹介したいのだからかなり「おいしい話」なのだろう。

「じゃあ返事でこう言っといて。「まともな仕事の話で頼む」って」

「はっ!」

 船へと戻る社員をよそに、テゾーロは笑みを浮かべた。

 海軍と契約をして以来、怖いくらいにうまくいっている。彼の障害となる者・恐怖の対象となる者・天敵となる者はどこにも現れていない。

 世界貴族〝天竜人〟は下手に関わらなければいいし、政府上層部も自分を見限り捨てるのを躊躇うだろう。海賊達にはゴルゴルの能力と覇気で返り討ちにすればいい。

 テゾーロの敵は、今はいない。この隙にさらに力を蓄えれば、野望の達成も近くなる。原作通り、〝黄金帝〟と〝新世界の怪物〟の名をもって世界の頂点に立てるだろう。

 そう思い、テゾーロは歓喜していた。しかし彼は気づいていなかった。

 すでにテゾーロを標的とする勢力がいたことに。

 

 

           *

 

 

 とある海。

 何十隻もの巨大な電伝虫の船が群れを成し、互いに連結させながら海を行く「それ」は、強大な武力を有する。

 ここは、かつて〝北の海(ノースブルー)〟を武力で制覇した人殺しの一族〝ヴィンスモーク家〟が治める海遊国家「ジェルマ王国」。その城の一室では、兜を被って尖った長い髭を生やした大男が兵士の報告を聞いていた。

「何? 「テゾーロ財団」だと?」

「はっ、〝偉大なる航路(グランドライン)〟を拠点に活動している商業団体です。総資産額は財団理事長ギルド・テゾーロ氏すら把握しておらず、一民間人としてはかなりの有力者です」

 兵士の言葉に、割れた顎に手を当てる大男。

 男の名は、ヴィンスモーク・ジャッジ。ジェルマ王国の国王であり、科学戦闘部隊「ジェルマ66(ダブルシックス)」の総帥として君臨している男だ。

「テゾーロ財団は巨大な財力を海軍へ献上しており、政府からも一目置かれている存在です」

「一民間人が海軍へ奉仕か……何も考えずにやる行為ではないはずだ、目的は何かわかったか?」

「いえ……つい最近の出来事ゆえ、情報は全て把握しきれてません。ですが世界経済新聞社社長の〝ビッグニュース〟モルガンズ氏と関係があるという情報を得ることには成功しました」

「……そうか。利用価値はありそうだな、暫く泳がせておけ」

 ジャッジはそう判断した。

 テゾーロ財団の目的は不明だが、一癖も二癖もありそうな「闇の世界の帝王達」の一人であるモルガンズとつながりがあることから、裏社会にも首を突っ込む可能性がある。それにテゾーロは今は成長中だ、さらに巨大な力を得させてから脅すなりなんなりで手中に収めればいい。そして彼の力は全てヴィンスモーク家の物にすればいい。

 そう考えた上での判断なのだ。

「ギルド・テゾーロか……奴の情報を全て集めろ!! 奴の財力をもってすれば、ジェルマ王国の復活に少しは役に立つだろう」

「はっ!!」

 部下に沿う命ずるジャッジ。

「……よもや一民間人にすぎぬ小僧に、王族たるこの私が目を付ける事となるとは……所詮私も人の子か。……下らんな」

 ワインを口にしながら、ジャッジはそう呟くのだった。


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