ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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8月最初の投稿です。


第30話〝会談後〟

 テゾーロとの会談が終わり、サカズキ・クザン・ボルサリーノの三人も任務で退出し、元帥室にはコング・センゴク・つるの三人が残った。

「ハァ……全く、厄介な注文をしたモンだ」

 コングは溜め息を吐きながら言う。

 テゾーロの条件は、トムのオーロ・ジャクソン号製造の罪の帳消し・海軍内の自由な出入り・私情及び機密に関する不干渉と依頼不達成の不問である。

 海軍内の出入りの方は想定していたが、まさかあんな条件を出すとは思ってもみなかったようだ。

「まァ、当然と言えば当然だね」

「おつる……」

「そういやあ終始無言だったな、おつるちゃん」

「あたしだって何もただ座ってただけじゃないさ。向こうの態度に目を向けてたに過ぎないけどね」

 つるはどうやらテゾーロの態度に終始目を向けてたようだ。

 それはつまり、何か妙な動きをしたらその瞬間手を出すつもりだった……ということ。テゾーロのゴルゴルの能力に一番警戒していたようだ。

「まァ、あたしとしちゃあ口挟むほどの内容じゃないと思ったがね……」

「おつるちゃん、当然ってのは一体どういうことだ?」

 センゴクの問いに対し、つるは二人に目を配ってから口を開いた。

「いいかい? 相手は商人だ…言わばこいつは「ビジネスの協定」さね。あいつがまだ賞金稼ぎだった頃なら、今と立場が違うから飲んだかもしれないけどね…ビジネスである以上は互いに利益が無ければ無意味。奴があたしらにも通じる妥協案を模索するのは当然だろう? あんな一方的なのを鵜呑みにするかい?」

 つるの指摘に対し、コングとセンゴクは無言で聴く。

「アイツは若いが……世界に影響を与える力を秘めている。もっとも、政府(こっち)の思い通りに動くとは思えないけどね。」

 

 

「あ~あ、疲れた……」

 海軍本部の男性用トイレで用を足すテゾーロは、会談がうまく行ったことに安堵していた。

 さすがのテゾーロも海軍のトップ達を一人で相手取るのはやはり疲れたようだが。

(しっかし向こうも汚いマネするなァ、次期大将の将校を連れて会談に臨むなんて……おれって政府に敵対する意思も海賊になる気は全く無い善人なのに、そんなに信用できないもんなのかなァ……)

 海軍の凄まじい警戒心に呆れるテゾーロ。

 マリンフォード(ホームグラウンド)がそんなに信用できないのかと疑ってしまうレベルだ。世界中の正義の戦力の総本山ともいえるこのマリンフォードで、過去に大騒動を起こすほどのバカがいたのだろうか。

(あ、でも〝金獅子〟の一件があったな)

 そのバカがいたのを思い出したテゾーロ。

 金獅子海賊団大親分として海賊艦隊を率いて大海に君臨し、在りし日の海賊王ロジャーや後の「四皇」である白ひげとしのぎを削った伝説的な大海賊〝金獅子のシキ〟。彼はつい最近海軍本部に殴り込んでマリンフォードを半壊させ、最終的にはセンゴクとガープの前に敗北し、大監獄インペルダウンのLEVEL6――通称〝無間地獄〟――に投獄されたばかりだ。

 「余計なマネをするなよ、金獅子! こちとら緊張で撃沈しそうだったわ!」と一瞬思ったのは秘密だ。

「ってなると……うわ、もしかしてインペルダウンにも関わるってか…」

 テゾーロは顔を引きつらせた。

 世界一の代監獄であるインペルダウンは、稀に脱走者が出る。大抵は後に署長となる〝ドクドクの実〟という猛毒を操る「毒人間」である副署長マゼラン、後の看守長となる凄腕の剣士〝雨のシリュウ〟、間抜け面だが実力は確かな獄卒獣により粛清されているが……相手は人だ、知恵というものが存在する。

 金獅子は2年後に足を斬り落として脱獄し、さらに20年後にはルフィが様々な協力者のおかげで侵入+脱獄を成し遂げている。こういうのを踏まえると、政府から「インペルダウン改装するから金を寄越せ」とか言われそうだ。

(いや、ちょっと待て…政府って財政どうなってんだ…?)

 世界政府の財政…考えてみれば謎である。どこが謎かというと、その財源である。

 たとえば、賞金首を捕まえた時に出される賞金である懸賞金。政府は他の海賊への見せしめとして公開処刑を望むため、引き渡す際にその賞金首が死んでいたら貰える額は3割下がってしまう……のだが、3割下がっても払うことが出来るのかという値の連中がいる。新世界に君臨する大海賊の一味は、幹部でも平気で5億を超え、3割引きでも億超えであるのは変わらない。

 海軍科学班の研究費もである。「世界最大の頭脳を持つ男」と呼ばれるDr.ベガパンクは、頭脳は500年先を行くと言われている。現実世界でいうアインシュタインやニコラ・テスラ、ジョン・フォン・ノイマンのような人間である彼の研究は莫大な金がかかるだろう。後に人間兵器〝パシフィスタ〟を造ったりすることも加味すれば、もっとかかるだろう。

 一体どこからそんな財源があるのだか……全くわからないモノである。

「裏の金でもあるのかねェ……天上金は天竜人専用だし……」

 そんなことをブツブツ言いながら用を足すのを終え、トイレから出る。

すると…。

「何だ? 見ねェ顔だな」

「!」

 紫髪で眼鏡を掛けた男が現れた。

 その姿を見て、テゾーロは固まった。

(こ、ここ〝黒腕のゼファー〟!?)

 「ONE PIECE FILM Z」で登場した伝説の男・ゼファーだった。

 ゼファーは〝武装色の覇気〟の達人であり、ロジャーや白ひげを筆頭とした伝説級の面々と拳一つで渡り合った生ける伝説だ。揺るぎない信念と正義感には多くの人々の心を掴んだ、「ONE PIECE」でもカッコイイ生き方をした漢の中の漢だ。

 どうやら原作の展開通り、海軍本部教官を務めているようだ。

「は、初めまして。 私はこの度海軍本部と契約した、テゾーロ財団のギルド・テゾーロと申します……」

「成程、お前が政府から一目置かれた商人か?」

「ええ、まァ……」

 鋭い目付きでテゾーロを見据えるゼファー。

「ま、まァこれから仲良くしましょうよ。おれだって別にあなた達と事を構える気は無いですし」

「だろうな、マリンフォードで暴れようとするバカなんざいねェだろう」

「でも金獅子は暴れましたよね」

「………」

 沈黙の到来。

 テゾーロは内心「地雷踏んだ…!?」と慌てるが、ゼファーは豪快に笑い飛ばした。

「フハハハハハ!! まァ、あいつはそういう(バカ)だからな!!」

「豪快な方が多いようですね、あなた方の世代は……」

 豪快に笑うゼファーを見て、呆れたように笑うテゾーロ。

 その時、ゼファーの後方から一人の将校が現れる。

「ゼファー先生、次の訓練のお時間が……」

「ん? もうそんな時間か……じゃあな坊主、期待してるぞ!!」

 ゼファーはコートの中から袋を取り出し、その中に入っていた昆布を咥えて去っていった。

 そしてテゾーロは廊下で一人っきりになってから呟いた。

「……どういう意味で期待してるんだ? あの人……」




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