ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
翌日。
「ステラ!!」
バンッと思いっ切りドアを開け、慌てて駆けつけるテゾーロ。
彼がこんなに焦っているのは、察しているだろうが海賊王ロジャーの逮捕である。
「ロジャーが捕まったのは本当なのか!!?」
「ええ…私も驚いたわ……」
ステラはテゾーロに例の新聞を渡す。
「ところで、テゾーロ……あなた、トロフィーはともかく
「……優勝賞品だ」
ステラの目に映るのは、テゾーロの首に掛けてある紅色の羽毛のストール。どうやらサン・ファルドのダンス大会の景品で、しかもテゾーロは初デビューで優勝した様だ。
世界一のエンターテイナーを目指してるだけはあるようだ。
(海賊王は自首したはずだから……政府の
「ロジャーの奴、やっぱ自首したんだな……」
「「!!」」
ラム酒を飲みながら、ギャバンが現れた。
笑みを浮かべているが、その顔はどこか哀しそうである。
「……哀しいですか?」
「さァな。だがロジャーは、てめェらしい人生を生きて満足だろうよ……」
暫くの沈黙。
静寂が部屋を包み、テゾーロとステラは何も言えなくなる。しかしその沈黙を破ったのは、ギャバンだった。
「少し…頼みがある」
「何ですか?」
「シャボンディ諸島へ行きたい。レイリーと少し飲みたくてな……」
「「!!」」
その言葉に、テゾーロとステラは目を見開く。
レイリーと言えば、様々な文献に載っている〝冥王〟シルバーズ・レイリーのこと。ロジャー海賊団副船長として活躍し、海賊王ロジャーの生涯の相棒とも言える人物である。
どうやら彼はロジャー海賊団はシャボンディ諸島に移り住んだらしい。仲間であったギャバンが言うのだから真実であろう。
「ロジャーの処刑は近いだろうよ……だからレイリーと最後に語りてェのさ。お前も会ってみたいだろう? テゾーロ」
ギャバンの言葉に、テゾーロは眉間に皺を寄せる。
シャボンディ諸島は、〝
今では順風満帆な日々を過ごしているが、ステラはあの忌々しい〝
そのため、ステラの「闇」を呼び起こしてしまうのではないかとテゾーロは懸念しているのだ。
(行きたいっちゃ行きたいけどな~……できる限り外へ出たくもないな……)
ウォーターセブンはそういう点では安全だ。
わざわざこんな復興し始めた港町に世界の頂点に君臨する者達が来るなどあり得ないからだ。
しかし、言い方を変えればそれ程シャボンディ諸島は危険なのだ。
「テゾーロ……どうするの?」
「……行くべきかどうかは迷ってる。 ステラを危険に晒す訳にはいかない」
「心配すんな、レイリーの居場所は大体の予想がつく。おれに任せろ」
自信有り気に言うギャバンに、テゾーロは……。
「……わかった、だけど条件を付けさせてもらうよ」
*
3日後、シャボンディ諸島。
シャボンディ諸島の13番
ここでは、金髪と口髭が特徴の眼鏡を掛けた男性が新聞を広げて酒を飲んでいた。
彼こそが元ロジャー海賊団副船長の〝冥王〟シルバーズ・レイリー…現在は海賊稼業から手を引き、シャボンディ諸島における船のコーティングを担うコーティング職人として余生を送っている。
「ギルド・テゾーロという者を知っているか? シャッキー」
「ええ、勿論。ジャヤの無法地帯に蔓延る荒くれ者達を全滅させたっていうニュースで知ってるもの」
テゾーロが解決させたジャヤの無法地帯問題は、ロジャーが海賊稼業をやる以前から問題視されていた。
それをほぼ一人で万事解決となると、世間に伝わる衝撃は自ずと分かるであろう。若さとは裏腹に計り知れぬ実力を有する
「レイさんこそ、「テゾーロ財団」を知ってるかしら?」
「? もしや、彼の組織か?」
「ええ…主にウォーターセブンで活動している団体よ。ウォーターセブンを復興させ、多くの失業者を救済したとか」
「ほう…」
その時だった。
カランカラン……
「あら、いらっしゃい」
店の扉を開け、三人の客……テゾーロ・ギャバン・ステラが現れる。
その姿を見たレイリーは、目を見開いて歓喜した。
「おお、ギャバンか!! 久しぶりだなァ、今までどこで何をしていた?」
「ちとその辺をうろついてたんだよ」
豪快に笑いながらレイリーの隣に座るギャバン。
ふとその時、後から入ってきたテゾーロとステラにレイリーは気づいた。
「! そこの君……もしや、ギルド・テゾーロ君か?」
「!!」
テゾーロは目を見開き、その反応を見たレイリーは笑みを深める。
「噂は聞いているよテゾーロ君……随分と暴れているようじゃないか。あのモックタウンを一人で治めたと聞いたときは驚いたぞ?」
「ここまで広まっているんですか。生ける伝説にも目をつけられるとは……」
苦笑いしながら頭を掻くテゾーロ。
「麗しい奥さんをお持ちのようだな」
「婚約前とはいえ、横取りしようものなら相手が冥王だろうと容赦しませんよ」
テゾーロはニッコリと笑みを浮かべながら、両手にはめた金の指輪から火花を散らす。
それを見たレイリーは「そこまで非道ではない」と言って宥める。
ちなみに一連の会話を聞いていたステラは、顔を真っ赤にしている。
「組織を立ち上げたからスーツで来ると思ってたが?」
「スーツ持ってますけど、全身ピンクの上に白のストライプ入ってて目立つんですよ」
「成程、この辺りで目立つのは確かに危険かもしれんな」
テゾーロの理屈に納得するレイリー。
島ではなくヤルキマン・マングローブと呼ばれる巨大な樹木で成り立っている、〝
その中でも1番GR~29番GRは無法地帯であり、人攫い屋がよく行き来している危険な区域なのだ。
そんな中で目立った格好をすれば、人攫い屋に目を付けられ〝
「ギャバンの用事は大体わかるが……君達の方は何の用かね?」
「そうですね……ビジネスのネタは多分興味を持たないでしょう? どっちかっていうと博打でしょうし。なら用事としては……ここは一つ、教えてくれませんか? 覇気の使い方を」
「! ……ギャバンから習おうとは思わなかったのか?」
「いえ、あくまで武装色のみで…見聞色とかはまだからっきしなんです」
テゾーロはギャバンとの修行で、ある程度〝武装色〟を扱えるようになった。
しかし〝見聞色〟の覇気と転生する前に神から与えられた〝覇王色〟の覇気は手をつけておらず、レイリーのような実力者に指南してもらわねばならなかったのだ。
「ちなみに教えてくれるならへそくりの一部の2億ベリーを「よし、いいだろう」……チョロ過ぎでは?」
現金な冥王に、引き攣った笑みで口を開くテゾーロ。
その場にいる全てに人間が、生ける伝説に対し冷たい視線を送っている。
「……何だ? 随分と冷めた目だな……」
「そりゃそうだろ、金で釣られたんだからよ」
こうしてテゾーロはレイリーに覇気の全てを教えてもらうことになったのだが、それと共にレイリーは金で釣れるという新事実が発覚したのだった。