ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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久しぶりですね。
随分待たせてしまい、申し訳ございやせん。


第24話〝小さな商談〟

 ついに伝説の副船長シルバーズ・レイリーを買収……ではなくてレイリーと接触して残りの覇気――〝見聞色〟と〝覇王色〟――を習うことになったテゾーロ。

(これでルフィが原作通りレイリーに師事したら、おれは事実上の兄弟子だな)

 そんなことを考え、思わず笑みを零す。

 ちなみに財団の方は電伝虫による通信で指示しているので問題は無い。

「〝武装色〟については問題はないだろう……鍛錬を続ければ新世界の大物達と互角に渡り合える」

 そういう訳で、現在レイリーから指導を受けるテゾーロ。

 副船長として長く伝説(ロジャー)を支えただけあり、指導者としてはかなり優秀であるのが彼の口調から窺える。

 ――わかりやすいったらありゃしない。教員に向いてるな~、この人。

 テゾーロは内心そう思った。

「〝見聞色〟と〝覇王色〟は、基礎は叩き込んでやるつもりだ。だが大体の人間は得手不得手によって「得意な色」に力は片寄る。それを見極めて自分の「得意な色」の覇気を伸ばすことを重点とする。強化すれば、できることの幅が広がる」

 するとレイリーは、布をテゾーロの目に巻き付けた。

「これでよし」

「! これは……目隠しですか」

「うむ。暫くはこうして修行だ……感覚の能力を超えるスピードは捉えられんからな」

 耳は音、目は光を感じる器官だ。

 例えば音速を超えるライフルの銃弾は、銃声が聞こえたときには自分の体に当たっている。光の速度で動く敵がいたとすれば、目で見えたときにはすでに攻撃されている。そういうことだ。

 かつてレイリーは、海軍将校でも最高クラスの実力を有している〝ピカピカの実〟の光人間・〝黄猿〟ことボルサリーノ中将のような後の最高戦力「三大将」と互角以上に渡り合ったこともある。それは肉眼で捉えたのではなく、〝見聞色〟の覇気で捉えたのだ。

「まずは〝見聞色〟をメインに修行するぞ」

「了解」

 するとレイリーは木の棒を手にし、覇気を纏わせた。

「早速始めよう。私の攻撃を躱してみるんだぞ」

「はい」

「行くぞ!」

 

 ドゴッ!!

 

「ふごォ!?」

 

 チュドォォン!!

 

「……」

 レイリーの、いきなりフルスイングが炸裂。

「……い……いきなりフルスイング(それ)は……」

「すまん……今のは私に非があった」

 

 

           *

 

 

「くっそ、顔(いて)ェ……」

 先程の修行の折、あまりの速さに付いて来れなかったテゾーロは顔面でモロに食らうこととなり、その衝撃でヤルキマン・マングローブに激突してしまった。現在ヒリヒリする顔を抑えながらシャボンディの街を歩いている。

「しっかし、よくこの程度で済んだな……」

 未だにズキズキと痛む顔を押さえながら歩く。

 あれ程の強力な打撃を食らい巨木に激突しても重傷って程でないのは、さすが「ONE(ワン) PIECE(ピース)」の世界である。

「そういえば、そろそろ政府とパイプぐらい持つべきだよな……」

 テゾーロの野望には必要不可欠な「パイプとコネ」。だが、相手を慎重に選ばねば厄介事に巻き込まれかねないのは必定だ。

 世界に対する大きな影響力を持ち、それでいて確実な情報と権力を得られる存在と手を結ぶ。それこそがテゾーロの理想だ。現実世界における某野党や某大手新聞社のようなレッテル貼りとか平気でする奴らとは関係持ちたくはないのである。

「お、〝世経〟じゃん」

 ふと気づけば、かの「世界経済新聞社」のシャボンディ諸島支部の前にいた。

 闇の世界の帝王達の一人である〝ビッグニュース〟モルガンズ氏が発刊する「世界経済新聞」……略して世経は、絵物語「海の戦士ソラ」も扱っている。

 海軍の英雄達――ガープやセンゴク達を含むのかは不明だが――の実話を基に作られた物語らしいので、世界政府とも強力なパイプを持っているだろう。情報を制す者が戦いを制すともいうので、モルガンズとの接触も重要であろう。

「……そういやあこれって本になってねェな」

 この世界には、「うそつきノーランド」という絵本がある。400年前に実在した探検家モンブラン・ノーランドと〝偉大なる航路(グランドライン)〟のジャヤをモデルに描いており、内容は概ね史実に沿っている。結末は実際と違うが。

 ふと、ある考えが頭を過った。

(そういやあ……この世界って印税とかあるのかな?)

 印税……それは、出版物や楽曲など著作物の著作者に対し、著作物の売り上げに応じて出版社やレコード会社などの版元が著作者に対して支払う対価のこと。本の場合、初版発行部数分の印税を受け取り、増刷するごとに増刷分の印税を出版権を許諾した出版社から受け取る事になる。

 「海の戦士ソラ」の物語は世界中にファンがいるので、文庫本とかで欲しがる人ぐらいいてもおかしくはないだろう。

(……新聞掲載なんだろ? ってこたァ、社長(テッペン)にアポ取って交渉すりゃ結構な収穫となるかもな。うまくいけば巨大なコネを得られるぞ……)

 テゾーロは早速、モルガンズに問い合わせるべく新聞社に殴り込みをかけた。

「頼もーー!!」

「な、何ですかあなたは!?」

 道場破りのようなノリで新聞社に殴り込むテゾーロ。

 すると、その姿を見た社員の一人が目を見開いて驚愕した。

「ん……!? もしや、あなたはギルド・テゾーロ!?」

「!」

 テゾーロの名を口にした社員達は大騒ぎになる。

 いつの間にか世界的大手報道機関にも認知される程の有名人でしたか、おれ。

「社長殿に商談がありまして。電伝虫つながりますか?」

「しゃ、社長ですか? 少々お待ちを……!」

 社員の一人は慌てて奥の部屋へと向かう。社長(モルガンズ)直通の電伝虫でも取りに向かったんだろう。

 すると――

「テゾーロ殿、お待たせしました!」

(早くね!? 1分経ってねェぞ!?)

 1分も経たぬうちに電話が繋がったようだ。

 さすが大手新聞社だ、とテゾーロは感心しつつ受話器を手にし、早速モルガンズと言葉を交わす。

「もしもし……私はテゾーロ財団のギルド・テゾーロと申します」

《ほう! あのモックタウンの事件で一躍時の人となったテゾーロ氏か!?》

 モルガンズもご存じであるようだ。もっとも新聞社だから当然であるが。

「実は商談がありまして……お時間があれば世界経済新聞社・シャボンディ諸島支部にて会談させてもらいたいのです」

《商談?》

「ええ……「海の戦士ソラ」の書籍化についてです」

《!?》

 この商談が、後に世界政府や海軍との交渉で大いに役に立つことになるとは、彼自身知る由もなかった。


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