ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第23話〝引退直後〟

 へそくりの一部を贈賄……ではなく献金することを条件にレイリーから覇気を指南してもらうこととなったテゾーロ。

 最初にやることは、まさかの模擬戦だった。

「君は確か〝武装色〟は会得したと言ったな……ではまず、私と手合わせをして確かめるとしよう」

「それは光栄なことで……とはいえ、おれは能力者ですよ? バリバリに使ってもよろしいので?」

「ああ、構わんとも」

 するとテゾーロは、〝ゴルゴルの実〟の能力を発動させ黄金の刀を生み出した。

 それを見たレイリーは目を見開くと共に笑みを浮かべる。

「剣で挑むのかね?」

「……せっかくですので、剣技も指南してもらおうかと」

 するとレイリーは腰に差していた剣を抜き、その切っ先をテゾーロに向けた。

「では行くぞ!」

 そういうや否や、レイリーはテゾーロに急接近し、剣を振るった。

 テゾーロは一瞬で懐まで潜り込まれたが、刀を持ち替え何とか防ぐ。

「やるじゃないか、今の反応は大したものだ」

 レイリーは嬉しそうに微笑むが、テゾーロ自身は一切余裕が無かった。

(ふざけやがって……!! たった一太刀……たった一撃受け止めただけで、全身に込めていた力がごっそり削り落とされたような気分だ……!! これが()退()()()()〝冥王〟シルバーズ・レイリー……桁外れなんてレベルじゃねェ、次元が違う!!!)

 テゾーロの目の前にいるのは、引退直後のレイリー……つまり、全盛期をちょっと過ぎた頃である。

 原作開始時は76歳だったが、今は大海賊時代開幕寸前……54歳の頃のレイリーだ。ただでさえ76歳の時点で素手で海王類を殴り倒し海軍大将(きザル)を足止めする程の技量を持っているのだ。全盛期を過ぎて間もない頃など、想像を絶するだろう。

「どうしたテゾーロ君、もう終わりかね?」

「なァに言ってんですか……若い芽がこんな所で枯れっこねェさ……!! おおおお!!」

 テゾーロは強引にレイリーを押し返すが、レイリーはすぐさま体勢を立て直し、剣を振るう。

 テゾーロも黄金の刀を持ち替えたりして防いでいるが、レイリーの速さに付いて行くのがやっとで反撃ができない。

「はっ!」

 

 ギィン! バキャアッ!!

 

「っ!!」

 レイリーが渾身の一突きを繰り出した。

 その衝撃は凄まじく、〝武装色〟の覇気も纏っていたためかテゾーロの得物の刃が砕けた。

 

 チャキッ……

 

「チェックメイトだ、テゾーロ君」

 剣の刃先を突きつけられるテゾーロ。

 しかしテゾーロは、笑みを浮かべる。

「……いや、まだ続きますよ!」

 

 バチバチッ!

 

「!?」

 テゾーロの黄金の指輪から火花が散ると、砕け散った黄金が無数の小さなナイフになりレイリーに向かった。

 しかしそこは冥王レイリー……瞬時にそれを躱す。

「これは驚いた…黄金を砕いても、その破片で応戦するとは」

「っ……今のはイケた気がしたけどなァ……」

「どうする? 続きをしても構わんが――」

「もう十分です……このまま続けても、今のままじゃあ勝てませんよ……」

 億越えの賞金首をも容易く仕留められる程の技量を持つ今のテゾーロでも、さすがに冥王には及ばなかった。

 これが、力の差というものである。

「ガハハハハ!! まだまだだな!!」

「大丈夫?」

 二人の手合いを見ていたギャバンは爆笑し、ステラは心配そうにテゾーロを見ている。

 そんな中、シャクヤクがレイリーのそばに現れ尋ねた。

「どうだったレイさん?」

「まだ熟してはいないが……強い。あの子はその内、今よりも遥かに大きくなるぞ」

 レイリーはヘトヘトになったテゾーロを見ながら微笑むのだった。

 

 

           *

 

 

 海軍本部――

 海軍大将を務めるセンゴクは、書類に目を通していた。

 書類に記載されているのは、テゾーロについての様々な情報だ。

「やはり……見過ごすわけにはいかんか……」

 クザンからの報告以来、テゾーロの件は度々耳にしてきたセンゴク。

 モックタウンでの一件からその名が世界的に知れ渡り、億越えの賞金首を仕留める腕っ節を持ちながら海賊稼業に手を染めない彼に対する評価も高い。

 だが、彼の悪魔の実の能力が問題だった。

(〝ゴルゴルの実〟……黄金を生み、自在に操る能力……)

 テゾーロの〝ゴルゴルの実〟は、強大な影響力を持つ可能性が高かったからだ。

 例えば、かの海賊王ロジャーと唯一互角に渡り合った〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートは、震動を操る〝グラグラの実〟の能力者。地震を起こし、島一つをあっさり沈めることが可能な大津波を誘発させ、島を丸ごと傾かせるという規格外の破壊力を誇り、「世界を滅ぼす力」とまで称されている。女海賊の頂点とも言える〝ビッグ・マム〟シャーロット・リンリンは、人から寿命を取り出し、無機物に命を与える〝ソルソルの実〟の能力者。擬人化を起こすことも可能で、太陽と雷雲を従えた彼女は天候をも自在に操る。

 海軍ではサカズキやクザン、ボルサリーノらが自然(ロギア)系の能力者であるため、戦闘においては外界に対して強い影響を与える。

 だがテゾーロは、それらとは少し違う。テゾーロのゴルゴルの能力によって与えられる影響は、「人間の欲望を膨張させること」だ。

 金に執着する者は世界中にいる。海軍にもいるくらいだ。テゾーロはその「金の力」を操り、その気になれば世界経済を牛耳れるだろう。そして金に目を眩んだ有力者達すら懐柔させるだろう。

(テゾーロは…奴は政府に盾突くようなマネはせんだろう。だが〝五老星〟以上の権力(ちから)を手に入れかねんな…)

 世界政府の最高権力者は五老星だが、その上には彼らを上回る者がいる。

 天竜人は絶対的存在であるが、その権威を最たるものが五老星だ。しかし()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、センゴク自身も詳しくはないため、実際のところは不明だ。

 いずれにしろ、大抵の天竜人は人間の欲深さをこれでもかという程に表面化しているため、金についても強く執着している。黄金を操るテゾーロの能力は、下手すれば天竜人すら懐柔させ世界政府をひっくり返しかねないのだ。

「いつの世も、金は力なり……か」

 好物のおかきを頬張りながら、センゴクは書類をデスクへしまうのだった。


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